日蝕のアサルトレコード   作:その辺の残骸

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乱入

 

 リトルクロウは小刻みなブーストジャンプでの猛攻を凌ぐ。上空100m前後の高さをキープしているブラウリヒトの一番機の攻撃を避け続けているのだ。

 

 レーザーが路上で炸裂する。黒い装甲の旧式ACはその隙間を縫って後退している。

 母から譲られた機体を駆る黒髪の女子高生の操縦は人馬一体、試合に全力投球だ。

 

『イリヤちゃんは十秒持つ。そのままリリィちゃんと合流しちゃって!』

『了解!』

 

 実のところ、黒髪シニヨンの妖艶なJKの冷徹さが少し怖いサヤだった。だがその判断は頼りになる。

 

 素早くHUD上のエネルギーゲージを確かめる。

 

「不味い、レッドゾーン!」

 

 コンデンサに蓄えられた電力が底を尽き掛けていた。

 

 危機感はあるが、サヤはそれを楽しむように笑っていた。こんなにドキドキしたのは、はじめてだ。

 いよいチャージング寸前になったところを狙い、レーザーライフルで狙うアニエス。しかし、空中に陣取る青いACは遠方から飛んできた銃弾に反応し、機体を翻した。

 

 その射手は白い軽量二脚AC、ホワイトバレル。

 

『お待たせしました!』

『ナイスタイミングだよ、リリィ!』

 

 サヤは建物の陰に飛び込み、エネルギーを回復させた。高出力ジェネレータを搭載しているため、立ち止まれば一瞬で息を吹き返す。ホワイトバレルが轟かせるオーバードブーストの轟音を心地良く感じる。

 

 ビルの合間を抜けた純白の狙撃型ACは銃撃を続ける傍ら、左腕のレーザースナイパーライフルでミコ部長の最後の一手を掩護する。閃光に切り裂かれて爆散するミサイルの群れ。

 

『これならば! 悪いけど私と一緒に墜ちろ!』

『ここで特攻!? 数の有利を捨てるというのですか!』

 

 部長が駆るアンテナ頭の風花とブラウリヒト02、副隊長のフレドリカの撃墜判定が同時に下される。相打ちに持ち込んだのだ。

 

『畜生、よりによってあの無愛想なヤツにやられた!』

『十分な活躍だったよ、イリヤちゃん。後は二人に託そう』

『――――だな。イリヤ・フレアテイル、後退する』

 

 一方リゼの読み通り、十秒後に四脚のキマイラは撃墜判定を下された。撃破した四脚に目もくれず高速で上空を駆け抜けていくのはブラウリヒトの五番機。

 

『付け焼刃と言ったのは間違いだって認めるよ。だけど、負けられないんだよボクらは!』

 

 同好会の少女達に言葉を叩きつけるシグリル。ダウナーなボーイッシュ少女であるが、勝利を求める貪欲さがあるACドライバーだった。

 

『合流するぞ』

「わかってるよ、アニエス。心配しないで。いつも通り、ボクは冷静だ』

『信じてるとも。二対二だ。負ける道理はない』

 

 そこからのAC同好会とブラウリヒトの戦いは純粋な力と意志の激突であった。空中機動力で勝るブラウリヒトのACに対して、リトルクロウはドライバーの操縦技術による壁蹴りで距離を詰めていく。ホワイトバレルはそこから離れた地点でシグリルの五番機と銃撃戦を繰り広げた。

 

「撃ち合っていたら負ける!」

 

 ここぞというタイミングでオーバードブーストを起動。漆黒の旧式ACはレーザーブレードを抜き放ち、アニエス機に挑んだ。高速飛行中に機体を左右に揺らして照準を振り切っている。

 

『黒羽サヤ、君はなぜ戦う!?』

 

 ブレードで斬り付けながら、アニエスは吼えるように問い掛けた。ナノシェルスーツが覆う、鍛え抜かれた肉体が躍動する。その激しさが機体の動きにも反映されていた。

 

『お母さんと同じものが見てみたいからです! 無理かもしれないけど、それでも近いところまでは羽ばたきたい!』

 

 ブラウリヒトの少女隊長に負けないくらいの声量で思いの丈を叫ぶ黒髪の女子高生。

 

『似たもの同士だな、私と君は! 気取らず、もっとよく少し話しておくべきだった!』

 

