日蝕のアサルトレコード   作:その辺の残骸

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模擬戦Ⅱ

 

 輸送列車内に設けられたオペレータールームでは同好会の経験豊富な裏方達が戦闘を支援している。同好会の教官を務めるのは女子高生にして現役最強クラスのレイヴン、ササラ・レイフィールド。

 金髪ツインテールのクールな美少女教官は戦術スクリーンを見つめている。

 

 オペレーター席に座っているのはササラの相棒である黒識リゼ。黒髪シニヨン、紫色の瞳。極めて妖艶な美少女だ。

 高校一年生だというのに、大学生に見えるほど成熟した、蠱惑的な体付きをしている。

 

『A小隊はミコの奇襲で混乱してる。イリヤとアズは三時方向からエントリーお願い』

 

 黒髪の妖艶美少女によるオペレートは的確だ。

 既に風花が拾った情報から敵チームの配置は割り出されており、小隊はA、B、Cと分けられている。

 

 BとCのノーマルACの小隊はそれぞれ二年生と三年生の機体だ。

 先行しているAは一年生の部隊で囮役を押し付けられていた。

 

 一年生の相手に五機がかりで夢中になっている所で、二年生と三年生が包囲攻撃を仕掛けて殲滅する作戦だったが、その作戦が実現することはなかった。

 

『よっしゃ、ぶっ飛ばすぜ! キマイラの弾幕から逃げられるヤツはいねえ!』

『この程度の弾幕ならほら、スイスイいける。はい、とっつきドーン』

 

 ハイテンションとローテンションの二重奏を奏でるヤンキー美少女と銀髪褐色美少女。

 

 四脚のキマイラによるレーザーと実弾を織り交ぜた砲火と、その間を駆け抜けてヒートパイルをぶち込むアフシャールによってA小隊は撃破された。

 

「皆いい感じだよね、ササラ?」

「ああ。だが油断はできない。数ではまだ相手が勝っている」

 

 ユニフォームの上に着こんだウィンドブレーカーを押し上げる巨乳の前で腕を組み、戦況をつぶさに見守る金髪ツインテールの教官だった。

 

「現状、皆様のバイタルは安定しています。このペースで戦闘機動を続けても問題ないかと」

 

 同好会設立に必要なため、外部顧問として捻じ込まれたサムライメイドの村雨レネが報告する。

 青銀髪のポニーテール、長身が凛々しい。脇腹まで露出する過激なサイドスリット入りのメイド服を纏った女サムライである。

 

 今は帯刀していないが、レネは徒手空拳でも危険な戦闘者であり、有事の保安要員が真の役目だ。

 しかし、AC戦は専門外なので、試合中はこうしてバイタルチェックを担当している。

 

「ミコ様もすっかり逞しくなられました」とバイタルが示す特訓の成果に、レネは感慨深ぐ呟いていた。

 

 ACバトル同好会の作戦は大胆不敵そのものだ。

 二つに分けた隊の少数の側、サヤのリトルクロウとリリィのホワイトバレルだけで残り八機を打撃している。

 

『おいどうなってる! 一年どもが全滅!?』

『吊り出されて丸ごとやられたんだ!――――うわっ! この距離から狙撃だとぉ!?』

 

 捨て駒が全滅して浮足立った瞬間、リリィが長距離狙撃を仕掛けていた。

 ビルよりも高く高度を取り、振り子めいて左右に揺れながら、両手のスナイパーライフルで的確にB小隊を狙撃する。

 

「はぁっ――――!」

 

 機動狙撃戦は敵機と自機の双方が高速で動くため、集中力が必要だった。

 高度な戦闘技術を短期間で修得することができたのは、リリィの高いモチベーション、かつて命を救ってくれたレイヴンへの憧れが大きかった。

 

 B小隊の二機が擱座する頃にはホワイトバレルは敵の射程に捉えられた。

 ビルの後ろに回り込みつつ、急速降下。

 気品溢れる英国生まれの美少女は、ハイレグパイロットスーツ姿で踏ん張り、慣性に抗った。

 

 着地の瞬間にブーストを吹かして反動を殺し、道路を滑りながら敵を引き付ける。

 狙いが逸れたミサイルや砲弾が炸裂し、ビルや路面を削るが、それらに気を取られることなくリリィは回避に集中していた。

 

