ここだけミカの幼少期に幼馴染が2人いた話。   作:今井綾菜

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今年ももうあと1ヶ月で終わりますね。
国内でも寒暖差が激しくなって体調の崩しやすい季節になって来ました。
拙作も年内中にはエデン条約2章までは足を突っ込みたいと思ってますので読者の皆様方も体調には気をつけつつ拙作の方も応援していただければ幸いです。



第九節 大掃除(1)

 

トリニティ総合学園 朔月ミハネ個人寮

 

補習授業部が合宿所にたどり着いて大掃除を始めた頃。

ミハネは寮に備え付けてある厨房で菜箸を片手に幾つもの料理を彼女が愛用している百鬼夜行から取り寄せた漆塗りのお弁当箱に詰めていた。

これはミハネが司法院生全員分のお弁当箱を用意しているのだが、一つあたりの値段がおかしいことになっている。

百鬼夜行の有名職人が手作りしていることもあって一つあたりの単価が数万円規模のものとなっていて、それが50個……更にもし人員が増えた時に備えて10個ほど。

その合計金額は軽く百数十万、もしかしたら先頭の数字が一つも二つも変動するような勢いだがミハネ自身そこまで気にしてはいなかった。

 

「主食は鶏五目だとして……主菜が照り焼きチキン……うーん、先生もいることだし春巻きも揚げちゃおうか。あとは、ほうれん草の胡麻和えと昨日から作ってあったきゅうりとかまぼこの酢の物、それと隙間埋めるのに筑前煮も入れちゃおうか」

 

下準備をしていた春巻きを適温まで熱した油の中に投下してタイマーをセットし、次々とお弁当箱の中におかずが詰め込まれていく。

 

「サリナも今日から頑張るんだし、初日の差し入れくらい気合い入れて持っていってあげたいよね」

 

そうこうしている間に美しいきつね色に揚がった春巻きの油をきり、中心から斜めに切ったそれをお弁当箱の中に詰める。

最後に炊飯器の中で数十分ほど前に炊き上がった鶏五目を食べた時の食感を損なわないようにふんわりと詰めて少し置いてから蓋を閉めて完成だ。

 

時刻を見れば11時を回ったところ、今から合宿所へ向かえばちょうどお昼くらいだろうか。

手早くお弁当を大きめのカバンに詰め込み寮を後にする。

 

「ミハネ院長、お出かけですか?」

 

「おはようリンネ。サリナが今日から出向してる補習授業部の方に差し入れをしようと思ってね。シャーレの先生もいるから挨拶も含めて顔出してくる予定」

 

「なるほど、その大きなカバンの中身はお弁当ですね?いいなぁサリナちゃん……今日の主食はなんなんですかー?」

 

「今日は鶏五目だね、鶏五目はたくさん炊いてあるからお昼に食べれる子達で食べてね」

 

「はーい」

 

今日の寮当番であった篠崎リンネと軽い挨拶を交わし、まだ気温の少し高い外へと躍り出た。

遠くの方を見つめればゆらゆらとゆらめく陽炎が見えてお弁当の中身が心配になってくる。

 

「確か合宿所の中は冷房も効いてたはずだから、中身が崩れないように少し急足で向かったほうが良さそうかな」

 

いつもよりも幾分か速度を早めて私たちトリニティの生徒ですら普段立ち寄らない合宿所へと向かっていくのだった。

 

 

 

 

 

****

 

その頃、補習授業部はというと。

建物周辺の雑草抜きやガラクタの整理、合宿所内の埃取り、掃き掃除に拭き掃除、空き教室を含めた室内の清掃と換気、生活空間や水回りの清掃とサリナの指示のもと目に見えて合宿所が綺麗に清掃されていく。

 

「サリナちゃん、用具室の整理は概ね終わりました!」

 

「サリナ、こっちも体育館のモップ掛け終わったよ」

 

「わ、私の方もシャワー室の清掃終わったわよ!」

 

「ふふっ、皆さんいいタイミングですね。私の方も終わりました」

 

「私も背の高いところの掃除は一通り終わったよ」

 

ヒフミがアズサがコハルがハナコが先生が、次々と自分の担当している区画が終わったとサリナの元に集まる。

司法院で副院長として行なっていた人に指示を出す経験がこんなところに活きてくるとは思わなかったものの、それでも全体の行動を把握して事前に脳内に叩き込んであった合宿所内の地図と照らし合わせ、各々の技能にあった場所の清掃を指示していたからこそたった3時間足らずで合宿所内のほぼ全てのエリアの清掃を完了しつつあった。

