ここだけミカの幼少期に幼馴染が2人いた話。   作:今井綾菜

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Ex.episode 聖園ミカお誕生日話

ミカお誕生日会

 

「ミ・ハ・ネ・ちゃーん!今日は私のお誕生日だよ!」

 

「わかってる。だからこうしてわざわざ実家に帰ってきて私の書斎を飾りつけたんでしょう」

 

場所はトリニティ総合学園から数キロ離れたミハネの実家。

彼女が実家の敷地内に建てた巨大な家……もとい書斎の中はミカの誕生日を祝うためにバースデー仕様に飾り付けられていた。

時刻は18時回っていてミカには夕方に書斎に来るようにと話をつけていた。

彼女とて今は立派なティーパーティーの一員だ。

そんな彼女の誕生日ともなれば学園側が誕生日パーティーを開催すると言ってもおかしくはない。

実際、つい先ほどまではそれに出席していたというのだ。

 

「それにしてもミハネちゃんも来てくれればよかったのに」

 

「家で飾り付けをして食事まで作っていたのに参加できるわけないでしょう」

 

「んー、それもそっか」

 

すっかり飾り付けされ、大きく『HAPPYBIRTHDAY Mika』と大きく書かれた横断幕まで倉庫から引っ張り出してきたのだ。

それもこれも『今年の誕生日はミハネちゃんと2人で過ごせる場所がいいな』などと目の前の幼馴染がわがままを言ったからで。

 

「食事にする?リクエスト通りビーフシチューだから温めればすぐに食べられるけど」

 

「それもいいんだけど……ちょっとだけゆっくりしたいなって」

 

小さな頃から使っている大きめのルッキングチェアではなく、つい最近買い替えたばかりのソファに深く身体を沈めながらミカはミハネを手招きする。

これは、久しく見ていなかった甘えたがりなミカだなと確信してため息をつきながら彼女の隣に腰掛ける。

 

「……ミハネちゃん、最近構ってくれないもん」

 

「最近はお互いに忙しなかったしね。こうしてゆっくりする時間もなかなかとれなかった」

 

ミカの頭がミハネの肩にちょこんと乗る。

彼女は制服のままだが、私はずっと家にいることも相まって私服でという少々普段とは違うシチュエーションだ。

 

「私たちさ、2人ともトリニティではなんでもできちゃうくらい偉くなってさ。でもその分、私にとって大事な時間はたくさん減っちゃって」

 

「寂しかった……?」

 

「そうかも、うん……寂しかったんだぁ」

 

ミカは、自分の本心を……本当に思っていることを口にするのが苦手な子だ。

いつも笑顔で常に誰かを引っ張って導く。

そんな彼女が嘘で塗り固められた虚像とは言うまい。

だが、それでも本心を口にして嫌われてしまうことが自分の心を隠して嘘をつくよりも怖いのだろう。

 

「私相手に本音を隠さなくてもいいと言っているでしょう」

 

「……うん。でも、怖いものは怖いんだもん」

 

そんなミカの言葉が2人だけの室内に溶けていく。

静かな2人だけの世界にお互いの呼吸の音だけが感じられる。

 

「……そういえばアリアちゃんは元気そうだった?」

 

「ああ、あの子ならミカが来るほんの少し前までここで手伝ってくれていた。『ミカちゃんのお誕生日のお祝いなんて久しぶり』と気合が入っていたから……たぶん後でくると思う」

 

「そっか、それは楽しみかも」

 

アリア、朔月アリアはミハネの実の妹だ。

今は中等部の三年生でミハネたちと入れ替わりで高等部に入学してくることになっている。

そんな彼女も今日は実家で……というよりも私の書斎でミカの誕生日をやると聞きつけて急いで帰ってきたのだ。

なんとも可愛らしいものである。

 

「今は確か……街の方にプレゼントを買いに走っているはず」

 

「ほんと!?それじゃあご飯はアリアちゃんが帰ってきてからにしよっかなぁー」

 

「じゃあ3人で食事と……その後にケーキを食べることにしよう」

 

ミハネ専用の書斎とは言うものの、中等部の頃はほぼこの建物で暮らしていた為か増築に増築を重ねて浴室や調理場も完備されていてほぼ普通の住宅と変わらない間取りになっている。

