ここだけミカの幼少期に幼馴染が2人いた話。   作:今井綾菜

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みなさんお久しぶりです、約一週間ぶりの投稿となります。




第五証明 深夜の大冒険

 

「いいえ、まだです!このまま1日が終わりなんて、そんな勿体無いことはさせません!」

 

その日の夜、洗濯機が復旧して乾燥まで済ませたジャージを着込んで後はもうおやすみ、なんて状況まで来た時にハナコが急に起き上がって吠えた。

急に大声でそんなことを叫んだハナコに少なくともその場にいた他の4人は一斉に肩を震わせてハナコの方へと視線を集中させる。

 

「突然のことでしたが、せっかくのお休みじゃないですか。みんな裸で交わったのに、このままはいお休みなんて」

 

「勝手に記憶を捏造しないでよ!裸じゃないから!」

 

「……まあ、それは置いておいて……何がしたいの?」

 

「よく聞いてくれました。合宿の醍醐味といえば……合宿所を抜け出すこと……ちょっとトリニティの商店街まで行ってスイーツでも、と思いまして!」

 

「そんなの校則違反じゃん!ねえ、サリナ……!」

 

「……んー、まあ実際この校則ってあってないようなものだしなぁ。正実の生徒だって抜け出してることは多いし、私も夜のコンビニとかは結構いくし」

 

それでいいのか司法院。

誰もがそんな事を思ったが、あえて口には出さなかった。

 

「で、ですが今は補習授業の途中ですし……普段ならまだしも、でも……うぅん……」

 

「遠出するわけでもないのですぐそこですよ。コハルちゃんも如何ですか?みんなで夜中にスイーツなんて……きっと楽しいと思いますよ?」

 

「うぅ……でも、興味があるかと、言われれば……正直興味は……ある……けど」

 

「というわけで、如何でしょうか先生!」

 

コハルの興味と校則の天秤が興味に傾いた瞬間を見逃さず、ハナコはちょうど入室してきた先生へと話を投げかける。

洗濯を終えてアイロンをかけたばかりのシャツを着た先生は心なしか気分が良く、入室する前に廊下に声が漏れていたこともあってハナコの言葉に快く頷いた。

 

「いいんじゃないかな。誰かに声をかけられたら、私が連れ出したんだって説明してあげるよ。それに、合宿所に篭ってばかりでも息が詰まるだろう?深夜のスイーツなんて、なんとも心が躍る話じゃないか」

 

そわそわとすぐに行こう、といわんばかりに落ち着かぬ素振りを見せる先生に思わず皆が笑った。

 

「先生はスイーツが好きなのか?」

 

「大好きだとも!トリニティのスイーツ店は美味しいと評判のお店が多くてね。是非ともみんなで行ってみたいと思っていたところなのさ!」

 

「なるほど、準備は万端だ。すぐに向かえるよ」

 

「アズサちゃん!?もう準備し終えたんですか!?」

 

「私も元々制服のままだったし。お財布持ってくるね」

 

「サリナちゃんまで!?」

 

「うふふ、じゃあ決定ですね。さあ、楽しくなってきましたね!深夜にみんなでケーキでの宴だなんて!」

 

「1人一個まで!それ以上は太るんだからね!」

 

きゃいきゃいとそれぞれが準備を済ませて深夜の合宿所の明かりが消え、その楽しそうな声は夜の街の方へと消えていくのだった。

 

****

 

場所は変わってトリニティの商店街。

学園から徒歩1時間ほどの距離にある都市部には24時間営業のお店が相当数存在している為、深夜でも一通りは決して少なくはない。

自分たちの他にもトリニティの生徒と思わしき人影がチラホラしていて、どうやらサリナの制服を見て思わず二度見どころか三度見までして立ち去っていく始末だった。

 

「うん、やっぱり司法院の制服はこういうときに役立つね」

 

「あはは……治安を維持する側の制服ですからね。私たちだけが同行してるなら兎も角、先生もいることからお仕事と勘違いされてるんでしょうか」

 

「サリナちゃんがいることで合法的に見えてしまうというわけですか……それだと少しつまらないですね。さて、サリナちゃん……」

 

