とある一科生の活動録   作:雪人形

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Act02

入学式から翌日、学校に着くなり慶司は履修科目の登録をわいわい騒がれている昨日の新入生代表の答辞を行った『司波深雪』を横目に行っていた。

 

「人気者は朝から大変なことで」

 

とは言え、助けるつもりは毛頭ない。そんなことをすれば、彼女を囲っている生徒の殆どから敵意の目線を送られることは避けられないだろうからだ。入学二日目でそんな目に遭うのは勘弁したい。

 

「おはよ、稲葉君」

 

「おはようございます」

 

「ん?ああ、おはよう北山と光井」

履修科目の登録を終えて、司馬深雪とその周りの生徒たちを眺めていると、雫とほのかが慶司に声をかけてきた。先程まであの集団に混ざっていたのに、どうした風の吹き回しか疑問に思っていた彼だが、訝しげに見ていたのが表情に出ていたのか、二人共苦笑しながら

 

「最初は混ざっていたんだけど……」

 

「話せそうにないから、稲葉君と話してようってことになった」

 

「俺は暇つぶしの道具か何かかよ……」

 

思わず頬杖を付いていた肘からガクッと頬を外してしまう慶司。どうせ、大した理由ではないと考えてはいたものの、まさか司馬深雪の変わりに話し相手になってもらおうという魂胆で来ていたとは、思っていなかった。

 

「あ、そういえば……ほのか、司波さんと話せるチャンスあるかも」

 

「へ……ど、どういうこと!?」

 

「司波さんの席私の後ろかもしれない」

 

「あー、確かにな。『き』から『し』の間に誰もいなかったら後ろだな」

 

「わ、わっ、ど、どどうしよう!?」

 

ワタワタと慌てるほのか。その様子に雫と慶司は苦笑する。まだ会話すらしていないのに、こんなに慌てて彼女らしいといえばらしいがもう少し落ち着いて欲しいと両人ともに思っているのは、言わずもがなだろう。

 

「ほのか、落ち着いて……はい、深呼吸して」

 

「すぅーはぁー……うん、ありがと雫少し落ち着いたかも………」

 

「お、司波さん。はよーっす」

 

「ふぇぇえっ!?」

 

「?」

 

「……はぅ」

 

慶司の発言に漸く平常心を取り戻したハズだったほのかは再びあわあわとし始める。しかし、深雪はそんな彼女を変な目で見ることなく『ニコッ』と擬音語が付きそうなほど、綺麗な笑みでと微笑む。その笑みにほのかはノックアウトされ硬直しているが、その表情は年頃の少女としていかがなものかと思わず突っ込みたくなるような表情をしていた。

 

「おはよう、司波さん。私、北山雫……よろしくね」

 

「俺は、稲葉慶司だ。北山同様よろしくな……って、おい。何時までショートしてんだよ。お前も自己紹介しろよ」

 

「………はっ、え、えと…あの、み、光井です!光井ほのか!よ、よろしくお願いしますっ」

 

「ええよろしく。稲葉君、北山さん、光井さん」

 

《ただいまより、オリエンテーションを開始します。生徒の皆さんは席についてください》

 

全員で自己紹介を終えると、オリエンテーション開始の放送が流れる。それに従って生徒たちは自分のあてがわれた席に座る。勿論、慶司たちも他の生徒達同様あてがわれた席に座ると、程なくして教官が入ってきた。

 

「私は、1―Aの担当教官百舌谷です。皆さん、ご入学おめでとうございます」

 

そのあと、百舌谷と名乗った教官から一科生の優遇措置について説明があっているが、慶司は退屈なのか他の生徒が真面目に聞いている中、目を閉じて相槌を売っていると思わせておいてその実、船を漕いでいた。

 

「では、何か質問はありますか?」

 

「「「………」」」

 

「よろしい。では希望者の方は十分後実験棟1階ロビーに集合しておいて下さい。私は次の授業がありますのでこれで」

 

教官が去って行ったあと、すぐさま生徒たちはどうするか話し合っているが、大抵の生徒は教官ありきの引率側……基礎魔法学・応用魔法学の講義の方に着いていくと決めているようだ。慶司も友人である雫とほのかのもとへ向かう。

 

「よぅ、どうするよ。教官に付いて回るか?」

 

「出来れば、司波さんと回りたいんだけど………」

 

「…あー、見事に出遅れちまったからな」

 

慶司たちの視線の先には深雪に群がる生徒たち(主に男子)が何か話している。慶司たちの位置からでは聞き取ることができないが、多方深雪に何処を回るか聞いているのだろう。そして、あわよくば『偶然』を装って彼女について回る算段なのは、誰がどう見てもわかる。

 

「……でも、司波さん少し迷惑そうにしてる」

 

「うん、確かにそう見える……ていうか、絶対そうだと思う」

 

「だな。……もう少し、自重してくれればいいんだけどな」

 

「稲葉君、どこ行くの?」

 

「ちょっくら、囚われのお姫様を攫いに、な」

 

そう言う慶司に二人は少しキョトンとした表情を見せたあと、彼の意図が分かったのかそれを笑顔で送り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ですよね!やはり、補欠と一緒の工房なんて……」

 

深雪は内心辟易としていた。目の前の……名前は覚えていないが、男子学生は何かと付け二科生は二科生はと二科生を見下すような発言ばかりをしている。別にそれが絶対的に悪いとは言わないが、こうも目の前で尊敬する兄が所属する二科生のことを見下したような発言を聞いていると、心の底から黒い感情が湧き上がってくる。もう適当に切り上げて、さっさと集合場所に向かおうと思っていると、慶司がやってきた。

 

「おっす、司波さん。授業見学どう回るか決めてるか?」

 

