弟転生〜シスコンな彼も本気出す〜   作:黒い柱

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ルディがいないと書くのが大変


第7話 祝福

 ルディが働きに出てから、一年半が過ぎた。俺は7歳になり、剣術も魔術の勉強もそれなりに充実している。こちらはルディやシルフィ姉みたいに優秀ではないので、完璧になるのに時間を要するのだ。

 

 ただ、ここ最近思う事がある。

 

(…恋愛したいなぁ)

 

 生きてきた年齢と合わせれば18歳。高校生であり、リア充気取りができたかもしれない年齢なのだ。

 

 寝ているノルンちゃんの頭を撫でながら、ぼんやりしていると、

 

「レード? どうしたの?」

 

 とシルフィ姉。俺は思わず

 

「いや、彼女とかできないかなぁって」

 

 と口走ってしまった。

 

「ダメだって、レード! まだそういうのは早いって!」

 

 慌てて俺を抱き寄せるシルフィ姉。うーん、距離近いなぁ。

 

「そうは言ってもさ、俺、彼女どころか友達すらいないんだもん」

 

「彼女は別にいなくてもいいと思うよ。まだ、7歳なんだしさ」

 

「羨ましくなっちゃったんだよ。シルフィ姉はルディっていう婚約者がいるわけだし」

 

 俺が揶揄うと耳まで真っ赤になるシルフィ姉。

 

「ボクとルディが結婚…」

 

「俺としてもそうしてもらえたら嬉しいなぁ」

 

 ルディは信頼できる。姉を任せるのに値する人間だ。彼が天才だからとか、前世が同郷だからとか抜きにして、俺は好きだ。

 

(俺もまあまあ依存しちゃってたな…。パウロさんが無理に送り出したのは正解だったな)

 

 シルフィ姉はコホンと咳払いして、話題を変えた。やっぱり恥ずかしかったのだろう。

 

「そういえばレードさ、指導の方は順調?」

 

 ルディの2人の妹に俺は英才教育を行なっているのだ。2人が将来困らないように、シルフィ姉にも手伝ってもらっている。

 

「ああ。2人とも可愛いよ」

 

「いや、そういう意味じゃなくてさ」

 

「まあ、なんていうかな…。アイシャちゃんの方は天才かも。下手したらルディより頭良いと思うよ」

 

 たぶん彼女はそう遠くないうちに無詠唱とかもできるようになるんではないだろうか。

 

「ノルンちゃんは?」

 

「天才なのかどうかはまだはっきりしないけど、俺は努力できる子は尊敬するよ。俺はシルフィ姉やルディで優秀な子がどんな子か見せつけられてるからね」

 

「ボクはそんなに優秀じゃないよ?」

 

「少なくとも無詠唱を1日とかでマスターした姉に言われてもなぁ…」

 

 そう言うと、姉は苦笑いする。

 

「でも、レードは大人びてて凄いと思う。父さんたちを困らせることもないしさ」

 

 確かに7歳だったら、もうちょっと周りに迷惑をかける年頃だろうし、周囲も受け入れてくれるだろう。

 

「ルディがいないからっていうのも大きいかもね。自分がしっかりしなきゃって気持ちが湧いてくるんだ」

 

「ボクもそのつもりだよ。2人で帰ってきたルディを驚かせてあげようね」

 

 シルフィ姉は小さく拳を握る。気合い入れてるところも可愛い。姉じゃなかったら告ってフラれてるところだ。

 

「それで、話を戻して恋愛についてなんだけどさ」

 

「せっかくいい感じで終わると思ったのに、戻さないでよ。そもそも、レードはどんな人が好みなの?」

 

 俺の好みか…。この異世界はやたらめったら顔面偏差値が高い人が多いようなので、そこは心配無用だろう。となると、内面が重要だ。

 

「まあ、まず年上が好みだな。年下はそういう目で見れない」

 

 そもそも年下といっても自分が7歳だから、それほどいないが。

 

「それと優しくて、けど言うべきときはしっかり言ってくれて、芯のある女性…」

 

 そう言いかけたところで俺は黙ってしまう。

 

「どうしたの?」

 

「冷静に考えると、俺の好きなタイプってゼニスさんみたいな人だわ…」

 

 人妻好きになるとか嫌なことに気づいてしまったな。そんなことを思っているとゼニスさんが話しかけてきた。

 

「レードくん、気持ちは嬉しいんだけど…」

 

「分かってます! 人妻に手を出すほど追い詰めらてませんし、パウロさんに睨まれたくはないので!」

 

 俺は慌てて言う。幸いパウロさんには聞かれていなかったようだ。

 

(それでもいつかは出逢えるんかなぁ…。2人の姉を超えた究極の理想の彼女に)

 

 長く生きる以外の目標が俺の中に追加された。にしても、女探しがそれとは恥ずかしいが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 女探しといっても、そう簡単に上手くいくはずもない。こちとら剣術と魔術のトレーニングしかしておらず、合コンは初級の認定すらもらっていないのだ。

 

(…ハードル高いの設定してしまったかな。生涯かけて達成すればいい目標だから、ちょうどいいとも言えるけど)

 

