弟転生〜シスコンな彼も本気出す〜   作:黒い柱

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第44話 天才少年の恋

 ルディがリニア先輩とプルセナ先輩を下してからしばらく経った。2人はザノバ王子とともに、ルディの腰巾着のようになっている。

 

「で、あの病気は治りそうか?」

 

 俺は授業後、図書館にてルディに耳打ちする。あの病気とは、女性へのトラウマにより発症したEDのことだ。

 

「…見ればわかるだろ」

 

「たしかに」

 

 あの先輩2人は俺から見ても扇状的な格好で、ルディは揉んだり撫でたりしているが、治る気配がないようだ。

 

(やっぱり、シルフィ姉かなぁ…)

 

 俺は心の中で呟く。ぶっちゃけシルフィ姉は身体は弟の目で見ても貧相に見えてしまう(そんなことを言うとまた怒られるが)。しかし、ルディへの愛だけは間違いない。それで匹敵するといえるのは自分くらいだ。

 

 そう考えている俺にルディが聞く。

 

「なあ、レード」

 

「ん、どうした?」

 

「1つ相談というか質問があるんだが、いいか?」

 

 こうやってわざわざルディが前置きまでするということは、かなり厄介な依頼かもしれない。

 

「俺にどうにかできる自信がないが…」

 

「ある意味愚痴に近いのかもしれないけどさ…。お前、エリナリーゼさんって知ってる?」

 

 知ってるもなにもこの前、夕暮れの道で話し合ったばかりだ。

 

「ああ。優しそうな方だよな」

 

 俺やシルフィ姉と同じ長耳族だし。しかし、それを言うとルディは目を丸くした。

 

「お、お前、エリナリーゼさんに何かされなかったのか?」

 

「されるもなにも挨拶しただけだしな…」

 

 その挨拶もいたって普通なものだったと思う。個人的にはパウロさんとの間に何があったのかもう少し知りたかったところだが。

 

「部屋に連れ込まれたりは?」

 

「あの後はトレーニングいつも通りして、真っ直ぐ家に帰ったよ」

 

 本当は静香姉の部屋に泊まりたかったが、汗臭い身体で行くと眉を顰められそうなので、やめておいた。

 

 俺の言葉に、ルディは納得がいってなさそうに顔を顰める。

 

「どうした?」

 

「いや、エリナリーゼさんがお前に手を出さないなんてありえないなと思って…」

 

 いや、俺彼女いるし。と内心ツッコミを入れる。というか、女性にその言い方は良くないと思うが。

 

「そんな誰かれ構わず手を出すような人じゃないだろ」

 

「そんな人なんだよ」

 

 そうしてルディはエリナリーゼさんにかけられた呪いについて話し始めた。彼女は体内の魔力を男の精を受けることで魔力結晶を貯め、それが溜まりすぎると死んでしまうというなんとも厄介な呪いを受けているとのことだ。

 

「…なんで俺は手を出されなかったんだろう」

 

「レードに男としての魅力が足りてないからじゃないか?」

 

 それ、ルディにだけは言われたくはないが。

 

「ルディは2人でラノアまで旅してきたんだろ? やる機会はいくらでもあったと思うが…」

 

「それで治るようなら苦労しないさ。で、ここからが本題なんだけどさ」

 

 ここでルディは息を吸う。

 

「そんなエリナリーゼさんにガチ恋してる人がいるんだよ」

 

「そりゃいるだろうさ。誰なんだよ。お前がわざわざ言うってことは、お互いの知り合いだろ?」

 

「クリフ先輩だ」

 

 クリフ。やや背の低い生意気そうな顔が思い浮かぶ。いや、ルディに対しては生意気だが、少なくとも俺やシルフィ姉に対しては普通のはずだ。

 

「その様子だと、応援できない感じか?」

 

 ルディは乗り気ではないような表情だ。

 

「ああ。あんまりこういうことを言いたくはないが、エリナリーゼさんははっきり言ってビッチだ」

 

「オブラートに包んでやれよ」

 

 言いたくない割に、はっきり言うものだ。

 

「ただでさえ仲は良くないのに、それを知ったクリフ先輩に嫌な顔をされるのはな…。そうでなくても、先輩はミリス信徒だ」

 

 ミリス教は女性であれ男性であれ、複数の関係を持つことを好ましく思ってはいない。さらに言えば、ルディにはエリスとのことがある。

 

「えっと…。つまり、俺にはどうしろと?」

 

「クリフ先輩に諦めるよう説得できたりはしないか?」

 

 人の恋路を諦めろとは正直言いたくないが。

 

「それを決めるのはクリフだろ?」

 

「それはそうなんだけどさ…」

 