「あ、稲葉君……先生について回ろうかと思ってます。稲葉君は?」

 

「司波さんと同じ。そろそろ、集合場所に行かないと時間ないぜ」

 

「!……そうですね。行きましょうか」

 

チラリと一瞬、男子生徒の方に視線を向ける慶司の意図が分かったのか、少し申し訳なさそうにする深雪を見て、慶司は生真面目だなと思いながら苦笑する。そのまま、深雪と一緒に教室を出ると廊下で待っていたほのかと雫と合流する。教室を出る際、慶司が話をわざと遮った生徒からは怨念がこもっていそうな視線を浴びせられたが、無視してそのまま出てきた。

 

「いや、人気者は大変だな」

 

「ええ、まさかここまでとは思ってもいなかったわ……ありがとう、稲葉君」

 

「礼を言われるほどのことじゃねーよ」

 

微笑んでお礼を言う深雪に照れくさくなった慶司は頬を掻きながら、目線をそらす。それは誰が見ても照れているようにしか見えず、ほのかも雫もニヤニヤしていた。

 

「照れてるね」

 

「うん、照れてる」

 

「うっせ!」

 

からかいながら小走りをするほのかと雫を慶司は照れ隠しがわりに追いかける。程ない距離を逃走していた二人だが、体格差と運動能力の差であっけなく追いつかれ、捕まってしまう。軽くチョップを彼女たちの頭に落として済ませたが、二人からの抗議は当然のように来る。知らん知らん、と聞き流して集合場所に向かっていく。それでも、渋々ながら彼の跡をついて行くものだから、それがおかしくて深雪はクスクス笑いながら彼らの後を追うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この授業は、放出系統魔法の基礎を学ぶ授業で摩擦によらず、静電気を発生させ空中放電で帯電状態を解消する実験を行っています」

 

実験棟の中に入り、慶司たちの先輩たちに当たる生徒たちが室内で実験をしており、それを教官が解説するような形になっている。オリエンテーションの時は船を漕いでいた慶司も魔法のことに関しては真面目に聞いているようで、時折「へぇ」や「なるほどな」と相槌を打っている。

 

「では、放出系統魔法の性質を説明できる方はいますか?」

 

「え、嘘だろ…質問されんのかよ」

 

「聞いてないよ……分かる?」

 

まさか、質問があるとは思っていなかったのかほとんどの生徒はざわざわとざわめき出す。そんな中、ほのかと雫はこっそりと慶司に尋ねる。

 

「稲葉君、分かる?」

 

「ん?……あー、放射線を操作する魔法……って、言いたいが厳密には違うと思うんだよなぁ。悪い、分かんね」

 

「そうなの?」

 

「ああ、多分……っていうか、十中八九違うだろうな……ほら」

 

教室で深雪に話しかけていた生徒……教官に森崎と呼ばれていたが、彼は慶司の言った『放射線を操作する魔法』かと聞いて間違いではないが不正確だ、と指摘された。そのついでに言い方についても指摘されていたが。

 

「そうですね……司波さん、貴方はどうですか?」

 

「はい、放出系統魔法とは素粒子及び、複合粒子の運動、それにより相互関係に干渉する魔法です」

 

「ええ、素晴らしい。実に簡潔に且つ良くまとめられた説明です。司波さんが言ったように――――」

 

深雪の答えを引き継ぐように教官は再び説明に入っていくが、殆どの生徒は恐らく深雪の答えに感心して共感の話が耳に入っていないだろう。慶司の傍にいるほのかと雫がいい例だ。目をキラキラさせて深雪を見ている。そんな、二人に彼女は苦笑しているが。

 

「――――では、これより昼休憩に入ります。午後の見学は13時40分から行いますので、希望者の方はそれまでに実技棟の1階に集合しておいてください……では、解散」

 

「「「「ありがとうございました!」」」

 

解散すると一目散に殆どの生徒が深雪の元に集まり、昼食をどうするか矢継ぎ早に質問している。勿論、深雪の近くにいる慶司たちなどお構いなしで話している。…そも、気づいているかすらも怪しいものがあるが。

 

「ご一緒してもいいですか?」

 

「え、ええ。席が空いていたら、ですけど……」

 

「!では、席が埋まらないうちに急ぎましょう!!」

 

そう言って仕切ったのは、先ほど質問の受け答えで『不適切』と言われた生徒…森崎だった。チラリと深雪を見ればあまり気が良さそうではなく、次にほのかたちを見てみれば『何でアンタが仕切ってんのよ!』と言いたそうな表情で彼を見ていた。

 

……その点は慶司も激しく同意できると思ったと同時にある種の嫌な予感を感じ取ってしまった。確証はないが、何やら厄介なことが起きるのではないかと。

 

そして、その予感は奇しくも見事的中してしまい、彼、森崎が食堂で起こさなくてもいい一悶着を起こしてしまうことになろうとは、まだ誰もこの時にはわかるはずもなかったのだった。

 

 

 




やっとのことで二話目を投稿できました。……相変わらず、ほのかと雫のコンビと絡みが多いオリ主こと慶司君。
……いや、実に動かしやすいんですよね。この二人……勿論、キャラとしても好きですよ?
にしても、話進みませんねー……私が悪いんですが。次の話で漸く原作主人公の達也君、そのた愉快なメンバーたちが出せます。……ここまで長かった←オイw

何にせよ、お気に入りが十件を越したので良かったです。最初0件がずっと続いていたのでかなり心配でしたwwまだまだ、文が粗いし拙いしで色々読みにくいところもあると思いますが、これからも読んで頂ければと思っています。………ついでに、お気に入り登録とか感想書いてくれてもいいんですよ?

とまぁ、今回はこの辺で。では皆さん、また次回ノシ
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