ここだけミカの幼少期に幼馴染が2人いた話。   作:今井綾菜

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第四証明 第一回水着パーティー……?

 

「うわぁ……結構降ってるなあ」

 

目が覚めて始めに視界に入ったのは曇天の空と窓に打ち付ける雨の雫だった。

それもそうだ、叩きつけるような風の音とそれと共にものすごい音を立てて建物全体を濡らす雨の音で目が覚めたのだから。

 

「それにしてもこの天気じゃ、今日のお洗濯は外で干せないなぁ」

 

そんな事をぼやきながら外を見つめていれば一瞬の稲光の後に轟音が鳴り響いてその余波が部屋の窓を揺らした。

ほんの少しの仮眠をとったつもりだったのに気がつけば3時間ほどの時間が経っていて、慣れない環境での疲れが知らないうちに溜まっていたんだなと自覚する。

 

「サリナちゃん起きてますか?」

 

「……うん、どうしたのハナコ?」

 

「洗濯物が外に出てるの忘れてました!」

 

「えぇ!?なんで外に干してたの!?」

 

「雨が降るなんて思ってなかったんです」

 

「もぉ〜!」

 

サリナの部屋に駆け込んできたハナコと一緒に部屋から飛び出ればヒフミとコハル、先生も2人よりも先に走っていた。

後から走ってきたアズサも含めた全員で外に出て洗濯物を取り込んだのはいいものの、全身びしょ濡れ、おまけに着替えの制服類も雨にあたって散々と酷い結果になってしまった。

 

そしてそれから約1時間後……

 

「さあそれでは記念すべき第一回、補習授業部の水着パーティーを始めます♡」

 

どういうわけか学校指定の水着を着た補習授業部とサリナ。それに先生が電気の消えた合宿所の体育館に揃っていたのだった。

 

「色々とすごい状況だね」

 

「……ええ、本当に。こんなことになるんならもう1着くらい制服を持ってくるんでした」

 

「あはは……まあ仕方ないですよね」

 

停電のせいで洗濯機も止まってしまって着替えをすることもままならなくなってしまって濡れたままでは風邪をひいてしまうということもあって残されていた水着を着用して過ごすしかなかったわけだが……

 

「まあ、しょうがないといえばしょうがないよね……」

 

「そうですよ。こうとなっては、パジャマパーティーならぬ水着パーティーくらいしかすることがありません♡」

 

「あうぅ……な、何か他にもありそうな気はしますが……」

 

「やめなよヒフミ、どうせこの次は下着パーティーとか言いはじめるから」

 

「あら、サリナちゃんは私のことをわかっていますね。うふふ♡他にもいくつか選択肢はありますが……いいんですか?」

 

若干暴走気味なハナコは差し置いて、実際停電してしまったとなれば教室の電気は使えないこともあって勉強を続行することも難しい。

トリニティはその性質上各教室などに蝋燭やマッチが用意されているがそれを頼りに勉強をするのは難しいだろう。

 

「落雷くらいで建物の設備が使えなくなるなんて酷いセキュリティだ」

 

「まあ古い建物ですし……」

 

「でも、授業もできないし服もないのは理解できるけどだったら大人しく部屋で休んでればいいでしょ!?」

 

「あら?ですがこういう展開こそ合宿の醍醐味だと思いませんか?みんなで寄り添って、お互いの深い部分を曝け出し合う、雨も降っている上に停電でなにも見えない、雰囲気は最高です!」

 

いつもの何割も増してテンションの高いハナコは暗がりで見えるだけでも全身で楽しいですというのを表しているようでサリナの頬がほんの少しだけ上がった。

 

「まあ、確かにたまにはいいんじゃない?そんなに別に見えるわけじゃないんだし身体も冷えてるんだから固まって話すくらい何でもないでしょ」

 

「……サリナがそういうならいいけど」

 

「うふふ、それなら決まりですね♡」

 

「じゃあ身体も冷えるし固まっちゃおう、ハナコは私とヒフミの隣ね」

 

「はーい♡」

 

「あはは……それじゃあアズサちゃんとコハルちゃんは私とサリナちゃんの間に入ってください。えっと……先生は……」

 

「私は少し離れたところで見守っておくよ」

 

体温が下がらないように5人で固まって先生はそれをほんの少しだけ離れたところで見守ることにしたのだった。

 

「ふふっ、私……こういうことをずっと凄くしてみたかったんです。なので……テンションが上がってると言いますか……」

 

「ハナコ、本当に楽しそうだね」

 

「気持ちはわかる。何なら私も、補習授業部に入ってからずっとそういう気持ちだった。何かを学ぶのも、みんなでご飯を食べるのも、洗濯も掃除も何もかもが楽しい」

 

知らないことを知れること、それが何よりも楽しいと微笑みながら言うアズサに思わずみんなの顔が緩む。

 

「それにみんなと勉強するのは本当に楽しい。コハルはいつも頼りになるし、ヒフミにはいつも世話になってる。ハナコの博識さには驚かされるし、サリナの段取りの良さにはいつも助けられてる。だから、みんなありがとう」

 

「あ、アズサちゃーん!」

 