 アニエスは、レイヴンも含めた多くのパイロット達から学び、その強さと意志に憧れを抱いたのだ。アニエスの憧れの人々の中にはサヤの母親である元東京アリーナのトップランカー、クレハも含まれていた。

 

 オーバードブーストを吹かし、二機のACは激しいドッグファイトを繰り広げる。空戦を僅差で征したのは、アニエスだった。

 

『君達は良く戦った、だがこれで終わりだ』

 

 青い空戦型ACは漆黒の旧式ACを蹴り飛ばし、空中で制御を失ったところをレーザーライフルで狙う。サヤを撃墜すれば残るのはリリィのホワイトバレル一機だ。数瞬でAC同好会の敗北が決定する。

 

『まだ終わってない! 確かにアニエスさんは強いけど、それでもリリィと一緒なら!』

 

 サヤはブースターを吹かして転回することで、強引に射撃姿勢を取らせた。上下反転するコクピット。重力に抗うようにシートに背中を押し付ける。

 残ったライフルの弾丸をシグリル機に向けて撃ち込む。反射神経と運に任せた狙撃だった。

 

『なっ!?』

 

 予想外の援護射撃にダウナーかつプライドの高い、ブラウリヒトのボク娘は驚いてしまった。肩に命中した弾丸に狼狽えるシグリルの隙を見逃すリリィではない。ホワイトバレルはブラウリヒト05のコアを狙撃、撃墜した。

 茫然とするシグリルを後目に、サヤの援護に飛ぶ。アニエス機が放つ高初速レーザーに対して、ライフルを囮に防いでいる。

 

「ちぃぃ、またしても! 良いコンビネーションではあるが!」

 

 二機同時の攻撃を妨害すべく、アニエスは銃火を浴びせる。レーザーと実弾を時間差で放つが、リトルクロウとホワイトバレルは急上昇で回避。残弾はあと僅か。

 

『サヤは好きなように動いて! 私の方で合わせますから!』

『OKっ! いくよ!』

『二対一か! 面白い!』

 

 たった独りになりながら、アニエスは戦意を燃え立たせ、黒と白のACの位置を素早く視認する。

 しかし、試合が最終局面に入りかけたその時、戦場にいる全てのACのコクピットに最大級の警報が鳴り響いた。

 

 

『不明機が演習区画に接近中だ。全員、動けるな? 即時退避、ミセリコルデと合流してくれ』

 

 軌道車の指揮所から金髪ツインテのレイヴンが鋭い警告を発する。

 ササラとリゼはジャージを脱ぎ捨て、レオタード状のパイロットスーツ姿でコンテナに格納してあるACミセリコルデに向かう。残された青銀髪のサムライメイドもどこからともなく太刀を取り出し、車両から飛び出していた。

 

『不明機!?――――あれか!』

 

 戦闘を中止して、サヤは海面スレスレを飛行してくる四十メートル級の機体を捉えた。重厚な装甲に鋭いバイザーの頭部。カラーリングはベージュと黒茶色。ブースト噴射しながら水平飛行していた機体が急に起き上がり、両腕と一体化したレーザーキャノンをサヤ達に向けてきた。

 

 『散れ!』と叫んだのはアニエスだった。サヤとリリィはその言葉に従い、散開する。二機のACと一緒に急降下するリトルクロウ。眩い光が頭上を掠めている。今度は不明機の背部コンテナから垂直ミサイルが放たれ、模擬市街に降り注いだ。

 

『うわっマジかよ!? 皆無事か!』

『イリヤはそれより自分の心配。キマイラは足回り、壊れてるんだから』

 

 ミサイルの爆風を掻い潜りながら、四脚のACキマイラと逆関節のアフシャールは並走する。

 出自柄荒事慣れしたアズは実弾による攻撃を受けても冷静だった。

 

『見たことないMTだ、やっそもそもMTなのかな? 分かんないや』

 

 小首を傾げながら、カーブを曲がるアフシャール。遅れて続くキマイラ。

 

『とりあえず、ヤバい奴なのは確かだな』

 

 市街に侵入した大型機が放ったレーザーが高層ビルを切断したのを見て、呟くイリヤだった。薄金髪の火星ヤンキー娘は生き残れるのか不安になってきた。

 

 

 さらに演習島に接近する不明機がもう一機。それはプライマルアーマーによるコジマ粒子反応を伴っている。拘束具のような大型ブースターを装備したその機体の左肩には日蝕の下を飛ぶ鴉のエンブレムが描かれていた。

