とある一科生の活動録   作:雪人形

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Act01

国立魔法大学付属第一高校。

 

毎年、国立魔法大学へと進学する卒業生を最も多く輩出しているエリート校として知られている。

 

 そのエリート校の狭き門をくぐる事が出来ると言う事は紛れもなくエリートの証だと思われがちだが、実際にはエリートとして将来を約束されているのは、総学生数の半数程度で一般に一科生と言われている生徒達だ。一方一科生ではないものたちは二科生と呼ばれ、何らかのショックで魔法技能を無くした一科生の代用品として扱われる言わば一科生のスペアなのだ。

 

そしてそれを識別するのは少年の制服に刻まれている八枚花弁のエンブレムの有無。エンブレムを持つ生徒をその形状から「ブルーム」と呼び、エンブレムを持たない生徒を「ウィード」と呼ぶ。

 

もっとも、ウィードは差別用語として校則で禁止されており、通常はブルームの事を「一科生」、ウィードの事を「二科生」と呼んでいる。が、選民意識の強い一科生はその禁句を禁句と知っていながら呼んでいる生徒も少なくないのだが。

 

そんな学校で今日入学式が行われるという中、茶色の髪で端末片手に持ちながら眠そうに入学式の会場である第一高校の講堂を目指して歩いている少年『稲葉慶司』が居た。

 

 

「くぁぁ……眠い。ってか、広すぎんだろ……これ(端末)なかったら確実に迷うわ」

 

一高の広さに呆れながら端末に表示された地図を見ながら歩いている。断言してもいい、端末を忘れた奴は必ずと言っていいほど一度まよっていると。

 

「ま、んなことはどうだっていいか……それより気になるのは」

 

何やら揉めているひと組の男女だ。と口にはしないが、目線を向けると一方的に女子生徒の方が男子生徒に何か言っている様に見える。流石に距離が離れているので何を話しているかは聞き取れないし、聞き取るつもりもないが、男子生徒の方もなんとか宥めようとしてるようだ。そう見えるだけで実のところそうでないかもしれないが。

 

「見世物でもないだろうし……行くか」

 

あまり人にジロジロと見られてもいい思いはしないだろうと思い、他の生徒達と同様に見て見ぬフリをしてその場を去っていく。しばらく歩いていると、今度は二人の女子生徒が何やら困った様子でオロオロ(正確に言えばオロオロしているのは一人だが)している。

 

「……どうかしたのか?」

 

「わ!?え、と……あのっ」

 

 

茶髪の髪をおさげにした少女に話しかけると、驚いたようにビクリと肩をすくめて反応したかと思うと、「えと、えと」と話しかける前と同じくオロオロし始めた。流石に慶司も初対面の相手にそんな風な反応をされると心に来るものがある。確かに、少し目つきが悪いという自覚はあるので自分の顔の所為という可能性も完全に捨てることはできないが。

 

「私たち、端末忘れたみたいでどうしようか困っていたところ」

 

「そりゃ大変だな。案内板は見たか?」

 

「ううん、見てない」

 

「だったら、そこまで……いや」

 

「?」

 

途中で言うのを止めた慶司に首をかしげる女子学生。少し思案するような素振りを見せた後に

 

「あんたたちが良かったら、一緒に行くか?講堂まで」

 

と言った。女子学生二人は意外そうに目を見開く。その様子に少し心外だと思うが確かに初対面の人間から言われたのであればそうなるのも無理はないかと自己解釈をする。

 

「……意外、そういうすることするタイプに見えなかった」

 

「人は見かけで判断しちゃいけねーって習わなかったか?」

 

臆面もなくそういう女子生徒に思わず、ヒクリと顔がひきつりかける慶司だったが、なんとか元に戻す(本人はそのつもり)が……

 

「顔ひきつってるよ?」

 

「そういうのは出れば指摘して欲しくなかったんだけどな……まぁ、いいか。で、どうすんだ?」

 

「そうだね……ほのか、どうする?」

 

「え、え?わ、私!?」

 