ただ、ほぼ4階建ての建物で4階部分までの天井を全てぶち抜いた図書館仕様となっているだけで。

普段はここの管理をしてくれている使用人たちも今日は気を利かせて本邸の方へと戻ってくれているし、用意した夕食もケーキも調理場の方であとは食べるための準備をするだけになっている。

 

「っていうかさ、外から見た時に気がついたけど横にも改築した?」

 

「なんでもアリアが自分のための空間も欲しいとお父様に強請ったみたいで、新しく建てるための土地はないから私の書斎に増築する形になったみたい」

 

「ミハネちゃんはいつ知ったの?」

 

「増築が終わってから」

 

良くも悪くも思い切りの良さは姉妹だなと納得したミカだった。

その後も普段は人の耳を気にして話せないことや他愛のない思いで話に花を咲かせ、気がつけば時刻も20時を回る頃になっていた。

 

「お姉ちゃん!ミカちゃん!お待たせ!」

 

扉を開き、ちょこんと大きな声と共に書斎へ入ってきたのはアリアだった。

視界にミカを入れるなりキラキラと瞳を輝かせてミカに駆け寄る。

 

「ミカちゃん久しぶり!わぁ……!ティーパーティーの制服かわいいね!」

 

「そうでしょ!これ着てるの私だけなんだよー?」

 

中等部の頃の私によく似た顔で金色の長い髪を二つに分けて下ろしている。

ミカのように天真爛漫でなのに変に自信のない子だが、自慢の妹だ。

ミカもあの子の前では……下手をすれば私といる時よりも自然に振る舞えているのだから一緒に過ごすことにストレスは感じないだろう。

 

「ほら、アリアもさっさと手を洗ってきなさい。食事の準備をするからミカも手伝って」

 

「はーい!それじゃ、行ってくるねミカちゃん!」

 

「うん、ちゃぁんと洗ってくるんだよ?」

 

パタパタと増築した自分用のエリアへと消えていくアリアに手を振ってミカはいつものようにニコニコしながらミハネと共に調理場へと移動していく。

 

「アリアちゃんは本当に可愛いよね。ティーパーティーになってからは会えてなかったからそう思うのもひとしおなのかも?」

 

「よくミカには懐いていたからね。可愛いもの好きなのが2人の共通点だし私も2人が仲良くて本当に嬉しいよ」

 

ビーフシチューの入った鍋を火にかけて切り分けておいたバゲットをオーブンの中へと入れて焼き始める。

 

「えっと、バゲットを入れるカゴは……あった、これだよねミハネちゃん?」

 

「うん、良くできました」

 

「えへへ、やった」

 

数分加熱すれば程よい暖かさになったビーフシチューを3人分シチュープレートによそって、焼き上がったバゲットをミカの用意してくれたカゴに盛り付ける。

 

「ん〜、いい香り〜」

 

「ケーキはアリアが作ってくれたやつだから食後に食べよっか」

 

「ほんと!?アリアちゃんがケーキ作れるようになったなんてミカちゃん感激かも……」

 

軽い泣き真似なんかしながら2人でシチューとバゲットを暖炉の前に置かれたテーブルに運んでいく。

2人で運べばあっという間、ドリンクまで用意したところでアリアが戻ってきてソワソワしながらミカに買ってきたプレゼントを渡していた。

 

「ミカちゃん!これ、プレゼント!」

 

「わぁ〜ありがとう!開けてもいい?」

 

「うん!たぶん持ってるとは思うんだけど……」

 

丁寧に包装された包を開けると、中から出てきたのはキヴォトスでも特に人気の香水であるサミュエラの『ザ・ビヨンド』だった。

到底中学生で買える値段ではないのだが……

 

「お姉ちゃんの真似して投資始めてみたら思いの外利益出ちゃって……ミカちゃんの誕生日だし、思い切って買ってみました」

 

「嬉しい!ありがと!!」

 

「喜んでくれてよかったぁ……」

 

「本当に嬉しい!大切に使うね!」

 

かくいうミカの使っている香水がその『ザ・ビヨンド』そのものなのだが、きっと普段使いのものとは別に大切な時に使うのだろうとは容易に想像できた。

 

「じぃー」

 

「……なんですかアリア、その眼は」

 

「いや、お姉ちゃんはプレゼント渡さないのかなって」

 

「別に今じゃなくてもいいでしょう……渡すのは食事が終わった後でも……」

 

「「じぃーーー」」

 