 

「ちっ間に合わなかったか!」

 

 真紅のナノスキンスーツで裸体を覆った赤髪の戦乙女は苛立ちを口にする。塗料は通常の物に戻したが、エリスが駆るネクスト"イクリプス"は火星での戦闘で用いた白いカラーリングを維持している。気に入ったのである。

 

 大型の不明機は昨晩の隕石に偽装して降下してきたものだ。エリスは機体に見覚えがあったし、何度も撃破していた。惑星アリシアのAIが投入した大型機動兵器でヨトゥンという呼称で呼ばれていた機体だ。

 

 流星が観測されてから、エリスは妙な胸騒ぎを覚えたためツクヨミに戻り、探査と情報収集を行っていた。そして海中を進む大型機を捉え、追撃した先が海鵬市だったというわけだ。

 

「スタンドアロンだね。アリシアの本体とは通信していない」

 

 当然だよね、僕がぶっ壊してやったんだからと付け加えるのは後部シートにちょこんと腰掛ける白金髪のゴシック・オートマタ。異星AIを殲滅するために創造されたこのAIにとって、市街で暴れている大型機は憎悪の対象だ。その敵意はAMSを介して統合制御体であるレヴと繋がるエリスにも伝わってくる。

 

「サヤ達もいるんだ。速攻で片付ける」

 

 宣言してからイクリプスの全兵装を最終チェック。問題なし。続けて、別の戦域を任せたバディのネクストに呼び掛ける。

 

『そっちは任せたぞアンヘラ!』

『任せておいてよエリス! レイヴンとしての初仕事、完璧にこなすからさ!』

 

 大型機は二機いた。武装の異なる同型機は海鵬市本島に向かっており、大騒ぎになっている。そちらの対処をアンヘラとウルティマ・ラティオに任せた。

 漆黒の重装型ACの中で、金髪小麦肌の陽気な長身少女は戦意を高揚させていた。状況はシビアだが、エリスの仲間としての初仕事が悪者退治で巨人殺しというアンヘラ好みのものになったからだ。

 

 ササラとリゼが乗り込んだミセルコルデとミコの風花とデータリンクを確立する。

 ヨトゥンは背中のコンテナからレーザー砲を装備した自律兵器を多数射出しており、同好会とブラウリヒトのACを攻撃していた。

 

『来てくれたか。悪いがこちらには有効な武器はない。できることはせいぜい射出された自律兵器を落とすくらいだ』

『ということでお願いね、エリスちゃん!』

『データはもらった。なるほど、上の方にある送受信ユニットを狙えば模擬弾でも無力化できるか。やってみるよ』

 

『応、任せておけ!』

 

 凛々しく応答しながら、エリスは大型機に向かう。眼下の光景が海のブルーから模造都市の灰色に移り変わる。

 

『むむっ!? どうやらあのドローンの送受信ユニットを潰せば止まるようだ! 逃げ回るより攻撃したほうが良さそうだね!』

 

 同好会のちっこい金髪部長は風花のガトリングマシンガンで自律兵器とヨトゥンを結ぶ送受信ユニットを狙い、撃墜することで偶然気付いた体裁で弱点を報せる。中々の演技力だと内心で自賛している。

 

『囮は引き受けよう。ボクらのほうが適任だろうからね。それでいいよねアニエス?』

『副隊長として賛成です』

『元よりそのつもりだ。ただし、ブースターに被弾しているのだから03は無理をするな。ピノはナツメを掩護しろ』

『御意……くっ己が情けない!』

『きっ気を落とさないでくださいナツメさん!』

 

 ブラウリヒトの面々は企業軍のAC乗りとなるべく鍛えられているだけに、決断が早い。

 

『お願いします! ブラウリヒトの皆さん!』

 

 少女達はチームを超えて共闘し、自律兵器は次々に撃墜されていた。時折、ビルの間を駆け抜け、空中を奔る人影が戦闘機械を両断している。腰までの煽情的なスリットが入ったロングスカートを翻し、太刀を振るう青銀髪の長身メイドの業前であった。

 

「うひゃー凄い。ねえササラ今のレネさんの見た? 壊すのに20mmくらいは必要なドローンを刀でばっさりだよ、ばっさり」

 

 レオタード状のスーツで大股を開いてシートに座っている金髪ツインテの後ろで、電子戦用シートがないため、警戒くらいしかやることがない黒髪の妖艶美少女が呼び掛ける。

 

