日蝕のアサルトレコード   作:その辺の残骸

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エピローグⅡ

 朝食をたっぷりと摂り、ACバトル同好会は活動を開始した。

 ACを駆って戦いたくてうずうずしている。そんな士気旺盛な仲間たちに満足しながら、ミコ部長は呼びかけた。

 

「それでは、ユニフォームに着替えるぞ。わたしに着いてきてくれたまえ」

 

 ちっこくて可愛らしいお人形さんみたいな少女が後輩のJKたちを先導する。

 

 ミコは高校二年生なのに今年中学生になったばかりの黒羽チトセと背丈はどっこいであった。

 長身でスタイルが際立っている火星からの留学不良娘、イリヤ・フレアテイルなどと見比べると容姿の幼さが際立つ。

 

「皆様の案内は拙が。格納庫に案内いたします」

 

「よろしく!」

「おたのうもうします」

「準備ばっちりですよレネ先生。カメラもドローンも」

 

 エリスたちは蒼銀髪のポニーテールと腰に下げた刀が特徴的なサムライメイド、村雨レネの案内で格納庫に向かうことに。

 神薙家の三人に加え、このガレージを提供してくれた櫛名田ヤト、さらに広報映像の撮影に協力している黒羽チトセもいる。

 

 チャイナドレスのように大きなスリットで脇腹まで露出した改造メイド服のレネとゴシックドレスのレヴ以外は、聖オルベリア学園の制服を着ている。

 

 外に出ると、海からの潮風が強く吹き、スカートを揺らした。

 

「錆びないように気を付けろよ~」

「バカなことを言うんじゃない。この駆体が潮風程度で傷つくものか」

 

 エリスは潮風を鬱陶し気に感じているゴシック少女姿の相棒をからかった。

 

 これは余談だが。AC自体、その強固な装甲は材質工学の粋を凝らしたもので、対環境性の面でも優れている。

 野ざらしでも潮風などへっちゃらだ――勿論、そうはいっても大抵のAC乗りは万が一に備え、しっかりメンテナンスするのだが。

 

 

 メインハンガー。

 そこには漆黒のクレスト69式カスタム"リトルクロウ"を筆頭とした、鮮烈なカラーリングの人型機動兵器が待機している。

 既にクィナの機体も搬入してある。合計七機のACが佇む格納庫だ。

 さらに、サブハンガーには警備と練習相手を兼ねたACが置いてある。

 

 エリスたちは撮影担当のチトセの邪魔にならない位置まで下がり、一行は着替えを済ませたサヤたちが入ってくるのを心待ちにしていた。

 

「まだかな~♪」

「こら、うろちょろするなって。まったく」

「君のほうこそ、声がマイクで拾われてしまうぞ。その口調はやめておけ」

「おっと――これは失態ですね」

 

 待ち切れない様子のアンヘラを窘めたら、ゴシックドレスの電脳サメに自分も注意されてしまうエリスであった。

 

 抜群のAMS適性と戦闘センスを持ち合わせた戦の申し子でありながら日常の些細なことを楽しめるのは、アンヘラの美点の一つだ。

 

「わぁーカッコいい! これは余さず撮影しないといけませんね!!」

 

 ユニフォームであるレオタードスーツで着飾ったJKたちが格納庫に入場してくる。

 それを目にして、チトセは愛用のビデオカメラを手に歓声を上げた。

 

 白色のプロテクターブーツが硬質な靴音を響かせる。

 

 お揃いのレオタードスーツは控え目な印象の灰色だ。しかし、股座は競泳水着のような鋭い角度で全然控え目じゃない。

 

 鍛えられて引き締まった脚がより長く見える。

 レオタードスタイルのユニフォームには、動きやすいだけでなく見た目にも利点があった。

 

 必然的に現役女子高生たちの清廉な股間に注目が集まってしまう。

 

 そんな欠点もあったが、真剣な鍛錬の賜物である腹筋には視線を分散させるほどの迫力があった。

 ラバーのような質感のレオタードに、大の大人でも音を上げるほどの過酷なトレーニングの成果が浮き出ている。

 

「ほほーう、中々様になってるじゃないか」

 

 同好会の行進する姿を見物しながらレヴが言った。

 

 朝食の席での打ち合わせ通り、自然体でおしゃべりしながら歩いている。外部に公開する広報映像として演出を色々と考えてあったのだ。

 

「リトルクロウのマークスマン仕様なんだけど、どうせならフレームも少し替えてみようかなって」

「良い考えだと思います。現状の機体では射撃戦能力には限界がありますから」

 

 同好会のエースであるサヤは白雪のような髪の令嬢、リリィと乗機のアセンブルについて相談していた。

 

(お姉ちゃん、もっと普段通り自然に! 自然にお願いします!)

