『さしすけ』ってなんだよ   作:Ex falso quodlibet

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昼夜が逆転したので初投稿です。


#7 One day

10月!秋!

それは欲望の季節!食欲の秋、読書の秋、芸術の秋、etc etc……。

こんなん言ったもん勝ちかと言われればぐうの音も出ないのだが、それはそれ。そんな世人の欲望が渦巻く季節に、俺は何をしていると思う?

 

そう!呪霊討伐である!

 

…………なんでぇ?

 

 

気を取り直して行こう。ん?前回の終わり方が明らかに打ち切りのそれだって?バァカそりゃ漫画の話だろうが。俺の話はこっから先も普通に続いていくんだよ。

……俺誰と話してんだ?まぁ良いか。今日は休日だったもんなんで、1日出掛けようと考えて寮を出た矢先だった。俺は夏油と五条に首根っこを掴まれ、廃ビルへと拉致されて、んで今ここね。

そんなわけで、当然俺は抗議の声を上げることにする。自分の意見も言えない奴になっちゃあダメだぞ。

 

「ちょいちょいちょい、なんで俺ここにいんの?」

「あ?呪霊祓う以外にこんな所来るバカいねえだろ。何考えてんだ」

「何考えてんだはこっちの台詞だわボケが。一言も言わずに任務に連れてくバカがどこにいんだよ。呪霊を祓う目的を言え、目的を」

「お前の特訓」

「……あー、なるほどね」

 

そういやそうだった。夜蛾先生曰く、

 

「術式が知覚出来たのなら次は実践だ。それが自らの術式を更に知ることに繋がるだろう」

 

だってさ。確かにその通りだ。でも俺ホントに術式しか分かんないんだけど?1人で呪霊祓うってなったら術式使う余裕ありませんけども。

 

「んな顔しなくても、別に死にかけたら助けてやるよ。代わりに昼飯奢りな」

「えー、じゃあ大人しく殺されるわ」

「んでだよ!そこは『助けて下さい五条様』って言えよ!」

「死んでも言うかアホ白髪」

「まぁまぁそこら辺にしておこう。所で瓊弌、君の術式の名は一体なんなんだい?術式の名前というのは存外大切なものだよ」

 

五条と小漫才をしていた所、夏油にそう尋ねられた。夏油も今言っていたが言語化する事で自らの能力が明確になる、と言うこともある。

 

「それがまだ分かんないんすよね、如何せん珍しいらしくて。ここまで来たらいっそのこと2人に命名して貰うのもアリかなって思ってますわ」

「ふーん、相伝でもなけりゃ有名な術式でもねえと苦労するもんだな。ま、俺には到底分かんねえもんだが」

「フンッ!」

「あがあああ!!目がァァァ!!」

 

普通にムカついたんで目潰しました。長え足ブン回して地べた這いずってやがる。ざまあみろってんだ。下で五条が騒いでるが、どれだけ貴重なのかとか関係ないね。

 

「何すんだクソが!」

「良い気味だな。悔しかったらその術式常時発動するくらいしとけや」

「無理に決まってんだろ!!んな事したら脳味噌焼き切れるわ!」

「所詮そんなもんかよ次期当主様がよ」

「は?黙れや雑魚が呪霊に食われてろ!」

「はいはい、落ち着いて2人とも」

 

こう言う時の夏油は助かるんだよな。夏油がストッパーやってくれる時は頼もしいものだ。夏油も悪ノリし始めたら事態がより酷くなるんですけどね。

 

「んで、なんかあります?」

「うーん、まあ君の術式に当てはまる名前が相応しいは思うが……。悟、君なら何とつける?」

「あー痛って。んあ?瓊弌(コイツ)の術式だろ、これでいんじゃね?」

 

立ち上がった五条が、そう言って取り出した携帯のメモ帳に書いたのは———

 

 

 

五条と夏油の2人に見送られながらビルへと這入り、5階建てのビルを隈なく回っていく。とんとんとん、と普段より軽快な足取りで俺は階段を上って行った。

そして4階。敢えて後回しにした部屋以外を回り切って、その部屋の前に立つ。会議室、と書かれたそこには他の部屋よりも濃い呪力が漂っているのが分かった。

 

