『さしすけ』ってなんだよ 作:Ex falso quodlibet
#1 板の上の魔物
「それでは、自己紹介を」
坊主頭に剃り込みを入れた、明らかにヤバそうな人から挨拶を促される。
「は、はい。えー、色々ありましてこの学校に編入させて頂くことになりました、
「あのさー」
「......はい?」
しかしながら、俺が丹精込めて考えた自己紹介は、真っ黒なサングラスを掛けた白髪頭の男に遮られた。
「お前のしょーもない自己紹介とかどーでも良いんだけど。夜蛾センが建前上こう言っただけで別に誰も求めてねえから。ザコはザコらしく隅で大人しくしてろよ」
「はぁ、すみません......?」
「すみませんで済んだら警察は要らねえってママに教わらなかったか?あぁん?」
つい反射で謝っちゃったけど、なんで俺喧嘩売られてんの?俺なんかやらかした?あとすみませんのくだりはどうせお前も親から教えてもらってねぇだろ。
「やめないか悟」
「あん?」
「初対面の人間にそのような事を言うのは例え本当だとしても失礼だ。
あと、誰彼構わず喧嘩を売る癖は直した方が良い。これからきっと苦労する」
ボンタンを履いた、前髪を奇妙な形で垂らす男が、白髪の──悟と呼ばれていた──男に注意をする。けれどもあの前髪の人、サラッと俺のこと貶してなかったか?
「ハッ、ンなこと言って傑も大概馬鹿にしてんじゃねえか。他人にうだうだ言えた立場かよ」
「そればかりは真実である以上仕方がないだろう。時には現実を教えるのも大事なのさ」
「へいへい、真面目ちゃんはやんなきゃいけないことが一杯あって大変だなァ」
「......なんだと?」
「思ったこと言っただけだけど。なんか文句あんの?」
俺をそっちのけで話に花を咲かせ始める男二人(花は花でもラフレシアが咲きそうだけど)。とにかく、明らかに歓迎会、という雰囲気ではないことだけは分かる。......俺、一応編入生なんですけど。こういう扱いあんまりされたことないから、割と凹むなあ。
なんて考えていると、煙草を咥えた女性が大きな溜息を一つ吐いてから此方を向いた。......あれ、煙草って年齢制限いくつだっけ。
「ウチの馬鹿共がごめんね。私、家入硝子。宜しく祚咫。
ホラ馬鹿1に馬鹿2、名前くらい言え」
「チッ......五条悟。言っとくがテメェみたいなザコと仲良くする気はサラサラねえからな」
「夏油傑だ。宜しくね瓊弌」
「よ、宜しくお願いします......?」
ほんとに名前だけしか言わないのどうかと思うよ俺は。
こんなんでいいのか、と担任教師である夜蛾正道先生に目配せをする。因みに先程の坊主頭とはこの人である。外面だけでもマトモな人間いねえのかこの学校はよ!
そんな俺たちの先生は目頭を押さえながら言った。
「......これがコイツらの日常だ。すまんが慣れてくれ」
.....マジかよ。先ずは自己紹介でインパクトを与えようとか思ってたのに、まさか逆にこちらが与えられてしまうとは。これは完全に想定外だ。
まずいな、早速情報の多さについていけないぞ。......やっぱりこんな所、来るべきじゃあなかったのでは?そんな後悔の念が早くも募り始める。
と言うかそもそも、だ。
何故俺が東京の山奥に位置する学校、ここ東京都立呪術高等専門学校に編入することになったのか。
それについて少し話をしよう。
板の上の魔物 Creepy Nuts(2019)
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