「頼もしい限りだな。口を閉じてしっかり掴まっていろ。でないと舌を噛む」

 

 クールに言いながら、ササラはレーザーの攻撃を掻い潜り、自律兵器に蹴りを叩き込んでいた。

 

「お美事」サムライメイドは滑空しながらササラとリゼが乗る機体に賛辞を送った。

 

 

「これなら心配なさそうだね。配信が切れてしまったのが残念だ。絶対盛り上がったろうに」

「言っとくけど、配信再開だとか余計なことはすんなよ」

「ちぇ、バレてたか」

 

 レヴは楽し気に少女達の共闘を眺めている。予想以上に上手く身を守っているサヤ達に安心して、エリスの気持ちは軽くなってきた。

 

 イクリプスは追加ブースターをパージ。ヨトゥンが陣取る通りに降下していく。ロックオン。両肩のミサイルポッドから誘導弾のシャワーを浴びせるが、薄緑色の保護膜に弾かれる。

 

 ヨトゥンを守っているのはコジマ粒子によるプライマルアーマーではなく、電磁パルスを用いた防御フィールドだ。

 

 純白のネクストが地上に降り立つ。交差点で回頭するヨトゥンがレーザーに併せて内蔵されたプラズマキャノンを発射する。

 イクリプスはこれをクイックブーストで跳び跳ねるように避けて、その性能を誇示した。

 四十メートル級の巨体の脇を通り抜けながら、ハイレーザーライフルを浴びせる。パルスアーマーを貫通した光弾が大型機の左腕を吹っ飛ばした。

 

 敵の背後に回るとイクリプスはサイドブースト噴射。クイックターンで即座に反転する。高速飛行のために折り畳んでいたブレードアンテナが起き上がる。

 

 各部の近接防御用機銃を乱射しながら、鈍重な機体を旋回させているヨトゥン。対してイクリプスは左腕大型シールドの下から長大なレーザーブレードを発振させた。"矛盾ある騎士"とレヴが名付けたシールドブースター一体型の兵装だった。

 

 甲高い吸気音を伴い、背部のブースターからコジマ粒子を含んだプラズマの大噴射が起こる。さらに槍のように真っ直ぐに突き出されたブレードの後ろでブースターユニットが点火してイクリプスを加速させる。

 

「右腕、もらったぁ!」

 

 ちょうど正面にきたヨトゥンの右腕をレーザーブレードでぶち抜くと、そのまま高速で上昇することで切り裂く。

 上空でループ機動からの自由落下。ヨトゥンが放った苦し紛れのミサイル弾幕をプライマルアーマーで防ぎながら、頭部を刺し貫いた。

 

「さあて、君の出来の悪い頭の中を見せてもらおうか」

 

 イクリプスは大型機の肩に降り立つ。邪悪に嗤い、サメAI内蔵のゴシック娘がクラッキングを開始。レーザー回線でヨトゥンの制御体に入り込み、すぐさま防壁を侵食しAI本体を貪る。

 

「なるほど。僕らがかつてやり遂げたことが無駄になったわけじゃないみたいだ。安心安心」

 

 興味深い情報を賞味したレヴは口元に指を当てながら呟く。

 

「とにかくこれで片付いたな! そりゃ!」

 

 エリスは鉄塊に成り果てた不埒な乱入者の肩を蹴って跳ね、機体を滞空させる。

 

『こっちも終わったよエリス! まあまあの相手だったね! メガフロートのセキュリティが来る前に退散するよ!』

『ああ。気を付けて帰れよ。私は少し遅れるからな』

 

 本島側のヨトゥンを任せたアンヘラから通信が入った。向こうも危なげなく敵機を撃破したようで、事前に定めたランデブーポイントに向かって飛行し始めている。

 

 エリスはイクリプスを高層ビルの屋上に降ろし、今一度警戒した。増援の気配はなし。

 危機を脱したオルベリアとオルタシアの女子高生達はMSFと日防軍の合同基地に退避するよう指示された。

 

『待たせたなアンヘラ』

『もう遅いよエリス~』

 

 基地に向かう十一機のACの横を通り過ぎ、待ちくたびれて円を描く旋回を続けるアンヘラと合流した。

 

 

 

 

 部屋の時計は午後四時を示している。

 

