ここだけミカの幼少期に幼馴染が2人いた話。   作:今井綾菜

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高評価&お気に入りをいただいた皆様、本当にありがとうございます。
あとがきを使いながら作品内の説明やキャラクターの解説を行なって行ったりしますのでそれも楽しんでいただければと思います


第三話 アビドス自治区へ

 

 

「……キヴォトスの外からやってきた“先生”か」

 

執務室に設置したテレビでも放送していたが、各学園の主要な部活……生徒会に付随する組織や私たち司法院のような部活にも連邦生徒会からのお達しのメールが届いていた。

 

「ヘイローを持たない外部の人間か……よくそんな脆弱な身体でこの都市に来たものだとは思うけどね」

 

何処の情報サイトにも件の“先生”の記事がこれでもかと書かれている。

 

サンクトゥムタワーの権限を回復させた大人。

各校の主要生徒を従えて暴徒を鎮圧し挙げ句の果てには戦車すら数人で無力化した。

厄災の狐ですら裸足で逃げ出した。

そして、超法規的組織、連邦捜査部S.C.H.A.L.Eに所属することになったというそれだけは確定的な情報。

 

連邦捜査部S.C.H.A.L.E

そこに与えられた権力はあまりにも大きい。

学区を跨ぎその地区の規則や法律、規制や罰則を無視した戦闘行為が可能……それもありとあらゆる学園の生徒を彼の任意で自身の所属下に置くことすら可能だと言うのだ。

 

一波乱あるどころの騒ぎではない。

何処かの学園は必ず先生を手に入れようと画策するだろう。

または先生そのものを恐れて排斥しようとするものだっているはずだ。

 

「また面倒なことをしてくれたね、連邦生徒会長」

 

彼女とは司法院長になってから何度か話したことがある。

あまりにも掴みどころのない喰えない人物であり、そしてなによりあの人はなんでも自分で出来てしまったのだ。

そんな人が自身が失踪する前に自身の後任とも捉えられてもおかしくない超法規的権利を与えてまで外部の大人をこのキヴォトスに招き入れること自体何がしたいのかわからない。

 

「どちらにせよ、折を見てトリニティに招待するべきかな?」

 

深いため息をひとつ。

彼女は好きではないが革張りの椅子に深く体を沈めた。

どうしてこんな面倒ごとばかり起きるのかと頭が痛くなってくるがそればかりではいられない。

 

「連邦生徒会長が進めてきたエデン条約、貴方はこの大きな問題に対してどう立ち回るんですか?」

 

虚空に消える言葉に返す者はいない。

私が手を出さなくてもどのみち彼はトリニティに来るだろう。

ティーパーティーが……桐藤さん辺りが必ず一度この学園への招待状を出すはずだ。

 

 

 

 

 

***

 

───数日後

 

トリニティ総合学園司法院長室

 

週末にも関わらずミハネの姿はいつも通り自分の執務室にあった。

他の院生たちが休日を謳歌している時間であっても学園内から集まった司法院への書類を捌いていた。

ただ、司法院へ届く書類は必ずしも司法院で対応する者でないものが届くことも多い。

ティーパーティーで対応するべきもの、正義実現委員会で処理するべきもの、シスターフッドに相談するべきもの、救護騎士団に届け出るもの。

取り敢えず司法院へ出しておけばそのうち対応してくれるという風習があるせいでミハネを始めとした司法院生は日々忙しく駆け回っているのだが……

 

「……だめだ、お腹すいた。がっつりラーメン食べたい気分」

 

時刻は11時過ぎ。

自分でラーメンを作るには時間がかかりすぎるしトリニティ内部にはそもそもラーメン屋が少ない。

行くなら治安が終わってるゲヘナか山海経になるかなと思っていたが……

 

「あぁ……そういえば一年生の時に先輩に連れて行ってもらったアビドスのラーメン美味しかったな。なんて言ったっけあのお店」

 

