〈煉獄〉×オリキャラのやつ   作:水無月 驟雨

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まさか自警団結成秘話の外伝が出るとは思ってなかったもんで、まーちょこちょこ直したけどたまに矛盾あるかもしれんが気にすんな生徒諸君!


ファーストコンタクト

 

 

 男子生徒が床に崩れおる。今しがた彼の鳩尾へ突き刺した爪先を下ろして、次は杖剣を抜きながらゆっくりと歩み寄る。

 それは恐怖を与えるための歩調だったが、結果的に他者の介入を許してしまうこととなった。

 

焼いて浄めよ(イグニス)

 

 闖入者の声が狭い迷宮内に響き、紅蓮の炎が迸る。

 今まさに男子生徒を斬り刻まんとしていたところに割り込んだ火葬呪文にたじろぎ、たたらを踏んで後退した。

 

「この火勢……〈煉獄〉!」

 

 果たして。止んだ炎の向こう、姿を見せたのは予想通りの、しかし的中してほしくはない顔だった。

 

「双方、杖剣(つえ)を引け」

 

 さすがに今のケンカの相手(・・・・・・)程度ならいざしらず、〈煉獄〉相手には興が乗らない。それに、地面で爆ぜる残り火のカーテンの向こう、突如として現れた救世主に縋らんとする男子生徒の姿を見てため息を吐く。やはり下級生(ガキ)か、と。

 

 そのまま杖剣を鞘に収め、身を翻した。闖入者の彼が後輩の元へ歩く音が響く。

 

「大丈夫か、君」

「あ、ありがとうございます!」

 

 アルヴィン=ゴッドフレイ。今年学生統括に当選した四年生。他にも肩書はあるが、何より、〈煉獄〉とあだ名されるほどのその火力が何よりも思い知らせてくる──自分では一分たりとも勝ち目が無いと。

 

 その実力と実直さで学生統括の座を勝ち取ったのだ。この学校において誰よりも清い心で以て。

 

「待ちなさい」

 

 だから、こうして呼び止められるのも想定はしていた。それはそうだろう。彼の束ねる集まりは決してお遊びではないし、それは下級生の(・・・・)彼女(・・)にすら知れたこと。既にアルヴィンは学年の垣根を超えた有名人だ。

 

「今のは私闘か? 勝負が着いたあとで剣を抜いただろう」

 

 アルヴィンが女生徒へと問う。上級生から声を掛けられればさすがに無視もできず、さりとて真面目に取り合うでもなく面倒そうに答える。

 

「──確かにそうですけど、私が100悪いとは限らないじゃないですか」

 

 む、とアルヴィンが眉根を寄せたのが雰囲気で分かった。

 

「それとも、新統括ってアレですか、勝手に決闘に割り込むだけでなく、状況だけ見て善悪まで決めつけるタイプの自称善人ですか?」

 

 女生徒自身、自分でもよくここまで好き放題言えたな、と思う。

 相手が〈煉獄〉だから、戦意が無いからこちらの言い分を聞いてくれているが、他の上級生なら今頃自分は塵だろうとも。

 

 最初の仲裁からしてそうだ。確かに火勢は恐ろしいほどにあったが、範囲は絞られ、挙句放ったのも白杖である。割り込みに逆上して斬りかかろうが、こちらを傷つけるつもりなど天地がひっくり返っても無かったのだろう。

 

「それはそうだな。うむ、そこは謝罪しよう。俺は四年のアルヴィン=ゴッドフレイ。私刑(リンチ)と見てつい割り込んでしまった性急さをまずは詫びよう」

 

 自分がそう言ったとはいえ、こうも明け透けと自己紹介までされては何も面白くもなかった。

 完全に鼻白んだ様子で女生徒も名乗る。

 

「三年生、リリルファ=メリダス。私刑(リンチ)なんて野蛮なことは一切しない善良な魔法使いです、とも言っておきます」

 

 さすがに先輩相手に侮りや非礼こそないが、敬意も友愛もへったくれもないその挨拶。

 

 アルヴィンは有名人で、その性格や行動は広く知れ渡っている。だが、さすがにリリルファとは初対面だ。アルヴィンの正義感もまた、リリルファには綺麗事に感じたのだろう。

 

 

 

 言ってしまえば、ファーストコンタクトが悪かった。

 

 

 

「ありがとう、Ms.メリダス。ついては先の私闘だが、経緯を聞いても良いだろうか」

「お好きになさってください。どうせ、その二年坊が話すでしょう」

 

 言って指差した先には、アルヴィンの背後に隠れるように怯える二年生の姿。煤や埃に塗れてこそいるが、大きなケガはないようだった。だが、口を開く様子もない。

 

「怯えているな……ふむ、三年が二年と一対一(タイマン)という時点で人聞きは悪い。それに見たところ、君だって相当な使い手だろう」

 

 暗に状況を聞き出すための武力行使も厭わないと言われてしまえば、正直に話した方が利口なのはリリルファにもよく分かった。

 

 ──なればこそ。

 

吹けよ疾風(インペトウス)

「!?──むっ」

 

 口調はともかく態度は従順そうだったリリルファの突然の呪文に一瞬驚くアルヴィンだったが、後輩を下がらせて対抗呪文で危うげなく相殺してみせた。

 

 だが、その一連のやり取りで「やはり彼女はクロだったか」と思えるほど、アルヴィンの目は濁っていない。

 

「なぜだMs.メリダス、こちらに罰する意思などはない! 君も分からない訳じゃないだろう!」

 

 その舐めきった、こちらを理解している(・・・・・・・・・・)と言いたげな話し方が、これまた酷く癪に触った。

 

 

 相当な使い手だろう? ──四年でも屈指の実力者が何を。

 

 分からない訳じゃないだろう? ──なぜこちらを物分かりの良い子扱いするのだろうか。

 

 

「なぜか……? それが分からない内は、統括を名乗る資格が無いのでは!? 瞬き爆ぜよ(フラルゴ)

「クッ……!」

 

 そのままひとしきり言いたいことを、威嚇がてらに呪文を織り交ぜつつ言い切って。唐突に、肩で息をするリリルファは背を向け歩き出す。

 

「……無礼が過ぎました。これ以上失礼を重ねない為にも、この場は辞させていただきます」

 

 相手にその気がないとはいえ、先輩相手にこの無礼は……後日仕返しされても文句は言えないなと思いながら、背中にかかる制止の声も振り切ってリリルファは迷宮の闇に消える。

 

 残されたアルヴィンは、背後の下級生を気にかけつつそれを見送った。同時に、先にリリルファに指摘されたことを思い出す。

 

「『相手を同格に見て言葉でおだてる』──せっかくのティムの案だったが……これは使いどころが難しいな。特に下級生にはああいうタイプも多いだろう」

 

 お世辞にも口が上手くないアルヴィンにと後輩がくれた提案だったが、実践1発目はこれ以上ない失敗に終わったようだった。

 魔法使いにありがちな自尊心が高いタイプ──たまたま提案の場には居なかったから失念していたが、彼女はそういう類だろう。

 それこそ、恐らくは先の決闘も。

 

 考えを巡らせつつ、無事下級生を校舎まで送り届ける。

 

「──やぁミリガン。Ms.メリダスについて、何か知らないだろうか」

 

 

 

 かくして、アルヴィンとリリルファの邂逅はこのようにして幕を開けた。リリルファにとっては──アルヴィンの新たなターゲットにされたという意味で──最悪の形で。




個人的に良い引きかと思ったけど短くね?まぁいいか。
続きは多少書いてるけど反響とそれに伴う作者のやる気次第で!
じゃあな!
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