 そんなことを考えていたが、なんの成果も得られず2年が経ってしまった。魔術と剣術は順調に伸びているのに、運命の出会いは訪れない。残念な限りだ。

 

 さらに今俺はもう一つのことで頭を悩ませている。シルフィ姉の10歳の誕生日プレゼントだ。

 

 年下の俺が渡す必要はないが、父は仕事が忙しく準備できそうもない。代わりに俺が、と考えている。

 

「というわけなんですけど、なんかいいアイデアありますかね、パウロさん」

 

 トレーニングがてら彼に聞く。

 

「そんなこと言われてもな…。弟のレードの方が詳しいだろ、姉の好みに関しては」

 

 パウロさんとも付き合いは4年にもなる。こういうことを1番相談しやすいと感じていた。

 

「何を渡すかもなんですけど、どうやって渡すか、なんですよ。弟からはもらえないって言ってくるに違いありません」

 

 実際何を渡すかも決めれてないが…。

 

「パウロさんはルディに何を渡したんですか? 5歳の誕生日に」

 

「俺は剣、ゼニスは本、ロキシーは杖だったな。誕生日会で渡したよ。5年も経つのか、懐かしいな」

 

 パウロさんはルディを思い返すようにして語る。彼の誕生日を祝えないのには思うところがあるようだ。

 

 小遣いは少しは貯めてるので、よほど高価な物じゃない限りは買えるだろう。ただ街に行けるかは別問題だが…。

 

「買う物が思い浮かばないなら、俺と一緒に街に行くか? 9歳になったわけだし、金銭感覚を身につけてもいいだろうしな」

 

「どこに行くんですか?」

 

「城塞都市ロアだ。あそこに行けば何かしらあるだろ。俺も少し買いたいものがあるしな」

 

 そういうわけで俺とパウロさんは城塞都市ロアへ向かうことになった。

 

 そして、その週の休日。やけに賑わっているロアの街に着いた。

 

「人、多いですね」

 

「だな。何を買うか決まったか?」

 

「シルフィ姉が喜ぶものっていうのを見つけるのが難しかったんで、年頃の女の子が喜ぶものを渡そうと思います」

 

 あの年頃の女の子が喜ぶもの。美味しいものと綺麗なものだ。どちらにしてもそれなりの値はするかもしれないが、姉の笑顔のためだ。

 

「無難だけど、いい選択だな。それじゃ、俺はあっちで済ませてくるから、終わったらここに集合してくれ」

 

 と言って彼は目的の場所へ向かっていった。一方、俺は雑貨屋に向かう。

 

(綺麗な髪留めとかペンダントとかなら見つけられるかもしれないな…)

 

 女の子はそういうものは喜ぶ傾向にある。といっても前世の姉へのプレゼントによる経験だが。

 

(しっかし、高いな…。誰が買えるのか、こんなもん。多めに持ってきておいてよかったな)

 

 貴族御用達らしいその店は基本的に高い。ぼんやりとそんなことを考えながら少し安い髪留めに手を伸ばしていたところ、誰かと指がぶつかった。

 

「あ、すみません」

 

 俺は慌てて手を引っ込める。

 

「べ、別に、いいわよ…」

 

 そこにいたのは自分とそう変わらない年齢の赤髪の少女である。いかにも我が強そうな美少女だ。それでも着ている服は上品である。どこかの貴族の娘だろうか。

 

「えっと…。買うならどうぞ? 俺は他を探しますんで」

 

「別にそのつもりはないわ。どう見ても高かったし…」

 

 確かに金貨1枚は少し手が出ない。さて、どうしたものか。

 

「というか、男の人でもこんなところに来るのね…」

 

「俺のためってわけじゃないですけどね。姉の誕生日プレゼントです」

 

 そうだ。目の前の女の子に聞いてみるのはどうだろうか。不躾と断られたら自分で考えればいい。

 

「10歳くらいの女の子ってどんなものを喜ぶものなんでしょうか」

 

「さっきみたいなものでいいと思うわよ」

 

 彼女は答える。なら、別の店でちょうどいい値段のやつを購入するか。

 

「ありがとうございます。それが知れただけで満足です。それでは失礼します」

 

 そう言って、俺はその場を後にする。俺は小さな指輪を買うことにした。手持ちの銅貨で買える安いやつだが、たぶん喜んでもらえるだろう。

 

 購入している際、遠くから女の子の声で「ルーデウス」の名前が聞こえたような気がしたが、気にしないことにした。ちなみに、ルディの誕生日プレゼントはまた別で用意するつもりだ。

 

 そうして、迎えたシルフィ姉の誕生日。母は白いワンピースをプレゼントした。なんていうかめちゃくちゃ可愛い。

 

「シルフィ姉、可愛いよ。で、これが俺からの」

 

 俺はそう言って姉の小指に指輪を通した。

 

「これって…」

 

「安いやつしか買えなくて申し訳ないけどさ。いつかちゃんとしたやつを買うまで持ってて」

 

 俺が言い切る前にシルフィ姉は抱きついていた。

 

「ありがとう、レード!」

 

 笑顔の彼女を見れただけで、小遣いを使って街まで行って買った甲斐があったものだ。彼女の頭を撫でながらそう思った。

 

 

 




ギリギリルディに会えないシステム
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