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『ヒナ委員長……私たちは今便利屋68を捉えるための作戦を展開中で』
「便利屋4人を捉えるために中隊規模の戦力の動員は必要ないわ、どう考えても目的が便利屋だけとは思えない。もう一度聞くわアコ、ここで何をしていたの?」
『……えぇと、そのぉ……』
普段なら彼女たちが捉えるべき相手に向けられる明確な怒気が自分に向けられていることで動揺するアコはそのまま言葉を続けることができなかった。
「……私たちトリニティの生徒が1人、先日先生に接触して先生に対するパイプと情報を手に入れた。それ以前に数週間前、彼がこのキヴォトスに来訪した際には正義実現委員会、風紀委員会、セミナー、自警団の生徒を率いてサンクトゥムタワーの暴動を鎮圧したとも報道されていたね。それに加えてエデン条約が控えたこの時期だし……目的は初めからはっきりしてるでしょ」
ヒナの視線がアコが映ったホログラムから爆撃された柴関の店舗の方へと向く、そしてその先にいた先生と目が合った。
爆撃された当人がニコニコとヒナに手を振っているのを視認したヒナは大きくため息をついてイオリ、チナツ、アコの順番に視線を流し……
「風紀委員、今すぐ武装解除して学園に戻りなさい。迫撃砲の被害が便利屋にしかなかったこと、トリニティの重鎮がいたにも関わらず確認をしないで攻撃したこと、何より連邦生徒会所属の外部からやって来た先生への敵対行為とも取れる攻撃。詳しい話と説教、反省文の提出は学園に戻ってから伝えるわ」
「えっと、委員長は……」
自分でしでかしたことへの責任と学園に帰ったら待っている何十枚になるかもわからない反省文への思いを馳せながらヒナはどうするのかとイオリは問いかける。
「あなた達がした攻撃への補償と謝罪は誰がするの?わかったら早く部隊を纏めて引き返して」
『了解しました……イオリ、チナツ、部隊を纏めて学園まで帰って来てください』
アコの指示で撤退していく風紀委員会を見送って、今になってお昼を食べ損ねたことを思い出す。
帰りに適当に買って帰るかと思考しながら銃をホルスターに戻した。
「ミハネ、怪我はない?」
「迫撃砲を受けた子達の席と私のいた場所は少し離れてたからね。翼にすこし煤が付いたくらいだよ」
私の言葉を聞いた後に私の姿を確認してホッと安心したような表情を見せる。
「そう……それならひとまず良かった。見たところ先生と店主にも怪我はなさそうだしお店の補償とアビドス高校への謝罪で済みそう」
「ヒナも大変だね」
「ミハネほどじゃないわ。極論だけど、私の場合は暴力で解決するけれど司法院ともなればそうはいかないでしょう?」
「トリニティだからね……司法院もそれなりの戦力を保有してるけど基本的には言葉と書類を使って解決しなきゃならないから」
お互いに大変なんだと再確認してクスリと笑い合う。
「近いうち、今回のお詫びをさせて。司法院長への謝罪をすると言えば1日くらいは時間を作れる」
「それならD.U.地区にでも買い物に行こうか。私の方からもスケジュール決まったら連絡する」
また会おうと約束を交わして、私は先生と砲撃の音で駆けつけたアビドスの生徒の元へと向かっていくヒナを見送る。
さて、トリニティに帰ろうと踵を返して歩き始めたところで私の方へと走ってくる足音が2つ聞こえた。
振り返るとそこには柴大将と先生が息を切らしながら走って来ていた。
「大将とシャーレの先生……」
「まだ礼も言えてないのに帰られちゃ困るってもんだろ」
「私も、君がいなかったら少なからず怪我をしていたからね」
「民間人を守るのも私の役割ですから……まぁ、自治区は違いますが大差ないでしょう」
2人を守った翼はヒナにも言った通り少し黒くなってしまったが翼専用のエステに行けば色も艶も元に戻るだろう。
「そういうわけにはいかねぇよ。店はダメになっちまったがそのうちまた来てくれ、一杯ご馳走するからよ」
そういいながらサムズアップする柴大将はおそらく分かったというまで引かない性格だろう。
わかりました、と頷けば大将はそのままヒナやアビドスの皆のところに戻っていく。
「君のことは……えっと名前で呼んでいいのかな?」
「そうですね、それで構いませんよ」
「そっか、改めて助けてくれてありがとうミハネ」
名前は教えただろうかと思ったが私と大将の会話を聞いていたのだろうと納得して彼の言葉も受け取った。
だが、やっぱり話の盗み聞きも良くないだろうと軽く冗談混じりにでも注意してみようかと口を開こうとしたら……
「あっ、ちなみにミハネの名前は大将との話を聞いて知ったわけじゃないよ!」
「……?ではどこで?」
そんな素朴な疑問、アビドスのみんなから聞いたのか……それともヒナの口から私の名前が出たのか。
そのどちらでもいいかと思っていたのだが、その返答は私の想像を遥かに超えた返答が返って来たのだ。
「私はキヴォトスにいる生徒の顔と名前は
「───は?今なんて?」
この男は今なんと言った?