執務用のPCでアビドスのラーメン屋の検索を掛ける。

まだ人の居る地区はそこそこ飲食店が存在するが……

 

「あそこの大将って確か隻眼の犬顔だったよね」

 

キヴォトスラーメンWalkerアビドス編(web版)のページをスクロールしていけば目当ての店は割とすぐに見つかった。

柴関ラーメン、そうだこんな感じの名前だった。

この学校からの距離と時間を見て、時計とチラリと見る。

 

「往復で3時間くらいなら……まあ許容範囲内かな。書類も今日はそんなに多くないし帰ってきてからでも仕事はできる」

 

そうと決まれば行動は早い。

他の学区に入る時に公的な立場がわかったほうがいいだろうとトリニティの司法院長だと一目でわかる背中に天秤のエンブレムが描かれた漆黒のコートを羽織り、スマホ、学生証、財布、外でも仕事が出来るように司法院用のタブレットを鞄に入れて執務室を出ようとして……

 

「……一応銃も持っていくかな」

 

食事に出かけるだけなのだが、学区を跨ぐとなれば一応持って行ったほうがいいだろう。

左右の腰にそれぞれ自身でカスタムを施したMP5……『Oblivion(オブリビオン)』をぶら下げて今度こそ執務室を後にした。

 

 

 

道中、アビドスの学区内に入ることをアビドス対策委員会……現状のアビドスの生徒会のトップである小鳥遊さんに連絡を入れて許可をもらっておく。

 

『小鳥遊さん、この後アビドスにラーメン食べに行こうと思うんだけど一応学区を跨ぐから許可をもらっておこうと思って』

 

『ミハネちゃんがアビドスに来るなんて珍しいね〜行くのは柴関ラーメンかな?』

 

『そのつもり、今からトリニティ出るから1時間後くらいかな』

 

『うんうん、うちの子たちにも言っておくからゆっくりして行ってね〜』

 

モモトークを閉じてそのまま駅の改札を抜ける。

『特急・アビドス行き』の電車に乗り込んでアビドスへと向かっていくのだった。

 

 

 

 

 

電車に揺られながらもタブレット内に転送されているデータを閲覧しながらそれぞれの部署毎にデータを分けつつ、司法院で対応するべき案件については明日の朝に司法院生に届くようにメールを送っていく。

 

───次は終点、アビドス駅です。ご乗車のお客様はお忘れ物のないよう、お荷物の確認をお願いいたします。

 

ハイランダー鉄道学園の生徒のアナウンスが私1人しかいない列車の中に響く。

トリニティからアビドスに行くまでの間に幾つかの駅に停車したがアビドスの一つ前の駅の時点で私1人になってしまったのだ。

 

駅が近づいて来たことでタブレットを鞄に仕舞って残りの数分を心地のいい揺れに身を任せて駅に着くのを待った。

 

 

 

 

 

電車を降りて駅を出ればそこは見慣れた街並み……ではなく駅の近くにまで砂が舞っている街に出た。

 

「……おかしいな、2年前はここら辺に砂は来てなかったはずだけど」

 

人がいないということはない。

流石に駅がある場所はアビドスでもまだ数千人ほど人がいるみたいだが、アビドス高校のある辺りにはほぼ人は住んでいない。

柴関ラーメンも街を外れた場所にあるからここから暫く歩く必要がありそうだ。

 

一瞬車をレンタルすることを考えたが歩いて1時間かからない程度なら別に構わないだろう。

 

スマホのナビを頼りにしながら目的地へと歩き出すのだった。

 




装備解説
Oblivion(オブリビオン)
ミハネが持つMP5K二丁の名称。
カラーリングが白がベースでピンク色のラインが入った物と紺色に青いラインが入ったものを使用している。
彼女曰く、カラーリングは彼女の幼馴染を連想させる物を絶対に忘れないために使っているのだとか。


ネーミングの元ネタは某鍵の形をした剣を扱うゲームから大人気武器の英語版表記より
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