日蝕のアサルトレコード 作:その辺の残骸
聖オルベリア学園ACバトル同好会の遠征は無事に終わった。
波乱の一幕こそあったが、新しい出会いもあり、充実の数日間であった。
アリーナの観戦の翌日、未明からガレージからACを引き上げる撤収作業を部員総出で行い、帰りの脚であるミコ部長所有の船に搬入。
昼前には船は出航して、今は海鵬市に戻っているところ。
エリス、レヴ、アンヘラ、それにルベリアも乗船しているが、ACは工廠艦ツクヨミで運んでいる。
同好会の少女たちが乗船しているのは250メートル級のタンカー改装輸送船。
ツクヨミはその十倍以上のサイズがある巨大な潜水艦であり、遺失技術による完全なステルス性能を有していた。
輸送船の護衛として随伴しているが、深く潜っているため、その艦影を見ることはできない。
「何の話をしてるかは分からないけど」
「とにかく、ナイスな構図です♪」
黒羽サヤとその妹のチトセは指でカメラフレームを作って、甲板の一角を切り取った。
被写体はエリスとルベリアである。綺麗な赤い髪が海風でなびいてた。
黒色のチューブトップにマイクロホットパンツ。エリスは胸と腰を隠すだけの半裸と形容できる格好。
開放的と感じる魅力的な装いだった。
海をバックにすると美少女ヤンキーぶりに磨きがかかり、ますます様になる。
ルベリアの服装も魅惑的だった。
白色で短丈の長袖Tシャツにぴったりした薄紫色のレギンス。レギンスの圧力で引き締められた脚線が眩しい。
下腹部やお尻のラインが丸見えで刺激が強いファッションだが穏やかで、どこか神聖な気配が上品に魅せている。
エリスちゃんやルベリアさんみたいには、慣れないなー。
フレーム越しに二人を観察しながら、サヤはそう思うのだ。
黒髪セミロングの快活な少女の体付きは健康美的。周囲の美しい少女や女性たちに比べると、華やかなが足りないというのがサヤの自認である。
中央デッキ左舷の手すり際にて、赤髪のヤンキーギャルと灰白髪のお姉さんは何やらお話中。
だから、こうして遠巻きにふざけながら眺めていられる。
「似てますね。そういうところ」
姉妹で仲良くおどけるものだから、リリィに笑われてしまうわけで。
「姉妹ですからねー」
「もう、やめてくださいよサヤ」
「うん、いい笑顔」
メガネな妹の口調を真似ながら、サヤは指を合わせて作ったカメラフレームを向け直す。
新たな被写体として、ファインダーに収めるのは白雪色の髪の令嬢。
リリィはくすぐったそうに微笑んでいた。
エリスとルベリアの話題は今後のことだった。
ルベリアはアリーナでの決闘が終わると、熾天派の格納庫に身一つで赴き、セドリックを通して熾天派の干渉をストップさせることに成功していたのである。
意外とすんなり終わったが、これは一時的なものと見て間違いない。
この猶予を逃さないよう、ルベリアは態勢を整え次第、熾天派の本拠地があるイタリアに乗り込むというのだ。既に櫛名田ヤトのつまり、ミサカグループの支援を得るよう交渉を済ませていた。
孤立無援というわけではない。
熾天派のうちセドリックの派閥は引き込んだし、ククルシア・フェムトは完全にこっちサイドだ。個人的な連絡先を寄越して、熾天派の情報を流してくれている。
「しばらくお世話になります」
「こちらこそ。精一杯もてなさせてもうぜ」
海鵬市にいる間、ルベリアはエリスの家に居候することになった。
元々、北米巨大企業クロムバウのリンクスであったアンヘラは常にガードしておかないと心配な立場だ。同じ屋根の下なら二人いっぺんに守れて好都合なのだ。
ククルシアも来れば良かったのにと思う赤髪のヤンキー娘であった。
黒紫色の淑女が艶やかに微笑む姿を思い浮かべる。ククルシアはルベリアのイタリア殴り込みのために現地で準備せねばならないそうだ。近いうちに再会する約束はしているので、エリスは楽しみにしている。
(しっかしアンヘラの反応、ちょいとばかり不安だな)
ひとつの懸念が赤髪の少女の脳裏を掠める。