突然話を振られた彼女はまたしてもオロオロし始めた。慶司は内心これがデフォであるのかと真剣に悩み始めたところで、ほのかと呼ばれた少女は

 

「じ、じゃあ………よ、よろしくおねがいしましゅッ!」

 

「………」

 

「………」

 

勢いよく言ったのは良かったが最後の最後で噛んでしまい、変な空気が流れる。ほのかと呼ばれた女子生徒に至ってはカァアアという擬音が出そうなくらいの勢いで顔が赤くなっていく。それを見ていて癒されるような感じがするのは何故だろうか。

 

「あ、あぅ……」

 

「お、おーけー。じゃ、行くか……っと、その前に…」

 

「なに?」

 

「稲葉慶司だ。まぁ、よろしくな」

 

慶司に自己紹介されて漸く女子学生たちも気づく。割と普通に会話していたので自己紹介することを忘れていたのだ。二人共今思い出したと言うように苦笑したあと

 

「北山雫だよ。よろしくね、稲葉くん」

 

「み、光井ほのかです。よ、よろしくお願いします!」

 

「お、今度は噛まなかったな」

 

「噛まなかったね」

 

ほのかが自己紹介で噛まなかったことを意外そうに言う二人に対してほのかは頬を膨らませて

 

「も、もう!稲葉君も雫もからかわないでよー!」

 

と怒るのだが。傍から見れば、怒っているように見えないというなんとも不思議な感じである。例えるなら、小動物というのが一番似合うだろう。本人は不服に思うだろうから言わないが。

 

「いや悪い、つい……な?」

 

「うん、つい魔が差した」

 

「酷い!?」

 

慶司と雫のダブルパンチに思わず、涙目になりながら言うほのか。その様子を見てもっと弄りたくなった慶司だが、ふと腕につけている時計で時間を確認すると入学式が始まるまで10分を切っていた。

 

「あー……、そろそろ時間もねーし行くか。……まだ弄り足りなかったけど」

 

「ん。案内よろしく」

 

「あぅ、待ってよー!」

 

ショックで少し硬直していたほのかを置いて雫と慶司が歩きだすと、しばらくして正気に戻ったほのかが駆け足で付いてくる。その様子を見ながら慶司はふと、初対面でこうも打ち解けられるとは思っていなかったと内心思いながら三人で行動へと向かって進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぃー、やっと終わった……」

 

「稲葉君、寝てただけだったけど…」

 

入学式とIDカードの交付が終わり伸び伸びと背伸びをする慶司にほのかは苦笑しながら言う。雫もその通りと言わんばかりにコクコクと頷いている。

 

「心外な。ちゃんと起きてたっての………五分くらい」

 

「説得力ないよ?」

 

「つまんねー、話ばっかで眠かったんだよ」

 

「開き直った!?」

 

全く悪びれもしない慶司に対してびっくりしながら反応するほのかと呆れたような目を向ける雫。まだあってから半日も経っていないのに反応が全くと言っていいほど違う事に思わず苦笑する。

 

「でも惜しいのを聞き逃した」

 

「惜しいの?………新入生代表の答辞か?」

 

「うん。司馬さんの答辞すごかった……司馬さん自身も綺麗だったし」

 

「周りの奴らも見とれてたしな」

 

「そうそう………え?」

 

「ん?」

 

頷きかけてふと、疑問に思った雫は聞き返す。すると、慶司は何か変なことを言ったか?と言わんばかりに雫を見ている。何かの聞き間違いだと思い、流すことにして話を続ける。

 

「私じゃあんな答辞は無理」

 

「そうか?俺としては、選民意識の高い一科生の機嫌を損ねないか気が気でなかったけどな」

 

「………起きてたの?」

 

「言ったろ、五分だけ起きてたってな」

 

その言葉にはっ、となり慶司をジト目で睨むが彼は人の悪い笑みを浮かべてニヤニヤしているだけだ。確かに五分だけ起きていたというのは雫も理解していたが、最初の五分という意味でとっていたので、まさか答辞の五分間だとは露ほども思っていなかったのだ。