 両チームは怪我や精神的なショックの度合いを検査されてから、個別に事情聴取を受け、その後同じ部屋で待機することになった。

 乗ってきたACも格納庫で調べられているが、データリンクと通信記録は既に抹消済みであるため、イクリプスとの関係がバレる心配はない。

 

 試合に出ていた十人に加え、ササラとリゼ、それに風花に同乗したレネも加えて詰めるには狭苦しい一室である。

 そんなところに身体のラインがくっきりと出るパイロットスーツ姿でいるため、なんだか変な気分になる白髪の令嬢。

 

(汗の匂いはどうにもなりませんね)

 

 試合に加え、突然実戦に巻き込まれ命の危機に晒されたため、相当な発汗を起こしていた。

 それが恥ずかしく、俯いているとリリィ!と明るくサヤが声をかけてきた。

 

「サヤ、くっつかないでください。ブラウリヒトの皆様もいるのですよ、恥ずかしいです」

 

 汗を特に気にしているリリィは身を寄せてきた親友を引き離そうとするか、サヤは強い力で氷雪のような令嬢を抱き寄せてきた。

 黒髪と白髪の女子高生の柔肌が極薄のレオタード越しに触れ合う。

 

「ごめん。しばらくこうさせてくれない? 落ち着いてきたら、なんだか怖くなってきちゃった」

 

 えへへ、と笑うサヤ。実戦でも母親譲りの技量を発揮して次々に自律兵器を無力化していたのだが、何度か被弾していた。

 死の恐怖に直面したことを実感してくると黒髪の少女の体は震え始めたのだ。

 

「もう、仕方がないですね」

「ありがとう、リリィ。大好き」

 

 今度は自分から黒髪の少女を抱き寄せ、リリィはしばらくそのままでいた。

 

 そんな聖オルベリアの少女二人を目にした時、アニエスの心には今まで感じたことのない感動が沸き起こり、百合の華が咲き乱れた。

 冷静さを取り戻すべく、座禅を組む女武者風のチームメンバー、ナツメに隣に脚を組んで腰掛け、目を瞑った。

 

「結構上手いじゃないか。損傷した機体の動きじゃなかったよ」

「だろ。イリヤ様の実力を思い知ったか」

「こうやって調子に乗るのがイリヤなんだ。あまり褒めないでねシグリル」

「OK、理解したよ。君とは仲良くできそうだ、アズ」

「てめえ、アズ! またそうやって! お前も本気にするんじゃねえぞ」

 

 火星生まれのヤンキーJKは敵味方のボクっ娘に同時に食ってかかる。

 同好会を所詮お遊びと下に見ていたシグリルであったが、試合で示した実力と力を合わせて実戦を乗り越えたことで彼女達を認めるようになっていた。

 

 両チームの少女達の間には親密な空気が出来上がっており、金髪ツインテのササラはそれを嬉しく思っていた。

 

「あっあのリゼ…さん? なんだかさっきから手つきが怪しいんですけど」

「んー何のことかなピノちゃん。何も変じゃないよ」

 

 ブラウリヒトのピンク髪少女を膝に乗せて安らがせていたリゼの動きを見咎め、足早に近寄るササラ。

 

「この処遇は恐らく私達への意趣返しでしょう。聖オルベリアの皆さんまで巻き込んでしまって申し訳ありません」

「いやいや、基地を使う上での諸々の要求はトリニティからのものであって、ブラウリヒトは関与していないんだろう? 気に病まないでくれたまえ!」

 

 包容力に溢れた金髪のお姉さん、フレドリカはACバトル同好会の部長に頭を下げていた。

 背の低いミコはフレドリカ副隊長のナノスキンにぴっちり包まれた大きな胸を見上げながら、「はっはっは、にしてもミサカも意外と子供だねえ!」巨大企業体を高らかに笑い飛ばしている。

 合同基地とは言うが、ミサカ重工と日本の力関係は前者が主だ。今回少女達をこの狭い部屋に押し込めたのもミサカの意向と見て間違いない。

 

 ブラウリヒトのマネージャー、ジュロームが入室してきて、同好会の帰宅許可が降りたことを告げた。別れ際に聖オルベリアの女子高生達はブラウリヒトの面々と挨拶を交わす。

 

「君達はすぐに上位リーグに上がってくるだろう。また戦うのを楽しみにしているよ」

「はい。必ず上がってみせます。そして勝ちます!」

 

 チームを代表して進み出たサヤは差し出されたアニエスの手を握る。握手しながら二人の少女は笑い合った。

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