日蝕のアサルトレコード   作:その辺の残骸

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青とのコンタクトⅡ

 

 聖オルベリア教導学園とオルタシア専門学院。その名は《再構築戦争》後の動乱を鎮め、地球連邦政府樹立の立役者となった戦乙女に因んだものであり、一般の知名度は非常に高い。

 

 全ての戦場で赫々たる勝利を飾り、多くの無辜の命を救い、生ける奇跡と讃えられながらも未帰還となり列聖された"白のオルベリア"。

 

 対して、"黒のオルタシア"は偶像化を拒み、動乱後の治安維持の傍ら、戦術理論の研究を続けACドライバーの技量向上に勤めた人物であった。

 当初は異なる陣営に属し、砲火を交え合った二人は良きライバル関係にあり、オルタシアは最期までオルベリアの帰還を待ち続けていたという。

 

 

 一縷の隙もなく制服を着込んで整列したブラウリヒトの少女達のうち、一人が進み出てきた。

 

「縁深い名を持つ学園の皆さんと知己を得ることができて光栄だ。

 私はアニエス・ミッドホルン。ブラウリヒトのチームリーダーを任されている」

 

 アニエスは長身で、女子高生エリート軍人といった趣きの美少女である。

 

「フレドリカ・タルテと申します。突然の訪問を受け入れくださったこと、感謝いたします」

 

 理知的でおっとりとした印象のフレドリカは、アリエスの副官だろう。

 

「乃井原ナツメだ」

 

 若く猛々しい女武者といった感じの実直なナツメ。サムライ風なメイドであるレネ外部顧問は何か思う所がありそうだった。

 

「ピッ、ピノ・サクラスカヤです。あのえと…よろしく…です」

 

 ピンク色の髪で、やや小柄な美少女が、おどおどしながら挨拶した。

 

「ジクリル・ナレン。まっよろしく」

 

 目つきが悪く、気だるげなボーイッシュ美少女が最後に挨拶した。

 

 ACバトル同好会の面々もそれぞれ挨拶した。お互いに好印象であり、遥か格下のチームに対するものとは思えないほど、ブラウリヒト側の態度は友好的であった。

 

 最初は心の中でファイティングポーズを取っていたヤンキー娘と銀髪褐色娘の警戒も緩んでいる。

 

 何故上位リーグのチームであるこの少女達が訪ねてきたのかと言えば、同好会の活躍を見聞きして、是非表敬訪問をと申し出てきたのだという。

 

「今日はブラウリヒトの皆さんが練習風景を見学していくがいつも通りこなすように!」

 

 ミコ部長が小さな体で、薄い胸を張りながら宣言。勿論、サヤ達の返事は「はいっ!」という元気の良いものだ。

 

「よろしい。そして本日の予定を変更して演習場での実機訓練を行う。

 これは、ブラウリヒトの皆さんが話を通してくれたおかげなので感謝するようにね! というわけで頼むぞ、ササラ君!」

「了解した。では各員ACに搭乗するように」

 

 同好会活動用の中量二脚AC"ミセリコルデ"に向かうササラ。颯爽と靡く金髪ツインテール、鍛え抜かれながらも優美な曲線を描くヒップが揺れる。

 長い脚を覆うハードシェルのサイハイブーツが響かせる靴音はリズミカルで心地良い。

 

 相棒の背後に続くリゼも、ハーフバックスタイルで露わになっている、魅惑的なヒップを揺らしている。

 

「ブラウリヒトの皆様は拙の車にお願いします」

 

 サイドスリットが腰まで切れ込んだ改造メイド服という顧問にあるまじき高機動かつ煽情的な装いのレネは、洗練された仕草でブラウリヒトのメンバーを導く。

 

 助手席にはトリニティ本社から学園に派遣されたチームマネージャーのジュロームが乗り込んでいる。

 

 

 海鵬市本島に隣接する演習用メガフロートまでACを運んだ輸送列車。その管制室からブラウリヒトの面々は練習を見学しており、時折ササラやリゼに質問していた。

 

 一方、チームマネージャーである眼鏡の中年男性ジェローム氏は練習風景には無感動な様子である。

 

『うわーん、全然当たらない! 頭の中で数字が跳ね回って、こんがらがっちゃうよ! 数学は自信あるのに!』

『やはり射撃諸元に基づく狙撃はサヤには難しいようですね。感覚的なやり方に切り替えましょう』

 

 リーダーのアニエスが真剣な眼差しで見つめるモニターには、漆黒の旧式ACリトルクロウが狙撃の訓練に励む光景が映っている。

 日々を楽しく明るく生きる黒羽サヤはこの時知る由もなかったが、少女はアニエスにロックオンされていた。

 

 この日の練習は、普段と僚機を変えての二対二の対戦や、そこに残る一機が加わっての三つ巴の変則的な対戦などに大きく時間を割いた。

 

