ブラッキー好きがブラッキー   作:南無雨

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第一話「現実」

「なんじゃと? こんな所にイーブイなんぞ生息しておったかのぉ?」

 

 そんな事を言いながら迫って来るヒゲを生やしたおじさん。手には赤と白で出来た球を持っている。

 やばい、あのボール何だか凄く嫌な予感がする。

 

「だがこれも調査じゃ。捕まえて損はしないじゃろう。ついでに最近、旅に出る歳の女の子が一人おったしのう」

 

 と言って球を投げて来るおじさん。

 

『イタッ!』

 

 ボールは頭に当たると、空中に跳ね返る。それから、当たった反動で壊れたのだろうか、赤と白の部分がきれいに割れると…………俺は真っ暗な所にいた。

 

 目の前には、拳だいの赤いボタン。

 

 押したい。なんだか無償にこのボタンが押したい!!!!! 

 

 俺は後先考えずに、そのボタンをグーで殴りまくる。

 一秒に二回ぐらい押せたと思う。

 

 それを10秒ぐらい続けていると、俺は体が浮いたような感覚におちいり、気づいた時には、先程までいた場所に戻る。

 

「やはりモンスターボールじゃ捕まえにくいかのぉー。じゃからといって、ハイパーボールで捕まえたポケモンを女の子に渡すわけにはいかんしのう。それもういっちょ」

 

 おじさんは、俺が出たと同時に新たなボールを用意していたようで、すぐにそれを投げつけて来る。

 

『アイタッ!』

 

 そして先程と同じような所にまた来ると、今度もまたボタンを連打する。

 

 それが22回ぐらい繰り返されただろうか。

 俺が出て来るとおじさんはまた、新たなボールを手に持っていた。

 

 あたりには、赤と白のボールが散らばっている。あれだけの物量を一体どこから出してしるのだろうか、不思議でたまらない。

 

『ハぁ、ハぁ、ハぁ、ハぁ』

 

 俺は連打のしすぎで、すでに息が切れている。

 

「なかなかしぶといのぉ。じゃが後77回は大丈夫じゃからのゥ。ホッホッホ」

 

 そういって新たなボールを投げて来るおじさん。

 

『もう……ダメだ』

 

 俺は限界の体力でも、それでもボタンを押したくなり、2秒に一回のペースでボタンを押す。

 これでまた俺は、手にボールを持ったおじさんの前に出るのだろう。

 そう思っていたのだが、今回は違った。

 

 カチッっと大きな音が鳴ると、部屋に明かりがつき、俺は小さな小部屋に突っ立っていた。

 

 

 

『ここは……どこだ?』

 

 小部屋には窓があり、窓を覗くと外の景色が見える。

 そこには、先程までよりも更に大きくなったおじさんの顔があった。

 

「それにしても、こんな所でイーブイを捕まえるなんて、やはり長年研究者は続けるものじゃのゥ」

 

 あれ、これ日本語?

 さっきまで適当にきき流していた、おじさんの声を意識して聞いていると、どうやら日本語をしゃべっているようだ。

日本語をしゃべっているって事はここは日本……ではないよな。

ていうかさっきおじさんは何て言ってたのだろうか。

研究者がどうのこうの言ってた所しか聞いてなかった。

本当になんて言ったんだろうか。

 

『ふわぁーぁー』

 

 なんだか異様に眠たくなってきた。日本語とか、異世界とかがどうでも良くなってしまうぐらいに……。

 

『ベッド、ベッド』

 

 早く寝たいと欲求から、部屋にベッドが無いか探す。

部屋は、床が鉄の様なプラスチックの様な物質で出来た物で、壁も同様に。タンスも無ければ、トイレもベッドも無い。この部屋に唯一あるとするならば、それは正方形の布団だけだった。

 俺は部屋の隅にある、正方形の布団に寝転がり、これからの展開を朝起きてから、流れに任せる事にするのだった。

 

 

 

 

 朝。起きるというより起こされた。

 

 いきなり、部屋の外に出されたのだ。

 起こされたというのに、やけに目と頭はさえる。

 

 そして目の前には昨日の巨大じじいと、じじいより少し小さい女の子。

 俺は昨日のあくどくボールを投げて来たおじさんを恨みがましく見上げた。

 女の子が屈んで目線を合わせてくる。

 

「これからよろしくね!」

 

なにがこれからよろしく何だろうか。

 

「それにしても、本当にイーブイだけでよいのか? 今ならフシギダネが一匹おるのじゃが。わしはお主に、イーブイをやるとは言ったがフシギダネのおまけで上げようと思っとったのじゃぞ?」

 

ん? イーブイ? フシギダネ? 何言ってんだこいつら。ここは魔法の世界なのに。バカだな~。それとも何かの技名かな? 

巨人が「フシギダネ」って言ったら口からタネマシンガン見たいのが出たりしてね、うけぇーる。………………はい、すいませんでした。ここ、絶対ポケモンの世界ですね、わかります。目から出て来るこれ、なんだろ。

 

正直に言うと、モンスターボールに入れられるまでは本当にわからなかったが、それからおじさんが言ってた事は全部ハッキリと聞いてたんだよねぇ。

もう、現実を受け入れられなくて寝ちゃった。

 

「いいの。私、この子を気に入ったんだもん。それに始めに仲間にするって決めたポケモンを使っていくって決めてたんだよ?」

 

「そうか。そこまで言うのなら何も言うまい。トレーナーがこだわりを持つ事は大事な事じゃからの」

 

「うん!ありがと。じゃあ名前決めてあげなくちゃね。う~ん名前はねぇ……うん、イウビーにしよ!これからよろしくね、イウビーちゃん!」

 

そしてどうやら、このネーミングセンスがあからさまな女の子が俺のご主人らしい。

 




という事で、物語の始めが終わりましたね。
ちなみにイウビーと言うのは、イーブイ→i-bui→iub-i→iubi-→イウビー、ですね。

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