『さしすけ』ってなんだよ 作:Ex falso quodlibet
一昨日発売した新作ゲームをしていたら朝になっていたので初投稿です。
呪術高専に編入して早1週間経った今、俺は何をしているのかと言うと。
漫画を読んでいた。
……いやだって仕方ないだろ!?
まだ4級術師って言う呪術師の中ではカースト最下位の呪術師で、任務も2級以上の術師同伴じゃないと行けない。んで訓練しようにもクラスメイトにハブられてるから一人でやるしかないけどクソほどつまらない。
まあ頑張るとは言ったけどさ? 俺が想像してたのってもっとこう、友達と切磋琢磨して! みたいな感じだったんだよ!!
「あ゛ーーーー、暇。こんな自堕落な生活してて良いのか? いや良い訳ねぇわバカか俺。夜蛾先生と話した時のやる気どこ行ったんだよ。でもどうしよっかなー。もう部屋にある漫画3周はしちゃったしなー。……そうだ、漫画買い足しするか」
結局、本屋へ向かった。
「重っ。流石に買いすぎたか? いやでも面白そうな漫画だったから仕方ない。これは必要経費なのだ。うん」
買った漫画を高専までえっちらおっちら運んでいた時、任務帰りであろう一人の生徒と目が合った。
「うわ」
つい拒絶反応を起こしてしまった俺は悪くない。
だって相手は
「呪力の総量も少なけりゃ質も悪い。お前マジで呪術師向いてないよ。あーやばい、ザコすぎて涙が出てくるんだけど」
「やめないか悟。瓊弌が可哀想だろう」
「同情するってことはお前も同じこと思ってんだろ、傑」
「いやいやまさか」
「……はあ」
編入初日からこんな罵詈雑言浴びせられてキレない奴は多分いない。ついでに毎回一緒になってバカにする夏油もどっかで殴りたい。硝子さんだけは何も言わないから好きです(単細胞)。
「絡まれても面倒だし、さっさと部屋行こうっと」
「誰が面倒だって?」
「え? そりゃ地毛なのか染めてんのか知らんけど高校生から白髪頭でおまけにサングラスとか言うイタイ男の典型例みたいな奴に決まってんでしょ。そんで人をすぐ煽るクズ。人間性終わってんだろマジで。道徳母胎に置いてきたんか」
「へぇ、そりゃ大変そうだな。じゃあお前の代わりに俺がそいつブチのめしてやるからさ、名前教えてもらっても良いか?」
「いやここまで言ったら五条悟以外に誰が……ん?」
てか俺今誰と会話してんの? そう思い声のする方向に顔を向けると、そこには血管が破裂するレベルでブチギレた件の五条悟の姿があった。
「ッッッスーー…………。今日は、良い天気ですねぇ……………」
コンマ1秒で出てきた台詞である。因みに、本日の天気は吃驚するぐらいの曇天だ。
「ああ、良い天気だな? こんな日には組手がしたいんだよ俺は。当然、付き合ってくれるよな?」
肩にポンと手を置かれた。あ、ヤバいこれ逃げられないやつかも。
「いや、俺これから用事あるんで……」
「な?」
「ウッス……」
逃げられませんよねそうですよね。この瞬間、俺の死刑は確定したのである。
「ねえ、アレ何してんの?」
煙草を吹かしながら校庭に歩いてくる家入。
そんな家入の質問に答えたのは夏油だ。
「なんでも瓊弌が悟に喧嘩打ったんだって。今悟が殺すって言って、瓊弌の事転がしてる」
「あはは、ウケる。何言ったのアイツ?」
「イタイ男の典型例。クズ。人間性皆無」
「ブッッッハ!! ちょーウケる」
「全くだ。悟ともあろう者にそこまで言うとはね」
「ね。祚咫って大人しい方だと思ってたんだけど、案外元気なんだなって。今めっちゃ文句言ってるし。てか声でか」
「まあ初日以降、彼は私達の事を避けているからね。私達の対応も対応だったし、彼のことを余り知らないのも無理はないさ。それにしても声デカくないかい彼」
祚咫は五条に転がされながらギャーギャーと大きな声で抗議をしている。当然、
「……そろそろ止める? 良い塩梅で止めさせないとまた夜蛾先生にどやされるよ」
「それもそうだね。おーい、さーとるー!
