卑面のセスタ   作:珱瑠 耀

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だから見切り発車が過ぎるんだよ、私は





せや、アビドス曇らせたろ! 1

 

 

 

『エネルギー指数上昇……これ以上は、貴方の身体がっ!』

 

 ———知ってるよ、アヤネ。こういうのは、私が一番解ってる

 

「何してんのよ!早く()()止めて戻ってきて!!」

 

 ———なはは、手ぇ無くなっちゃったから目隠し出来ないや、ごめんねぇセリカ

 

「こんな事で自分の命をっ、無駄にしないでくださいっ!」

 

 ———無駄じゃないよ、ノノミ。必要なことだし、ね?

 

 ———だから、ホシノ。今すぐに皆を退かせて欲しいなーって

 

「……悪いけど、皆が動いてくれないから私も動けないなぁ」

 

 ———ありゃま、そら大変だ。ほら、シロコからも何か言ってよー

 

「ん、無理」

 

 ———即答かい……これじゃあ、先生達も、どうせそうでしょ?

 

「"うん、大人として、ここで背を向ける訳にはいかないから"」

 

皆の焦燥と後悔の混ざった声が、もうまともに聞こえないのに。

 

これ以上出力を増やせば、私の身体は崩壊して跡形もなくなる。

 

痛みもなく片足が崩れ落ち、それを無理矢理再生しようとしてその場に質量のないエネルギーが蓄積する。

 

それを千切れてしまいそうな脳みそで必死に抑え込み、暴発しないようにその場に停滞させる。

 

目の前で蠢く無機物の蛇は未だ健在。

 

奴も私に最大級の警戒をし、その背中からミサイルを、口からはビームを発射させようと力を溜める。

 

そうして奴に向けていた腕すらも無くなり、胴体だけになった直後、それは成った。

 

 

 

「———ほら、消し飛べクソ蛇」

 

 

 

『乖離』によって断絶されているのに感じる膨大な揺れ。

 

周囲の音を置き去りにして穿く尋常じゃない量のエネルギー。

 

それは眼前の敵———ビナーの顔面を跡形もなく消し飛ばすには充分すぎた。

 

軽くなった身体は容易く吹き飛び、断絶された壁に背中を打ち付けてズリズリと凭れ掛かるようにズレた。

 

「っ、アヤネ!ビナーは!?」

 

『ビナーの反応、完全に消滅してます!ですが、ヒガンさんの状態が……!』

 

帰ってきたら通信に歯噛みしたセリカが私の後ろに駆け寄って叫ぶ。

 

「ちょっとヒガン!この壁消せないの!?もう終わったじゃない!」

 

ガンガンと叩く音が響いてもヒビ一つ入らない壁に、ついにセリカの声が弱々しくなる。

 

「だからっ……帰る、のよ……っう、ラーメン、食べるって……!」

 

 ———悪いね……ラーメンは、暫く延期になるかも

 

「なんでそんなっ、ごどぉ……いうのよぉ……」

 

 ———眼が、もう見えないんだ

 

「———ぇ」

 

私の言葉に、セリカだけではない、他の面々からも息を呑む音が聞こえた。

 

 ———私は今、目隠しを着けずに目を開けてる。でも、乖離も、構築も、もう何も反応しないんだ

 

神秘の発動が出来なくなった身体を起こしても、背中の硬い感触は変わらない。

 

 ———まぁ、解り切ってたよ。こんな()()()、いつかは無くなるって

 

 ———でも、さぁ……最期の最期に、皆と触れられないなんて……あんまりじゃないか……

 

それを聞いてか、セリカの鼻を啜る音が大きくなる。

 

私の神秘の余波から皆を守る為に造った壁が、今となっては死に目に遭えない霊柩車のようだ。

 

だんだんと呼吸が浅くなり、ぼろぼろと風化する身体に倣うように意識も遠くなってゆく。

 

そんな中で、最期の言葉だけはやけに簡単に出た。

 

 

 

 ———なんで、こんなものを持ったんだろうな

 

 

 

 

 

————————————————————————

 

 

 

 

 

さて諸君、今は多分初めましてと言うべきなのだろう。

 

ここは確かトリニティ郊外の森の中で、私の名前は傷勿(きずな) ヒガン、元アビドス高等学校生徒だ。

 

このキヴォトスで元学校生徒なんて、数える程度しか居ないのに私の名前なんて聞いたことがないというそこの貴方。

 

そう、私は転生者である。それもTSの。

 

普通に生きて普通にブルアカにハマって普通に事故死した私は、次に目が覚めた時には目に包帯を巻いて砂漠の上で全裸で寝ていた。

 

そう、そこはアビドス砂漠地帯だった。

 

ならばアビドス高等学校生と会えるのでは!?という考えのもと神秘の検証がてら裸で砂漠をのっしのっし歩いていたら、食料がない事を忘れて道の途中で倒れ*1

 

そこをブルアカのメインヒロインとも言える砂狼シロコに拾われ。

 

アビドス廃校対策委員会の一員(非公式)となり。

 

数ヶ月後に来た先生と東奔西走し。

 

 

対策委員会と先生を盛大に曇らせたところである。

 

 

む、『さっき明らかに死んだような感じだったじゃないか』って?