「脱がないよ、言っておくけど」

 

「まだ何も言ってないんですけどね……」

 

真剣な表情をして何を言い出すか、などすぐに想像できたことで口から出た言葉にハナコは苦笑いをする。

まあそれでも、先頭を歩くハナコとサリナの表情はその中でも特に楽しげなものであった。

 

「思えば、サリナちゃんとは長い付き合いになるのにこういうことは一度もできませんでしたね」

 

「寮に入るまではお互いに雁字搦めだったからね。まあ尤も、寮に入ったら入ったで面倒ごとが増えてそれどころじゃなくなったけど」

 

「サリナちゃんは司法院に入ってからは楽しそうじゃないですか……」

 

「そういうハナコだって、今は楽しいんでしょ?」

 

「……ええ、とっても!」

 

ハナコの笑顔からは本当に心の底からこの状況を楽しんでいるように感じられて、補習授業部の面々の表情も徐々に柔らかいものになっていく。

次第に辺りを見回していろんなお店を見る余裕が出てきたのか、みんなの口数もどんどん多くなってきた。

 

「夜の商店街の雰囲気もなかなかいいですよね」

 

「確かに、普段見れないものだからこそ新鮮味もあってすごくいい」

 

「ちょっと!先生はおもちゃ屋さんのショーケースに張り付かないの!目的はそっちじゃないでしょ!」

 

「待ってくれコハル!超合金KAITEN-FX MK.0初回限定版が私を呼んでいるんだ!」

 

「それ30万円もするじゃない!そんなもの買ってどこに飾るのよ!」

 

「後生だコハル!限定100体しか生産されてない幻の超合金フィギュアなんだ!せめて!せめて現物を見させてくれぇ!」

 

夜の街の雰囲気に目を輝かせるヒフミとアズサを他所に、さらに後方ではおもちゃ屋にレッツゴーしようとする先生をコハルが引きずりながら合流するような一場面があったりと皆んながそれぞれの楽しみ方をしている。

まあそれ以前に限定100体しか製造されていないのに初回限定版とは一体なんぞやという話でもあるわけだが。

 

「いいですね、こういうの……私、本当に今が楽しくて泣きそうです」

 

「…………そうだね。でも楽しめるのは今だけじゃ無いよ。補習授業部が終わったとしても、こうして遊びに出ることは出来る。“今だけ”の期間限定のお話じゃ無いんだから」

 

「そうですね、その時はサリナちゃんも一緒に抜け出してくれますか?」

 

「いいよ、ハナコのためならミハネ院長に怒られる覚悟で抜け出してきてあげる」

 

「うふふっ、その言葉覚えておきますね♡」

 

夜の街を各々の楽しみ方で練り歩く補習授業部。

そうして10分程度追加で歩いた時だろうか、彼女たちの視界に入ったのは一軒のスイーツ店だった。

 

「……あっ、こんなところにスイーツ屋が……それに店の外にまでいい匂いがする」

 

「本当ですね。それに、深夜のスイーツも目的の一つでしたし……なんだかお腹も減ってきたような」

 

「……あっ、このお店知ってる。ミハネ院長がミカ様と一緒に食べるためのシュークリームを買いにくるお店だよ。あとはここの限定パフェがすごく美味しいんだっていうのも口にしてたかも」

 

「あっ!その噂なら聞いたことがあります!同級生の間でも結構有名な話だったので気になってはいたんですが……24時間営業のお店だとは知りませんでした」

 

「パフェ……一度食べてみたいと思ってたんだ。行こう!」

 

「よーし!深夜にみんなでパフェを並べてパーティーと洒落込もうか!」

 

「こんな時間にパフェなんて贅沢ですね!」

 

アズサに続くようにヒフミと先生が入店していく。

カランカランッとベルの音が鳴り響き、3人の姿が店内へと消えていく。

 

「限定っていうくらいだし、なかったら何食べようかな」

 

「ミハネさんのご贔屓にしているシュークリームともなれば間違いはなさそうですし、それも気になっているんですよね」

 

「すっごく美味しいから私とハナコはそれにする?」

 