流石に可哀想だ。そこまでにしてやってくれないか!」
家入との会話を切り、夏油が五条へと呼びかける。振り向いた五条の表情は正に鬼の形相と言えるものであったが、しかし夏油と家入を認識すると途端に怒りは抑えられる。
「アァ!? ……傑か。チッ、しゃーねーな。おい良いかザコ、次舐めた口聞いたら今度こそ殺すからな。あとこの漫画は貰ってくぞ」
「い、いやそれ俺が買ったやつ……」
「ア? 文句あんのか」
「いや、ないです……」
「あースッキリしたー。おーい、傑ー、硝子ー。飯行こうぜ飯」
祚咫に選択肢は既になく、五条の言葉にただ首を縦に振ることしかできない。祚咫への興味を失くしたのか、夏油と家入の元へと歩いていく五条。対して夏油と家入は大きな溜息をついていた。
「? 何二人して溜息ついてんの」
「お前が原因だよバカ」
「あんアイツが俺のこと煽ってきたから上下関係教えてやっただけだけど?」
「だとしてもやり過ぎだ。アレでは殺しかねないよ。彼は一般人という事を抜きにしても脆いんだから」
「だーいじょぶだって。流石にそこら辺は調整出来てるから。術式も使ってねぇし」
「そういう問題ではないのだが……はあ」
二回目の溜息を最後に二人は五条への説教を諦めてしまった。馬の耳に念仏という奴だ。
「んな事より飯行こうぜ。腹減ったわ」
「分かった分かった。今行くよ」
「あ、ごめん私パス」
「何、任務?」
「いや、もうご飯食べちゃったんだよね」
家入はそう言うと夏油に目配せをする。正に一瞬。家入の目論見に気づいた夏油は小さく頷いた。
「だそうだ。そうとなれば早く行こう悟」
「いや、硝子飯なんて食って……」
「良いから良いから。早くしないとお店が昼休憩に入ってしまうよ? それで良いのかい?」
「ハッ! そうだった。良くねえに決まってんだろ!急ぐぞ傑!」
「はいはい」
怒涛の勢いで二人は学校を出て行く。一方の家入は、三回目の溜息を小さく吐いてから祚咫の元へと向かって行った。
「いってーな……自分だって散々煽ってる癖して、いざ自分が煽られたらマジギレとかガキかよ。いやガキだわ。アイツの精神年齢は多分六歳で止まってる」
「あはは。それ言えてる」
「でしょー?全く、本当に嫌んなる……ってうおお!?」
「やっほ、祚咫」
俺の横には、いつの間にか悪戯っぽい笑みを浮かべてひらひらと手を振る女性がいる。此方へやって来ていたのはクラス、と言うか学年で紅一点の家入硝子さんだ。高専人少なすぎて学年で俺含めて4人しかいないからね。夜蛾先生から呪術師は人手不足が常とは聞いていたが、にしても酷すぎるだろ。
話がズレたな。
とにかく、人数は少ないのだけれど、俺はまだ彼らと仲良くないので五条悟や夏油傑のように呼び捨てはしない。というか出来ない。そもそも名前を呼ぶ事がほぼないのだが。ついでになんとなくだが、敬語も使っている。
「硝子さんか、びっくりしました。また五条悟が聞き耳立ててんのかと」
「もう行ったから大丈夫だよ。それよりも祚咫、怪我平気?」
「んお? ああ、割と痛いかもっす」
「おっけー。じゃ、ちょっと服脱いで」
「……?!」
この人痴女だったのか?! まさかそんな属性持ちとは思わなかったぜ……。
「治療すんの。ほら早く」
「あ、そういうこと」
治療つっても硝子さん救急箱とかそういう系のやつ持ってなくね?まあいっか、取り敢えず脱がねば。
いそいそと服を脱ぐ俺。露わになった俺の身体を見て、硝子さんは一言。
「……祚咫って筋肉ないね」
「グボァッッ」
そあた に ∞ の ダメージ!
そあた は やられてしまった!