 

「うん、みんな手際がいいから凄いペースで終わってるね」

 

「そんなことない、サリナが私たちの能力に合わせたエリアの指示を出してくれるから手早く終わってるだけ。うん、きっとサリナはいい指揮官になる」

 

「サリナちゃんは昔から人を使うのが上手いですからね。中等部までの頃はサリナちゃんのいたクラスは必ず何かしらの成績を残していましたから」

 

「まあ、そんなことはいいじゃない。次はどうするの?その感じだと、もうそんなに残ってないんでしょ?」

 

「私もフロアマップを見た感じ、後は細かいところだけですよね……此処は一度休憩にするのもありかなって思うんですけど」

 

「私はヒフミの案に賛成。結構ハイペースで掃除したし、一回休まないかい?」

 

「ふむ、そうですね……」

 

全員が揃ったタイミングなこともあるが、サリナの想定以上のスピードで清掃が終わったことも鑑みれば一度休憩を取ることもアリだろう、それにちょうど昼に差し掛かろうというところでもあるから丁度良いといえば丁度良いタイミングでもあった。

見たところアズサとヒフミは体力的には問題なさそうだが、どちらかといえばインドアなハナコとコハルは若干疲れが目立ってきている。

先生はといえば、日々キヴォトスを駆け回っている割には体力がないんだなと若干失礼ながらそんな印象を受けた。

 

「うん、それじゃあ食堂の方に集まってて、司法院から送られてきた荷物の中にティーセットがあったから少し休憩にしよう」

 

「し、司法院で使ってるティーセットってすごい高いんじゃないの!?」

 

「茶葉もかなりいいものを使用していると聞いたことがあります」

 

「サリナが淹れたお茶はとても美味しかったから楽しみだなぁ」

 

「サリナはお茶も美味しく淹れれるのか」

 

「アズサちゃんもサリナちゃんに教えて貰えば美味しく淹れれるようになりますよ。どうでしょう、今度私と一緒に教えてもらうのは?」

 

「うん、サリナからは学べることも多いしそれも学んでみたい」

 

各々が軽い雑談をして集合していた空き教室から退室して食堂の方へと向かっていく、サリナも司法院から送られてきた荷物の荷解きを終わらせていてその中からどの茶葉を使うか頭を悩ませていた。

 

「確か、グレープフルーツジュースもあったよね……それなら少し気温も高い中で汗もかいたんだしグレープフルーツセパレートティーもありかな。使うお茶はアールグレイでいいとして……ガムシロップもあったはずだし、氷も……うん、ここに来てすぐに作ってある」

 

「サリナ……?」

 

「先生……?どうかしましたか?」

 

「いいや、小声で何か言ってたみたいだから何かあったのかなって」

 

「ああ……いや、こんなに暑いのに普通に紅茶を淹れるのもつまらないでしょう?先生はアールグレイのグレープフルーツセパレートティーというのは飲んだことがありますか?」

 

「恥ずかしながら」

 

“紅茶の方面にはあまり詳しくなくてね”とにへらと笑う先生にサリナもつられて笑った。

 

「グレープフルーツジュースと紅茶の二層構造になってるお茶なんです。このセパレートティーというのは二層構造になったまま飲むことでそのドリンクのおいしさを100%発揮できるもので、見た目もいいことから結構トリニティ内のカフェなんかでは人気なドリンクなんです」

 

「サリナは紅茶が好きなんだ?」

 

「ええ、もともとお茶は好きでしたが……その、ミハネ院長が毎回美味しいと言ってくれるので、あの方に喜んで欲しくて紅茶とその紅茶に合う茶菓子については本当にたくさん勉強したんです」

 

「そっか、ミハネのこと本当に好きなんだね」

 

「ええ、私たち司法院の子達はみんなそうです。このトリニティの中で派閥争いが嫌で、それでも正実や自警団に入る勇気もない。そんな中でもトリニティの為になることをしたい。そんな子たちがミハネ院長に手を差し伸べられて……いえ、つまらない話でしたね。私個人としても、ミハネ院長のことは心の底からお慕いしていますよ」

 

「うんうん、なるほどね。私もサリナやみんなのことは好きだよ」

 

「…………へ?」

 

