『さしすけ』ってなんだよ   作:Ex falso quodlibet

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呪術廻戦の二次創作にも関わらずメインキャラクターが殆ど登場していないので初投稿です。


#2 Hello,world!

2005年6月。

俺は、”呪い”に出遭った。

 

“呪い”とは。

日本国内に於いて、年間10000名を超える死亡者、行方不明者の内殆どの原因となっているもの。それが”呪い”だ。

 

斯く言う俺もその”呪い”の被害者である。

正確には被害者になりかけた、ではあるが。

俺が”呪い”に遭遇した日は、どんよりとした曇り空だった。

6月の初旬に行われた高校の文化祭。俺はその片付けに追われ、学校を出たのが夜遅くなってしまった。急いで家に帰ろうと自転車を漕いでいた俺は、本来通らない道を通った。

今考えてみれば、この時点で俺は”呪い”とやらに引き寄せられていたのだろう。

 

 

見知らぬ道を進んでから数分、俺はある神社に辿り着いた。

通常であれば参拝者の為に点いているであろう筈の電灯が、全て消えている。

俺は、その時に違和感を覚えて逃げ出すべきだったのだ。

 

「アレ、迷った?でもまぁ、ここら辺からならどっかの大通りに出りゃ家には着くだろ。……折角来たんだし、お参りでもして行くか。別に何を祈るって訳でもないけど」

 

鳥居を潜り、暗い境内を歩いて賽銭箱の前に立つ。

懐から五円玉を出して賽銭箱に入れ、鐘を鳴らした後、ニ礼二拍手一礼。

 

「ふぃー終わり。えーと、今何時だろ〜……んぇ9時?!やっべえ母さんに殺されるわ、急がねえと!チャリどこ置いたっけ……って、え?」

 

時計を確認して焦った俺は直ぐに踵を返し、鳥居を抜ける為歩き出そうとした。が、俺の足が動くことはなかった。

俺の足首は、奇妙な腕に掴まれていたのだから。

 

「うおっ……!なんだこれ……?!」

 

俺は吃驚して、足首を掴む腕の出所を探った。腕を追っていくと、それは賽銭箱の奥に位置する障子から伸びているようだった。そしてその少し開いた障子からは、形容し難いバケモノが顔を覗かせ、此方を見て嗤っていた。

 

ケタケタ。ケタケタ。

 

これは、ヤバい。

今直ぐに逃げないと、俺は死ぬ。

俺の本能がそう叫ぶ。

俺は何とかして鳥居の方向に足を進めようとするも、寧ろ後ろ側の障子へと引き摺り込まれていく。

 

(ヤバいヤバいヤバいヤバい!!!)

 

「誰か!いませんか!変な奴に襲われてるんです!!誰でも良い!!助けて下さい!!助けて!たすけて!!」

 

俺は必死に助けを求めて震える声を張り上げる。

けれど、そんな陳腐な行動が世の理から外れたバケモノに通じる筈もなく。じわじわと、俺は死に向かっていった。

 

(あ、これ、無理なやつだ。俺死ぬ)

 

どんな風に死ぬのだろうか。できれば苦しくないと良いな、なんて場違いなことを考える。そして、俺が障子の内側へ引き込まれる寸前。

救世主が、現れた。

 

 

高速で近づいたナニカは俺の背後にいるバケモノを殴り飛ばす。バケモノが悲鳴をあげて俺を離した瞬間に、そのナニカは俺を抱き抱えて一気に鳥居まで後退した。

余りの展開の早さに追いつけず、俺が呆然としていると、横から一人の男性が此方へやって来た。

 

「怪我はないか?」

 

俺がぶんぶんと大きく頷くと、その人は少し顔を綻ばせる。

 

「怖かったろう。ここから先は俺に任せておけ」

 

そう言って、殴られた事で激昂したバケモノへと向かっていく後ろ姿は、とても格好良く見えた。

バケモノは障子から複数の腕を操り、男性を亡き者にせんとする。が、男性の方が圧倒的に強いことは俺の目から見ても明らかだった。その人はぬいぐるみに指示を出して、そのぬいぐるみに先程と同じ様に数発殴らせれば、バケモノは聞くに堪えないような断末魔を響かせて霧散していった。

 

男性がふ、と息を吐き、ぬいぐるみと共に此方へと歩いて来る。

俺の前で立ち止まった彼は、俺の頭を撫で、優しい笑顔を浮かべていた。

 

「もう大丈夫だ。君を襲わんとしていた怪物は俺が祓った。だから、安心して良い」

「ほんと、ですか?もう、大丈夫、なんですか?

俺は、死なないんですか……?」

「ああ、君は死なない。これからも生きていける」

 

その時、俺の中で無理矢理押し込めていた緊張と恐怖の波が、決壊する。

俺は惨めにも、声をあげて泣き出してしまった。

 

……ここ、やっぱりカットで。自分が泣き喚いたこと言うのマジで恥ずかしいんだよ!

 

 

それから、十分程経った後だろうか。

少しまともに会話ができるようになった俺は、救けてくれた男性と話をしていた。

 

「ぐすっ、もう、大丈夫です。ご迷惑をお掛けしました。この度は俺を救けて下さって、本当にありがとうございました。このご恩は一生忘れません……!」

「何、そこまで感謝されるような事でもない。

俺達はこれが仕事なんだ」

「仕事、ですか……?」

「ああ、そうだ。だから今回の件について、君に事情聴取をするのもまた仕事の内なんだ。分かってくれるか?」

「……はい。分かりました」

 

少々迷ったが、話を聞く限りその道に精通してる人のように感じる。ならば、隠す必要もないだろう。というかこの体験を一人で抱え込むのは無理がある。

 

「そう言ってくれると助かる。そうだ、お互い名を名乗っていなかったな。俺は夜蛾正道だ。コイツは相棒のキャシィ。宜しく頼む」

「俺は祚咫瓊弌です。高校一年生です。宜しくお願いします」

 

さっきは色々ありすぎて、ぬいぐるみの容姿なんて気にしてる余裕なかったからアレだけど、冷静に見るとこのキャシィってぬいぐるみ割とキモくね?いや、これは可愛いの範疇なのか?分かんねえ。うーん……。

あ、キャシィがこっち見た。これ目離せないやつだな。

俺がキャシィと何故か見つめ合っていると、夜蛾さんが咳払いをした。

俺は慌てて夜蛾さんへ視線を戻す。

 

「では祚咫。早速だが話をしよう、……と言いたい所ではあるのだが、今日はもう遅い。俺の連絡先を渡しておくから、都合が良い時に電話してくれ」

「あ、はい」

「それと、今日は俺が君の家まで送ろう。この状況だ、一人では心細いだろう。親御さんへの話も俺がしておくから、祚咫は安心して良い」

「……ほんと、何から何までありがとうございます」

「先程も言ったが、これが仕事だ。それに、大人とは子供を守る為にあるんだ。だから、俺の行動は至極当然の事なんだよ」

「そんなもんですか」

「ああ。そんなもんだ」

 

こう言う人がいるだけで、どれだけ心強いんだろうな、と俺は漠然と思った。その後、俺の母にバケモノの話を伏せた上で事情を説明してくれた夜蛾さんは、また後日と言って帰って行った。

……カッケェなあ。

 

 

後日、学校でバケモノに襲われたことは誰にも信じて貰えず、危うく保健室送りになる所だったっていうのは、また別の話。




Hello,world!  BUNP OF CHICKEN(2015)

次話から五条達と絡ませます。

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