妖精の寵児   作:イベリ

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呪術廻戦面白いよね......

まだアニメしか見てないけど、真希さん活躍して欲しいなぁ。今の所弱いみたいだけど。


妖精のいない国

例えば、気がついたらものが移動していた。

 

例えば、何も無いところで転びそうになった。

 

例えば、死ぬ程の事故を起こしたのに、無傷だった。

 

こんな奇跡や、日常に潜む小さな超常。

 

これを、人々は「妖精の仕業」と呼んで、不思議を楽しみ、それを尊んだ。

 

その思想は受け継がれ、近代でも妖精を信じるものは少なくない。

 

それほどに、妖精という存在は日常に溶け込んでいる。

 

けれど、遠い東国。

ジパングには、妖精が存在しないと言う。

 

 

 

 

 

 

東京某所に存在する廃墟。その暗がりで、少年はふぅとため息を1つ。傍らに浮く青髪の女性が、汚れたところを水で洗い流す。

 

びちゃびちゃと粘性の何かが滴る音の中、流暢な英語が何も無い廃墟の空間に響く。

 

『うわー...汚い、なにこれ..........【ヴィヴィアン】?』

 

シュワシュワと溶けるように消えていく異形をつつこうとすれば、少年よりも前に出た女性は、触ってはいけない、というように少年の腕を掴んだ。意図を察して、そっか、と呟いた少年は、消えてなくなっていく異形を見届けた。

 

『ん〜、妖精じゃないし、それが変質したものって感じもしなかった。なんて言うか、人?に近いというか......そもそも現実世界に、思想世界みたいなものを上書き出来る存在とか、いちゃダメでしょ。もしかして、師匠に聞いた原初の妖精とか?』

 

やばくない?殺しちゃったよ?

 

どうしてこうなったんだろう、と頭を抱えた少年は、軽い気持ちで来たことを後悔した。

 

ちょっと前に雑誌で見た、日本の寿司が食べたくて、ヴィヴィアンにお願いをして海を渡ってきたのに、気持ち悪い力を使う大人やら、よく分からん生き物が襲ってきてそれどこじゃない。目当てのお寿司も高くて食えたもんじゃない。

 

そもそも、お金忘れた。

 

『お金忘れちゃったんじゃどうしようもないよ......馬鹿だなぁ僕。気持ち悪いのいっぱいいるし、僕が憧れたジパングは、こんな場所だったのかぁ......』

 

ワイルドハントがずっと起きてるのこの国?と呟いて、短く切りそろえた赤髪を撫でながら立ち上がれば、少年を眺める長身の包帯のような目隠しが特徴的な男がいた。

 

「.........なんだ、君.....?」

 

何か声をかけられているようだが、少年にはその言葉の意味が理解できない。

 

『なんて言ってる?』

 

コミュニケーションを取ろうとしているのだろうということは理解できた少年は、しかしそれを理解できることは無かった。

 

「日本語がわかんないかい?ハロー?」

 

『ん、ハロー!ごめん、日本語は喋れないんだ。よく考えたら、少しくらい日本語勉強してくるべきだったなぁ...』

 

「あー...『とりあえず聞きたいんだけど、君は呪術師かい?』

 

流暢な英語に切り替わった男の言葉の意味を、少年は理解することなく、首を捻った。

 

『ジュジュツシ?なにそれ。』

 

『あー、わかった。なんでもないよ。』

 

柔和に笑う男は、なんかよくわからんけど、胡散臭い感情を少年に起こさせた。

 

『こんなところで何を?』

 

『あの変な生き物がね、人をここに誘って殺そうとしたから、追ってきた!』

 

『んー、なるほど見たとこ12歳くらいだと思ったけど.....その訛り、出身はイギリスかい?』

 

『凄い!よくわかったね!歳も当たり!』

 

隣に座り込んだ男は、人好きのする少年の笑顔に毒毛を抜かれ、少し張っていた緊張の糸を解く。

 

『こういうの見るのは初めて?実家の方でもこんなの退治してたりした?』

 

『ううん、日本に来て始めて見た。ワイルドハントの亡霊とか、そういうのともちょっと違う気がして、変な感じ。』

 

『向こうでは亡霊狩りとかしてるの?もしかして祓魔師(エクソシスト)?』

 

『エクソシストは知らないけど、亡霊狩りは年に2回やってるよ。身長はまだちっちゃいけど、これでも強いんだ。』

 

『こんなの祓えるくらいだし、弱いだなんて思っちゃいないよ。』

 

男が放置されている異形─────呪霊を眺めながら、目の前の少年と少女を見比べた。

 

『それで、さっきから一切喋らないその子は?』

 

『えっ、嘘!ヴィヴィアンが見えるんだ!』

 

凄い!と年相応にはしゃぐ少年を横目に、男は聞いたことあるなーと考え込んだ。

 

『ヴィヴィアン?たしか、アーサー王伝説に登場する湖の妖精じゃなかった?』

 

『おー!やっぱりヴィヴィアンは有名だね!』

 

エッヘン、と胸を張った青髪の女性は、少年の尊敬の眼差しにご満悦らしく、酷く優越感に浸っていた。

 

(......え、マジモン?やばくね?)

