今日のワイ:8800字!? じょ、冗談じゃ……
「お、俺のマッドスタンプがあーっ!?」
『敵ACの無力化を確認』
621としては後にRaDと協力することになるのは目に見えているので、殺すのは最小限だ。MTは武装を狙撃したり、蹴ってパイロットを気絶させたりして無力化し、マッドスタンプはチャージリニアで四肢を一本ずつ捥いでやった。
胴体と頭だけになったマッドスタンプの姿は哀愁を誘うが、そんなものを気にしている暇はない。621とエアは、先へと進む。
「ビジター! 好き放題やってくれているようだね」
広域放送でグリッド中に声が響く。その声の主を621は知っていた。
彼女の名はシンダー・カーラ。ドーザーの最大派閥、RaDの頭目にして、その正体はコーラル根絶を使命とする秘密結社、オーバーシアーの一員。一度目、二度目の生では、彼女の助けが無ければ自分はアーキバスに「再教育」されていたであろう、そんな命の恩人。
(できるならあなたにも、生きてほしい)
三度も生きて、その全てで生き残ることは叶わなかった彼女を、今度こそ救いたい。そのためには、やはり彼女に自分の実力を見せ、気に入られる必要があるだろう。そう思うと、全身に力が漲る。
『レイヴン? どうしたのですか? 少し力んでいるように見えましたが……』
「! いや、何でもない」
今は戦闘中だ。戦いに集中せねば。
「あたしらRaDは、来る者は拒まないのがモットーだ。せいぜい歓迎しようじゃないか」
カーラの放送をBGMに、二人はグリッド086を突き進んでいく。RaDの独自規格のMTたちがこちらを止めようと襲い来るが、流石に四度目では苦戦すら論外であった。秒殺するか、秒で無力化するかしていく。
「ここは……」
この扉は覚えている。開けようとすると突然後ろにRaDの高火力型MT、トイボックスが現れ、奇襲してくるという罠があったはずだ。
621は後方への警戒を保ったまま扉にアクセス。
「待ってたよ、ビジター。約束通り歓迎しよう」
『後方に反応、MTです』
果たして予想通り、二機のトイボックスが背後に降り立った。トイボックスは丸まっている間は攻撃が効かない。だから開いたところにグレネードを──
『待ってください! 遠方から高速で接近する反応!』
やはり、三度目までと比べて明らかに変わっている。こんなものなかったはずだ。
エアがマーカーでその反応の位置を示してくれたので、そちらを見やる。
「……嘘だろ」
そこにあったのは列車だ。高速でこちらに接近してくる。
列車自体におかしいところはなにもない。速度からして明らかに動力を改造されているが、それ以外は何の変哲もないただの列車だ。
問題はそれが載せているモノだった。621はアレを見たことがある。それは忘れもしないミッション、“大型ミサイル発射支援”で見た……というか守った奴だ。
あれの威力はよく知っている。頑丈なはずのグリッドを容易く粉々にできる威力だ。ACなんかひとたまりもない。
「……まずいっ!?」
『レイヴン、退避を!』
トイボックスなんか無視。あんなものが来てるのに構っている暇なんかあるわけがない。
普通にアサルトブーストで逃げても、恐らくその爆発範囲からは逃れられない。
「いや、逆脚なら、逃げきれるか!?」
だったら蹴りも併用するまでだ。グリッドの外壁に沿ってアサルトブーストで飛びながら、同時に壁も蹴って上昇力も確保する。逆関節特有の高い脚力から、上方向への速度は加速度的に増加していく。
アサルトブーストの推力と壁蹴りによる跳躍で、車両の着弾地点から斜めに離れていく。そして──
ドガァァァアアアン!!!
