ここだけミカの幼少期に幼馴染が2人いた話。   作:今井綾菜

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幕間2 補習授業部設立1週間前

 

トリニティ総合学園ティーパーティーテラス

 

 

「という訳で補習授業部の発足を朔月ミハネ司法院長へと提示します」

 

「成績不振の生徒を集めた補習授業部、ね。それも外部からシャーレの先生まで招いて」

 

「ええ、先生なのですから成績不振の生徒を導いて貰うには相応しいでしょう?」

 

あくまで余裕の表情で何度目か分からない紅茶を口にするナギサ。

つまらなさそうにミハネとナギサの顔と書類に視線を行き来させるミカ。

書類上の不備はなく部活を作ることにもなんの問題もないがなぜティーパーティーがその発足をわざわざ自分を呼んでまで説明を行い許可を得ようとしているのかと不審がるミハネ。

 

「ねえナギちゃん、ここでそれらしいこと言ってもミハネちゃんは出し抜けないよ?それならちゃんと説明した上で認めてもらう方がいいと思うな」

 

「でもミカさん……」

 

「そもそも部活を作るために司法院じゃなくて私に直接、しかもティーパーティーの現ホストから提示される時点で普通じゃない。桐藤さん、“どうしてこの時期に”そんな部活作る必要あるの?」

 

間違いなく、核心に近い質問。

だが“朔月ミハネに申請してきた”以上、本当の理由を話してくれなければ申請を通すことなどできない。

それをわかっていて私にその部活の最終確認を持ってきたのだろう。

 

「……そうですね。ミハネさんにはしっかりと説明をしておくべきでしょう。いえ、エデン条約を望んでいる貴女ならば必ずこの部活の必要性を理解してくれるはずです」

 

「そう、なら話してみてよ」

 

控えるエデン条約。

トリニティとゲヘナの恒久的な和平条約は言ってみればただでさえ大きな二つのマンモス高校が今までのいざこざを水に流して手を取り合いましょうというものだ。

対外的に聞けばなんと素晴らしい条約だろう。

争うことなく手を取り合い、キヴォトスの平穏に力を尽くそうというのだ。

 

だが、現実はそうではない。

いや……他校の首脳陣からはそう捉えられない。

ゲヘナとトリニティの和平条約、それはつまりキヴォトスで一番大きな武力同盟が出来上がることと同義でもある。

そうなれば、連邦生徒会長不在の連邦生徒会など介入することもできない。

他校がいくら集まったところで太刀打ちのできない超巨大武力組織の出来上がりだ。

 

だからこそ、この同盟……エデン条約には学内からも反対の声は多く聞こえてくる。

 

「補習授業部などただの器にすぎません。来るエデン条約、それを確実にするために……トリニティ内部にいる裏切り者を炙り出すための部活。それが補習授業部です」

 

「トリニティの裏切り者……?」

 

「ええ、学内でもとりわけ成績の悪いもの……さらにその中からよくない噂を含む人たちを選定して所属させることになっています」

 

彼女が選んだ生徒は4人。

阿慈谷ヒフミ、浦和ハナコ、白洲アズサ、下江コハル。

ミハネのよく知る人もいれば、彼女が溺愛する生徒もいる。

そして、よく分からない時期にやってきた転校生に正義実現委員会の生徒。

 

この4人が彼女が最終的に選定した裏切り者の候補。

つまりはエデン条約を破却し得る可能性のある人物。

それはつまり、彼女が選んだ彼女の信用できない人物達。

 

阿慈谷ヒフミ。

彼女は特別素行が悪い訳ではない。

ただどうもテストのあるタイミングで学外に赴いていることが多いという。

また、ブラックマーケットで見かけたという噂やとある銀行強盗団に関わりのある人物である等……よくない噂がここ最近耳に入ったそうだ。

 

浦和ハナコ。

彼女が入学した当初は彼女を秀才と持て囃すものが多かった。

時期ティーパーティー候補、シスターフッドからの勧誘。

それは彼女の1年の時点で卒業までの全テストで満点を叩き出すほどの圧倒的な成績の良さとその政治適正の高さからありとあらゆる派閥や政治的組織からの勧誘が絶えないほどだった。

そんな彼女が2年になった途端に成績が暴落、素行も何処かずれたことが多くあっという間にトリニティの問題児となった訳だ。

 

白洲アズサ。

エデン条約が控えたこの数ヶ月の間にトリニティへ転校してきた生徒。

正義実現委員会相手に籠城戦を仕掛けるという問題行動を起こした。

何処か世間知らずというべきか、そもそも前いた学校がよっぽどの零細学校だったのかは不明だが2年であるのに1年のカリキュラムを全く履修していないという。

 

下江コハル。

正義実現委員会の倉庫番を担当していた生徒。

自らを正義実現委員会のエリートと自称し、前回のテストで3年の範囲を選択してあえなく撃沈。

やっていることがハナコと同じな上、それでいて全く手が出ていないのだから余程のおバカ……だと思いたいが、彼女の選定理由には正義実現委員会への人質としての役割も担っているとのこと。

 

なるほど……なるほど?

