とある一科生の活動録   作:雪人形

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Act03

学食につくとすでに多くの席は埋まっていた。時間が少し出遅れた、ということも理由の一つだろう。深雪とお近づきになりたい生徒たちが矢継ぎ早に話しかけ、深雪は律儀にもそれに全て答えていく中で、歩みが遅くなったのだ。しかも、質問の大半は森崎で今朝のことであまりいい印象を持っていない深雪としてはあまり話したくはなかったが、そういう訳にもいかず仕方なく受け答えをしていたという感じだ。

 

「あ!深雪ーっ、こっちこっち!」

 

「エリカ、美月っ、お兄様!」

 

深雪の姿を見つけた明るい茶髪の『二科』女子生徒が大手を振りながら深雪を呼ぶ。それを聞いた深雪は今日見た中で恐らく、一番いいである笑顔を浮かべて彼女たちのもとへと小走りで駆け寄る。

 

「何か、邪魔になりそうだよね……」

 

「少なくとも、一科生の俺らと居る時よりは生き生きしている気がすんな」

 

「うん。……まぁ、お兄さんもいるから、かな?」

 

仲良さそうに話している深雪たちを見て、ほのかは少し羨ましそうにしている。それは深雪について来た大半の生徒がそうだろうが。なにかひと波乱ありそうだと考えていた慶司は、杞憂だったかと安堵しながら食事を注文しに行く。

 

「あれ、どこ行くの?」

 

「司波さんはあっちの面子と食べるだろうし、さっさと飯頼んで席確保しねーと本当に埋まっちまうからな」

 

「確かに、一理ある」

 

「だね。私たちも行こっか」

 

ほのかと雫……いつものメンバーで雑談しながら昼食を注文する。ほのかと雫は日替わりランチを慶司はカレーを頼んでいた。注文した食事を受け取りどこか手頃な場所に席が空いていないか探していると、偶然深雪たちが座っている席の近くが空いていたので三人でそこに座って食べる。

 

「そういえば、午後の見学って何を見るんだろう」

 

「さぁ?ただ、聞く話っツーか、聞こえてきた限りの話じゃ七草生徒会長が遠隔魔法実習室で実習するらしいぜ?……見に行くか?」

 

「うーん……見てみたいかも。でも、司波さんとも回りたいし……」

 

「誘ってみたらいいじゃねーか。案外、乗ってくれるかも知んねーぞ?」

 

その手があったか!と言わんばかりに目を見開いてコクコク頷くほのか。頷く速度が速いので、慶司はそのうち首がポロリと取れてしまうんじゃないだろうか、と心底どうでもいいことを考えながら目の前の友人の挙動に苦笑していた。慶司も深雪とは話してみたことが今度機会があればいいやと納得して、目の前の友人たと雑談に花を咲かせていた時だった。

 

「なぁ、君たちここの席譲ってくれないか?」

 

「「「はい?」」」

 

「二科はただの一科の補欠なんだ。授業でも食堂でも一科生を優先するのは当然だろう?」

 

「………何言ってるのあの森下だったっけ」

 

「森崎だろ。……てか、空気読めねぇなあいつ」

 

当然と言うように発言した森崎に思わず慶司たちは悪態を打つ。勿論、本人には聞こえていないようだが。当然、いきなりの見下した発言に深雪と席を共にしていた二科生は快くは思わない。それも当然で何が悲しくて自分たちを見下した人物に席を譲り渡さなければならないのか。たとえ、そうでなくても譲り渡すつもりはないだろうが。

 

「……は?何言ってんのアン『……エリカ、ダメだ』司波君……」

 

「分かった……俺は食べ終わったから行くよ」

 

「あ、おい!………ったく、俺らも行こうぜ」

 

「あ………」

 

食べ終えたと言った男子学生は噛み付こうとした女子生徒を止めて、席を立って去っていく。彼と一緒に座っていた生徒たちも彼が去るのを少しの間呆然と見ていたが、渋々ながらも彼についていく形で離席する。深雪は彼らが去るのを悲しい目で見ていたが、