「ええい!わかりました!少し待っていなさい!」

 

寝室へと向かって細長い小包をもってミカたちのところへと戻る。

本当ならアリアがいなくなって2人の時に渡そうと思っていたがそういう流れをつくられては仕方ない。

 

「今年のプレゼントはこれです」

 

「ありがと!ミハネちゃん!開けていい?」

 

「……どうぞ?」

 

先程のアリアの時のように丁寧に包装を剥がして出てきた細長いアクセサリの箱を見て思わずミカは箱とミハネを何度も見返す。

 

「これ……私が欲しいって言ってたブランドのやつ……覚えててくれてたんだ」

 

「まあ、誕生日というのはそういうものでしょう。中身も欲しいと言っていたもので間違い無いと思うけど」

 

そんなミハネの言葉を聞きながら、ミカはアクセサリの箱を開ける。

中から出てきたのは本当にミカが欲しいと言っていたシルバーの月の形の中にブルートパーズ……ミハネの瞳の色と同じスカイブルーの宝石が嵌め込まれたネックレスだった。

 

「わお……お姉ちゃんの色だ。ミカちゃんほんとにお姉ちゃん大好きなんだね」

 

「は、恥ずかしいかも……でも、本当に嬉しい……!」

 

「自分の色がこうも顕著に出ているアクセサリなんて妹の前で渡せるわけがないでしょう……!」

 

『えへへ……』と緩み切った頬を隠すことなくネックレスの入った箱を大切そうに抱きしめるミカを見て渡したミハネ自身も恥ずかしさよりも渡して良かったと結局思ってしまったのだ。

 

「さあ、プレゼントも渡したことだし夕飯にしよう?せっかく温めたのに冷めちゃうよ」

 

「あっ、うん!2人とも本当にありがとう!」

 

「ミカちゃんが喜んでくれてよかったぁ〜!それに、ビーフシチューだぁ!お姉ちゃんのビーフシチュー大好きだから嬉しいなぁ!」

 

「おかわり出来る分も沢山あるから好きなだけ食べてね」

 

「やった!」

 

「ちょ、ちょっと待ってね!プレゼントしまってくるから!」

 

手に持っていた二つのプレゼントを壁にかけていたバッグに丁寧にしまってミカも空いている椅子へと座る。

 

「ああ、そうだ。食事の前にこれだけは言っておかないと」

 

「どうしたの?」

 

大切なことを言っていなかったとふと思い出してそんなことを口にすればミカもアリアも思わず首を傾げた。

 

「誕生日おめでとう、ミカ。来年も私に祝わせてね」

 

「私からも、ミカちゃんお誕生日おめでとう!」

 

「あっ……え、えへへ……ありがと!」

 

いつもに増して明るい笑顔を咲かせて、心の底からの感謝をした。

願わくば、世界で1番大好きな幼馴染とその妹がずっと自分と一緒にいてくれますようにと。

願わくば、今はどこにいるかわからないもう1人の幼馴染もこの場所にいられる日が来ますようにと。

 

小さなお誕生日会は日付が変わるほんの少し前まで行われた。

たわいのない話で盛り上がり、学校の話で盛り上がり、アリアとミカが可愛いアクセサリの話で盛り上がったりと笑い声が絶えないそんな一夜となったのだった。

 




本編に登場することはあまりありませんが、ミハネの妹のアリアについて少しお話を。

朔月アリア
年齢 14歳
所属 トリニティ総合学園中等部三年生
容姿 アルトリア・キャスター(預言の子衣装)の瞳をスカイブルーにしたもの
ヘイロー 選定の杖の周りにカルンウェナンが展開されたもの

ミハネ同様、神秘を行使することで魔術を使用するが可能。
ミハネからは練習をするために時折彼女の杖を借りていることがある。
また彼女自身も投資によって莫大な資産を所有しているが、欲しいものがなかなか見つからないため思い切ってミハネの書斎に自分のエリアを増築すると言う暴挙に出た。
キヴォトスではなかなか目にすることがない西洋剣、特に伝説における聖剣と呼ばれるものが好きで出来ることなら収集したいと思っている。

以下呼び方
ミハネ→お姉ちゃん/ミハネ姉様(他人の前)
ミカ→ミカちゃん
サオリ→サオリ姉さん
ナギサ→ナギサ様
ミネ→ミネ先輩
サクラコ→サクラコちゃん
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