「さあて、やりますか」

 

会議室へと這入る。当然ながら扉の鍵は閉まっていたので無理矢理蹴り破った。

 

「キョキョきよ……今日の議題ハァァアァ?」

「却下却下却下!!あはははあは」

「ねェ、オまえハ有能?無能?」

 

中には散乱したいくつもの長いテーブルと回転椅子に、ホワイトボードが一つ。そしてデカい呪霊が一体。何あれ、手足が30本ずつくらいあんだけど。目と耳もめっちゃあるし。まあここは東京だし、あんな異形にもなるのも納得と言えば納得ではあるのだが。

そこで、俺に気づいた呪霊がこちらを向く。

 

「ねェ、オまえハ有能?無能?」

 

聞かれてんのか?まあ答えて損はないか。

 

「うーん、有能じゃね?知らんけど」

 

俺がそう答えた途端、呪霊は数多くある目を一切にカッ開き、叫びながら俺に突進してきた。

 

「ササ採用!採用採用採用!!」

「げえ。悪ぃが面接しに来た訳じゃあねえんだわ」

 

面接試験はまた今度な。ふーー、と息を吐き、拳を構える。図体がデカいからか、その身体をまともに扱えてない。なら、攻撃するのは容易いことだろう。

命名されたのはついさっきだが、やってみるか。

 

振作呪法(しんさくじゅほう)

 

「———肉叢(ししむら)!」

 

そう呟いて放たれた拳は、一撃で呪霊を沈めた。と言うより、風穴を空けた、が正しい表現だが。

 

「エ?」

「これが俺の術式、強化する術式だ。今回の術式の対象は俺の拳。身体全体に術式を使えたら良いんだが、まあそんな上手くはいかねえな」

「オ、お、お、おおおお………..」

 

べしゃり、と呪霊は床に倒れる。勝ったろ、これは。

 

「うし、なんとかなったな」

 

そう辺りを見回して一息つこうとて、気がついた。———まだ、夜だった。

 

「帳が上がってねえ……?目的の呪霊は倒した筈だ。ならなんで……」

 

そう言って、俺は思案する。よくよく考えてみれば、1階から4階まで、呪霊が一体たりともいなかった。恐らく5階もだ。俺のミソッカスな呪力感知でもわかる。このビルには背後の呪霊が一体だけ。

そこまで考えて、ハッとした。

 

「ッまさか———」

「不採用!不採用!不採用ゥゥゥゥ!!」

「っぐあ!」

 

俺は呪霊に殴られてビルの壁に激突する。

クソ、なんでもっと早くその答えに辿り着かなかったんだ!この呪霊は死んでねえ。

良く考えてもみろ!呪いの坩堝たる東京にあるビルに、4級程度の呪霊が一体しか湧かねえ訳ねえだろうが!

 

(コイツ、ビル中の呪霊を全部食いやがったってのか!!)

 

そりゃデカくなる訳だ。100や200、もしかしたらもっと多くの呪霊が目の前の一体に集約しているんだからな。

 

「ゲホッ、クソが」

「あれェ?無能?」

 

となると、俺を吹っ飛ばした腕を見てニヤニヤと嗤う呪霊。コイツの階級も必然的に上がるわけだ。俺が殴った箇所も既に修復しているし、ざっと見積もって準2級って所か?

腹立つぜ、あの顔。優位に立ったと分かったらすぐにアレだ。

 

「だから、バカは嫌いなんだよ」

「エァァア?有能有能有能有能!!」

 

体勢こそ立て直したが、攻撃をもろに喰らったせいで呪力を上手く回せねえ。一発貰っただけでこれかよ、情けねえなホント。

 

「すまん、ギブ。あと頼んだわ」

「アア?」

 

俺の言葉に反応するように、こちらに向かってくる呪霊の身体の一部が消し飛んだ。先程空けた穴より数倍でかい穴が呪霊には空く。肉体が泣き別れになれば、今度こそ呪霊は消えていった。

 

 

「アレくらい祓えや」

「すまん、油断してた。会社があったビルん中に一体しか呪霊がいない時点で気づくべきだった」

「……分かってンなら良いが」

 

扉から現れたのは五条だった。五条が近くにいることはなんとなく分かってたから、後始末を頼んだってわけだ。

 

