同好会メンバーに愛され過ぎた侑ちゃん死亡ループ   作:ぱすたすきい

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1回目
第1幕 ふりだし


 

 

 

 

「私だけの侑ちゃんでいてよ・・・ッ!!」

 

 

背後から歩夢がそう叫ぶ。

 

暗がりの部屋で、歩夢は覆いかぶさるように私はベッドに押さえつける。

 

そして・・・僅かな鉄の香りが鼻につくのを感じた後、腹部への鋭い痛みが走った。

 

 

「せつ菜ちゃんの方が大事なんだね・・・ずっと一緒にいてくれるって約束したのに・・・!」

 

 

さっきの怒声とは対象的に、消え入るような歩夢の声。

 

全身に悪寒が走り、消えゆく意識の中で聞いた最後の言葉がそれだった。

 

・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――歩夢・・・っ!」

 

 

勢いよく覚醒する。

目の前には見慣れた景色。

 

 

「痛っ・・・って、あれ・・・?」

 

 

腹部に走るはずの激痛がない。

 

 

「ここ・・・部室?」

 

 

さっきまではたしかに夜だった。

一瞬ここは夢の中だと錯覚したが、窓からの日差しが肌を突き刺す感覚が、妙に現実味を帯びている。

 

 

「私、たしか歩夢に押し倒されて、それで・・・」

 

 

ダメだ、まだ意識が朦朧として考えることができない。

そう思った刹那、三度のノック音と共にドアから誰かが入ってくる音が、私を再び現実へ戻す。

 

 

「お疲れ様です、侑さん 今日はもう部室にいらしてたんですね」

 

「せつ菜ちゃんも今日は早いんだね」

 

 

生徒会長であり、スクールアイドル同好会の部員でもある「優木せつ菜」は、そう言って私の対面に座る。

そして、机にの上に下ろしたときに揺れるほど重そうな鞄の中から、山積みの書類を取り出し、こう続けた。

 

 

「私も生徒会の作業が中々終わらなくて・・・部室の方が捗る気がしたので、ここで作業しようかなと」

 

 

そう言いながら、彼女は鞄の中から筆記用具を取り出し、筆を走らせる。

私の目の前にも、似たような物が置いてあった。

書きかけの譜面と、いつも使っているシャープペン。

 

ここでようやく、今の状況に整理がついた。

なるほど、たしか私もおもむろに部室で作詞したくなって、ここにいたんだ。

 

 

「奇遇だね、私も音楽科の教室だと落ち着かなくてさ」

 

 

じゃあ、さっきまでの出来事は一体何だったんだ。

やはり夢・・・?

 

いや、あれは現実だった。

 

確かに歩夢は私をベッドに押し倒した。

力強く。

そして、私の腹を刺した。

深く、深く・・・。

 

最期に聞いた、歩夢の震えた声、歩夢の歪んだ感情、

暗がりの部屋、すべてが真実だった・・・はずだ。

 

 

「侑さん、やはり具合が良くないのでは・・・? 私が保健室まで・・・」

 

「う、ううん、平気だよ」

 

 

せつ菜ちゃんが心配そうに見つめてくる。

仕事の手を止めてまで、私の様子を伺い心配してくれる彼女に罪悪感を覚える。

 

私はもう、夢のことについては考えないことにした。

そうだ、あれはただの白昼夢だったんだ。

 

 

 

 

 

ようやく譜面が形になってきた頃には、もう日が落ちていた。

集中し過ぎて時間を忘れてしまうのは私の悪い癖だ。

 

 

「せつ菜ちゃん、頑張ってるね」

 

「はい、もう少しで終わると思います・・・」

 

 

一方の彼女は、まだ作業が終わっていない様子だった。

山積みになっていた書類も、ようやく半分が無くなってい様子だ。

 

 

「そういえば・・・今日は誰も部室に来ないね」

 

 

ふと、同好会のみんなのことが気になった。

部室に寄らないで各々の練習に向かうことはしばしばあったが、全員が全員、部室に来なかったことは一度も無かったはずだ。

 

そんな見慣れない光景に少し違和感を覚える。

 

 

「・・・侑さん」

 

 

彼女が口を開く。

 

 

「つらい気持ちは分かりますが、目の前の現実を受け入れてください・・・」

 

 

彼女にしては珍しく強い口調でそう言う。

 

現実・・・? 何の。

 

 

「みなさんは・・・スクールアイドル同好会は・・・もう、」

 

 

――無くなったのですよ。

 

 

 

そう続ける彼女。

 

どういうこと・・・?

 

理解ができない。

 

あまりに多くの現実の層が重なり過ぎている。

 

分かりたくない。

 

だって・・・私は――――。

 

 

「侑さん・・・歩夢さんは、もうこの世界にはいないんですよ」

 

 

――――そして目の前の景色が歪んだ。

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