「うぐっ……ひ、ヒフミ、くるしい……」

 

感極まったヒフミに抱きつかれてジタバタと暴れるが大人しくしている方が楽だと察したアズサはヒフミに解放されるまで数分を要した。

 

それからも話題は転々としていき……

 

「そういえば今、トリニティのアクアリウムでゴールドマグロという希少なお魚が展示されてるみたいですね」

 

「あ、それ私もパンフレットで見ました!なんでも『幻の魚』と呼ばれてるとか」

 

「はい。どうやらトリニティの近海で発見されたとか。見にいきたいのですが入場料も安くなくて……」

 

「それなら補習授業部を無事卒業できたら私が連れて行ってあげるよ。みんな頑張ったご褒美として見に行ってみよう」

 

「海か……そういえば一度も行ったことはないな」

 

「一度も!?それじゃあ、みんなで海に行くのも追加しましょう!」

 

今年の夏の予定を立ててみたり。

 

「それで潰れたアミューズメントパークなのにも関わらず、夜になるとなにやら騒がしい音が聞こえてきて……」

 

「そ、そんなわけないじゃん!聞き間違えよ!」

 

「それって『モモグループ』が作った『ユートピア』ってテーマパークじゃない?なんでも電気の通ってないはずの園内は夜になると遊具とかアミューズメントドールが動き出すって……」

 

「わあぁぁああああああ!ダメダメダメ!絶対嘘!全部誰かの悪ふざけ!」

 

「あはは……」

 

怪談話なんかにも華を咲かせて。

 

「ちなみにコハルちゃんは水着で出歩くのがおかしいと言いましたが、キヴォトスのどこかの無法地帯には水着に覆面を被った凶悪な犯罪集団がいるみたいですよ」

 

「なにそれ!?水着に覆面とかド変態じゃん!っていうか『犯罪者集団』じゃん!そんなのなにもしてなくても見た目だけで既に犯罪よ!」

 

「そう言う集団がある、ということですよ。ですからコハルちゃんも今度一緒に……」

 

「いやっ!なに言い出すかわかんないけど絶対に嫌!」

 

「…………」

 

「……ヒフミ?」

 

「な、何でもないです!」

 

何処ぞの変態犯罪集団の話に便乗してハナコがコハルに露出を進めようとしてみたり。

 

「アズサちゃんはもっと、夜はちゃんと寝た方がいいと思います」

 

「うん、今朝は寝坊してみんなに迷惑をかけた。慣れない場所で寝坊なんてこれまでほとんどなかったんだけど……もうここは『慣れない場所』じゃないのかも知れない」

 

「そう言ってくれるのは嬉しいですけど、もっと寝ないとダメですよ。深夜の見張りは減らしてもらって」

 

「見張り……?なにそれ」

 

「ああ、毎晩夜中にちょっと見張りをしていて……」

 

「毎晩夜中に物音が聞こえてきたのはそれか。ここ何日かは特に顕著だったね」

 

毎晩深夜0時を回った頃だろうか、部屋の外で物音がするのをサリナは気になっていた。

時間にしては2〜3時間ほどだが、深夜に自分の業務を行なっていたサリナはアズサの行動に気がついていた1人でもあった。

 

「リンネがトラップ全部壊した時からいつもよりもやってる作業増やしてるでしょ」

 

気になっていたのは先日、親友が徹底的に破壊して回ったトラップが日に日に精度を増して設置されていることでもあった。

日中のうちのアズサは勉強に励んでいるのにいつこんなものを設置しているんだと思ってはいたのだが、今ここで確信したとばかりにアズサに問いかけた。

 

「バレてたんだ。うん、ブービートラップの数は結構増やしてる。この間までとは違って悪意のある侵入の仕方をした人に対して掛かるような位置に仕掛けてる」

 

「なるほど……ですが、それならそれで教えてくれると嬉しいです。どうしても……心配しちゃいますし」

 

「そうか、これからは気をつける。私のせいでみんなが傷つくのは……嫌だから」

 

不意にふわり、と先生の大きな手がアズサの頭を優しく撫でた。

 

「アズサは優しいね。でも、みんなはアズサを攻めてるんじゃなくて相談して欲しかったって言いたいと思うんだ」

 

「そうだね、私たちは所属も派閥も違うけど……チームでしょ?」

 

「……ぁ。でも、この世界は、すべてが無意味で、虚しいものだ。だからもしかしたら……私が裏切ってしまうかもしれない。みんなの心も、その信頼も」

 

「アズサちゃん……?」

 

アズサが呟いたそんな言葉は誰かが拾う前に、それを遮るように体育館に灯りが点る。

 

「あ、電気が……」

 

「直ったみたいですね」

 

「見て!雨もいつの間にか上がってる!」

 

「そうですね!それでは、もう一度あらためて洗濯をしましょうか!」

 

「うん、じゃあ第一回水着パーティーはここで閉幕か。2回目も楽しみにしてる」

 

「2回目が起こるためにはまた停電して雨降らないとだけどね」

 

みんなが立ち上がって体育館の外へと出ていく。

復帰した電力を頼りに洗濯を済ませて、その日は休息日になったのだった。

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