「このこと、フィッツ先輩には話したか?」

 

「いや、お前に話すのが初めてだ」

 

 そういえばシルフィ姉が来るのはこのあとだったか。

 

「なら、フィッツ先輩に相談する方がいい。あの人は俺より恋愛相談に強いだろうしな」

 

 最近見てて思うのだが、あの姉はだいぶ乙女だ。見た目は少年なのに、考え方は少女のそれだ。見ていて微笑ましい。

 

「分かった。そうしようかな。あともう一つ相談なんだけど、この学校に召喚魔術について詳しい人とか知ってるか?」

 

 先生ではないが、静香姉はそれをめちゃくちゃ研究している。一年かけて俺も多少は分かるようになったが、静香姉は天才だ。追いつくどころか引き離されてる気がする。

 

「ぶっちゃけ俺もあんまり詳しくないからなぁ…。一応、探してみるよ」

 

 そう言って図書館を後にする。その直後、考えが頭をよぎった。

 

(いや、これを利用すれば静香姉の正体だけじゃなくて、うまくいけばシルフィ姉の正体も自然に教えられるかもしれない)

 

 とりあえず方針が定まったので、クリフを探すことにする。彼は教室にいた。別の場所に移動しようとするところを捕まえて聞く。

 

「やあ、クリフ」

 

「…レードか。どうしたんだ?」

 

「いや、別にそんなに身構えなくてもいいよ。軽い恋愛相談みたいなものだ」

 

 真っ向からエリナリーゼさんと別れろとも言いにくい。とりあえずはクリフの思ってるところを聞くべきだ。

 

「その様子だと…。ルーデウス・グレイラットから聞いたな?」

 

「まあ、そんなところ。俺は良い悪いは言わないさ。でも、どこに惚れたのかっていうのは気になるね」

 

 彼はエリナリーゼさんを穢れなき天使か何かのように勘違いしているようだった。確かに俺が少し前に話した感じだと、性行為のせの字もないような人だった。しかし、ルディの話を聞く限りだと、とんでもないビッチだという。純粋な眼差しの彼にそれを伝えてもいいのだろうか。

 

「あのな、クリフ。エリナリーゼさんは、いろんな男とそういうことをしてるらしいんだが…」

 

「そうだよ。それに関しては僕も把握してる。厄介な呪いのせいで望まぬ行為を強いられ、あまつさえ悪評すら立っているんだ」

 

 クリフはエリナリーゼさんを悲劇のヒロインのように語っているが、ルディの話を信じるなら別に望まぬといったわけじゃない気がする。むしろ、喜んでやっていたとのことだ。

 

 とここでルディの言う通りにしなくてもいいのでは、と思い至る。クリフがエリナリーゼさんと付き合おうと、振られようと自己責任だ。

 

「そうか…。お前がそう思っているならそれでいい。受け入れてもらえるといいな」

 

「応援してくれるのか?」

 

「応援といってもできることなんてほとんどないけどな。せいぜいエリナリーゼさんにお前の印象を良くする程度だ」

 

「それでも十分だ。ありがとう」

 

 クリフは頭を下げる。俺もクリフとそこまで仲が良いというわけではないから、アピールができる保証もないが。そこら辺はルディの方が上手いだろう。

 

 そうして、クリフと別れて俺は教室を後にした。ルディの方はシルフィ姉と話してることだろう。俺はそう思いながら静香姉の研究室に向かう。もちろんやることは一つだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、1週間が過ぎた。なんとエリナリーゼさんとクリフは付き合うことができたのだ。

 

「なあ、ルディ…」

 

「たぶん俺も同じ気分だ」

 

 いや、ルディは不能で俺は彼女持ちだから、同じ気分ということはないだろう。そう言ったら泣くと思うので、思っても口にはしないが。

 

「世の中、分からないことが多いもんだな…」

 

 静香姉の研究室にいるときの俺でもあそこまでイチャイチャしないだろって言いたくなるような勢いで絡みついてる2人を見て呟く。

 

「それもクリフ先輩がいい方向に勘違いしてくれたからよかったよ」

 

「だな。というか、よかったのか? アレのこと」

 

 アレとはルディの不能がバレてしまったことだ。彼にとっては恥ずかしいことだったに違いない。

 

「ああ。隠してもしょうがないしな。それに何か打開策があるかもしれない」

 

「ここまでヒトガミとやらの術中だとしたら、まあまあ癪に触るけどな」

 

 誰かしらの協力が得られるなら変わっていくだろう。俺の方もどう静香姉をルディやシルフィ姉に紹介していくか考えているところ、いつのまにか季節は秋になり事件は起きたのだ。

 




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