弟転生〜シスコンな彼も本気出す〜   作:黒い柱

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学園編、難しい…


第25話 姉と王女

 シルフィ姉の候補であるフィッツ先輩の元へ向かおうと思ったが、突然行くのも迷惑かもしれない。こういうとき前世ならスマホで連絡を取ったりするのだが、この世界にはそれはない。というか、そもそもフィッツ先輩の連絡先すら知らないのだからできない。

 

(どうしたものかな…)

 

 手持ち無沙汰な俺はとりあえず大学内をぶらつく。なんか1年前のフィットア領に戻ってきたときと似てる気がする。

 

 そうして角を曲がろうとしたところで、

 

「あ、すみません…」

 

 人とぶつかってしまったようである。もっとも正面衝突したわけではなく、相手が避けてくれたが。

 

「レーディス様ですか」

 

 目の前にいたのは絶世の美王女アリエル様。美人過ぎて目に毒だな…。

 

「アリエル様、でよろしかったでしょうか。不躾ですが、護衛の方は…?」

 

「ルークでしたら少し離れたところにおります。フィッツは別の授業ですね。それはそうと、レーディス様。生徒会室でいくつか伺いたいことがあるのですが…」

 

 なんだろうか。調子乗るなと釘を刺されてしまうのは嫌だが。もちろん、そんな気などまったくないが、権力のあるものに睨まれるのは落ち着かない。

 

 返答に困る俺にルーク先輩が近づいてきて助け舟を出す。

 

「安心しろ。アリエル様は単純にお前に興味があるだけだ。時間があるならでかまわない」

 

 まあ、確かに今は忙しくないし、アリエル様からの敵意というのはまったく感じない。

 

「分かりました。俺の方からもいくつか伺いたいこともあるので」

 

 こうして俺は生徒会室に赴くことになった。

断じて連行されたわけではない。

 

「どうぞ、腰掛けてください」

 

「お気遣い、ありがとうございます」

 

 俺は彼女の声に従い座る。

 

「さて、どこから話しましょうか…。はっきり言わせてもらいますが、あなたは、レーディス様はフィッツの弟ではありませんか?」

 

 単刀直入に言ってきた。変に勘繰られるよりもはっきり言ってもらえる方がありがたい。

 

「その通りです。俺は、フィッツ先輩、いやシルフィ姉の弟です。姉を探しにこの大学に参りました。しかし、なぜ偽名を?」

 

「シルフィを護衛として私が雇ったからです」

 

 彼女はなぜ自分が大学に行くことになったのかを話し始めた。曰く、アスラ王国の後継争いが原因とのことだ。シルフィ姉は転移事件の影響でそれに巻き込まれたという。偽名はシルフィ姉を王国内で危険に晒さないためとのことらしい。

 

「なるほど。だいたいの事情は把握しました。しかし、なぜ俺がシルフィ姉の弟だと?」

 

「シルフィはいつも自慢しておりました。自分には優秀な弟がいる、と。もちろん、名前もはっきり言っていましたし、ラノアにあなたが来た時点ですぐに分かりました」

 

 シスコンとしてはたまらなく嬉しい評価だ。今すぐ会って抱きしめたいが、あいにくそうはいかないらしい。

 

「気づいてもらえたのであれば、転移事件以降努力してきた甲斐がありました。しかし、シルフィ姉のためなら魔大陸捜索も辞さない覚悟でしたので、すんなり見つかって安心しました」

 

「とても有名だそうで、シルフィも驚いておりました。シルフィが少し羨ましいです。こんな姉想いの弟がいるのが」

 

「王族だと、権力争いの元にしかなりませんからね…」

 

 そう考えるとブエナ村に生まれてきて本当によかった。まあ、王族だとしても俺とシルフィ姉が憎み合うことなど、万が一にも起こり得ないが。

 

「お話しは以上ですか?」

 

 別にこのまま話し続けてもいいが、向こうは俺と違って暇じゃないだろう。一般生らしく授業もちゃんとあるらしいし。

 

「今日のところはこの辺りにしておきますか。シルフィにはあなたが来たと伝えておきますね」

 