 

それはそうなのだが、これに関しては私の持つ神秘に関係する。

 

それを話すにはまず私の容姿から話していこうと思う。

 

現在の私の姿……は、それはもうまるっきりあの人だ。

 

そう、呪いの力で敵を薙ぎ倒していくあの国民的アニメ「呪術◯戦」の、その作品内最強の呪術師である五条悟をそのまま女にしたような姿。

 

髪型は学生時代のようなバッサリと下ろした感じだが、目元はサングラスではなく教師時代のように包帯を巻いて隠している。

 

身長157cm、体重は平均より軽め、スリーサイズは上から中、小、中といったところだろうか?

 

そんな私の元となった五条悟の持つ力は「無下限呪術」と言い、数学的パラドックスである「アキレスと亀」を現実に起こしたもの、と言われる。

 

これは「どれ程俊足な者(アキレス)であっても、100m先で進む亀の居る位置にアキレスが着いた時点で亀はそれよりも先に進んでいる」というゼノンが提言した論。

 

その為アキレスが1m進めば亀はそのアキレスから0.1m進んだ地点に居て、アキレスが0.1m進めば亀はアキレスから0.01m進んだ地点に……という事が起き、最終的に「アキレスは亀に追いつく事が出来ない」という結論に至るというものだ。

 

うーむ、よくわからん。

 

私も完全に理解した訳じゃないので、近付く程に距離が遠くなってゆくものだとざっくり結論付けている。

 

その力を、私は二つの神秘という形で落とし込まれている。

 

一つ目が彼の「術式順転」の「引き寄せる力」ベースにした「構築」という神秘。

 

これは文字通り物質の構成を解析して創り出す、というもの。

 

五条悟の術式順転「蒼」は無下限呪術を負の方向に強化させた結果、強力な引き寄せ効果をある一点に反応させる。

 

私の場合は自分の精神力のようなものをエネルギーとして消費し、「構築」の神秘で強化する事によって「実体を持たない物質」として変換し、その物質を自分の望むものとして創り変える、というものだ。

 

だから、私がある一点に「虚無」を構築すれば、原作のような術式順転を引き起こす事も可能になる。

 

そしてもう一つが、「術式反転」の「弾く力」をベースにした「乖離」という神秘。

 

こちらは逆に干渉した物体を分解して無力化させるもの。

 

原作では無下限呪術を正の方向に強化する事で、蒼とは正反対の発散効果を得て対象を弾き飛ばす。

 

自分の精神力を使用したエネルギーを「乖離」の神秘で強化すると、そのエネルギー自身が「拒絶する性質」を持つようになり、一点で解放する事でその場にある物質を切り離したり分解したり出来るようになるのだ。

 

ある程度指向性を制御すれば原作のような術式反転以下略。

 

そんな原作と私の相違点をさらに上げるとするならば、「六眼」の存在意義というべきだろうか?

 

元々六眼は緻密な呪力操作を可能にしたり呪力の視認だったりと無下限呪術を行使したり相対した時のサポートをしてくれる要素だが、私の六眼は左眼に「構築」、右眼に「乖離」の神秘をそれぞれ有している。

 

これがまた面白く、眼の開閉で神秘の出力を調整できるのだ。

 

流石に目を開けば暴発するなんて事はないが、「眼の開き具合」事がトリガーになってくれているので操作がとてもやりやすい。

 

眼を閉じている際は神秘の発動が自分の周囲5m内に制限されてしまうものの、眼を閉じて五条悟らしく目に包帯を巻き、視界を「構築」すれば景色は見えるし生活にも問題はない。

 

虹彩も原作基準なのかとても美しい色であり、マジで女版五条だなと思っている。

 

……『さっきの眼が見えないんだって発言は?』って?あぁ、アレ嘘だよ。

 

普通に眼を開いて神秘を発動しないように出力をゼロにしただけだから。

 

元々皆には「眼を開くと神秘が暴走するから包帯で抑えてる」って言ってたし、何も眼を開くと絶対に神秘を発動しなきゃいけない訳でもないからね。

 

死んだように見せかけてトリニティ郊外にいるのも全部計画通りと言うべきだ。

 

あの後皆の前で「乖離」を使い身体を分解した後、別の場所にあるスペアの「構築」を利用して私の身体をそこに転移(のようなものを)させたのだ。

 

スペアの「構築」とは、摘出した私の左眼。

 

「乖離」を使って左眼を摘出して、摘出した左眼を使って自分の身体に左眼を再構築して、抜き取った方を包帯で包んで保管するだけで、スペアの「構築」が一つ出来る。

 

普通に遠隔で使用できるので、乖離して死んだようにみせかけて普通に別の場所に移動する事が可能である。

 

ただ衣服は適用されないようなので、またもや全裸である。

 

森の中に置いていたから良かったものの、これが街中にあったら普通に露出狂だ。

 

しかも雨上がりなのか身体も泥んこ。

 

いやまぁ私の計画的にこれはありがたいのだが、纏わり付く泥がちょっと気持ち悪い。

 

でもこの後見つけてくれる誰かの為にここは我慢……!

 

 

 

………長々とここまで話してきたが、そろそろここまで曇らせられるようになった経緯を話すべきだろう。

 

ご飯に関しては「構築」でどうにでもなるので、ゆっくり振り返っていこうと思う。

*1
後日普通に神秘を使って生成出来た




不定期投稿かも


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