弟転生〜シスコンな彼も本気出す〜   作:黒い柱

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ルディがマジで可哀想だった


第22話 別れの先に

 俺は事務所から荷物をまとめて戻る。ルディにも声をかけておくべきか迷ったが、会議が長引きそうなのでやめておくことにした。

 

 小屋に戻るとドッと疲れが出てきた。旅の疲れがこんなところで出てくるとは。それでも、俺は今後さらに世話になりそうなリヴィン家に自分の旅路について話すことにした。

 

「…というわけで、シーローンの城に囚われてたメイドを救出したんだよ」

 

 まあ、大半はルディやルイジェルドさんの功績だが、自分が城に潜入したのは事実だ。

 

「その、魔剣流? ていうの教えて!」

 

 アーノスくんが言う。

 

「いいけど、難しいよ? 無詠唱魔術と剣術の融合だからね。どっちも上手く使えなきゃ成立しないし」

 

「私にも教えて!」

 

 レフィアちゃんも食いついてきた。ぶっちゃけ俺も完成させてないから、教えるべきか悩ましいのだが…。

 

「俺の方からも頼むよ、レード先生。なんなら俺にも教えてもらいたいくらいだ」

 

 まあ、ラノアまでの旅路も相当長いし、これも将来ラノアで学校を作るなら役に立つかもしれない。

 

「…分かった。でも、上手くできるかは保証できないけどね。俺も人に教えるのは初挑戦だし」

 

 こうしているうちに俺はうつらうつらしてきた。こういうところはまだまだ子どもなんだなと痛感する。

 

「ごめん、そろそろ寝ようかな…」

 

「レード先生もまだまた子どもだな」

 

 ファリスさんの声を聞きながら俺はそのまま倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が目を覚したのはその日の明け方だった。

 

(昨日はいろいろあったな…。ルイジェルドさんと別れて、久しぶりに教え子に再会して、泊めてもらうとは。そりゃ疲れて寝落ちするわ)

 

 とりあえず、数日のうちにラノアに向かうことになったため、俺はそれを改めて話すためにルディの元に向かう。もっとも彼やエリスさんも一緒に行ってくれれば心強い限りだが。

 

 アルフォンスさんにルディのいる部屋を案内してもらい、ドアをノックする。

 

「ルディ? 起きてるかー?」

 

 返事がない。まあ、まだ寝てる可能性もあるか。あいつ、朝が強い方じゃないし。

 

 何度か声をかけたものの、返事がない。まだ寝てるなら無理に起こすのはどうかと思うが…。

 

「レード様。開けてよいものかと」

 

 アルフォンスさんが言ってくれたので、俺はドアを開く。彼は外で待つつもりらしい。

 

(なんか変な匂いがするなぁ…。まるで男女が一夜を共にしたような感じの)

 

 もちろんそんなことをしたことは今世も前世もない(むしろ俺の年齢であったら大問題だ)が、普段のルディの匂いとは明らかに違う。なんというか、淫らだ。

 

「おい、ルディ。話したいこともあるし、そろそろ起きろ」

 

 寝てるであろう彼の肩を軽く叩く。そうして向けられた彼の顔は絶望そのものを示しているように見えた。かつてパウロさんやノルンちゃんと喧嘩したときだってもうちょいマシな顔してたくらいに。

 

「ル、ルディ…?」

 

「レードか。…何の用だよ」

 

 こちらをジロリと睨みつける。オルステッドに勝るとも劣らない目つきの悪さだ。

 

「その前に何があったんだよ。俺の用はあとでいい」

 

「…エリスに、捨てられた」

 

 ギリギリ聞こえるような小さな声でルディは答える。

 

「…は?」

 

 俺は理解できない。昨日エリスにルディとしっかり話し合うように言ったのに、なんでそこから捨てられるということになるのか。

 

「捨てられるってどういうことだよ」

 

「…俺が聞きてぇよ、そんなん」

 

 ルディは乱暴に吐き捨てて、机を指差す。そこには一枚の紙が置いてあった。

 

『今の私とルーデウスでは釣り合いが取れません。旅に出ます』

 

 紛れもなくエリスの字だ。彼女の姿がどこにもない辺り、嘘をついたというわけではないだろう。

 

「今から追いかければ間に合うから、早く起きろ!」

 

 叫ぶ俺にアルフォンスさんが言う。

 

「ルーデウス様には居場所を口外するなと言われております」

 

「なら、俺らで勝手に探す。絶対に止めないでください。エリスは目立つしまだ遠くには行ってないだろう。だから、ルディ。今から動けばまだ…」

 

 彼の方を見ると俺を再び睨みつけて言う。

 

「やめろ、レード。今度あいつに拒絶されたら俺は立ち直れない。もっとも今もこの場から動けそうにないけど」

 

「お前はたぶん誤解してるだけだ。エリスだってそんなつもりじゃなかったはずだ」

 

「もしかして、お前がエリスに何か吹き込んだのか? それで俺と別れるって…」

 

 なんでそうなる。確かに話し合えとは言ったが、ヤリ捨てろとは一言も言ってない。そもそもこの決断をしたのはエリスなんだから、俺にはどうにもできない。

 

「いや、悪い。お前は絶対そういうこと言わないし、こういうところだよな。こんなだから、エリスに捨てられるんだ…。最低だ、俺って」

 

「大丈夫だ。気にするな」

 

 彼は精神的に追い詰められてる。そんな状況なんだから俺が支えないでどうするのか。そう考える俺にルディが言う。

 

「なあ、しばらく俺に近づかないでくれるか?」

 

「でも、1人でいたって…」

 

「分かってる。けど、今のままだとお前に当たってしまいそうで、それが嫌なんだ」

 

 あまりにも悲しげな表情で言うものだから思わず彼を抱きしめる。こんな姿を見捨てるわけにはいかない。

 

「レ、レード…?」

 

「当たりたきゃいくらでも当たってくれ。それでお前が少しでも満足するなら、幼馴染冥利に尽きるさ」

 

 俺だってルディには笑っていてほしいし、幸せになってもらいたい。彼が苦しんでるところなど見たくないのだ。

 

「なあ、このあとラノアに向かうつもりなんだが、一緒に行かないか?」

 

「ラノアで何をするつもりなんだ?」

 

「シルフィ姉を探す。そのための情報収集だ。それが終わったら、シルフィ姉を助けられたらゼニスさんも探す予定だ」

 

 そう答える俺にルディは首を横に振る。

 

「この期に及んで誰かに頼りたくはない。頼ってばっかりだったから、エリスに捨てられたんだし」

 

「それは、絶対違う!」

 

「優しいお前は全力で否定してくれるだろうけど、それが現実なんだよ。俺が頼りないから、何もできないからこういうことになったんだ」

 

 何を言っても厳しいか。俺は説得を諦めつつあった。なら、せめて出発まではそばにいてやりたい。どのみちリヴィン家も待てと言えば待ってもらえるだろう。

 

「ラノアに行くまで、そばにいるよ。せめてそれくらいはさせてくれ。お前のためじゃなく、俺のために」

 

「…ありがとう、レード」

 

 俺はルディの頭を撫でた。彼はずっと苦悩してきたのだ。見知らぬ土地に落とされ苦労して父親たちのところに辿り着いてそこでも責められて、そしてやっと帰り着いたフィットア領ではエリスと離別して。彼のところにずっといたいが、そうはいかないらしい。

 

(俺もやっぱり、ルディに依存してたんだな…)

 

 俺がフィットア領から発ったのはそれから5日後のことだった。

 




次回から学園編かな?
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