『さしすけ』ってなんだよ 作:Ex falso quodlibet
腰が痛いので初投稿です。
———星の子の家、入り口前。
突如としてとてつもなく大きな呪力を感じたことで、呪霊を出して警戒する。だが、その心配は杞憂に終わった。頭上に差した影の主が、悟だったからだ。
「……悟、か?」
「ああ。任せっきりにして悪かったな、傑」
悟の外見は全く変わっていない。にも関わらず、直ぐに悟だと判別できなかったことには理由がある。
(呪力の質が、別れるまでと180度違う。一体、何があった———?)
私が舐めるように彼のことを見つめているのを、悟は疑問に思ったらしい。
「? どうした」
「い、いや、問題ない。っそうだ、瓊弌は?!」
私と星漿体を逃がすために、囮となった瓊弌。悟に気を取られたが、瓊弌もまた、私にとっての優先事項だった。
「ああ、アイツも生きてる。生きてんのか死んでんのか分かんねえくらいだけどな」
「っ、良かった……」
「それより、星漿体どこに隠した。せめて遺体くらいは回収しねえとだろ」
「遺体? 理子ちゃんは死んでいないが……何を言っているんだ?」
「あ?……ああ、そういうこと。なんだ、星漿体死んでねえのか。良かったじゃねえか」
この時の悟は、酷く薄情な人間に見えてしまった。まるで悟が、誰も彼もを下だと捉えているような、そんな感覚を得た。
「なら、とっとと回収に行こう」
「あ、ああ」
悟に半ば押されるようにして、私と悟は盤星教の本部、星の子の家へと這入っていった。
「成る程。木を隠すなら森の中ってか」
「そう、盤星教の本部だ。今、彼女は遺体として安置されている」
「それ大丈夫なのか?」
「呪霊に囲ませている。人の気配にオートで反応する呪霊だ、万が一にも問題はない」
「そうか、なら良い」
教会の地下礼拝堂に匿った理子ちゃんを保護しようと、私たちは地下へと続く階段を降って行く。そして礼拝堂に繋がる扉を開いて、私は愕然とした。
「……これ、は…………」
「螟ゥ蜈?ァ倥↓荳咲エ皮黄繧呈キキ縺懊k縺ェ??シ?シ!!!」
「菴墓腐譏滓シソ菴薙′逕溘″縺ヲ縺?k?!」
「蜷悟喧繧定。後o縺帙※縺ッ縺?¢縺ェ縺!!」
盤星教の教徒たちが発している言葉を、私は理解することができなかった。ただ、彼らの表情から推察する限り、理子ちゃんに罵詈雑言を浴びせていることだけは分かる。理子ちゃんは、私が彼女にお願いしていた死んだ振りをすることも忘れて、ひたすらに泣きじゃくっていた。
(最も感受性豊かな時期である中学生の女の子1人を、大の大人が寄って集るように責め続ければ、こうなることはわかっていた筈だ。なのに、何故私は、彼女をここに置き去りにした?)
「傑」
「っ、悟……?」
悟は教徒たちの言葉を無視して、理子ちゃんの手を取り、こちらまでやってくる。そして私の下まで歩いてくると、徐に口を開いた。
「コイツら、殺すか?」
「今の俺なら、多分何も感じない」
私は、その問いを直ぐに否定することが出来なかった。
非術師は、守られるべき存在である筈なのに、これでは呪詛師と同じではないか。そう、考えてしまったからだ。
「…………いい。意味がない」
「……」
言い訳じみた言葉を並べ立てていく私を、悟は静観している。その光景は恐ろしく滑稽であると、瓊弌なら笑うだろう。
「見た所ここには一般教徒しかいない。私が来た時には、既に
「……意味、ね。それ、本当に必要か?」
「……大事なことだ。特に術師にはな」
「そうか。傑がそれで良いなら俺も構わない」
こんな時。悟なら、瓊弌なら、或いは硝子なら、どうするだろうか。自分自身の選択に自信を持てるだろうか。私の信念や、それに基づいた行動は、果たして正しいものなのだろうか。
……正しさとは、一体何であろうか。
そうして、星漿体、天内理子は保護され、同化は行われなかった。
けれども特に何かが変わるわけでもなく。
悟は1人で『最強』になり。
瓊弌は確かな成長を覚え。
硝子はこれまでと変わることなく。
私は、私だけが、自らの内で燻り続ける疑問を抱えたまま。
私達は、3年生になった。
エンドロール 夏代孝明(2018)
これにて懐玉編は終了となります。蛇足的な話となっているので今回は短めとなっています。
次話からは玉折編へと突入します。灰原を始めとして悩む箇所が沢山ありますが、なんとか投稿頻度を落とさないようにしたいと考えております。
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