『よっしゃ、後ろはこのイリヤ様に任せて突っ込めサヤ! お前のケツは必ず守ってやる!』

 

 深青色の四脚ACキマイラが両手両背部合計四門の砲を突き出し、ヤンキー娘がチーム随一の巨乳を弾ませながら咆える。

 

『ありがとうイリヤちゃん! 私のお尻、預けるね!』

 

 しなかやな肢体に力を籠め、腹筋を引き締めつつ、サヤは愛機リトルクロウをオーバードブーストでかっ飛ばす。

 

『むっ、相変わらず、速い。けど、抑えられないことは、ない!』

 

 暗赤色の逆関節VACアフシャールが壁を蹴り、ブーストドライブを繰り返して迎え撃つ。

 

『アズさん、まずはサヤを優先して狙いましょう。部長とイリヤさんはその後に二人掛りで』

『了解した、数の優位が肝心、だね』

 

 純白の令嬢が駆るホワイトバレルは上空で二挺のスナイパーライフルを構え、狙撃を開始した。

 

『人のプランを滅茶苦茶にするのは私の得意技だ。覚悟してくれたまえよ!』

 

 ECMをバラ撒き、イクシードオービットとの連携で単機の不利を補いながら、ミコの風花がフィールドに混乱を招く。

 

 その練習にブラウリヒトの気だるげボーイッシュ娘、シグリルは何か言いたげだった。

 

「気になることがあるのなら是非教えて欲しい」

 

 その視線に気付いた金髪ツインテールのササラ教官が声を掛ける。

 長身の金髪ツインテ美少女の裏の顔を知りながら、臆することなくシグリルは言う。

 

「こんな付け焼刃じゃボク達には届かないってだけ」

「ふむ、覚えておこう――――では私もそろそろ行ってくる。後は任せるぞリゼ」

 

 ササラはクールに返答すると管制室を後にした。その背中に鋭い眼差しを送っているポニーテールの女子高生武者のナツメ。

 

「ここからは教官対チームでの模擬戦になりまーす」

 

 挑発的な笑顔と声音で呼びかけるリゼであった。

 

「まあ、それは楽しみです!」

 

 おっとりとしたフレドリカは素直に戦闘開始を心待ちにする。

 

 演習区画にオーバードブーストで飛び込んできた教官機を視認すると、即座にサヤ達は交戦を開始する。

 チーム全員でかかってもササラから一本取れていないが、着実に差は縮まっていた。

 

「ACに乗り始めて半年も経っていないのに、こんなマニューバをこなせるなんて。うう…あっという間に私なんて追い越されちゃうかも」

「ピノが衝突事故起こさなくなるまで一年丸々かかったもんね」

 

 敵味方が目まぐるしく動き回る高速度での戦闘においても、誤射や衝突といったミスを冒さず連携できる同好会の練度の高さは、ブラウリヒトに少なからず感銘を与えていた。

 

 

『お疲れ様みんな!』

 

 リトルクロウのコクピットで汗を拭うサヤ。

 

 見学者達のおかげで、いつもより気合が入り、全員コクピットの中で汗だくになっていた。

 

 熱と汗の香りを発散しながら、ハイレグパイロットスーツの女子高生達は機体から降りて、整列する。

 

「練習を見学させてもらってはっきりと判った。やはり貴女達は素晴らしいチームだ」

 

 アニエスは掛け値なしの賛辞を送った。そしてミコ部長にアイコンタクトをする。ミコが頷くと言葉を続ける。

 

「是非、親善試合を申し込みたい」

 

 それは前代未聞の驚くべき提案であった。

 

「なっなんだって!? 確かに夏休みの頭に予定していた親善試合は、整備不良のために相手が辞退してしまったのでスケジュールが空いているのだが!」

 

 芝居がかった仕草で、驚きながら前に出ると、くるりと反転してACバトル同好会の方を向くミコ部長。

 ちなみに親善試合を申し込んでいたチームが辞退したというのはサヤ達には初耳であった。

 

 一方、事前に通達されていたササラとリゼは口を挟むことなく、静かに見守っている。

 

「とっ言うわけなんだが、皆はどうだい?」

 

 扇動するように笑いかける、金髪のちっこい部長。

 

 真っ先にブーツの音を響かせ、進み出たのは黒髪の女子高生。

 

「やりたいです! 私、ブラウリヒトの皆さんと勝負がしたいです!」

 

 胸に片手を添えて、ひたむきに宣言するサヤ。そのお尻は強い気持ちで、きゅっと引き締まっていた。

 

 それに呼応するように。リリィの上品で凛々しいお尻、アズの神秘的な褐色お尻、イリヤの筋肉質で獰猛なお尻が同時に引き締まり、気合を入れた。

 

 友好的なムードから一転。好戦的な視線がぶつかり合い、ガレージ内に緊張が走る。

 

 こうして、聖オルベリアACバトル同好会とチーム・ブラウリヒトとの親善試合開催が正式に決定したのである。

 

 

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