同好会メンバーに愛され過ぎた侑ちゃん死亡ループ   作:ぱすたすきい

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第3幕 まやかし

 

 

 

 

 

小一時間くらい歩いただろうか。

病院を抜け出したときは、たしか11時を回っていたはず。

外は思った以上に肌寒く、辺りに人の気配はない。

少し前を歩くかすみちゃんとの二人きりの夜道に少し孤独感を感じ始めていた。

 

 

「侑先輩、着きましたよ」

 

 

そんな私の情緒とは裏腹に、彼女は私より半歩先に目的地に到着して振り返った。

目の前には夜空に向かってそびえ立つ10階建てくらいのマンション。

 

 

「かすみちゃん、一人暮らし始めたって本当だったんだ」

 

「まさか疑ってたんですか・・・?」

 

 

少し不機嫌そうに頬をふくらませる彼女を見て、少し心が落ち着く。

彼女は慣れた手付きでオートロックを解除すると、入ってと言わんばかりに手招きする。

 

エレベーターに乗り、かすみちゃんの部屋のある階へ登っていく。

かすみちゃんはドアの前に立って向こう側を向いている。

 

私はおもむろに、無防備な彼女の背後から、きれいに整えられたかすみちゃんのうなじを観察していた。

密室の中に充満するかすみちゃんの香り・・・。

この小さなゆりかごの揺れる音以外聞こえない静寂な空間が、彼女への印象を特別なものにしていた。

 

 

「先輩、体調は大丈夫ですか?」

 

「ううん、平気」

 

「遠慮とかいらないので、辛くなったらいつでも言ってください」

 

 

私がやせ我慢してると思ったのか、彼女は私の言葉を押し切った。

そしてエレベーターの扉が開き、部屋の前へと案内される。

 

 

「どうぞ。 暗いので足元気をつけてくださいね、先輩」

 

 

靴を脱ぐのにもたつく私に手を差し伸べてくれる。

こういうこと、前もあったな。

二人きりのときに見せてくれる、こういう彼女の意外に紳士的な一面に、少し胸がキュンとする。

 

 

「着替え、そこのタンスに入ってるので適当に着替えちゃってください」

 

 

今さらながら、病衣を着たままだった自分に驚く。

少しゆったりとした病衣に肌寒さを感じたため、彼女の言う通りにタンスを開けて中を見る。

 

全体的に淡い色の服が並んでいた。

白、ピンク、水色・・・、余所行きのフリルのついた可愛らしい洋服も畳んであった。

 

 

「先輩もコーヒー飲みます?」

 

 

反射的にうんと頷いてしまったが、彼女にしては意外なチョイスだと思った。

苦い飲み物とか苦手そうなのに・・・。

 

再び私は、色とりどりに並ぶ洋服に目を落とす。

適当に着替えてと言われたが、どれを選んでいいのか分からなかった。

 

 

「着替えないんですか先輩? それとも、私の服じゃ嫌でしたか?」

 

 

不安そうな様子で彼女がそう言う。

私は正直に、どれを選んだらいいか分からないだけだと彼女に伝えた。

 

 

「じゃあ・・・これ、着てください」

 

 

すると彼女はおもむろに白色のフリルのついたシャツとスカートを取って手渡してきた。

多分、私が時間をかけて選んだとしても、絶対に選ばないであろう綺麗で可愛らしい洋服をだ。

 

 

「あ、それだけじゃ寒いと思うので・・・これも履いてください」

 

 

有無を言わさず、彼女はタンスの一番下の段から黒タイツを取り出し、差し出してきた。

私が着ると変じゃないかな・・・。

 

そうやって、かすみちゃんコーデを抱えて手持ち無沙汰にしていると、彼女はしびれを切らしてこう言う。

 

 

「どうしたんですか先輩? もしかして、もっと可愛い服のほうが良かったですか?」

 

「いやぁ・・・私にはちょっと派手過ぎるかなって・・・」

 

 

思わず誤魔化してしまったが、正直、寝間着にスカートはどうなのかというところが本音だった。

とはいえ、いつまでも病衣のままでは場違いな感じもするので、しぶしぶ着替えることにした。

 

一応病人の私を気遣ってか、かすみちゃんが着替えるのを手伝ってくれる。

背後から病衣を脱がされる。

私の首筋にかすみちゃんの吐息がかかる。

 

女同士だからといっても、人前で肌を晒すのは少し抵抗があった。

そう感じつつも、後輩の好意を無碍にするわけにもいけないと思い、しぶしぶ無抵抗に服を脱がされる。

 

そういう私の心境が伝わったのか、下着姿になった私に背を向け、病衣を持って脱衣所らしき場所に向かった。

その間に、シャツの袖を通す。

生地が肌に擦れると、柔軟剤のフレグランスがほのかに香る。

 