 

初めて見たー、と呟いた男───────五条悟は、呪い以外の超常を人生で初めて目の当たりにした。

 

(なるほど.....これは相性が最悪だ。呪力が全く無いから、非術師かと思ったけど、これは真逆...呪力が負のエネルギーなら、彼のは完全な正(・・・・)のエネルギー。存在も、見るのも初めてだけど......本来人が持つ純粋な生命力、人の想念ごときが生み出す力とは、出力も規格も、そもそもが桁違いってわけか。)

 

証拠に、なんでも見れると思っていた悟の瞳でも見ることは出来なかったが、彼の周りには呪力では無い、ナニカ別の力が渦巻いている。

 

海外にはこんな力の使い方があるのか、と呟いた男は、あははと気の抜けた笑をこぼした。

 

『そういえば、これは何?』

 

『これは呪霊って言って、まぁ人の負の感情の具現化だと思っていいよ。』

 

『んー......そっか、人の感情だから、ある程度喋ったりできたんだ。でも、心があるのはおかしいよね...変な形してるし。』

 

『そうだ、まだ自己紹介をしてなかったね!僕は五条悟!日本の───────』

 

自己紹介をしようと口を開いた瞬間、世界が混沌に塗りつぶされる。

 

「おいおい、ちゃんと特級じゃん。未登録のがゴロゴロいたらダメだろ。この任務真希に当てようとしてたのほんと糞だなぁ。」

 

『わ、また思想世界で塗りつぶした。面倒だなぁ。』

 

「だあああさないいいいいい!!!!」

 

死にかけの最後っ屁なのだろう、呪霊が絶叫すると、肉壁が猛スピードで2人を押し潰さんと迫った。

 

「ったく、面倒だなぁ......君、ちょっとこっちに...」

 

『サトル。面倒だから、アレごと斬っちゃうね。』

 

驚く程に冷静に、少年は虚空に手を翳す。並の術士なら止めていたが、この五条悟は違う。この【領域展開】、扱うことが出来るのは、ほんのひと握りであり、呪術師の極地に到達した者のみに許される秘奥。

 

基本的に、発動されれば負けるのだが、悟はどうにでもなるというように、少年に任せた。

 

なにせ、こんな低俗な領域、簡単に塗りつぶし返せるのだから。

 

『承認受理───────受諾、聖剣起動』

 

虚空が神々しく輝き、今まで口を閉じていたヴィヴィアンが口を開く。

 

妖精国(アヴァロン)、限定接続───────聖剣、簡易顕現。』

 

少年の手に突如現れた剣の形をした光の奔流、その剣に、言い知れぬ威圧を悟に感じさせる。

 

『ここは君の心の中、つまり心象風景みたいなものだよね?心は、魂。魂に異物を閉じ込めている感覚に近い。加えて、君達みたいな不浄のエネルギー体が、精霊力の塊をぶつけられて無事なわけないよね?』

 

『受諾者ヴィヴィアンより、担い手アーサー(・・・・)へ───────抜剣、許可。』

 

『亡霊ってわけじゃないみたいだし、存在ごと消えてもいいよね。』

 

ただその光を翳すだけで、領域と呪霊を浄化(・・)する。

 

『ふぅ......お寿司、食べたかったなぁ。』

 

クキュウ...と力無く鳴った彼の腹の音に、悟は大爆笑。

 

『君最高!そんな君にいい提案!なんと高級お寿司食べ放題の特典付き!やってみる?』

 

悟は両手の親指をグッと立て、不可思議な動きをしながら、ニヤニヤと笑った。傍から見れば胡散臭すぎて絶対に受けないが、今少年は腹ぺこだった。

 

『なにそれ!!やる!!絶対やる!』

 

『OK!仕事は簡単!僕が働いてる学校で、生徒として、そして、毎日数回、今みたいな化け物に剣をかざすだけの簡単なお仕事で〜す!』

 

『すごーい!かんたーん!やるー!』

 

『よーし!じゃあ入学祝いとして早速お寿司食べに行こう!銀座の名店だぞ〜?』

 

『ギンザ!よくわかんないけど凄そう!』

 

わちゃわちゃとはしゃぐ少年に、ヴィヴィアンが肩を抑えて、暴れないように、と諌めているのは、喋ってはいなくとも見ればわかった。

 

しかし、この少年あっさりとやってのけたが、領域ごと呪霊の存在そのものを消し去った。

 

効果までは分からなかったが、基本的に領域は展開されれば抜け出す手段は無い。領域を互いに展開できるのなら話は別だが、彼は剣をかざしただけ。【呪術の天敵】悟が感じた事は、間違いなどではなかった。

 

(呪術師じゃないけど、こんだけ規格外の力なんだ。何かがあって敵対なんてしたくないからね、仲良くなっちゃお〜っと。)

 

『じゃあ、行こうか!それで、名前はアーサーでいい?』

 

『うん!僕の名前は、アーサー・ル・フェイ!よろしくね、サトル!』

 

『───────うんっ!元気な挨拶結構!じゃあ、早速お寿司屋さんへGOー!』

 

『GOー!』

 




呪術廻戦、呪力って力を理解するのムズすぎて今まで食わず嫌いしてた。
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