「いや、ごめん。あのバカ二人、身体は締まってるからさ。つい」
「いや大丈夫っす。自覚はあるんで」
「その割にはダメージ受けてたっぽいけど」
「自分で自覚するのと他人に指摘されるのとじゃ大違いなんすよ」
「ふーん。そういうもん?」
「そういうもんす」
絶賛筋トレ中ではあるんだけどなあ。
その恵まれたスタイルを持つ硝子さんには分からないでしょうけど!
「ま、いいや。そのまま動かないでね」
「思ってたんすけど、治療ってどうやってやるんすか? 治療道具なんて持ってないすよね?」
「ここ呪術高専だよ? なら呪術で治すに決まってんじゃん。ほい、終わり」
「え、終わり……? って、傷が治ってる……!?」
俺が少し目を離した隙に、硝子さんは俺の怪我を治してくれていた。元々大きな傷があったわけじゃないが、全て五条に転がされる前の状態に戻っている。
術式って便利にも程がないか……!?
こんなん荒稼ぎしまくれんじゃんか! って、んな事口が裂けても言えないけど。
「あはは、驚いてくれたようでなによりだよ」
「これが硝子さんの術式ですか? ヒーラー役ってカッケェっすね!」
「ありがと。うーん、術式とはまたちょっと違うかな。誰にでも出来るって訳じゃない。でも祚咫にもワンチャンあるかなって感じのやつ」
「あー、つまり才能ってことっすね?」
「そ、正解」
「はぁ、クソっすね」
夜蛾先生も言っていたが、呪術師とは基本的には8割が才能だそうだ。簡単な結界術や呪符を用いた式神の召喚ならまだしも、術式などはほぼ本人が生まれ持った物、若しくは親からの遺伝に左右されるらしい。
とんだクソゲーじゃねえか! 俺ん家ごくごく普通の家なんですけど!
「それは確かに。でも、夏油や私だって一般の出だから、祚咫にももしかしたらとんでもない力があるかもね」
「だったら良いんすけどねえ」
「まあ腐らずに頑張んなよ。こう見えても、ちょっとは期待してるんだから」
「そこはかなり期待してくれると嬉しいんすけどね……」
「それは祚咫次第だね」
「そっすか……。兎も角、ありがとうございました。怪我、治してくれて」
硝子さんの言葉に少し肩を落としつつも、治してくれたことに感謝を述べる。
硝子さん的に、好感度はそこまで低い訳じゃないのかな。少なくとも、俺の事治してくれるくらいには。
俺は頭を下げようとするが、硝子さんは笑ってそれを制止した。
「別に礼なんて良いよ。私からすればこれが仕事だしね」
「いや、でも」
「クラスメイトの怪我治すくらい、いつでもやってあげるさ。あでも、あんまり何回も怪我するようなら割り増し料金取っちゃうかもね」
「……それは勘弁してくれるとありがたいです」
「はは、冗談。そうだ、怪我しないようにするとかじゃなくて、まずはアイツらと仲良くなることから始めたら? あのバカ共、祚咫が思ってるよりも案外良い奴らだよ」
おおう、急に無理難題吹っかけてきたな。
俺が、アイツらと仲良く? あんだけ見下されてんのに? どうやっても不和しか生まれないと思うんですけど。
「……マジで言ってます?」
「マジマジ。多分だけど、五条も夏油も、ほんとに嫌いならそもそも関わろうとしてないよ。それは祚咫も分かってるんじゃない?」
「うぐ。……それは……」
核心をついたような硝子さんの言葉に対して、俺は返答に窮する。
「兎に角、友達作り頑張んなよ。こっち来てからの友達の一人目にはなってあげるから、さ」
そう言って硝子さんは去ってしまった。
……硝子さんにあそこまで言わせて何もしないってのはダサいよな。……頑張るかあ。
混雑コミュニケーション ONE OK ROCK(2010)
主人公の声は本当に大きいです。
次話は五条と仲良くなる予定です。
今回よりアンケートを設置させていただきました。締切等は特にございませんので、お気軽に投票していただければありがたいです。
0編は要りますか?
-
いる
-
いらない
-
どっちでも