シャツのボタンをとめ、タイツ、スカートの順に着替えを済ませた。

かすみちゃんと私の体格が似ているのもあるが、他人の服とは思えないほどピッタリと馴染んでいるような気がする。

 

 

「着替え、終わりましたか?」

 

「うん、サイズもピッタリだった」

 

 

彼女は湯気の立つマグカップを2つ持ってゆっくりと運んでくる。

そのうち右手に持っていた方を、私の前のテーブルにそっと置いた。

 

 

「先輩、砂糖使います? 私の使いかけでよければ」

 

「使う、ありがとう」

 

 

そう言って開封済みのスティックシュガーを貰う。

私が甘党なのを知ってか、ほとんど使わず残していてくれたのか、思った以上の量の結晶がコーヒーに溶けていった。

 

ふーふーと冷ましながら、カップに唇を当て、液体をすする。

やはり砂糖を入れすぎたのか、液体の中に少しザラザラとした舌触りがあった。

コップをテーブルに置き、一息つく。

 

その瞬間、コーヒーを飲むかすみちゃんと目が合った。

普通、熱い何かを口にするときはよそ見をしないはずだ。

考え過ぎかもしれないが、そのときの彼女の目線にかなり違和感があった。

 

 

「侑先輩、歩夢先輩のアレ・・・見ます?」

 

 

カップを手に持ったまま、かすみちゃんは提案してきた。

 

アレ・・・とは、そう。

歩夢がこの世を去る間際に書き残した言葉。

今となっては遺書となるものだ。

 

私が小さく頷くと、彼女は机の引き出しからそれを取り出す。

初めて見るそれは、以外にも普通のノートだった。

 

 

「ねぇ、それ、どこで手に入れたの?」

 

 

内容よりも先に気になっていたのがそれだった。

正直、歩夢がもうこの世にいないなんて、未だに信じられない。

ただ、かすみちゃんが取り出したノートを見て、それは、ますます現実味を帯びてきてしまっている。

 

 

「歩夢先輩の、部屋です」

 

 

彼女はカップをテーブルに起き、目を反らしてそう答えた。

 

 

「かすみちゃんは知ってるの? 歩夢の最期」

 

 

そう聞いたのは確信があったからだ。

病室でかすみちゃんは、歩夢の亡骸を見たと言っていた。

 

だから、最悪なひとつの可能性を潰したかった。

かすみちゃんが歩夢を殺したのではないかという可能性を――。

 

 

しばらくの沈黙の後、彼女がこう放った。

 

 

「先輩、もしかして私が歩夢先輩のことヤったって、疑っていますか?」

 

 

図星だった。

言葉の節々から、自分の中の本音が漏れてしまっていたのかもしれない。

 

そのときのかすみちゃんの表情・・・それは、

明らかに私より多くのことを知っているような、そんな達観した顔つきだった。

そして案の定、彼女はこう続ける。

 

 

「勘違いしてますよ、侑先輩」

「歩夢先輩は・・・目の前で飛び降りたんですよ、"私"の・・・」

 

 

唇を噛み締めながら、彼女は声を震わせながらそう呟いた。

それは大切な仲間を目の前で失った当人だからこその、苦悶の表情だった。

 

肩を震わせ、その場にへたりこむかすみちゃんを私はそっと抱きしめた。

子犬のように小さくすすり泣く彼女の背中を擦りながら

 

 

「ごめんね、かすみちゃん・・・」

 

 

と耳元に囁く。

その後、数十秒いや、数分だったか、そうやってかすみちゃんの体温を感じながら静寂の時を過ごした。

 

 

「ねぇ先輩、これ、見てあげてください」

 

 

そう言って、歩夢の遺書を私に差し出す。

手にとって、パラパラとページを捲ってみる。

 

これは多分、歩夢が毎日書き進めていた日記なのだろう。

内容は主にスクールアイドル同好会みんなのこと。

歩夢が感じた1日が、1ページ200文字前後にわたって記されていた。

 

たまに私たちをデフォルメしたようなキャラクターが描かれているところがある。

歩夢、こういうの上手だったからなぁ・・・。

 

そして、最期のページを捲った。

 

 

 

侑ちゃん、また逢おうね――。

 

 

 

それだけが書かれていた。

何の変哲もない、一行。

その先のページも捲ってみるが、やはり白紙だった。

 

 

「歩夢・・・これだけ、なの・・・?」

 

「侑先輩は、どう想います?」

 

 

間髪入れず、かすみちゃんがそう問いかける。

どう思うも何も、これだけしか書かれていないのだから、それ以上には解釈しようがない。

 

 

「天国で会おうってことかな? あはは・・・歩夢ってロマンチックなの好きだったから」

 

 

ぶっきらぼうに「へぇ」と彼女が返答する。

私は立ち上がって、元の着座位置に戻り、飲みかけの温くなったコーヒーを飲み干す。

 

 

「歩夢先輩が言いたかったのは、そういうことじゃないですよ」

 

 

はじめに違和感があったのは、かすみちゃんがそう断定したこと。

私はすぐに意味を問いただそうと思ったが、それは叶わなかった。

 

全身の筋肉が緩む、視界がぼやける・・・。

またこの感覚・・・?

