日蝕のアサルトレコード   作:その辺の残骸

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オン・ザ・コロシアムⅥ

 

 白と蒼の鮮やかなカラーリング。中量二脚ACアークセイバーはウルティマ・ラティオと合流。

 両機は櫛名田のヤトの手配で警備チームにアサインされていた。

 

 ササラ・レイフィールドと黒識リゼが駆る複座機は、高機動かつ電子装備に優れた第六世代のACだ。

 より正確にはミラージュ製を中心とした曲線的なACパーツで組まれた従来型のハイエンドノーマルに、第六世代の内部機構を組み込んたカスタム機だ。

 

 背部武装のレーザーキャノンは第四世代(ネクスト)用兵装を大幅にカスタマイズして転用。

 脚部もフルチューンされており、駆動系の一部にササラ・レイフィールドの得意とする高速戦闘に対応するため、VACのモノを取り入れていた。

 

 危ういバランスの上で成立するマシンであり、ササラのような卓越したドライバーでなければ動かすのもままならない。

 奇しくも、その在り方は特異な適性を持つドライバーを前提とする第零世代や第四世代のアーマード・コアに極めて近かった。

 

 エリスからの贈り物であるチートじみた速射性のリニアライフルを右手に握り、左腕のハードポイントには超高出力レーザーブレード、MOONLIGHTをマウントしている。

 

 アークセイバーの電子戦システムはアリーナの警備システムと同期。全エリアの監視を行っている。

 

「~~~♪」

 

「まったく。いきなり立ち上がるものだから驚いたぞ」

 

 後部シートでコンソールを叩くリゼは極めて上機嫌だ。鼻歌まで歌っている。

 メインドライバーが座る前部シートにて操縦桿を握ったササラがリゼに言った。

 

「ルベリアさんの反応が嬉しくてテンション上がっちゃった。ササラだって悪い気はしなかったでしょ? 付き合ってくれたわけだし」

「それはまあ、そうではあるのだが……」

 

 金髪ツインテと黒髪シニヨンの少女が何の話をしているのかと言えば。

 

 戦闘準備が完了して、エリス達に連絡したときのことだ。

 出場するエリス達と同じく、ササラとリゼも愛用のパイロットスーツに着替え、ルベリアに披露したのである。

 

 動きやすさを重視した鋭角的で鮮烈なハイレグスーツは、美脚がさらに際立つ魅力的な戦闘コスチュームだ。

 

 スーツの色はササラは白色、リゼは黒色。

 見た目こそ戦場という過酷な世界に相応しからぬ華美さだが、極めて高度な技術により、頑丈かつ軽量に仕上げられている。

 

 同じ素材のグローブとサイハイブーツが四肢を覆っており、被服部分の防御力は高いのだが、太股はあられもなく露出している。

 

 軽快さをアピールするために、リゼはわざわざシートから立ち上がってみせた。

 

 普通は絶対に映らないお腹から太股までをルベリアに見せたわけだ。

 バストアップ映像を映すカメラの仰俯角に制限があるので、そうせざるを得なかった。

 

 さらに、リゼは「ササラも早く!」と促してきた。

 さも当たり前のようにやるので、それに釣られてササラも立ち上がってしまった。

 こうして、白と黒のハイレグスーツの鋭角な股間部分が通信ウィンドウに大写しに。

 

 ルベリアは大喜びだったが、これにはクールな金髪ツインテも恥ずかしい気分になった。

 

「とにかく。いよいよだな」

 

 ダイヤウルフとサラマンダー。

 格納庫に立会人としてやってきた二機のACに前後を挟まれ、メインドームに向かうエリス達。いよいよ決闘の舞台に入場しようとしていた。

 

 

◆ ◆ ◆

 

「あークソ、イライラする~!」

 

 暗緑色のタンク型AC、サラマンダーのコクピットで四柳はイラついていた。

 警備地点の転換であれば別にどうってことない指示だ。気が立つ要素は微塵もない。

 馬鹿みたいに広いアリーナの建造時に生じてしまった未使用区画に向かわされるのも我慢しよう。

 

 だが、自分に土をつけた(メリッサは命があっただけ儲けものだと気にしてないが)、あの山猫(イクリプス)の監視件誘導を任されたのだから腹立つというものだ。

  

 なんと僚機の黒い重装型(ウル)、さらに見たこともない(同時にメインドームでふんぞり返ってるACにどこか似たフレームの)灰白色のACと仲良く潜伏していたのだから。

 

 日本という国は、政府も企業もテロリストに断固たる姿勢を取ることで有名だ。

 だいうのに、アリーナのエキシビジョンに危険分子扱いしているイレギュラーネクストを招いている。それがなんとなく腹立たしいのだ。

 

 それにレイヴンとしても気に入らない。

 自らの実力と存在を示す場であるアリーナはいわばレイヴンの聖域だ。

 そんな場所をリンクスに踏み荒らされるような気分なのだ――これも、メリッサに言わせれば彼女たちも傭兵(レイヴン)だというのだが。

 

 以前、"ウル"と適当に名乗った黒いヤツのほうは警備に飛び入り参加するとかで途中で別れ、同じく飛び入り参加のレイヴン"アークセイバー"と合流した。

 

 アークセイバーといえば、火星の戦闘でネクストを墜としたという噂まである凄腕中の凄腕だ。

 四柳としても是非会ってみたいと思っているレイヴンだった。なので、少しどころではないほどに妬ける思いであった。

 

 悶々としながらの移動の時間はやけに長く感じる。

 やっとのことにメインドーム手前のセクションに到着。先導している白色の軽逆関節、ダイヤウルフが横に退き、出場する二機が行進する。

 

『そっちにも色々事情があるみたいだけど。とにかく健闘を祈ってる』

 