「分かりました。会えるのを楽しみにしてると伝えておいてください」

 

 楽しみにしてるどころじゃないが。会えたら泣いて喜ぶかもしれない。

 

 こうして俺は外に出る。アリエル王女とは初めて話したが、思ったより優しい方で安心した。シルフィ姉の恩人なのだから、優しくなかったとしても、敬意は持たなくてはならない。ルーク先輩に関してはまだどうにも判断ができないが、少なくとも悪い人ではないだろう。ただまあ、ノトス家なだけあって女好きらしいが。その辺りはルディやパウロさんともしっかり似ている。

 

 とりあえず昼を食べようと俺は食堂に向かう。あとからリニア先輩たちから聞いたのだが、ここの学食のメニューもサイレント先輩が一部提供したのだという。制服といい影響力がめちゃくちゃあるな。

 

(確かに美味いが、この揚げ物、唐揚げに似てるな…)

 

 使ってる肉が違うためか、前世の頃に食べ慣れたものとは微妙に違うが、少なくとも味付けは唐揚げのそれだった。

 

 そんな肉を貪る俺に話しかけてきたのは、授業を終えたらしいクリフだった。

 

「レーディスか」

 

「やあ、クリフ。君もお昼かい?」

 

「そんなところだ。やけに気に入ってるみたいだな」

 

「ここのご飯は想像以上に美味しいからね」

 

 旅をしていたときは食事に関しては割と無頓着だった。時間も金もないため急いで食べれるものをささっと食べるのだ。ときには魔物の肉も食べた。エリスは平気そうだったが、ルディは顔を顰めていた。俺もあんまり好きな味とは言えなかった。日本食に慣れていたからかもしれない。

 

「席、借りていいか?」

 

「もちろん」

 

 俺は荷物を退かす。こういうのを楽しみにしてたのだ。なんとも学生らしいではないか。

 

「で、ここの授業はどうだったかい?」

 

「実際に出てみればいいじゃないか」

 

「それはそうなんだけど、ちょっと俺は俺で用事があってね。それを済ませるまではどのみち出れないかな」

 

 もっとも魔術の基礎学習なら、多少すっぽかしても問題ないというのもある。

 

「まったく問題ない。攻撃魔術を中級まで全部取得してる僕なら受ける必要もないくらいだ。まあ、神撃や治癒や解毒も上級だから、やらなくていいかもしれないが」

 

「凄いな。俺と年齢もあんまり変わらないのに」

 

「けど、君は新たな剣術の創始者なんだろ? 魔剣流とか言ったか?」

 

「これほど魔術ができればぜひともやってもらいたいな。俺より強くなるかも」

 

 神撃や治癒、解毒は俺にはまだ使えない魔術だから、剣術と組み合わせてみるのも面白いかもしれない。

 

「いや、僕は剣術はそこまで自信はないからな。それはそうと、ルーデウスってやつを知ってるのか?」

 

「知ってるも何も1年前まで一緒に旅してたからね。もしかして、どこにいるかとか知ってる?」

 

 俺が身を乗り出して聞くと、クリフは少し申し訳なさそうに答える。

 

「いや、悪いが、知らない。というか僕も実際に会ったことはなくて、エリスさんから聞いた話しか知らないからな」

 

 エリスとも知り合いなのか。ミリスで会ったのだろうか。あのときはあまり長居はしてなかったはずだが。

 

「ルーデウスの話なんだが、あいつは君から見てどうなんだ? ザノバや君はやけに尊敬してたが…」

 

「大事で愛しい幼馴染だよ」

 

 心の中で姉を任せられるくらいに、と付け加えておく。俺の答えにクリフは小さくため息をついた。

 

「…そうか」

 

 何か彼に思うところがあるのだろうか。もしかしたら昔ルディと何かがあったのかもしれない。

 

 食後、クリフは授業へと戻っていった。食堂の中の人もほとんどいなくなり、ぼちぼち俺も動こうかと立ち上がったそのときだった。

 

「レード?」

 

 聞き覚えのある声とともに俺を呼んだのは、探していたフィッツ先輩だった。

 




次回。姉バレかも
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