日蝕のアサルトレコード   作:その辺の残骸

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公開練習Ⅰ

 

 青を纏ったエリート女子高生チーム『ブラウリヒト』の表敬訪問を受けた翌日。ACバトル同好会のガレージにて。

 サヤ達は前日と変わらない、いやそれ以上の熱意で練習に励んだ。

 シミュレーターでの訓練を繰り返していたところで、一端小休止を入れる。

 

 顧問という立場のレネはメイドの仕事に立ち返り、菓子と紅茶を用意していた。

 

 従者の淹れた紅茶にたっぷり角砂糖を投入してミコ部長は水分と糖分を補給すると、重力下での訓練という名目で地上に降りてきたブラウリヒトの裏の意図を説明し始めた。

 

「結局は政治というやつだよ、諸君。まず、第一に近頃のトリニティはミサカとの提携を強めている。

 そして、この海鵬市を運営しているのは政府とミサカなわけじゃないか。これはつまり――――」

 

 ティーカップを片手に、片目を瞑むってサヤに微笑むミコ。

 

 目を輝かせながらマドレーヌに舌鼓を打っていた黒髪の女子高生は、その視線に気付いて動いた。

 

「あえて海鵬市の演習場を使ったり、ミサカや日防軍相手に訓練をしているのは、仲良しアピールしている、ということですか部長!」

 

 紅茶でマドレーヌを流し込み、答えるサヤであった。ブラウリヒトは海鵬市での訓練を正式に公表して、今日から開始している。

 

「その通りだサヤ君! 兵隊同士でやるより、ACバトルのチームのほうが印象が柔らかくなるわけだ!

 元々、ブラウリヒトはトリニティのアイドル的な側面の強いチームだからうってつけの仕事さ」

「なるほど!」

 

 

 名家の令嬢という出自がはっきりと出た、優美な所作で紅茶を味わってからリリィは述べる。

 

「サヤの言うところの仲良しアピールをしたい相手は、今のトリニティには多いでしょう。

 社内統制のために相当手荒な真似をしたと、父から聞き及んでいます」

 

 自分の子供っぽい言い回しを友達が使ったことが嬉しく、サヤは無邪気に笑いかけていた。

 

 一方で火星生まれのヤンキー娘、薄金髪のイリヤ・フレアテイルは豊満な胸の前で腕を組み、不機嫌な表情を浮かべる。

 

「だからオレらも宣伝材料にしたってわけだな? テレビでもネットでもウチとの親善試合の件、早速ニュースになってるぜ。しかもブラウリヒトの特集まで組みやがって、露骨だぜ」

 

 ACバトルのうち、フォーミュラフロントに匹敵するほどの盛り上がりを見せているチーム戦競技『アサルトスクワッド』にトリニティは早くから注目していた。

 見目麗しい女子高生、しかも伝説の英雄乙女オルベリアとオルタシアの名を冠する学園が対決し、まだまだ未熟ながら見どころのある後進に試合を通し手解きを施す。

 概ね、そのような筋書きだろう。

 

「ボクはそこまで悪いとは思わないな。宣伝とプラスなイメージ構築、大事」

 

 言いながら、銀髪褐色のアズはクッキーをパクパクとやっており、空になったティーカップに青銀髪のサムライメイドがお代わりを注ぐ。

 

「私は不味い選択をしたかな?」

 

 ヤンキー娘の顔色を窺う部長。親善試合に真っ先に乗っかったサヤも気まずそうだ。

 

「いいように使われるだけなのは気に入らねえ。だからよ、やるからには勝ちたい」

 

 闘志に燃える眼差しで笑うイリヤ。戦意は十分以上にあり、今日の練習にも気合が入っていた。

 

「それは私も同じだとも!

