弟転生〜シスコンな彼も本気出す〜   作:黒い柱

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書いてて思った。やっぱりルディはヤベェって!


第42話 拉致

 ルディがブチ切れている。殺気は収まっているが、目が据わっており、それが返って俺の恐怖を掻き立ている。何に対して怒っているか。獣族の令嬢、リニア先輩とプルセナ先輩に対してだ。

 

 俺はあの2人とあまり関わりはない。会ったら挨拶する程度だ。向こうはザノバ王子やクリフに喧嘩売ったりしていたわけだが、俺はシルフィ姉と仲が良かったこともあって、そういうことはなかった。というのも、シルフィ姉はアリエル王女一行にちょっかいをかけてきた2人やその仲間を全員返り討ちにしたのだ。そんな人と仲のいい俺に手を出して、また痛い目に遭いたくないといったところだろう。

 

 俺としても下手に争いごとなどしたくないというのが本音だ。ぶっちゃけロキシーさんの人形も作り直せばいいんじゃ…と言いたいところだ。もちろん、そんなことは到底言えない。消し炭になるのは嫌なのだ。

 

「…なあ、今更なんだけど俺いる?」

 

 2人を人通りの少ない広場で待ち伏せしている最中、俺はルディに聞く。彼は奇襲を仕掛けようと言っていたが、獣族の鼻を誤魔化す方法が思い浮かばなかったらしい。

 

「何かがあったときのためだ。神子であるザノバの力が通用しなかったんだ。予想外のこともあるかもしれない」

 

 どう考えても過剰戦力だと思うけどな。

 

「ジュリが巻き込まれないよう、守ってくだされ」

 

 と言うのはザノバ王子。ルディを相手にしてたらそんなことをする余裕もないかもしれないが。

 

 俺は2人から少し離れた茂みにいるジュリのところへ行く。それから程なくして2人の先輩が来た。

 

 睨み合いと煽り合いが続く。こういうとき頭の回るルディはかなり強い。リニア先輩たちの煽り耐性が足りないだけかもしれないが。

 

「てめぇ…裸に剥いて水ぶっかけてやるニャ!」

 

 リニア先輩が啖呵を切る。確かルディは獣族に捕まったとき、その罰を受けたらしい。平気そうに語っていたが、よく我慢できたものだ。

 

 一方、プルセナ先輩は口に手を当てる。何かしらの魔術を使うのだろうか。それに対抗するべくルディは土煙を作り出して、顔にぶっかける。

 

「ザノバ、プルセナだ!」

 

 ザノバ王子はプルセナ先輩と、ルディはリニア先輩と向き合う。が、ルディの方が一手も二手も上だった。カウンターで呆気なく地面に伏せ、最後はいつもの岩砲弾でフィニッシュだ。

 

 ザノバ王子の方はプルセナ先輩の脚力に追いつけない。それを見かねたのであろうルディが彼女の足を泥沼で固める。そして、動けなくなったところを岩砲弾でトドメを刺した。

 

「ふぅ…。よし、来い!」

 

 ルディの声に合わせて、俺とジュリが麻袋を持って駆け寄る。バレないように手早く詰め込んで、ルディの部屋に運んだ。というか、気を失った年頃の女子を手足を縛って自室に連れ込むとか、普通に犯罪な気がする。まあ、先輩たちの自業自得ではあるけど。

 

「なあ、ルディ」

 

「ん? どうした?」

 

「今度俺と勝負してみないか?」

 

 こうかなりの実力を見せられたら、自分を試したくなるのだ。彼の魔術から刺激を受けることもできるかもしれないし。

 

「正直、勝つ自信がないんだが…」

 

「さっきの手並みを見てたら、それを思うのは俺の方だよ」

 

 戦うとなったら、乱魔の対策も考えなくては。自分の武器である魔剣流が封じられたら厳しくなってくるだろう。

 

 それはとりあえず一度置いておくとして、部屋に着いた俺たちは、2人が目を覚ますのを待つ。

 

「…そろそろ帰っていいか?」

 

 何をするか分からないが、俺はこの2人を敵にするつもりは毛頭ないのだ。というか、あんまり静香姉やシルフィ姉に隠れてこういうことをしたくないという気持ちもある。

 

「レードならいい考えを思い浮かぶかもしれないだろ?」

 

 なんの考えだ。そう言い返そうとしたとき、2人が目を覚ました。猿轡をつけているため上手く声は出せていないが。

 

「むぐっ!?」

 

「んうー! んうー!」

 

 うめき声をあげているところで、ルディが近づく。

 

「おはようございます。さて、何から話しましょうか」

 