 一方、青いカメラアイを輝かせ、漆黒のリトルクロウが大通りに巨体を躍らせる。

 サヤ単騎でC小隊との交戦を開始していた。

 

『レーダーに反応! あれ一年のサヤとかいう娘の機体だろ』

『本当に69式かこの動き!? 俺らのドレイクより遥かに旧式のはずなのに……』

『大会の映像見ただろ? それに単なる旧式じゃないカスタム機だ、四機で囲んで叩き潰すぞ!』

 

 正規のACドライバーとして三年間みっちり鍛えてきた彼らを困惑させるほどサヤの操縦は卓越していた。

 ビルの外壁を蹴っての加速という高度なテクニックを難なくこなし、漆黒の旧式AC"リトルクロウ"は迎撃を掻い潜っている。

 

 C小隊四機揃って装備した背部ミサイルの弾幕を頼りに空中からの突撃を止めようとしたが、コアの迎撃レーザーが大半を打ち落とした。

 

「うぅぅぅぅぅっ!――――とぉ!」

 

 残りを鋭い機動で回避したサヤは、今一度力強くビルの壁面を蹴って、高速でC小隊に肉薄する。

 黒髪セミロングの女子高生は、フットペダルを限界まで踏み込んでいた。

 

『俺が行く! 来い、アマチュアの一年!』

 

 相手は流石に三年生だけある。突撃に対して一機が立ち向かい、残りが包囲して上空から射撃する戦術で対応してきた。

 

 使い慣れたライフルとミサイルで正面の一機を片付け、路面を駆ける。

 敵の攻撃による衝撃で硬直しないうちに高速回転。C小隊三機の攻撃は装甲の硬い部分で受けている。

 

 コクピットは激しく揺れと強烈な慣性荷重に襲われているが、サヤは楽し気にリトルクロウを操縦していた。

 トップランカーだった母親譲りなのか、黒髪の女子高生は特異的な耐G能力を持っていた。

 

「ここはオーバードブーストで一気に距離を!」

 

 ライフルで頭部を撃ち抜き、二機目を無力化しつつ、サヤはオーバードブーストを点火。

 リトルクロウのコアは69式シリーズよりさらに旧式、"CCM-00-STO"の改修版、母親のハンドメイドであった。

 

 直前までいた地点に攻撃が降り注ぐ。絶妙なタイミングで急加速が始まった。

 その速度感に浸ることもGに負けることもなく、サヤはレーザーブレードを抜刀。

 

『生意気なんだよ!』

「三機目、もらいます!」

 

 三年生の怒声に続いてライフルが放たれるより速く、リトルクロウは三機目を撃墜した。

 

「あと一つ――――! あっ拙い!」

 

 ミサイルロック警告と共に、白煙を曳いて飛ぶミサイルが数発、レーダーに映った。

 黒髪の女子高生は反射的にコアをそちらに向け迎撃レーザーを撃とうとする。

 

『まだまだ甘いな! せめてお前だけは墜とす!』

 

 最後の一機、中隊長を務める三年生は最後の意地でサヤを撃墜しようとしていた。

 

 レーザーブレードを抜き、回り込んでリトルクロウの漆黒の装甲を切り裂こうとする。

 ブレードが装甲に触れる直前、スナイパーライフル弾が中隊長機に命中、撃墜判定が下される。

 

 滞空する純白の軽量二脚AC、そのシートに座するのは同じ髪色の少女だった。

 B小隊の撃破をミコ達に頼み、ホワイトバレルがオーバードブーストを吹かして救援に駆け付けてくれたのだ。

 

『無事で良かったです、サヤもリトルクロウも』

「ありがとうリリィ! いつもながら凄い狙撃の腕前!」

『サヤの方こそ。AC三機を単独で撃破するなど、並大抵の事ではありません』

 

 最後の一機の撃墜でミスをしたものの、短時間にノーマルACを三機、それも総合性能で劣る旧式機で撃墜するというのは脅威的な戦果だった。

 黒羽サヤは紛れもなく、ACバトル同好会のエースドライバーであった。

 

 ACドライバー科からの挑戦を受ける、という形で放課後に始まった模擬戦はリアルタイムで校内に配信され、少女達の華麗な戦闘で大盛り上がりだった。

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