 よし、頂いた機会を最大限に活かして、ブラウリヒトを丸裸にしてやろうじゃないか!」

 

 立ち上がり、拳を高く掲げるミコであった。

 夏休みの初日となる土曜日に、ブラウリヒトの公開練習が沖合で実施されることになっており、同好会はVIP待遇で招待されているのだ。

 

 クールな美貌を保ちつつ、少女達のやり取りを内心微笑ましく見守るササラ・レイフィールドの見立てでは、勝ち目はある。

 抜きん出た技量のあるサヤだけでなく、他のメンバーの実力も既に下位では収まらないレベルだ。

 事実、前回の大会ではACバトルの選手としてはアマチュアなだけの実力あるACドライバーにも勝利しているのだから。

 

 

 休憩が終わるタイミングを見計らったかのように、ガレージにやってきた二人組。

 

「遅くなりました」

「やっほー」

 

 赤髪と金髪の美少女。神薙エリスとアンヘラである。上位リーグの強豪と同好会が対決すると聞いて、手伝いに参上したのだ。

 

「いやいや、ナイスタイミングだ。これからシミュレーターでの訓練を再開するところだ。遠慮なく稽古をつけてくれたまえ」

 

「勿論です。微力ですが力になりますよ」

「ボクもノーマルの操縦はそれほど得意じゃないけど、練習相手くらいにはなれると思う!」

 

 ミコに応えるエリスとアンヘラの姿が、部員達にはとても頼もしく見えた。

 

 必要なのは強敵相手の経験値を積むことだ。強力な対戦相手ならばササラ教官だけでも足りるが、特訓相手は多様なほうが良いという判断から、ミコは応援を頼んだのである。

 

「では着替えて参りますね」

「うん、行こ行こ!」

 

 予備のパイロットスーツを借りるべく、更衣室に向かうエリス達。

 金髪に健康的な小麦肌のアンヘラは、大好きなエリスと素っ裸になって着替えられることを喜び、はしゃいでいた。

 

「うし、とっとと着替えるぞ」

 

 更衣室で二人きりになり、素の口調で話しつつ、スカートを脱ぐエリス。お嬢様らしい純白レースの高級ショーツで完全武装していた。

 アンヘラはスポーティーなデザインの黒インナーだ。とてつもない巨乳のため、抑えが強い下着を好んでいる。

 AMSジャックを隠すチョーカーだけを残し、生まれたままの姿でパイロットスーツを取り出す赤髪と金髪。

 

「着心地はこっちのほうが好みだな」

 

 インナーであるレオタード状スーツを装着してアンヘラは感想を一言。

 クロムバウで支給されたパイロットスーツよりも肌触りが良く、汗もすぐに乾く。

 

 ACバトル同好会が採用している灰色のレオタードスーツに白いハードシェルを装着して戻ってきた二人。

 

「待たせ――――と失礼。お待たせしました」

「どうかな…似合う?」

 

 ブーツの靴音を響かせ、意気揚々と歩み出る、引き締まったアスリートボディと我侭なお胸とお尻を誇る長身日焼けボディ。

 ボディラインが素晴らしいエリスとアンヘラのハイレグなレオタードスーツ姿には、既に戦意が漲っており、同好会の女子高生達を緊張させた。

 

 ガレージにはACのコクピットブロックだけを抜き出して造られたシミュレーターが二機分用意してある。

 エリス達のスーツと同じく、入部希望者用の備えだ。大会に優勝して名が知られてくると希望する生徒は男女問わず多かったが、想像以上に厳しい練習で皆ギブアップしていた。

 

 

 部員達は乗機に乗り込み、VRシミュレーションを起動した。

 ここからはエリス、アンヘラ、ササラの三人娘との模擬戦を繰り返して、ひたすら経験を積んでいく。

 

「不肖神薙エリス、心を鬼にしてお相手させていただきますね」

 

 エリスは赤く塗装された軽量二脚の機体を組み上げ、オーバードブーストによる空中機動戦で部員達を翻弄していた。

 ハイレーザーライフルを撃ちまくりながら、徹底的なエネルギー管理で足を止めることなく機動する。

 

 目で追えないような高速戦闘はササラとの模擬戦で体験している同好会チームだが、エリスの超攻撃的かつカウンター戦法にも長じたマニューバは白いACを操る教官とはまるで違い、一から対処法を見出さねばならなかった。

 

「次はこのアセンで行こうっと!」

 