「有難いのはそうなんだけど、お前嫌味一回は言わなきゃ気が済まないの?」

「嫌味じゃねえよ正当な指摘だ。術師やんならあの程度祓えないのは致命的だぞ」

「あの程度って言っても準2級くらいはなかったか?」

「あったかもな。けどそんなもんだろ」

 

……ほんとにコイツは。

 

「やっぱズレてんだな、お前」

「は?」

 

目の前のサングラス野郎は意味が分からないという風に首を傾げている。準2級の呪霊を“そんなもん“と形容出来る辺り、やはり術師としては頭一つ抜けているのだなと実感する。いや、三つくらい抜けていてもおかしくはない。

 

「まあいいわ。それはそうと瓊弌、お前俺の事殴ってみろ」

「は?お前そんな趣味あったん?流石に引くわ」

「違えわテメェの術式の確認すんだよ!良いから早よ術式出せや!」

 

急に変なこと言い出したから何かと思ったが、そう言うことね。なんかこの流れ前もやんなかったっけ?

 

「おっけ、んじゃ行くぞ。振作呪法、肉叢ッ」

 

空気を裂いて五条へと向かう拳は、しかし快音を響かせることはなかった。

 

「ふーん、なるほどな」

「気っ色悪ィなこれ。殴ってる感覚はあんのに五条に当たってねえ!」

「そりゃそうだろ。俺の術式はそういうもんだ」

 

五条が俺の術式を見て納得している一方で、俺は疑問符が頭に浮かんでいた。五条の術式を見るのは初めてではないのだが、未だに分からない部分が多い。というか殆ど何も分からん。近づく程速度が落ちていって、最終的に当たる寸前で止まるから絶対に攻撃は当たらない、とは五条の言だが、なんだそれ。無限等比級数の理論を現実に持ち出すのやめてくんねえかな、チートだチート。

 

「ちょっと前に説明したが、俺の術式は無限を現実世界に持ってくるもんだ」

「はーヤだヤだ。俺の術式とは大違いだな、バランス調整どうなってんのさ」

「『術師の8割は才能』って言ったろ。俺は持ってる側の人間なんでね」

「ケッ。持ってねえ側の人間に負けた時の言い訳が楽しみだよ」

「ンな言い訳考える必要もねぇな。負けねえから」

「どうだか」

 

お互いに術式を解いてビルを出ると、いつの間にやら帳は上がっていた。今度こそ任務完了だ。ちと消化不良気味ではあるけどな。ビルの外の歩道では、夏油がガードレールに寄りかかりながら携帯を弄って待っていた。

 

「夏油さん、お待たせしました。暇させちゃってすみません」

「ああ、全然構わないよ。無事に帰って来れて何よりだ」

「俺のおかげでな」

 

はいはいすごいすごい。そもそも無事じゃねえし。

 

「てか五条、さっき俺の術式実際に見て納得してたっぽいけど、なんか分かったのか。俺の術式、六眼じゃあ見れなかったんだろ」

「あー、それな。まああとで話すわ。それより飯行こうぜ飯。俺の分は瓊弌が奢れよ」

「チッ、仕方ねえな。どこ行く?」

「傑に決めてもらおうぜ。傑、どっか行きたい場所ある?」

「マ◯クかな」

 

マ◯クぅ?ナンセンスだね。

 

「それは流石にないっすよ夏油さん。ハンバーガーならケンタ◯キーしかないっすわ」

「お前のがないわ。モ◯以外にあり得ねえだろ」

「はあ〜、お坊ちゃんは違うねえ」

「んだてめぇ、あんなんチキンだけだろうが」

「ケンタ◯キーのハンバーガー食ったことねえ奴がよく言うわ」

「2人とも、揃いも揃って見る目がないと言わざるを得ないね」

「「は?」」

 

このあと、危うく殴り合いになりかけた所を偶々通りかかった庵歌姫さんに決めて貰うことにした。まるで予想外の反応が返ってきて3人して固まったね。

 

 

 

「バーガーキ◯グ、悪くねえな」




One day  THE ROOTLESS(2010)

筆者はマ◯ク派です。
多分次話で一年生編が終わると思います。

0編は要りますか?

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