(ごめんごめん)

 

 ついついカメラを強く意識しそうになり、サヤは妹のチトセに身振り手振りで気にしないように指示されてしまう。

 

 チームのエースであるため、必然的にPVでも主役的な立場になる。たとえ実の姉といえど、チトセ監督は心を鬼にして指示出ししていた。

 

(お姉ちゃんはともかく、リリィさんは流石本物のお嬢様だけあって、パイロットスーツで歩く姿も颯爽として気品がありますね。それにこっちのお二人も魅力的ですし、どこを撮るか迷ってしまいます)

 

 イリヤ・フレアテイルとアズ・ライル、不良娘と銀髪褐色のミステリアスなボーイッシュ娘。地球外出身のJKの野性的な容姿に、肉体美を引き出すレオタードはよく似合っている。

 

(ササラさんとリゼさんは非の打ち所なし! 本当に完璧なお姉さん達です!)

 

 金髪ツインテールの涼し気な美貌のササラ。退廃的で妖しい美貌の持ち主である黒識リゼ。

 

 カメラのフレームにこの二人を収めるとチトセは息を荒げた。最高の被写体を前にしているのだ。興奮しないほうがおかしい。

 浮世離れした美少女であり、溢れんばかりに華があるが教官とオペレーターという裏方ポジション。なので端のほうにいる。

 

(ここは我慢我慢!)

 

 あくまで主役はアサルトスクワッドの戦場に立つドライバーだ。

 チトセもそれをよく理解している――あとで個人的な撮影をお願いするつもりでいた。

 

(クィナさんは落ち着いてるみたいですね)

 

 ミコに付き添われている片目隠れの少女、遊間クィナ。

 

 詳しくは教えられてないが、色々と大変な立場とチトセは聞かされている。

 ミコとヤトが手を打って学園生活を続けられるようにしてくれているようなので、大きな心配はしていない。

 

 

 整列して簡単な朝礼――同好会に参加したクィナの正式な挨拶がメインだ――を済ませ、いよいよ片目隠れの少女は新たな乗機と対面した。

 

 鋼灰色の鉄塊。人型機動兵器でありながら、そのACはそんな印象を抱かせる荒々しいシルエットをしていた。

 

「これが、わたしのAC」

 

 クィナは自分に用意されたACを同好会の少女たちと一緒に見上げている。

 

 重量級の機体だ。特に脚部はこれでもかというくらいに分厚い局面装甲で覆われ、さらに大型防盾を左膝に張り付けている。

 ACバトル同好会二機目のVACとなる。名前はまだ決まっていない。フレーム、内装、武装フルセットで販売されていた中古品が手頃だったので購入したのである。

 頭部"HE-119"は元々のオーナーの手で改修され、カメラが増設されている。

 

「気に入ってくれたかな? もしも合わないようなら……」

 

 クィナが難色を示すようであれば、ミコは自分の乗機である機動戦タイプの風花を譲るつもりでいた。重二VACと武装一式はアズのアフシャールのアセンブル用にストックしておけばいいので無駄にならない。

 

「そんなことはありません。素敵な子ですね」

 

 クィナは優秀なAC乗りとしての機体のポテンシャルを見抜いていた。

 

 鋼灰色(スチームグレー)の分厚く頼もしい巨体。メインウェポンのバランスの取れた性能の高出力レーザーライフル"Au-L-K29"はクィナにとって扱いやすい武器だ。

 

「VAC仲間が出来て嬉しい」

「あわわわわ! アズちゃん恥ずかしいよ!」

 

 無表情で頬擦りする銀髪褐色のボク娘。

 片目隠れの臆病少女は今朝の更衣室のときと同じくされるがまま。レオタードスーツは生地が薄いし腰から脚まで露出しているので、体温が直に伝わってくる。

 

「名前を決めないとね」

「それならもう決まってるよ」

 

 頬擦りから解放されたクィナが皆の前に立つ。正面にいるのは黒羽サヤ。セミロングの髪が綺麗でいつでも明るく優しい友人を見つめながら、堂々と宣言した。

 

「"プラクティス"。それがこの子の名前」

 

 その名は遊間クィナの新たな決意でもある。同好会の活動を通して、自分自身を鍛えて高みを目指す想いが込められていた。

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