バロールを駆るククルシアとの試合の後、アンヘラはいつものように好奇心旺盛に質問をぶつけてきた。
エリスのかつての戦友であるだけでなく、実力のあるリンクスということが分かり、殊更に興味が湧いたのだろう。だが、いつものアンヘラとは興味の方向性が違うように思えた。
戦闘における得意分野や弱点などを重点的に質問してきたのだ。
エリスとの関係のように殺し合うを求めていないが、友人とのバトルに興味がある南米娘ではあるが、ククルシアのことは倒すべき敵として見なしているように感じられた。
アンヘラはどういうつもりなのか。
答えが見い出せない考えを巡らせようとしたそのとき、当人がばーんと姿を見せた。
船の重いハッチを軽々と開き、長身の健康的小麦肌が眩しい南米娘が現れたのである。アンヘラは同好会のユニフォームである灰色のレオタードスーツを着ている。
同好会の活動を手伝うときに使うスーツだ。
白色のハードシェルプロテクターで四肢をしっかり覆っている。
レオタードスーツを麗しい肢体に食い込ませるように纏ったササラとリゼが、アンヘラを追いかけるように船内から出てきた。
「これから同好会の皆で軽く筋トレするんだってさ! エリスも来ない!?」
「分かった分かった。そんなに近寄らんでよろしい」
アンヘラは船の管理システムと電子的に同期しているレヴ経由でエリスの居場所を教えてもらったらしい。
ゴシックドールはメイド隊に傅かれて優雅なティータイムを過ごしている。たった今、エリスはインプラントでコールしてそれを確認した。
南米娘は大股で目の前まで歩み寄っている。アンヘラのエリスに対する距離は物凄く近い。
レオタードスーツの独特なラバーの匂いに混じったアンヘラの香りが赤髪ヤンキーギャルの嗅覚をくすぐった。
アンヘラは同好会のユニフォームを既に何度も着用しており、洗浄しても取れない匂いが染み付くほど身体に馴染んでいる。
エリスはサヤ達のほうを見てみた。
彼女たちもミコのメイド一人、金髪ロングヘアの陽気な澄火アリアに呼ばれていた。
何やらチトセは自信満々の表情を見せている。
薄い胸を握り拳で叩き、やる気をアピールするメガネの女子中学生。サヤとリリィは心配そうな顔をしている。
会話が聞こえないくらい距離があるが、理解った。どうやらチトセもトレーニングに加わるようだ。
軽い筋トレとアンヘラは言ったが、同好会のトレーニングはスパルタで学園内でも有名である。
ACドライバー科の生徒が張り合って同じメニューに挑戦したら脱落者が多数出たほど。
だから姉であるサヤの心配も理解できる。
「お二人のユニフォーム姿も魅力的ですね」
ルベリアはササラとリゼと話している。三人は互いに豊満なバストを突き付け合うようになっていた。
通信ウィンドウ越しにハイレグスーツを披露してもらったが、それとはまた違う魅力のある、質実剛健で清楚な同好会のレオタードユニフォームだ。灰白髪のお姉さんは、その姿をいたく気に入っていた。
「ルベリアさんも如何ですか」
「ちょうどルベリアさん用に用意しておいたスーツがありますしね」
ササラが誘い、リゼが付け加える。
金髪ツインテの研ぎ澄まされた刃のような涼し気な美貌。黒髪シニヨンの妖艶で大人っぽい美貌。美少女二人を堪能してもいる。
ただ目の保養をするだけではない。
ルベリアはササラのアイスブルーの綺麗な瞳に宿る想いを見て取った。
学園の由来であり、尊敬する英雄である聖オルベリアに自分たちの励む姿を見てもらいたいと願っている。
それはきっと、サヤをはじめとする少女達の総意なのだろう。
となれば灰白色の英雄乙女の返事は一つしかない。
「このルベリア・アーヴィング、謹んでお誘い受けちゃいますよ♪」
金髪ツインテの手を、がしっと取り、満面の笑みで応じるルベリア。
あまりに勢いと熱意があるので、冷静沈着なササラでも少しばかり驚いてしまう。
その反応は肉体にも出おり、金髪ツインテのクールな美少女の豊満なお尻は、驚きできゅっと引き締まった。