ルディが脱がしたことにより、シルフィ姉が女の子とバレた。俺は家で怒られている。誰にか。シルフィ姉にである。
「ねぇ、レード。なんで、ルディに1年も隠してたの?」
こんなに怖いシルフィ姉を見るのは初めてだ。俺は迷わず正座をした。
「…ルディが話しにくくなるかなと思いまして」
「でも、こっそり教えてもよかったよね?」
「はい、その通りです。ごめんなさい…」
姉は俺が人を騙そうとしていたのにご立腹のようだ。両親からも怒られたが、それ以上にシルフィ姉の方が怖い。
「どうせレードのことだし、隠してた方が面白くなるとか思ってたんでしょ?」
「…それもあります」
隠していたらさらに怒られるだろう。俺は頷くしかなかった。
「でも、シルフィ姉。今回のことでルディのこと嫌いになったりしないよね?」
「ルディはね。何も知らなかったんだし、仕方ないよ。でも、レードはこうなることが分かってて隠してたんだから、あとでちゃんとルディにも謝ってよ」
ルディは相当気にしていた。そりゃそうだ、男の子と思って脱がしたら女の子だったんだから。中身40前のオッサンだとしたら、前世ならしっかり犯罪だ。
「もちろん」
俺は頷くしかなかった。
「…シルフィ姉には敵わないな」
「どういうこと?」
「俺より魔術も上手いし、ルディのこと許してくれるみたいだからさ」
普通の女の子なら許さないと思う。俺も、ルディもだ。いや、下手したら俺は縁を切られてもおかしくはない。姉が脱がされるのを見て見ぬふりをしていたのだから。
「おだてたってしばらくは許さないよ」
可愛い顔でしっかり怒られた。
その後、シルフィ姉はルディと若干距離を取るようになった。嫌いにはならないと言っていたものの、あんなことがあったため、少し近づくのを躊躇っているのだろう。
俺が何かしらルディに言おうと思ったが、またシルフィ姉を怒らせるのは本意ではないため、見守っておくことにした。
しかし、シルフィ姉は元気のない表情である。
「シルフィ姉、ルディのこと気にしてるの?」
「だって、嫌われたんじゃないかって…」
シルフィ姉が距離を置いたために、ルディもおそらく嫌われたと思い込んでいるのだろう。2人の雰囲気はそんな感じだ。
「一肌脱ぎたいところだけど、俺が原因の半分だから、余計なことすべきじゃないよな…」
「レードは見守ってて。万が一があったら手伝ってくれると嬉しいな」
どちらかが歩み寄ればどうにかなるだろう。俺はそう思うことにした。一方、その頃ルディもパウロさんと話し合っていた。なにやら怪しいアドバイスを受けたようだ。
そして、その日の昼。ルディはなぜか待ち合わせ場所の木の下で汗ダラダラになりながら木刀を振りまくっていた。しかし、疲れきったのか木刀が手から滑ってこちらに吹き飛んできた。
(いや、危な。てか、どういうつもりなんだ…?)
俺が半ば茫然としていると、シルフィ姉が近づいて、彼の手を握る。
「ど、どうしたの、ルディ…」
「んー、ふぅ……んふー、シルフィの可愛い姿が、見れなくて、ざ、残念だなーって」
「てか、なんでここでそんな素振りしてんだ…?」
しまった。黙っておくつもりが、口を挟んでしまった。しかし、2人はそこまで気にしてないようだ。
「…最近、シルフィ、冷たいよね」
ルディが絞り出すように呟く。
「だって、最近のルディ、なんかちょっと変だもん…」
まあ、確かに。でも、それは無理もないと思う。おそらくルディは女の子に慣れてない。彼の前世がどうかは知らないが、少なくともシルフィが女の子と知ってからはそうだ。いかにも色男感のあるパウロさんのそれは受け継いでいないのだろう。
「ごめんね、でも、私ルディのこと、嫌いじゃないよ」
「シルフィ…」
「だからさ、普通にしてて?」
そう言ってシルフィ姉はルディの頭を撫でた。おめでとう、ルディ。俺以外では初めてのシルフィ姉のなでなでだ。存分に堪能するといい。
こうして2人は仲直りすることができた。
「ねぇ、レード。まだルディに謝ってないよね?」
締めようとした俺にシルフィ姉が睨む。
「は、はい…。ルディ、ごめんなさい」
「なんで、レードが謝るんだ?」
「ルディが姉のこと女の子だと気づかなかったのは俺の悪ノリのせいなんで…」
俺は自分がルディに姉が女の子だとわざと隠していたことを話した。途中、ルディは耐えられなくなったのか笑いだした。
「お、お前、そういえばちょくちょくシルフィ姉って言ってたな…」
「気づいてたの!?」
「聞き間違いだと思ってたから気にしてなかったんだよ」
彼は鈍感系主人公に転生したようだった。
それから2ヶ月後、俺は剣術の練習の後、パウロさんから相談を受けていた。
「最近、ゼニスが冷たいんだ…」
かなり凹んでおられる。だが、自業自得というやつだろう。住み込みのメイドに手をつけた挙句、妊娠させたのだから。
「子どもたちの件ですよね。それはさすがに自業自得としか言えないかと…」
「そりゃあ俺だって分かってるさ。ただ、ずっとこのままっていうのもさ…」
「ルディは何と?」
「なんか最近、アイツからは呆れられてるんだよなぁ」
まあ、精神年齢はパウロさんよりだいぶ年上のはずだしな。俺の意見がどれだけあてになるのか分からないが、とりあえずアドバイスはしておこう。
「俺が思うに育児を手伝ってあげるのが、一番いいんじゃないですかね」
「育児か…。やり慣れてないな」
「まあ、俺も子どもが産まれたら手伝いに行きますよ。ルディも2人も妹か弟がいたら大変でしょうし」
「手伝いにかこつけて狙ってるとかじゃないよな?」
そんな刷り込みみたいなこと、するわけないだろう。俺は思わず笑ってしまった。
「まさか。でも、嫌われたくはないですね」
「産まれたら仲良くしてやってくれよ」
そりゃそうだ。グレイラット家とは長い付き合いになりそうだしな。
その数ヶ月後、ゼニスさんとリーリャさんの出産が無事成功した。ルディは妹がいいと以前言っていたが、2人とも妹だったようだ。ノルンとアイシャと名付けられた2人は、グレイラット家にとって大きな存在になるのである。
次回でルディとは一旦お別れかな?