 

目の前の現実が、また消えていきそうになる。

しかし、今度は必死に意識を現実に踏み留まらせる。

 

自分の意志とは裏腹に、身体は倒れそうになるが、かすみちゃんが優しく受け止めてくれる。

自身の身体が地面に打ち付けられる痛みから守ってくれた彼女の好意に、微笑みで返そうと顔を見たら、

 

 

彼女はすでに笑みを浮かべていた。

 

 

ぼんやりとする意識の中、彼女は無言で私を引きずっていく。

腰を持ち上げられる。

どこかに乗せられる。

柔らかい毛布の感触。

軋む音。

 

そして、かすみちゃんが私の上に覆いかぶさった。

 

 

「歩夢先輩の思い通りになんかさせません・・・」

 

 

彼女は目を細めてそう言った。

まるで、捉えた獲物を見るような鋭い眼光で。

 

直後、彼女は私に重なるようにして、耳元でこう囁く。

 

 

「先輩・・・大好きです」

 

 

かすみちゃんの生暖かい吐息が私の鼓膜を犯す。

そのまま彼女は耳裏から首筋までをなぞるように舐めてきた。

 

今まで味わったことのない感覚だった。

まるで身体に、神経に、電流がビリビリとが走るような・・・。

余韻に浸る間もなく、彼女は逆側の首筋も同じように責めてくる。

 

 

「んあぁ・・・あっ・・・♡」

 

「ふふ・・・せんぱい、かわいいです♡」

 

 

思わず甘い声が漏れる。

淫靡な笑みを浮かべる彼女はそれを聞いて、さらに息を荒くする。

 

 

「ほーら、恥ずかしがらないでください、せんぱい♡」

 

 

無抵抗な私に容赦なく、かすみちゃんは性感帯を愛撫してくる。

次第に自分の息も荒くなり、お腹の辺りに熱がこもってきた。

 

かすみちゃんの洋服からするフレグランスの香り。

私が今着ている服からする香りと同じだ。

 

辺りがかすみちゃんの空気だけで充満して、私の肺の中はすべてそれで満たされる。

 

私の意識が彼女で染められ、熱気で苦しくなってきて口で呼吸し始める。

すると彼女は私の顔を優しく撫でて、唇を重ねてきた。

息ができなくなるほど熱く、しつこく求めてくる。

 

すっかり熱気を孕んでしまった私の身体は、抵抗するためには動かそうとできなくなっていた。

 

黒タイツで覆われた私の太ももを何度も擦るように、彼女が脚を絡めてくる。

やがて生地に摩擦熱を感じるようになった頃、その熱が下半身に伝わったのか、疼きが止まらなくなる。

 

 

「そろそろ効いてきましたかね・・・?」

「ふふ・・・、さっき先輩が自分でコーヒーに入れた睡眠薬ですよ」

 

「すいみん・・・やく・・・?」

 

 

今に至るまでのすべてが、自分の墓穴を掘ったことによるものだと分かると、なぜか多幸感に見舞われる。

開けてはいけないトビラが今こじ開けられてしまったのだろう。

 

 

「大切な人を失って、辛いですよね・・・?」

「でも、かすみんが癒やしてあげますから、ね・・・せんぱい?♡」

 

 

わざと私の耳元でそう優しく囁く彼女と、また唇を重ねた。

その瞬間、私の中のなにかが崩れた。

 

私は"つづき"を期待するかのようにして、腰をくねらせる。

かすみちゃんも焦らしながら、シャツのボタンを一つ一つ外していく。

 

性感帯を刺激してくるかすみちゃんに応えるように、身体をくねらせ、大げさに喘ぎ声を上げる。

そうすると、彼女も喜んでくれる。

 

その繰り返し。

 

徐々に行為はエスカレートしていき、着衣のまま、いつの間にか秘部だけが露出する格好になっていた。

 

肌と肌を重ね合わせる。

 

粘膜と粘膜を擦り付ける。

 

 

 

 

 

甘い熱気に包まれた一室で、夜が明けるそのときまで――――

 

 

 

 

 

 

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