四度目の鴉   作:Astley

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 今作は死んでほしくない人が多すぎる。


00:四度目

 普通は、一度死んだらおしまいだ。だが、自分はそうではないらしい。彼が初めてそれに気づいたのは、全てを焼いた後だった。

 

 「レイヴンの火」。惑星ルビコン3を丸ごと焼き払った災禍。人類を存続させるために人々ごと破綻の目を摘み取る矛盾。果たしてそれは、強化人間C4-621の手で成し遂げられた。全てを終えて生き残った彼は、レイヴンの名義を捨て、ウォルターの遺言通り自由に生きるはずだった。

 しかし彼のその後は、自由とはほど遠いものであった。一生を生きられるだけの金はある。再手術して普通の生活も取り戻している。それでも彼の胸中を占めるのは後悔だけであった。

 大切だったものたちは全て火の中に消えた。たった一人孤独な自由にどれほどの価値がある。そうして、彼は罪悪感に苛まれたままその一生を終えた。

 

 そう、一生を終えたはずだったのだ。

 

『レイヴン、貴方の帰還を……失礼、貴方の帰還を歓迎し、さらなる活躍を期待します』

 

 それが二度目の生の始まりであった。彼はいつの間にかライセンスを取得した直後に戻っていた。大いに困惑した。しかし、それは同時にチャンスでもあった。だから、彼はもう一度レイヴンとしての人生を歩んだ。今度は、決して間違えないように。

 

『そうか……621……お前にも……友人ができた……』

 

『あなたは……人とコーラルがともに生きる未来を、その可能性を守ってくれた』

 

 今度は少しだけ上手くいった。多くの犠牲を払ったが、それでも僅かばかりの大切なものを失わずに済んだ。来たるべき破綻への対処を先延ばしにしてしまったが、それだって彼女と一緒なら乗り越えられる。そう信じていた。

 

『そんな……コーラルの増殖が止まらない……!』

 

『ああ、レイヴン……そんな……』

 

 だが駄目だった。破綻は訪れた。宇宙に致命的な汚染が広がり、その中心で彼は息絶えることとなった。

 

『認証は通ったようだな。お前には十分な経験がある。この惑星にもすぐ適応するだろう』

 

 二回も同じことが起きれば流石に気付く。どうやら自分は一度死んでもおしまいではないらしい。だったら今度こそ。

 三度目の生では最早がむしゃらに、見つけた可能性には手あたり次第に手を伸ばす。その先に何が待ち受けるかなど、そんなことを考えられるだけの思慮深さなんてあるはずがない。

 

『コーラルを解き放ってはならん! そこを超えれば人間世界の悲惨が待つ……』

 

『オールマインドと関わるのは……止めておけ。リリースに夢を見るのも……止めておけ。味気ないレーションを食い、泥水のようなフィーカをすする。うんざりするが……それが人間だ』

 

 彼はまだ子供だった。それは、こうした大人たちの警告を鬱陶しいと切り捨ててしまうほどに。ただ彼女を助けたい一心で、自分が何をしようとしているのかも理解しないまま突き進んだ。

 

『コーラルリリースが始まります。美しいと……思いませんか?』

 

 そして引き金を引いて。初めのうちは歓喜した。これでようやく人類とコーラルの共生を成し遂げられるのだと。鋼鉄の身体を得た人類による永遠の闘争と進化。彼にとって、それはとても素晴らしいものに映った。

 だが、やがて後悔するようになった。今になって気付いたのだ。人間に必要なのは頑強な鋼鉄の肉体ではなく、不自由な生身の身体なのだと。彼女の願いの前では些事と切り捨てたものが、どれほど人間にとって大切なものなのか。失って初めて気付いたのだった。

 だが、すでに賽は投げられている。元に戻ることはない。それこそ、時間が戻りでもしない限り。だから、彼は失意のうちに自らの意識を閉ざした。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

「…………ぅあ?」

 

 目が覚める。周囲を見渡そうとして、自分の首が動かないことに気付く。それは懐かしい感覚であった。かつての自分が閉じ込められていた、機能以外はほぼ死んでいる身体。だがそれは、ACなんかよりもずっと生身で、安心感すら覚える。

 

「認証は通ったようだな。お前には十分な経験がある。この惑星にもすぐ適応するだろう」

 

「……! ぅおうあぁ(ウォルター)!!」

 

 声を聞いて、621は理解した。ああ、()()なのかと。四度目の生。もう一度、チャンスを与えられたのだと。

 

「! どうした、621」

 

「ぁあ! ああっ!!」

 

 自分の浅慮で何度も切り捨ててしまったその人の声を聞いて、621は唸る。人間としての機能の大半が死んでいる今の身体では、言葉を発することすらできなかった。

 

「久しぶりの実戦で疲れたのか? 621、ここは安全だ。今はゆっくり休め」

 

「……ぅん」

 

 動かない首で最大限頷く。そんな機能は失われているはずなのに、621は瞳から涙が溢れてくるように感じられた。

 




621
 エアちゃんのために頑張ってたら何もかも間違えたタイプの駄犬。(戦闘)機能以外ほぼ死んでいるものと……。

ハンドラー・ウォルター
 我らがごすずん。取り乱した621を優しくあやす最高のパパ。生存ルートまだっすか?

 ということで全エンドクリア済み621君による四周目ハッピーエンドチャート、はっじまっるよー! ウォルターとエアちゃんを生存させて、人間が人間のまま破綻を回避して、ついでに大切な人たちも死なせなければクリアだ! 頑張れ621! ルビコンの未来は君の手にかかっているぞ!
 621君の詳しい現状説明は次回。
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