森崎はというと、彼らが去っていったのを満足げに見送るとさっさと注文を取りに行き、彼らが座っていた席に臆面なく座る。

 

「二科生にしてはいい心がけでしたね、司波さん」

 

「……あまり、二科生を蔑むような発言はいいとは思えません」

 

「二科生の肩を持つんですか?……いけませんよ、一科と二科のけじめはつけないと。みんなもそう思うよなぁ?」

 

問いかけるようにそう聞く森崎の声に便乗したように彼らの周りにいた深雪にについて来ていた生徒たちは工程の意を示す。敬愛する兄に先ほど口パクで「騒ぎにしない方がいい」と釘を刺された手前、それを破ってしまうのは嫌だと思う反面自分の友人と兄を蔑まれて大人しくしているのも同じ位嫌だと感じる深雪は行動を起こすか否か葛藤していた。

 

「彼らは、僕たちより劣る……しかも、代用品としてこの学校に入学させてもらったんですよ?別に司波さんが肩を持つ必要なんてありませんよ。あんな…二科(ウィー)――――」

 

プツンと深雪の中で何かが切れるような音がした。何故、そこまで人を見下せる?何故彼らの実力を見ない内から遥かに劣ると決め付ける?何故、貴様ごときがお兄様よりも上だと……何故何故何故何故

 

怒りに我を忘れ、勢いよく立ち上がろうとした瞬間、何かが深雪の横を横切った。……さっきのは、と言う深雪の疑問はすぐに解消された。横を通り過ぎていったものは目の前より少しズレた位置に座っていた森崎の頬を掠めその後緩やかな機動を描いて落ちていったのはスプーンだった。

 

「悪い、手が滑った」

 

声を上げたのは、慶司だった。彼の手を見てみれば握られていたはずであろうスプーンの姿が確かにない。しかも、ワザと投げたままのポーズで止まっている。

 

「……なんのつもりだ?」

 

「いや、別に?ただ、えーっと……森定だったか?」

 

「森崎だ!それがどうした!」

 

名前を間違われたことにピキリと青筋を浮かべて、少し怒気を込めながらそう言う森定……失礼、森崎に臆することなく寧ろ余裕綽々と言わんばかりに平然として慶司

 

「お前が言おうとした言葉……あんま言わないほうがいいんじゃないのか?」

 

「ふん、取り繕ったところでどうなると言うんだ。……なんだ?お前、二科の肩を持つつもりか?」

 

「そういう訳じゃねぇよ。確かに、取り繕ったって無駄だろうけどな……一応、禁句だぜ?それに此処が何処だか忘れたか?」

 

「何処って食堂以外に何がある……何が言いたいんだ」

 

お前は此処が何処だか忘れたのか、言外にそう問われたような気がした森崎はイライラしながら尋ねる。意図が通じていないことに若干もどかしく思いながらひと息吐くと慶司は呆れたように

 

「ここ、俺らだけが使っているわけじゃねーよな?」

 

「当たり前だろう」

 

「俺らの先輩方もいるわけだ。………その中には、『風紀委員』も居るよなきっと」

 

「……だから何が…………!」

 

「やっと分かったか……だから、あんまそう言う発言は此処いらでは控えたほうがいいんじゃねーかって思うんだが?」

 

慶司が言いたいことを理解した森崎は少し顔色を悪くする。確かに、先ほど彼が言いかけた言葉……『二科』は原則校内では禁句とされている。そして、校則違反を取り締まる風紀委員は当然、校内での禁句を発言したものも取り締まる必要がある。……もちろん風紀委員が聞いていればの話だが。

 

そこで、此処食堂だ。この時間帯は彼ら一年以外にも昼食をとる生徒は多い。その中に、風紀委員がいても何らおかしくはない。つまり、先ほどの発言を許し、もしもこの中に風紀委員が居たならば現行犯として風紀委員に捕らえられてもおかしくはないぞ?と慶司は言いたかったのだ。

 

「……ふん、借りだなんて思わないぞ」

 

「借りにするつもりなんて毛頭ねーよ」

 