「いいですね!ふふっ、楽しくなってきました♪」

 

次にハナコとサリナが店内に移動して行き、最後に取り残されそうになったコハルは「誰にも会いませんように……!」と呟いた後、思い切ってその背中を追って行ったのだった。

 

 

 

 

****

 

「いらっしゃいませ〜」

 

時刻は23:00を回った頃。

日中は学生をはじめとした市民たちで賑わっているであろう店内はほんの少しの寂しさを感じさせながらも数人の客で賑わっていた。

店内の装飾はどちらかといえばナチュラル系な物が揃えられていて、夜の営業であるからなのか光源はそこまで眩しすぎない。

むしろ、落ち着いた雰囲気の店内からは安心できる雰囲気すら感じさせる。

 

「真夜中のスイーツ店なんて、なんだかドキドキしますね」

 

「うん、確かに」

 

普段ならばこんな時間にスイーツ店に来ることなどないからなのか、ヒフミとアズサの目が心なしが輝いているようにも見える。

 

「店内も落ち着きのある感じで過ごしやすそうですね」

 

「わかる。ミハネ院長が贔屓にしてるのも納得かも」

 

「ここ、ミハネがよく来る場所なの?」

 

「そうなんです。ミカ様とお召し上がりになるシュークリームを買いにくるお店なんですよね」

 

「そ、そんなすごいお店なんだ……お金足りるかな……」

 

「安心していいよコハル。今日のスイーツ代は私が持つからね」

 

先生が懐から取り出したのは一枚のカード。

そう、それはつまり……大人のカードである。

 

「せっかくみんなで遊びにきたんだし、お金のことは気にしなくていいよ。みんなは食べたいものを我慢しないでしっかり頼むこと!」

 

そんな先生の言葉に全員が頷き、カウンターの方へと向かう。

 

「いらっしゃいませ。6名様でよろしかったでしょうか?お席の方はお好きな席へどうぞ。ご注文がお決まりでしたらお伺いします」

 

「えっと……限定パフェってまだあったりしますか……?」

 

視界に入るメニュー表の中から、ドドンと一際大きく表示されているパフェを指差しながらヒフミは問いかける。

日中のスイーツ好きな学生たちが跋扈する時間帯ならともかく、時刻は日付も変わろうという午後23時、それならチャンスもあろうと思っていたのだが……

 

「すいません、限定パフェはつい先程別のお客様が三つほど購入されたのが最後でして……」

 

「あっ、そうでしたか」

 

「一歩遅かったか、こんな時間にまで狙われているなんて侮れないな」

 

帰ってきた言葉に思わず意気消沈してしまう。

こんな時間にまで完売してしまうなんてどれだけ美味しいんだろうと、メニューに載っているパフェの写真を見て想像してしまう。

こんなの絶対に美味しいに決まっていると思いつつも、いつまでも肩を下げているわけにもいかないと他のメニューに目を移した時だった。

 

「……ハスミ先輩、なにしてるんですか?」

 

「さ、サリナさん?」

 

ふと、気になれた声がヒフミだけではなく全員の耳に届いた。

そしてその声の主の方を振り向けばまさに今注文を出来なかった限定パフェがその圧倒的な存在感を振り撒きながらテーブルの上に鎮座していた。

 

「えっ!は、ハスミ先輩!?」

 

「あら……?まさか、それが限定パフェですか?それもなにやら沢山……」

 

まさかの店内に入る直前に口にした事がすぐ現実になるとは思ってもいなかったコハルが声にならない声をあげて慌てふためき、ハナコはそのテーブルの上に置かれた空になった二つのパフェグラスと手をつけたばかりのパフェを見て驚愕の表情を隠しきれぬまま声をかけた。

そして、その声をかけられたハスミは若干の困惑とスイーツを食べているところを見られたという羞恥が織り混ざったような表情をしている。

 

「補習授業部の皆さんは……どうしてここに……?」

 

「それよりもハスミ先輩。今ダイエット中とお伺いしていましたが……なぜこんな深夜にこんなに大きなパフェを三つも?」

 

「えっと……サリナさん……?」

 