本来なら聞こえるはずのない声が、サリナの言葉に返答を返した。

ギギギ……と壊れたブリキのおもちゃのような擬音が聞こえてきそうな動作で声のした方向、つまり先生とサリナの丁度後方にはニコニコと微笑んでいるミハネの姿があった。

 

「みっ、ミミミミミミ、ミハネ院長!?!?!?ど、どうしてここに!?!?!?というよりも、一体いつからこちらにいらしたのですか!?!?」

 

「いや、来たのはいまさっきなんだけど……サリナと先生を見かけたから近くまで来てみればなかなか嬉しいこと言ってくれてるなと」

 

「連絡を下されば合宿所の入り口でお迎えにあがりましたのに!それに先生!なにニヤけてるんですか!?」

 

「ふ、ふふっ……いや、なんでも……ない……く、ふふ……」

 

「いやだって、先生は私がサリナの後ろにいるの気が付いてたみたいだしね。それを分かり切ったうえで話しかけてたみたいだし」

 

「なあ!?!?な、なにしてくれてるんですか先生!?」

 

顔を真っ赤にして“もうやだ”とうずくまるサリナとしてやったり顔のミハネと先生はお互いに顔を合わせてクスリと笑った。

 

「それよりもサリナ、お腹空いたでしょ。みんなの分のお弁当作ってきたから私の分もグレープフルーツセパレートティーを淹れてもらえるかな。少し走ってきたから私も暑くて」

 

「う、うぅ……りょ、了承しました。みんな食堂へ向かってると思うので先生と一緒に先に向かっててください。っていうよりもそのくだりから居たならほぼ最初からじゃないですかぁ……」

 

なんだこの可愛い生き物は、先生とミハネの意見は一致した。

涙目のまま頬を膨らませて私怒ってます、と顔全体で表しているのだからそう思ってしまうのもしょうがないだろう。

 

「そんな顔しても可愛いだけだよ。ほら、機嫌なおしてみんなでご飯食べようね?」

 

「私には餌付けしておけば機嫌が治ると思ってるんですか?」

 

「治らないの?」

 

「治りますけど……」

 

「くっふふふふ……」

 

さっきまでの凛々しい副院長様は一体どこへ消えたのか、先生は今まで見てきたサリナとのギャップに笑いが堪えられなくなり“先にみんなのところに向かってるね”と言い残して食堂へ消えてしまった。

 

「それで……ミハネ院長はどうして此方へ?」

 

「まあ、サリナがお世話になる子達だからね。浦和さんは知っている子だけど他の子達にも挨拶しておかなきゃと思って」

 

「お世話をするのは私なんですけども……?」

 

「まあそうかもしれないけど、“うちのサリナちゃんをよろしくお願いします”ってね」

 

「も、もう……」

 

「あははっ、それじゃあ行こっか」

 

「はい、私はそのまま厨房の方でセパレートティーを淹れて来ますので……その間に自己紹介を済ませていただければ。まあ、ミハネ院長のことを知らない子は流石に居ないと思いますけど」

 

「そうしておくよ、それじゃあお願いね?」

 

手に持った大きめの鞄を揺らさないように廊下を歩いていくミハネの背中を見送りながら、サリナは厨房の方へと足を向けた。

 

「はあぁぁぁぁぁあ!?!?!?ミハネ院長に聞かれたああああああああ!!!!」

 

それはそれとして厨房に入った瞬間、羞恥で赤面してうずくまった。

 

 

 




前話までの話があまりにも原作沿いすぎたのもあって今回はミハネを含めたほぼオリジナル会になりました。
ただ、この先も原作沿いの物語が続くことも考えると読者様方の期待に添えられてないのでは……?とも思うこともしばしばあります。

☆☆☆
オリジナルキャラクター紹介。
名前 篠崎リンネ
年齢 16歳
学年 トリニティ総合学園2年
所属 司法院諜報課
CV 雨宮天

この日、寮の当番としてエントランスのカウンターにいた少女。
諜報課の所属として有事の際にはミハネの眼となり耳となる人員の1人。
また戦闘行為を行う際にはサリナ専属のオペレーターとしての役割も担っており、副院長であるサリナとは司法院内において相棒とも呼べる立場でもある。

☆☆☆

ちなみになんですが皆様方の感想と高評価お待ちしております。
作者がオットセイの真似をしながら喜ぶので是非ともよろしくお願いします

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