 アンヘラは毎回異なる機体をアセンブルして完璧に操っている。

 恐るべき天才ぶりから繰り出されるアンヘラの変幻自在の戦闘は、様々な敵への対処法をACバトル同好会に学ばせた。

 

(慣れてきたぜ。こういうのが一番肝心なのかもしれねえな)

 

 イリヤはシートに体を押し付けて、片手で目元を覆って休む。深呼吸による腹筋の動きが悩ましい。

 少女達はエリス達が発する、押し潰すようなプレッシャーに心身が慣れ、大胆な動きができるようになってきた。

 理屈では決して克服できない強者の圧力に体を馴染ませる訓練においては、ACバトル同好会は最適な場所であった。

 

 

 こうして、経験値を稼ぎ続け、その日がやってきた。

 

 海鵬市の沖合で公開練習が行われる土曜日。同好会の面々は制服を着用して手配された車に乗っていた。

 念のため、乗り込む際には車内によからぬ仕掛けがないか、ササラ、リゼ、レネの三人がかりで隅々まで素早く確かめていた。

 

 気持ちで負けないよう、ミコの発案で下着の代わりにパイロットスーツを着込んできたのは正解だったかもしれない。

 自然と気が引き締まり、チームとの一体感がなんとなく感じられる。

 それに股座の角度が鋭角なので、スカートの下は普段より涼しく、真夏にはありがたい。

 

 オルタシア専門学院は今回の訓練のために、メガフロートの防衛に担う日防軍とMSF(ミサカ・セキュリティフォース)の合同基地の一角を間借りしている。

 

 一行の案内役はオルタシア専門学院の制服姿だ。極めて姿勢の良い案内役の女子高生につられ、サヤ達の背筋はピンと伸びている。

 

「うわ、すっごい。全部、学園の生徒でやってるんだ」

 

 通された管制室の様子にサヤは驚き、思わず小声で隣のリリィに話しかける。

 

 案内だけではなく、ACの運用に関わる作業は全て、ブラウリヒトに随行したオルタシアの生徒が担っている。

 

「大したものだ」

「軍隊ごっこ、とは馬鹿にできないレベルね」

 

 レイヴンであるササラとリゼもこれには驚いていた。

 このまま軍隊として通用する仕上がり具合で、オルタシアの教育方針が見て取れる。

 

 ブラウリヒトのマネージャー、ジュロームが隅の方から姿を現し、歩み寄ってきた。

 

「ようこそ、歓迎しますよ。訓練は十分後に開始されますので、もう少々お待ちください」

 

 簡潔で無感動な物言いで口にすると、足早に去っていく。

 その素早さと無駄の無さに、あの人は実はトリニティが開発したアンドロイドなのではないか?という疑念を抱くサヤとリリィであった。

 

 サヤ達が大きなモニターが複数設えられた観覧用の席に着いてから、きっかり十分後。

 

 チームカラーの青で塗装された機体に、ブラウリヒトが乗り込んでいく様子がモニターの一つに映る。

 

 アニエス達はインタビュー映像などで観た、最先端の技術による独特な質感のパイロットスーツ姿だ。

 機体と同じく、青色のスキンスーツに黒のハードシェルを装着して四肢や胴体の側面を保護している。

 

 将来はトリニティ企業軍のエースとなる、五人の美少女パイロット。その鍛え抜かれた肢体が、艶やかな光沢の極薄スーツで曝け出されてた。

 

 モニターはPV映像のようにアニエスを中心に並んで乗機に向かうチームの背中を映すようになった。

 背筋の鍛え具合が凄いが、股間部分から続く装甲板が尻の間に食い込んでおり、そちらに視線が誘導される。

 

 厳しい訓練と試合を通して培った力を誇示するように、少女達の筋肉で引き締まった丸いお尻が揺れていた。

 

(ブラウリヒトの人達、お尻も綺麗だなぁ。どんなトレーニングをしたらあんな筋肉が付くんだろう?)

 

 それは挑発的とも受け取れた。だが、サヤは素直に綺麗だと感心して、画面を見つめた。

 

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