弟転生〜シスコンな彼も本気出す〜   作:黒い柱

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キレたルディはマジで怖い(レード談)


第41話 協力

 ラノア魔法大学というのは比較的自由な校風だ。特に特別生は校則的にもかなりの自由が認められている。例えば、いつどの授業を受けても大丈夫だとか、なんなら大学に籍を置いておくだけでも大丈夫、などである。そのため俺や静香姉はその特別ルールを満喫させてもらっている。

 

 しかし、そんな自由な大学でも暗黙の了解というものは存在する。とはいえ、それを守るのはそこまで難しい話ではなく、普通に生活していれば守るのは容易いものであることが多い。もちろん俺もそれを破ったことはない。

 

「しかし、ルディがねぇ…」

 

 生徒会室で思わず呟きが溢れる。その数少ない禁忌を破ったのは、まさかの俺の幼馴染であるルディであったからだ。

 

「そうなんだよ! 酷いと思わないかい?」

 

 シルフィ姉は憤慨しているようだが、俺は笑いを堪えるので精一杯だ。

 

「いやでも、パンツがきっかけとかなんともルディらしいな…」

 

 シルフィ姉が落としたパンツを拾ったことがきっかけで下着泥棒と思われて見せしめの罰を受けることになりかけたのだ。

 

「しかし、そのパンツってもしかして」

 

「うん。アリエル様のじゃなくて…」

 

 シルフィ姉のだったというわけだ。

 

「このことルディには?」

 

「話せるわけないよ!」

 

「俺の方から言っておこうか?」

 

「…やめて」

 

 からかいすぎたらしい。シルフィ姉はこちらを睨みつつ低い声で言う。

 

「わかったよ。少なくともシルフィ姉が正体を明かすまでは黙っておくことにしておいてやるさ」

 

「うん。そうしてて」

 

 俺がその場にいたらどうなっていただろうか。いや、シルフィ姉がパンツを落として終わりだな。俺ならそもそもルディを女子寮に近づかせないだろうし。

 

「そういえばさ、ルディと転移事件について調べるつもりなんだけど、レードも来る?」

 

「2人きりの時間を邪魔するのはちょっと申し訳ないかなぁ…」

 

「ボクとしてはレードがいてくれた方がルディとも会話しやすいんだけどな…」

 

 しかし、俺としてはシルフィ姉と呼んでしまいそうで怖いのだが。それに俺がルディに貢献できることがあるだろうか。

 

「俺はシルフィ姉ほど頭は良くないよ? 無詠唱魔術の習得だって、シルフィ姉の何倍も時間がかかったし」

 

「何もわかってないのはボクも同じだよ。転移事件なんて初めて起きたことだからね」

 

「それもそうか」

 

 なら、参加させてもらうことにしようか。転移事件について調べてこれといったメリットが見つかるかどうかはわからないが、幼馴染3人でまた喋れるのはありがたい話だ。

 

 こうして俺たちは生徒会室を後にして図書室へ向かう。ルディはあっさり見つかった。

 

「ルーデウス君、隣、いいかな?」

 

「フィッツ先輩。温めておいたので、冷めないうちにお座りください」

 

「あはは、悪いねぇ」

 

 シルフィ姉は嬉しそうに腰を下ろす。

 

「ちょ、俺にはなんかそういうのないのかよ」

 

「レードは座るなって言っても勝手に座るだろ?」

 

「一応、俺も先輩なんだけどな…」

 

 年下だし、見た目は子どもっぽいから威厳とかはないのだろうか。しかし、全くもってその通りだ。今更ルディに遠慮することはない。

 

「過去にも似たような転移事件というのはあったらしいということはわかりました。それらはフィットア領のものほど大規模なものではありませんでしたが」

 

 ルディが調べた結果をシルフィ姉に報告する。

 

「なるほど。今回の事件と関わりがありそうだな」

 

「フィッツ先輩も事件について調べてるんですか?」

 

 ルディがシルフィ姉の持っていた本を見て聞く。

 

「実は、ボクの知り合いも、あの転移で行方不明になってね」

 

「それは、その、なんと言えば…。レードなら捜索団にいましたし、詳しいんではないでしょうか?」

 

 おそらくその知り合いは2人とも目の前にいるのだが。

 

「フィッツ先輩の探してる人の手がかりはなかったな。最低限、生きていることだけはわかったが」

 

「うん。転移の出現先の傾向とかがわかれば、見つけ出すのも簡単になるかなと思ってね、調べてたんだよ」

 

 というか、俺としては転移そのものが少し気にかかる。静香姉は異世界から転移してきた存在だし、禁忌とはいえ転移魔法陣もある。その仕組みを解明するのは大きな意味があるのではないか。

 

「さすが先輩。慧眼です」

 

「でも、結局ボクは見つけられなかったからね…。レードもほとんど手がかりがなかったって言ってるし」

 

「やけに仲がいいようですが、2人はどんな関係なんですか?」

 

 俺は姉と弟と答えたい気持ちを抑え込んで答える。

 