 

「え、えーっと、これからどうする?私たちもHR行ってみる?」

 

「それでもいいけどな……何時までこっち睨んでんだよ」

 

「意地の悪い返ししたから。それと、ほのかも黙ってたし」

 

「え!?……あはははは」

 

頬を掻きながら困ったように笑うほのか。そう、実は彼女も慶司が雫をからかっていることに気づいていた。と言っても、最初から気づいていたわけではなく、たまたま彼の顔を見て少しあくどい顔をしたので、何かよからぬことを考えてるんじゃないのかな、程度の推測だったが、それが見事に的中してしまった。

 

「二人ともグルなんだ」

 

「ち、ちがうよ!?」

 

「私だけ除け者にして……よよよ」

 

「う、ううぅ〜雫ぅなんでもするから許してぇ〜」

 

ほのかがその発言をした瞬間、泣き真似をしていた雫はニヤリと笑いすぐさま泣き真似を止めた。それを見てしまったとほのかが思ったときはすでに遅く

 

「じゃ、ケーキ食べに行こ?ほのかの奢りで」

 

「へ?………ええ!?」

 

「なんでもするって言った」

 

「う、それはそうだけど……」

 

「なぜ俺を見る」

 

機嫌よさげにしている雫に若干涙目になりながら慶司を見るほのかに、彼は苦い表情をしてそう言う。ジェスチャーをしてお金がないことを伝える彼女に仕方なく慶司は

 

「………今回だけだからな」

 

「!……ありがとうございますっ」

 

パァアとみるみる表情に色が出てきて、ものすごく嬉しそうにしている。此処で「冗談だ」と言ってみたい衝動に駆られる慶司だが、そんなことをしてしまえば間違いなく彼女はどん底に落ちたと言わんばかりの暗い表情で雫に奢ることになるだろうから必死に抑える。

 

「ま、どっちでもいいから早く行きたいかな」

 

「食い意地はってんなー…太るぞ」

 

「大丈夫、その分運動するから……それより私は、ほのかの方が心配」

 

「わ、わたし?」

 

「この前2K……『わっ、わーぁぁああ!?だ、ダメだってばぁっ!』……って」

 

淡々と言う雫の口を慌てて塞ぐほのかだが、大体バレてしまっているので殆ど意味はなかった。若干、ほのかのことを不憫に思いながら慶司は苦笑するだけにとどめておく。流石にいくら顔を真っ赤にして涙目という嗜虐心をそそる様子を見せていてもここまで弄られているのに、更に弄ったら可愛そうだと思ったからだ。でなければ、確実に雫と結託してほのかを弄っていたことだろう。

 

「弄るのもその辺にしといて、さっさと行こうぜそのケーキ屋」

 

「………仕方ない。ケーキ優先の方が優先」

 

「なんだろう、喜んでいいのかなぁ……」

 

弄られなくて済む事を素直に喜べないといったふうな表情で呟くほのか。どうせ、ケーキ屋についたらまた弄られることになるのだからそんなこと考えていてもしょうがないだろ、と慶司は敢えて言わなかった。流石に今日はもうほのかを弄りはしないが、助けもしないつもりらしい。

 

「稲葉君……ケーキごちになるね」

 

「な、なります……」

 

「へいへい、好きなだけ食ってくれや」

 

目を輝かせてそう言う雫と本来自分が奢ることになるはずだったのを肩代わりしてくれたのが、申し訳ないのかまゆを下げておずおずと言うほのか。対照的な反応だが、入学式早々に面白い生徒たちと友人になれたことを考えれば安い出費か、何て柄にもないことを考えてケーキ屋を目指して歩いていく二人の姿を見て思うのだった。

 

 




ついに書いてしまった、魔法科高校の劣等生二次……いや、別に後悔はしていないんですけどw
時間があるときにでも読んで頂ければ幸いです。

ps:タイトルが某禁書目録のようになってしまったwww
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