食べ終えた森崎はそう言って食堂を去っていった。その後を何人かの生徒たちが追うような形で彼についていく。ふと、横を見てみれば森崎に向かってあっかんべーをしているほのかがいたが、それは年頃の女子としてしていい行動なのか、と思いつつ投げたスプーンを拾い、代わりのスプーンと交換してもらってから再び、カレーを食べ始める。

 

「……稲葉君、今朝に続いて助かったわ」

 

「むぐむぐ………今朝?ああ、別に構わねーよ。好き勝手やっただけだしな」

 

「それでも、よ」

 

苦笑する慶司の表情は少し困ったようなもののようになった。その様子から、恐らく謙遜なんかではなく実際にそう言う風に思って行動したのに、ここまで感謝されているからだろう。同席している二人はただ単に照れ隠しをしているだけとしか思っていないだろうが。

 

「照れてる〜」

 

「うっせ!」

 

ゴチンッ

 

「あぅ!?ひ、酷いよぅ稲葉君……」

 

ニヤニヤしながら言ってきたほのかの頭に思わず拳骨を落とす。すると、意外といい音がしたので拳骨をした慶司本人も拳骨をした手とほのかの頭を見比べ驚いている。当然、雫と深雪は目を見開いている。

 

「光井……お前頭ん中ちゃんと入ってんのか?」

 

「入っているよ!?」

 

「本当に………?」

 

「司波さんまで!?」

 

憧れの深雪にまでそんなことを言われて、ショックを隠せないほのか。と言っても、彼女の言葉は表情を見てみれば、冗談だと一目瞭然なのだが、それに気づかずショックを受けるほのかを見ていると、クスリと笑って

 

「冗談よ光井さん……いえ、ほのか」

 

「よかった……って、今司波さん私のこと名前で?」

 

「いけなかったかしら?」

 

「い、いえいえいえ!と、とんでもないっ!むしろ名前で読んでください!!」

 

ブンブンと勢い良く首を横に振って否定するほのかを見てると喜怒哀楽が激しいな、と慶司は一人思う。彼女のように喜怒哀楽が激しかった人物を知っているが、それはもう見ることができない。思えば、彼女は自分の大切な……■に似ていると感じだ。勿論、見た目ではない。雰囲気だ。見た目ならほのかより上だと自信を持って言うだろう。……ほのかには失礼だが。

 

「……ば君?……稲葉君?」

 

「ん?ああ、悪い考え事していたわ、すまねーな」

 

「それは、いい。で……いい?」

 

「は?何が?」

 

考え事をしていたせいで、話を聞いていなかった慶司にとっては何が何のことで『いい』のかさっぱり分からなかった。それを呆れたように雫が説明する。

 

「この際だから此処にいるメンバーは名前で呼び合わないかって話になったの。それで、稲葉君以外は全員賛成したから後は君だけ」

 

「ああ、そういう事な。別にいいぜ……じゃ、改めてよろしくなほのか、雫、深雪」

 

「「「うん(ええ)」」」

 

この後、互いに名前を一人ずつ名前を呼び合うと言う謎の儀式を終えると、昼休憩が終わりの時間に差し掛かっていた。それに気づいたみんなで急いで集合場所に向かっていったのは、入学二日目にして忘れられない出来事になった。

 

なにせ、かけがえのない仲間を得たのだから。




あ゛ーーーーーーっ!!話進まねぇっ!(`・ω・´)ムッキー!
今回の話で、放課後のシーンまで行く予定だったのに昼食の様子だけで終わらせてしまったアホな作者こと雪人形デス…

はぁ、色々書いていたら気がついたら既にいつも投稿している文字数を超えている次第……いや、小説ってほんっと難しいですねwwてか、このままでは入学式編だけで20話行くんじゃなかろうか……いや、それはよろしくない。どこか削減しなければ……

今回の森崎君は相当嫌味な奴になってしまいました(-_-;)……で、でも大丈夫!スピンオフの優等生の森崎君の方が数倍嫌味なやつだからッ!(←おい)

※活動報告にてヒロインのアンケートを取ろうと考えていますので、詳しくは活動報告をご覧下さい

では、長々となりましたが、また次回……ノシ
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