久しぶり作品を書くと「あれ?前回までどんな話だったっけ?」ってなって大変ですね……
『リンネ、ヘリの用意しておいて』
そうサリナからメッセージを送られてきたリンネは何事かと学園中の監視カメラをハッキングしてすぐに状況を理解した。
正体不明の武装部隊がトリニティの校内に侵入している。
「……なるほどね。理由は直接聞かないとだけど私のサポートが必要ってことかあ」
ニヤリ、とリンネの口角が上がる。
“久しぶり”のサリナのサポートが出来ると思わずテンションが上がる。
即座に制服に着替えて司法院のケープを羽織り、ヘリの鍵を握って部屋を飛び出す。
『ミハネ院長には一緒に怒られてあげる』
『ありがとう、すぐに向かうから』
ミハネの個人寮、その屋上のヘリポートにサリナの狙撃用のヘリが駐機している。
「あれ、リンネ先輩こんな時間にどうしたんすか?」
「サリナちゃんからご指名でね、あとミハネ院長に正体不明の武装組織が学園内に侵入してきてるって伝えておいて」
「うぇ!?り、了解です!」
後輩の一年生の子にそれだけ指示して寮の階段を駆け上がる。
ヘリポートへと駆け込んで飛行前点検を手早く済ませてエンジンに火を入れてすぐ離陸出来るようにプロペラを回して待機する。
「……お、これは流石にみんな気が付いたかな?」
寮の中がバタバタとうるさくなるのを感じて階段を駆け上がってくる足音が複数あることに気がついて少し慌てる。
「リンネ!お待たせ!早速で悪いけどすぐ飛ばして!」
ヘリポートに一番に駆け抜けていたのは待ち人であるサリナ。
待ってましたと言わんばかりにリンネは操縦桿を握り、サリナが飛び乗って来た瞬間離陸を開始した。
「サリナ!リンネ!ちゃんと説明をしなさい!」
外を見ればそれはもうカンカンなミハネ院長がヘリポートに上がって来ていた。
流石のミハネ院長も飛び乗ってくることはしないが、その手に杖が握られていないことを見てホッとする。
これならヘリが縛り付けられて離陸できないなんてことはない。
「すみませんミハネ院長!後でしっかり怒られますので!」
「よーし!サリナちゃん専用ブラックホーク!テイクオフ!」
猛烈な風を生み出しながら、二人を乗せたヘリはミハネの寮から飛び立っていく、眼下のヘリポートではミハネが遅れてやって来た司法院生に状況の確認と指示をしているのが見えた。
「サリナちゃん、狙撃の準備しながらでいいからとりあえず簡易ブリーフィングしてもらっていい?」
ヘリの中腹、自身の後方で手早く狙撃の準備を始めていたサリナをミラー越しに見つめて状況の説明を求める。
「ひとまず私たちの勝利条件はティーパーティーのナギサ様の身の安全の確保。ナギサ様のセーフハウスの襲撃と確保に関してはアズサとハナコが担当することになってる。その間にヒフミとコハルがアリウスの襲撃犯を撹乱、ナギサ様の確保が完了し次第、シスターフッドに引渡しをして全員揃ってアリウスの迎撃って感じかな」
「うっわぁ……それを5人でやるって?襲撃犯の規模は?」
「おそらく百数十から二百に届かないくらい、とは言ってたけど」
「正気?このヘリ迎撃武器ほぼ積んでないんだよ?」
「見たところカートリッジも40個くらいか……280発もあれば一応制圧は可能かな」
「一発も外さなければね」
「もちろん、その為のリンネでしょ?」
「当然、任せてよね」
お互いに軽口を叩いて、数分の無言の空間が流れる。
そしてリンネの視界には件の武装集団、ターゲットであるアリウスの生徒達が映し出された。
「うわ、ロケットランチャーにグレネードランチャー……持ってる武器の殺意高すぎない?ちょっと乱暴な操縦になるけど当てれるよね?」
「当然、アズサの話によると赤い服の子達が脅威度高いみたい。リンネの方での補足は出来てる?」
「もちろん、ざっと20人くらいかな?優先狙撃ターゲットはこっちで設定しておくよー」
右耳に装備していた3Dホログラムスコープに映像が出力されて次々とサリナの視界に相手の情報と武器と脅威度が映し出されていく。
