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トリニティ総合学園ティーパーティーパテル分派執務室。
パテル分派、トリニティにおける最大分派の一つであり、ティーパーティーにその席を設ける一大派閥だ。
そんな大派閥の首長であるミカもそれなりにやらなければいけないことは多い。
もとよりミカ自身が書類仕事や派閥内のゴタゴタの対応をするのが得意ではないが、それでも出来ないわけではなかった。
ティーパーティーや司法院をはじめとする派閥や組織の首長は基本的にその圧倒的な業務内容によって通常授業の免除や屋敷一つをそのまま一人の寮として与えられたりとある程度その責任や業務量に応じた特権が与えられている。
……つまりは与えられた特権に比例するように、忙しさは増すということなのだが。
「ミカ様、この書類の決済をお願いします」
「あー、うん。取り敢えずそこに置いておいて……後で見ておくから。あと少し休憩してきていいよ?朝からずっと働き詰めでしょ?」
パテル分派所属のティーパーティー部員。
つまりはミカに付き従う生徒の数もそれなりにいる。
そんな彼女達は交代交代で日々ミカの業務やおつかいに奔走しているのだ。
「でもミカ様も朝から書類仕事を……」
「うんうん、まあそれは気にしなくていいよ。時間見つけて司法院に遊びに行くから☆」
「……そうですか、それでは失礼致します」
「いってらっしゃーい。他の子達も取り敢えず休憩してきていいよ」
ミカのその言葉に最初の1人が退室したことに続いてミカへと一度会釈してから退室していく。
そして誰もいなくなった部屋の中でミカはミハネに言われたことを思い出していたのだった。
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トリニティ総合学園司法院長室
「ミハネちゃんって司法院の子達の名前って全部覚えてる?」
「何当たり前のこと言ってるの、自分の所属する組織の子達の名前と顔くらい一致させておいて当然でしょ」
「えー、司法院って50人くらいいるじゃん。本当に全部覚えてるの?」
不意に問いかけたその質問へ当たり前のように返ってきた答えにミカは信じられないといった表情でまた質問を返した。
「たった50人だよ。ねえ、ミカ……ミカは昔から人の名前と顔を一致させるのが苦手だけどね。それでもパテルの首長として自分の執務を手伝ってくれる子達、自分を慕ってくれる子達の名前は絶対に覚えておかなきゃダメだよ」
「うーん、そういうものかなぁ」
「そういうものなの。例えば私や桐藤さんがミカみたいに人の顔覚えるのが苦手でミカの名前忘れてたりしたら嫌でしょ?」
ミハネから言われた事を想像してゾッとする。
ある日突然、自分が今まで他の子にとっていたような態度でナギサやミハネから『えっと、だれだっけ』なんて言われたら。
「多分耐えられないと思う」
「だよね、たぶんミカの周りにいる子達は顔には出さないけどきっと名前を覚えられてない事、気にしてると思うな。それに組織のリーダー……首長として最低限顔と名前と一人一人の能力は覚えておいて損はないよ」
「パテル分派の子達だけで何百人いると思ってるのー?」
「私はトリニティの生徒は全員頭に入ってるけどね」
「それはミハネちゃんがおかしいだけだよ☆」
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「やっぱり覚えておくべきかな?」
手に取ったのはパテル分派の生徒が記載されている分厚いファイル。
あくまで“苦手”なだけで“出来ない”訳ではないのだ。
地頭の良さはナギサやミハネも認めてくれているのだからこのくらいいつもよりもやる気を出せばなんてことない。
休憩から戻ってくるのはどのくらいかわからないがひとまず今日いる子達を覚える分には充分な時間だ。
「……ふーん、この子は書類仕事が得意でこっちの子は経理が得意なんだ。じゃあ今日の仕事も午後からは配置変えた方が良さそう」
幸い人の効率的な動かし方はミハネとナギサを見てよく知っている。
優秀な幼馴染を持つと欲しい技能がある程度手に入るのだから大変助かる……まあ、やるかやらないかは別としてだが。
次々とページを捲り、そこに記載されている内容を自分の中に刻み込んでいく。
顔、名前、特技、好きなものetc……
1時間が経過する頃には今日手伝ってくれている10人と明日以降の1週間の業務を手伝ってくれる子達の情報を頭に叩き込んでいた。
後は午後からの業務を指示した手紙でも残しておけば別に構わないだろうとサクッと書き込んでそれぞれのデスクに置いておく。
「さーて、ミハネちゃんのところに行こ☆」
大きく伸びをして執務室を後にする。
今日はよく仕事したなと気分がいつもに増してよかった。
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一方、食事を終えて軽くティータイムを終えたティーパーティーの生徒、つまりミカを支持するパテル分派の生徒達だが……
それぞれが自分のデスクに置かれた手紙を見て動揺していた。
それはもうこなくていいとか役に立たないとかそういう話ではなく……
「ミカ様が私の名前と特技を覚えていてくださっている……?」
誰かが言った言葉がその日いた当番の生徒達に伝播する。
普段のティーパーティーたらんとする仕草など全く気にしないかのように飛び上がって喜んだ。
自分たちの首長が自分たちのことをしっかりと認知してくれた。
中には涙を流すものまで現れる始末だった。
今までも執務が行き詰まったら気分転換になることを指示してくれる方ではあった。
例えば簡単なお使い、書類の運搬や他の分派への伝言など多岐に渡ったが無茶はさせない方ではあったのだ。
「ミカ様……一生ついていきます」
この学園で自身が信仰する首長に認知して貰っている。
それはパテル分派の生徒達には何にも代え難い自信と幸福に繋がるのだった。
例えミカにとっては気まぐれと幼馴染に言われたからやったこと。
だが、それは確実に本来の歴史から外れるには充分な出来事だった。
補足説明
聖園ミカ
拙作ではナギサとは別にミハネがいることで本来よりも頭を使うことを覚えた。
地頭が決して悪い訳ではなく、ただめんどくさいことはやりたくない精神が垣間見えていたことからミハネがそれを修正するようにそれとなく軌道修正をしているため。
今回パテル分派の生徒をティーパーティー所属の生徒から覚えていくことを開始した。