「ハスミ先輩、先輩はよく言いますよね。『何もしていないのに体重が増えた』と」

 

「そ、そうですね……」

 

「“これ”が!その“原因”なんですよ!!!!」

 

並べられたパフェグラス、そしてまさに今手をつけているパフェを指差してサリナは咆えた。

自分が司法院にいるというのもあるが、ハスミの体重が増えるだのダイエットをしているだのという話が入ってきていても『そうなんだ』で終わっていたのだ。

だが、目の前のこれはなんだ。

以前相談された時に『何もしていないのに体重が増えるのが悩みで』と打ち明けられた時は真剣に考えた結果『ストレスでは……?』という返ししかできずに本気で悩んだ時期もあったというのに。

それがどうだ、蓋を開けてみれば至極簡単な理屈ではないか。

こんな深夜にこれだけのパフェを食べれば体重も増えようもいうものだ。

 

「いいですか!トリニティで販売されている一般的なストロベリーパフェ1つのカロリーは平均415キロカロリーです!そんな代物をこんな深夜に3つ食べるだけでも1245キロカロリー……一般的な女の子が1日に必要なエネルギー量をそれだけで賄えそうな勢いなのに……そんな大きなカロリー爆弾を3個も食べていれば当然体重も増えるでしょう!相談に乗ってから本気で心配していた私がバカみたいじゃないですか!」

 

「……あ、あの、毎日食べているわけではなくてですね」

 

「そういう問題じゃないです!大体このパフェの推定カロリー見たんですか!?一個当たり850キロカロリーと書いてあるでしょう!?本気でダイエットするつもりがあるんですか!?」

 

「ふふ、サリナちゃん。ひとまずそのくらいにしておきましょう?いくら正義実現委員会の副委員長といえど……深夜に襲ってくる悪しき欲望には逆らえなかった、という事です」

 

「あ、悪しき、欲望……?」

 

「そうして欲望のままに振る舞った後、理性が戻った時には取り返しのつかないほどに乱れていて───」

 

「言葉選びに邪なものを感じるのですが……」

 

「でも実際、夜中に高カロリーなものを食べるのって普段の数倍は美味しく感じられるんだよね。私もシャーレで残業してる時はよくカップラーメンとか食べるしね。それとハスミ、隣失礼するね」

 

「あっ、はい。どうぞ……」

 

今にも大噴火しそうなサリナを補習授業部総出で宥めつつ、先生が話の流れを変えるためにハスミの隣に腰掛けた。

 

「と、ところで先生はどうしてこちらに……?自分のことを棚に上げるわけではありませんが、補習授業部の皆さんは合宿中の外出は禁止されていたかと思いましたが……?」

 

「まあ、私が連れ出したんだよね。日中は頑張って勉強してるからご褒美も兼ねて息抜きにどう?って」

 

「……なるほど、先生らしいといえば先生らしい答えですね」

 

それでもルールを破るのはどうかと思うとは口が裂けても言えなかったが、こんな時間にパフェを食べるために外出していた自分も人のことは言えないななどと思いつつも再びスプーンを口に運び始める。

 

「そういうことで、私たちはお互いに何も見なかった。そういうことにしないかい?」

 

「そうですね、私も今日は皆さんに会っていないことにしておきます」

 

お互いに何も見てないし、出会ってもいない。

それがおそらくこの場では最も正しい選択である、はずだと思われる。

 

 

 

 

たぶん。

 




深夜に喫茶店に行って友達とパフェを食べるなんてそんなの絶対楽しいし美味しいに決まってますよね。
まあ、補修授業部のみんなは食べられなかったわけですが(人の心)
それはそれとして30万円の超合金フィギュアなんてどこに飾るんだい先生。
シャーレの部室?そんなの見たかっただけでユウカに怒られない?
まあ大人だもんね、自分の欲には正直になるべきだよ……うん。


この作品についての感想や高評価は常にお待ちいたしております。
つい先日、評価バーが4個目まで赤色で埋まったことに喜びを隠せておりません。
皆様のおかげでこの作品も話数が30話付近まで来れています。
本当に感謝してもしきれません、ありがとうございます。
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