流石はリンネ、と関心をしながら愛銃のアストライアを固定して自身の身体もブレないようにベルトで固定していく。
「狙撃用意完了。リンネ、オペレートは任せるよ」
「了解。旋回しながら優先度の高い順にマークを開始、扉の開閉まで3...2...1。オープン!」
カウンドダウンが終わるのと同時にサリナの正面の扉が大きな音を立てて開く。
「こちらは司法院副院長…………いいや、補習授業部の蒼崎サリナ。これより航空狙撃支援を行います!」
『サリナちゃん!』
『航空支援ってどこに……あっ!いた!!』
「ハナコとアズサの作戦終了までは私の視界から見た指示も先生の指揮とともに行うよ。先生はそれに合わせて臨機応変な指揮をお願いします」
『任せて』
先生の返事を受けてサリナの口角は少しだけ上がる。
スコープを除いてリンネの指し示す標的を撃ち抜いていく。
5、10、15……
ヘリのプロペラ音と重なるように撃ち出される対物ライフルの射撃音と同時にひとり、またひとりとその身体を地面に叩きつけられる。
『サリナちゃん、ナギサさんの保護完了しました』
『私とハナコも先生とサリナの指揮下に合流する』
『それじゃあハナコとアズサはヒフミと合流、当初予定していた体育館からすこし広いけど噴水広場に誘導をしよう』
『『『『了解』』』』
『サリナはそのままみんなの支援をお願い。何か相手の動きが分かり次第報告を頼むよ』
「任せてください。リンネ、聞いての通り誘導先は噴水広場。コントロールとサポート任せたよ」
「はいはーい!まっかせてよ、ね!」
機嫌のいい返事と共にブラックホークは大きく旋回する。
地上から撃ちだされるロケットランチャーをものともせずにのらりくらりと躱しながらサリナの弾丸がアリウスの生徒たちを射抜く。
作戦は、補習授業部に取って有利な方向へと進んでいた。
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いったい、どこで間違えてしまったのでしょうか。
ミハネさんにもっと早くから協力を仰いでいれば変わったのでしょうか。
ミカさんにもっと早く相談していれば変わったのでしょうか。
セイアさんに、もっと助言をもらっていれば変わったのでしょうか。
“あはは……えっと、それなりに楽しかったですよ。ナギサ様とのお友達ごっこ”
ハナコさんから告げられたあの言葉に動揺を隠せないまま意識を刈り取られて……目が覚めたら救護騎士団の部室棟にいた。
時間を見ればほんの数分の出来事、ミハネさんに相応しい自分になりたいと気絶に対する訓練をしていたのが功を奏したのか復帰するのはそれなりに早かった。
誰かを信じること、が今の私に足りないこと。
先生が口にしていた『疑心暗鬼の闇の中にいる』という言葉。
それは間違いなかった。
だって、このトリニティでは誰かを疑わないと自分の脚を刈り取られる。
疑って、疑って、疑って、何もかもが敵に見えてしまって。
だって仕方なかった。
私たちがティーパーティーになってすぐにセイアさんが襲撃されて命を落とした。
今度は自分だろう、とそんなのわかっている。
死ぬのは怖い。
本当に怖かったけれど、それでも大事な幼馴染だけは守らなければならない。
例え、大切な友人を切り捨てても。
例え、罪がないかもしれない生徒たちを犠牲にしてでも。
情報を集めて集めて集めて、確証に至らなくてもきっかけさえあればミカさんもミハネさんもその原因を突き止めてくれるはずだ。
その結果、敬愛するミハネさんと敵対することになった。
そして、切り捨てた友人にすらしっかりと報復をされてしまった。
ああ、本当に……
「馬鹿、ですね。わたしは……」
ひとり、そんな事を口にして。
『ミカ様が謀反!?!?』
それでも、止まれない理由がまだひとつ。
9/25日で1周年を迎えた拙作ですがかぶり猫様より本作の主人公『朔月ミハネ』のファンアートをいただきました。
【挿絵表示】
モルガンベースでありながら個性の溢れる感じがたまりませんね……
表情も柔らかくてとても好みです。
あらすじの方にも掲載してるのでたくさん見てくださいね。