その人員が本当にエデン条約をひっくり返せるほどの力を持つだろうか。

ハナコが本気を出して暗躍すればあり得るだろうが、今の彼女からその気は感じられない。

 

「補習授業部に課す課題は簡単です。最高で3回、テストを受けていただき一度でも全員が合格すれば補習授業部からは卒業です」

 

「……じゃあ3回とも落ちれば?」

 

「簡単な話です。トリニティに相応しくない生徒はまとめて退学にします。例え司法院であろうとも正式な手順を踏んで行われた申請には公平に対応する必要がありますよね?」

 

退学の申請、ティーパーティーによって正式な書類が作られて提出されればそれは立派な公的文書になる。

そしてそれを提出された司法院はその書類を元に人員を集め、正当性を調べ、あくまでも公正に判断を下す。

例えエデン条約云々がなくとも、成績が極端に悪く更生の兆しが見られない場合は“やむなく”その判断を下さざるを得ない。

このトリニティとて千人超を超える生徒数の中、私が退学の判断を下した生徒は決して少なくない。

 

「なるほど、考えましたね。補修授業部の設立自体は私にも異論はありません」

 

「では……」

 

「ただ、司法院から蒼崎サリナ副院長を補習授業部へと派遣させます。この時期にそのような疑惑をかけた生徒たち、その生徒たちを退学させることになるかもしれないのなら真に正しい判断をするためにも私の最も信頼する後輩に監視を行わせます」

 

「それでは司法院の業務が回らないのでは?」

 

「副院長が数ヶ月抜けたくらいで回らなくなるほど粗悪な組織運営はしてないつもりだよ。それにあの子は優秀だ、私のように別の業務をこなしながら他の子達からの報告と指示を捌くくらい出来るよ」

 

ナギサとミハネが睨み合い、嫌な沈黙がテラスを支配する。

 

「まあ、それでいいんじゃない?そもそもナギちゃんだって『はいそうですか』で補習授業部が設立できるなんて思ってなかったでしょ?」

 

その嫌な沈黙をミカが破った。

あくまでいつも通りに、戯けるように、だけどそれが当然だと言わんばかりに。

 

「だいたい、ティーパーティーはトリニティの生徒会だけどその生徒会の独断と暴走を止めるためにいるのがティーパーティーに対しての不信任案を叩きつけれる司法院じゃんね?司法院長が私たちの案を通す代わりにその案に対して妥協案を出してくるのは当然じゃない?」

 

普段おちゃらけて、政治のことに対して興味がないと言わんばかりの彼女からは信じられないほどミカの口は止まらない。

 

「そもそも今の司法院が聴聞会の裁決権以外に武力行使を考えた部隊や諜報用の部隊を用意してるのだって正義実現委員会がほとんど私たちの私兵化してるからでしょ?司法院の仕事増やしてるの誰って他でもないティーパーティーそのものだってナギちゃん理解してる?」

 

ただでさえ顔色があまりよくなかったナギサの顔がどんどん真っ白になって紅茶を飲む頻度が信じられないほど多くなっている。

 

「……えっと、ミカ?」

 

「なぁにミハネちゃん。私今結構怒ってるんだけど?」

 

「あっ、いやその……なんでもないです」

 

「そう?なら続けるね?だいたいナギちゃんさぁ」

 

その後も十数分に及ぶミカのマシンガン説教はナギサをシナシナにしていき、ミハネはいたたまれない気分になっていく。

ここ最近はミカがパテルの首長として急激に支持を集め始め彼女に付き従うものが増え、ミカも彼女たちの期待に応えるように首長としての役割を果たすようになっていた。

 

以前のミカならナギサとミハネの会話に割って入って話を脱線させていたかもしれないが、今のミカは俯瞰的に物事を観察して理解し、それに対して自分の考えを叩きつける力を手に入れた。

 

生まれた頃からの幼馴染としては嬉しいが、その矛先がミカのもう一人の幼馴染であることが素直に喜べないというだけで。

 

結果として補習授業部の設立は可決。

1週間後、シャーレの先生を招き顧問となってもらい次第活動開始の流れとなった。

 




個人的にはこんなミカもありだと思うのです。
ただのお飾り首長でなく、しっかりとした派閥の首長として自身の派閥を引っ張ってそれを支えてくれる人員がしっかりといる。
この世界のミカは少しやり方を変えただけで随分と違う存在になりつつあります。



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