 ルディは顎に手を当てて何やら考える。そして、おもむろにプルセナ先輩の胸を触った。

 

「ルディ、お前…」

 

 シルフィ姉がいなくてよかった。内心そう思いながら、呆れてしまう。

 

「師匠? そのような方向で罰を与えるのですか?」

 

「いえ、ちょっとした実験です」

 

 だろうな。もしそうだとしたら、ちょっとショックだ。まあ、確かに先輩たちが不安や恐怖で怯えているところで、こういうことをしたくなるのは分からなくもない。しかし、好きじゃない人にそれをやるのはいかがなものだろうか。ということで、静香姉に置き換えて想像してみた。

 

(…普通にありだな。今度頼んでみるか)

 

 正直、絶対OKと言ってくれない気がしてならないが、モノは試しだ。何度も頼めば仕方なくといった形でも頷いてくれるかもしれない。

 

 俺が妄想を膨らませているところで、ルディが尋ねる。

 

「さて、あなた方、どうしてこうなっているのか分かりますか?」

 

 プルセナ先輩の猿轡を外して答えさせる。

 

「……あなたには何もしてないはずなの」

 

「ほう、何もしていない!」

 

 ルディはザノバ王子から、粉々になったロキシー人形が入った箱を受け取り開ける。

 

「これは、我が神をかたどった人形です」

 

「か、神?」

 

「そうです、僕は彼女に助けられたことで世界を知ることができました」

 

 ルディは部屋の隅の簡易的な神棚のところに向かう。そこに置いてある箱に入っているものは見覚えがある。御神体とルディが呼ぶ、それを見て各々に動揺が走る。そりゃそうだ。なにせ女の子モノのパンツが入っているのだから。中身を知ってる俺ですら、ルディの狂信っぷりに唖然としてしまう。

 

「あの像は、我が神です。あなた方はそれを足蹴にし、踏みにじり、バラバラにしたのです」

 

 たじろぐザノバ王子、泣きそうになるジュリ、何をやらかしたのか理解して顔面が真っ青になる先輩たち、ルディの言動に唖然とする俺。この部屋はかつてないカオスに包まれていた。

 

「さて、申し開きはありますか?」

 

「ち、違うの、踏んだのはリニアなの、私はやめようって言ったの」

 

「むー!?」

 

 リニア先輩の猿轡も外され、なすりつけ合いが始まり、その後罰についての話にもなる。というか、2人で言い合ってる時点で確信犯だろ…。そう思っていたところ、俺に声がかけられた。

 

「…なんとかするの、レード」

 

「そうニャ。レードなら説得できるニャ」

 

「いや、俺に振られてもな…」

 

 俺は弁護士じゃないし、この状況でルディを説得するのは不可能だと思う。

 

「なあ、俺の顔に免じてとか言い出したらどうする?」

 

「ん? ないな。絶対ない」

 

「ですよねー」

 

 そのくらいで収まるようなら、こんな問題になっていないのだ。

 

「それでなんだが、ちょうどいい罰はあるかな」

 

「うーん。難しいな。そうだ、俺の魔剣流の実験台になってもらうのは、どうかな? ちょうど人型の障害物がほしかったんだ」

 

 先輩に剣を向けるのはどうかと思うが、練習相手くらいにはなってくれるだろう。そういうつもりで言ったが、2人の顔は真っ青になる。

 

「それ、結局死なないか?」

 

「大丈夫だろ。死のうとしなきゃ死なないはずだ」

 

 真剣でやるわけではないし、治癒魔法や攻撃によるダメージを一瞬で回復させたあの魔法陣もある。そう簡単に死んだりはしないだろう。

 

「…レード。それは勘弁するニャ」

 

「あんなの喰らったら命が何個あっても足りないの」

 

 そこまで強いやつをかますつもりはないのだが。そこら辺の調整もできるようになりたいしな。

 

「ルディはどう思う? 痛い思いをさせたいならこれほどちょうどいいものはないと思うが」

 

「余もそれがよいと思いますな。師匠の気が晴れるかどうかは分かりませぬが」

 

 ザノバ王子も頷く。

 

「うーん、まだ決めきれないから保留ということにするか」

 

 ルディの作ったロキシー教に罰則は定まっていないようだ。というか、恩師を神として信仰するとはいろんな意味でぶっ飛んでるな。

 

「ちなみに、その間2人は…?」

 

「え? もちろん、そのままだよ。逃げられたら困るしな」

 

 それを聞いた2人の顔色がさらに絶望に染まる。というか、それだけで十分な罰になるのでは…。俺はそう思わざるをえなかった。




4年後も投稿してたら、2月29日に書けるかな
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