「この大学に来て知り合ったんだよ。自分で言うのもちょっとアレだけど、俺ってそこそこ有名だろ? だから、アリエル王女が協力してほしいってことでスカウトされたわけ」

 

 半分は嘘ではない。俺の方が先に気づいて近づいたとは言っていないが。

 

「でも、その割にレードは自由だよな?」

 

「俺の場合はあくまで護衛じゃなくて協力者だからね。もちろん裏切るとかそういうのは毛頭ないけど、フィッツ先輩ほどの忠誠心があるってわけじゃない」

 

 つまり何かあったときに意見交換をできる立場だ。

 

「ねぇ、ルーデウス君?」

 

「なんでしょうか?」

 

「転移事件の調査を、ボクたちにも手伝わせて欲しいんだ」

 

「手伝うって言っても、僕もあまり情報はないんですが…」

 

「そうかもしれないが、お互いに話し合った方が進展があるんじゃないかな。というか、俺も参加なんですね、フィッツ先輩」

 

「うん。だって、レード暇そうにしてるし、ボクがいない分までルディを手伝ってあげてよ」

 

 いや、俺には静香姉とイチャイチャするという超重要なミッションが課されているのだが…。とはいえそれを言うこともできず、俺は仕方なく頷く。せっかくシルフィ姉からルディに接触できたのだ。正体を明かしやすくなるかもしれない。

 

「…わかりました。よろしくお願いします、2人とも」

 

「うん、よろしく」

 

 差し出された手をシルフィ姉が握る。こうして俺たちには10年ぶりの繋がりができたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして2ヵ月ほどが過ぎた。その間、何もなかったというわけではなかった。ルディは転移事件について調べる傍ら、ザノバ王子との人形制作を目指していた。

 

 しかし、その道は厳しかった。ルディはともかく弟子のザノバ王子は魔術がルディほど上手く使えないのだ。ならば、原始的に削り出す方法を目指そうとしたが、そこで邪魔してきたのが神子の怪力だ。彼の指は繊細な作業にあまりにも向かなかった。

 

 そんな状況を変えるべく、奴隷に作り方を教えて作らせる、というやり方をすることになった。手先が器用かつ無詠唱が使えるような小さな女の子(女の子はルディの趣味だが)であるジュリがその役目を担うことになった。そして、魔術や言語を元教師である俺やルディが教えていくのだ。

 

 そんなある日事件が起きた。きっかけはルディの一言である。いや、ザノバ王子があの2人と関わりを持った去年からきっかけはあったとも言えるかもしれない。

 

「そういえば、ロキシー人形の方はどうしたんですか?」

 

 無惨にもバラバラにされたロキシーさんの人形が脳裏に浮かぶ。

 

「あるには、あるのですが…」

 

 ザノバ王子が顔を真っ青にして言う。俺も怒り狂うであろうルディが思い浮かんでしまう。咄嗟に土魔術で紛い物を作ってしまうか。

 

「なあ、ルディ…」

 

 俺の声を無視してルディが続ける。

 

「あるんですか? 久しぶりに見たいので、出してもらってもいいですか?」

 

 ザノバ王子は震える手で、木箱を取り出して鍵を開ける。中にあるのは去年、リニア先輩やプルセナ先輩に破壊された人形だ。元通りになることもなく、バラバラの姿のまま置いてある。

 

「おい、なんだこれは…」

 

 ルディがめちゃくちゃブチ切れている。ザノバ王子はすでに泣きそうな顔だ。俺も泣きたくなるくらい怖い。

 

「どういうことだザノバ、お前、俺が、おい、どうなってんだこりゃ、えぇ…?」

 

 とんでもない量の殺気だ。いつルディが魔術をぶっ放してもザノバ王子やジュリを守れるように魔剣流の準備をしておかなくては。

 

「俺がどれだけ先生に感謝し、尊敬してるか、お前に言ってなかったっけか? この像を作るときに、どれだけ先生への想いを込めてたのか、お前、知ってたんじゃなかったっけか?」 

 

 ルディは平坦な口調で続ける。

 

「お前、もしかして、ロキシーの事、馬鹿にしてるの? ねえ、お前、もしかして、俺の敵なの?」

 

「ちちち、違います!」

 

 てか、俺は怒られ損じゃね。だって、決闘したのはザノバ王子とあの2人であって、俺は現場にいたわけでもないし。

 

 とはいえ、この空気でそんなことを言い出せるはずもなく。

 

「そっか、お前も悔しかったんだな」

 

 事情を聞いたルディの殺気は収まる。が、その目は底冷えするような怒りを秘めていた。

 

「だ、大丈夫か、ルディ…?」

 

「ああ。レードも来てくれると助かる」

 

「それはいいけど、どこに行くって言うんだよ」

 

「彼女らに思い知らせてやるんだよ。手伝ってくれるよな?」

 

 …いや、手伝わねぇよ。2人で勝手にやってくれ。そう言おうと思ったが、それを許さないというような目で脅されては俺は頷くしかなかった。

 

(…ご愁傷様)

 

 ボロボロの姿になるであろう2人の先輩に心の中で手を合わせるのだった。

 




次回、リニアとプルセナが…
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