あまりにも理解できず思わずそんな、言葉にもならない言葉が出た。
「ミハネにここで会えるとは思わなかったって……」
「そうじゃなくて、いま……キヴォトスの全生徒の名前を覚えていると言いましたか?」
私の知っている統計だけで数百万人は下らない……途方に暮れるような人数の生徒の顔と名前を全て一致させている?
だというのに、だというのにこの男の言っていることは事実だというこの上ない確信が間違いなくある。
「……先生は数週間前にキヴォトスにいらしたばかりですよね?」
「うん、そうだね」
「なのに数百万人に及ぶ全生徒を記憶しているんですか?」
「まあ、そうなるね」
「ありえない、そんなのセミナーの生塩さんだって……」
ミレニアムの生塩ノア。
彼女はほぼ間違いなく“絶対記憶”に近しい能力を持っているはずだ。
その彼女でさえそんな馬鹿げたことが出来るかと問われれば怪しいだろう。
いや、それ以上に人の記憶の領域が間違いなく足りないはずなのだ。
「うん、多分彼女もやろうと思えばできるだろうけど。あまりお勧めはできないよね」
「何を言ってるんですかあなたは……私ですらトリニティの生徒の名前を覚えるだけで手一杯なのに」
「それも十分凄いことだけどね」
このまま話していてものらりくらりと煙に撒かれるだけだと判断した。
ならば、あとは忠告でもした方が建設的だろうか。
「はあ……いや、この話はとりあえずいいです。先生もあまり面倒ごとには首を突っ込まないことをお勧めしますよ。文字通り死にますよ?」
「あはは、まあその辺りは気をつけるよ。それと私を守って汚れた翼はお店に行ったりして手入れするのかな」
「一応そのつもりです。行きつけのサロンがあるのでそこで手入れしてもらおうかなと思ってます」
「なら、請求はS.C.H.A.L.Eにあげておいて。私の方で支払うからお願いね」
「……なら、お言葉に甘えさせていただきます。それと、この間は当校の生徒がお世話になったようで……それに対しては後日ティーパーティーから何かしらの形で感謝の意を込めた品が送られてくると思います」
「それは私の方も手を貸してもらったから気にしなくていいんだけどね」
どこか掴みどころのない笑みを浮かべる先生に彼をこのキヴォトスへと招致した連邦生徒会長の姿が重なる。
あの人もそんな笑みを浮かべる人だった。
本当に笑っているのかわからない何処かふわっとした笑い方。
私はあの人が嫌いではなかったがあの人のあの笑い方が本当に苦手だったのだ。
「取り敢えず、私はトリニティに帰ります。学園に来た際には是非、司法院にも寄っていってください。お茶やお茶菓子くらいはいつでも出せますので」
「うん、その時はお邪魔させてもらうよ」
その返事を聞いて私は彼から逃げるようにその場を去る。
完璧だった人が呼んだ完璧ではない人。
対極にいるはずの彼はどうしてかその姿が連邦生徒会長と重なって仕方なかった。
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トリニティに戻った私を待っていたのは私の姿を見て卒倒する司法院の面々とハイライトの消えた瞳で誰にやられたのか問い詰めてくるミカとサリナの姿だった。
まさか馬鹿正直にゲヘナの風紀委員にやられたとは言えずいざこざに巻き込まれただけだと誤魔化すのに小一時間を要することになったのはまた別の話。
「仕事なんていいから今すぐエステ行くよ!」
「……はーい」
すぐに仕事に戻ろうとした所これまたミカに引っ張られて私とミカ行きつけのエステへと強制連行されたのだった。
ちなみにエステ代の請求書はしっかりS.C.H.A.L.Eに送った。
人物紹介
朔月ミハネ
容姿
銀のロングヘアにインナーカラーにロイヤルブルーの髪を持つ。
顔立ちはFate/Ground Orderに登場する救世主トネリコをイメージ。
瞳の色は青空を連想させるようなブルー。
司法院の制服として漆黒のスーツを身に纏い、更に院長の証として胸元に天秤のバッジをつけた漆黒のロングコートを羽織っている。
彼女の翼はハスミと同等の純白の大翼であり、彼女の強すぎる神秘に比例して非常時には自身を守る盾にもなる。
彼女のヘイローは彼女の在り方、彼女に宿る神秘を元に水色の天秤の形を有している。