 イクリプスとティルヴィングの背中に向かって、メリッサ・ロングファングは静かに言葉をかけた。

 メリッサは通信ウィンドウ越しのアイコンタクトで四柳にも促すが、オレンジ髪の少女はぷいと不機嫌に顔を背ける。

 

『二人とも見送りありがと!』

 

 イクリプスのリンクスからの陽気な声がすると、映像がクローズされた通信ウィンドウを睨む四柳であった。

 

『馴れ馴れしくしやがって。アタシとお前は友達じゃねえんだぞ』

 

 オレンジ髪の攻撃的な少女は気炎を吐いてから。

 

『お前を殺るのは、このアタシとサラマンダーだ! それを忘れんじゃねえぞ!』

 

 ぶっきらぼうなエールを送るのだった。

 

『可愛らしい娘ですね』

『でしょ? これでまた一つ負けられない理由ができたわけだ』

 

 四柳の怒声を快く感じながら、エリスとルベリアは決闘の舞台に歩を進める。

 

◆ ◆ ◆

 

 アリーナのメインドームにて、対峙する四機のAC。

 通常の試合では開始前にランカー同士の掛け合いが中継され、試合を盛り上げることがある。

 今回のエキシビション・マッチではドライバーのプライバシー保護のため、中継は行われていない。

 

 したがって観客にとっては退屈な時間であり、試合開始の合図を心待ちにする――というわけでもなかった。むしろ、高まる緊張に場慣れした常連さえ圧倒されていた。

 

「すごい気迫だよね。ルベリアさんもエリスちゃんも」

 

 黒羽サヤの一言が同好会の面々の気持ちを代弁していた。

 妹であるメガネ少女、チトセは迫力にたまらず、しおらしくなって姉の手を握っている。

 

 泰然自若としている桐嶋ミコ部長であっても、気圧されるようなプレッシャーがあったのだ。

 

 

戦だ!(War!) 戦だ!(War!)

 

 ウルティマ・ラティオスのコクピットで、アンヘラはでっかい身体を左右に揺らして囃し立てている。

 生まれながらの戦狂い(ウォーモンガー)である小麦肌の南米娘にとってプレッシャーは、むしろ興奮を掻き立てるモノだ。

 

 二対二のチームマッチでしかないが、戦争と形容するのは大袈裟でも何でもない。

 第零世代と第四世代(ネクスト)が備えた破壊力は、それほど破滅的なのだ。であるからこそ、アンヘラは開戦を切望している。

 

 メインドームに待つ二機のAC。その機体名は既に観客に公表されている。

 

 第四世代(ネクスト)である赤黒いAC"バロール"は従者の佇まい。

 

 血を連想させる赤黒いカラーリングの軽量二脚。第四世代だ。

 昆虫的なシルエットの細身のフレームは、南アジアを中心とする企業体が開発し、その複雑な利害関係から他企業にも販売されているパーツだ。

 

 したがって、欧州系の巨大企業体が所有していてもおかしくないし、事実として極めてマイナーな正規リンクスであるという情報が瞬く間にネット上に創り上げられていた。

 

 武装は右腕にレーザーブレード、左腕にアサルトライフル。

 背部兵装は散弾砲(スラッグキャノン)とミサイルランチャー。

 四肢の刃のように鋭い大型スタビライザーとデータ収集能力に特化した頭部ユニットを除けば、オーソドックスな近距離戦向けのアセンブル。

 

 第四世代(ネクスト)は本来、アリーナに姿を見せただけで熱狂を起こす存在だ。だが、この試合に限っては主役ではなかった。

 

 白と金色、壮麗無比な装飾が施されたAC"カラドボルグ"こそがエキシビジョンの主演だ。

 欧州企業の試作機ということになっている。二脚型ではあるが、腰の後部にフロートユニットを装備。既存の脚部とは全くことなる機能を有しているのが窺える。

 

 貴族的な装飾のみならず、武装まで時代錯誤のようだ。

 

 右手には実体型のロングランスを握っている。

 最近、各社でAC用兵装として試作されている複合兵装のようだ。砲身があり、射撃武器としても使用できる欲張りな武器である。

 左腕には近接戦用のスパイクが付いた大型シールド。厚みのある装甲板は高貴な騎士の武具として相応しいように磨き抜かれている。

 

 兵装の重量で両腕にかかる負担は相当なものだろうが、カラドボルグは苦も無く扱っていた。

 

 背中に装備されているのはミサイルやキャノンの類ではない。何らかの特殊機能を有していると思われるコンテナユニットが可動式アームで接続されている。

 

『はじめて見る機体です。セドリック君は今回のために新型を用意させたみたいです。あの子らしいですね』

『第零世代ではあるな。大方、ティルヴィングのノウハウを元に独自開発ってトコか。そっちにデータは出てるか? 100%とまではいかないが、参考になるはずだ』

『ええ。これならば、問題なくやれそうです』

 

 対峙する相手の敵意を受けて、緊迫しているがストレッチをする余裕がある。

 

「相手チームから通信要請だ。受け入れるか?」

「当然。こっちの顔は隠しといてね」

 

 レヴの呼びかけに、エリスは応じた。

 

『このような形でお呼び立てした非礼をどうかお許しください』

 

 こっちの通信ウィンドウはSOUNDONLYだが、向こうは映像付きだ。

 

 映っているのは金髪碧眼の美少年であった。

 少年の口調こそ丁寧だが、まさしく王侯貴族という風の不遜な態度を取っている。

 

 こいつがセドリックか。中々可愛いじゃないか。赤髪のヤンキーギャルはエリスはそんな感想を抱く。今は通信に加わらず、黙っているククルシアが昨晩尻を叩いたのも納得だ。

 

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