621のすぐ後ろで
「あ、危なかった……」
『侵入者を排除するために自分の居城を壊すなんて……やはりドーザーは理性なき狂人の集まりのようです。十分に警戒を』
なんか勘違いしてるエアを余所に、621は冷や汗を垂らすしかないのだった。
◆◆◆◆◆◆
グリッドに開いた大穴を潜り、内部へと侵入。最上部へたどり着くためには、グリッドの中を通り抜けなければならない。
この先の突き当たりには縦穴があり、そこを上る必要があるが、そこにはトイボックスが一機だけ配置されているはずだ。
(良かった、ここは記憶通りだ)
ボール状に丸まった待機状態のトイボックスが奥に見える。開いたところをすぐに攻撃できるように、621はそのトイボックスに近づいていき──
「エア」
『なんでしょうか』
「おかしいな、トイボックスが大きく見えるんだけど」
『いえ、これは錯覚ではありません。センサー類も示している通り、物理的にサイズが違うようです』
目の前のトイボックスは明らかに通常のものよりも大きかった。数字にして約十倍ほどか。
視界に収まらないほど巨大な黄色の球体は、何も知らなければ建物の一部としか思えないだろう。
「こいつが邪魔で進めないな」
『レイヴン、今私が迂回路を──待ってください、高熱源反応を確認!』
巨大トイボックスが変形を始める。通常トイボックスと同じように、球体から三足で立ち上がる異形へと変化する。
しかし、段違いのサイズでそれを行われれば、与える威圧感は数百倍だ。
四度生きた歴戦の傭兵であるはずの621ですら、その威容に息をのむ。
『あれは……!? あの一つ一つが全てグレネード……!?』
サイズが大きくなれば当然積める武装も大きくなる。もともとトイボックスは数十もの銃口を備えた超高火力MTであったが、 巨大トイボックスではその全てがグレネードキャノンになっていた。
数十門のグレネードキャノンが一斉に621を狙う。
『レイヴン、回避を──!!』
果たしてそれは豊富な経験がさせた熟練の技か、あるいは恐怖に駆られた動物的逃走本能の賜物か。621は条件反射でアサルトブーストを起動し、巨大トイボックスの足元へと飛んだ。
巨大故に足元はACでも潜れるほど広く、余裕を持って背後に回れる。その直後──
ドガァァァアアアン!!!
──グリッドの一区画が崩壊した。脅威の数十門グレネード同時発射は頑丈なグリッドを破壊して余りある威力で、背後に回ったはずの621も余波だけで吹き飛ばされそうになっている。
『レイヴン、無事ですか!? 今のうちに退避を!!』
エアの言葉に従って、LEAPER4は全速力でその場から離脱する。
後には崩落したグリッドと、過剰火力の反動で転倒し立ち上がれなくなった巨大トイボックスだけが残された。
破綻した設計の妥当な末路であった。
「……あれ? エア、なんか一瞬記憶が飛んだ気がしたんだけど、今何があった?」
『いいえ……ドーザーの、卑劣な罠です。あなたが無事で良かった……』
◆◆◆◆◆◆
MTだらけ、罠だらけのグリッドをそれでも突き進んでいく。621の記憶によれば、そろそろグリッド086の最奥部だ。
そこに通じる巨大な隔壁が見える。でかでかとRaDのエンブレムがあしらわれたその隔壁の前には、四脚MTを始めとしたたくさんのMT部隊が展開されている。
(ここは記憶にある。MT部隊に近づいたら、歓迎の花火と称して上から爆弾を落とされた場所だ)
だったら先に爆弾を撃ち落としてやれば、MT部隊だけが爆撃されることになる。そう思って天井を見上げると──
「……馬鹿かよ」
『あんなものを吊るすとは……やはり、ドーザーは理解できません』
──621はアレを見たことがある。それは忘れもしないミッション、“大型ミサイル発射支援”で見た……というか守った奴だ。
あれの威力はよく知っている。頑丈なはずのグリッドを容易く粉々にできる威力だ。ACなんかひとたまりもない。
「……離れてから狙撃すれば、敵だけ爆破できるかな……」
『あのミサイルの爆発半径は最初の奇襲のときに記憶しています。レイヴン、狙撃地点の選定は私にお任せを』
その後、エアのサポートを得て狙撃地点に移動。チャージリニアでミサイルを狙撃した。
視界が真っ白に染まる。離れていても爆発による光と轟音が、621の視覚と聴覚を潰す。
光が晴れたとき、目の前には無惨に崩壊したグリッドの一区画があった。
(カーラ……一体どうしちゃったんだよ……)
◆◆◆◆◆◆
「わかった、あんたの実力はわかったよ、ビジター。降参するよ。これ以上は割に合わないからね」
崩壊したグリッドを通り抜け、先程のエンブレムが描かれた巨大隔壁の場所へ戻ってきたところで、カーラからの放送が入った。
「通してやるよ。行きな」
さも通してやってる風に語るカーラだが、そもそもの隔壁は先の爆発で消滅している。621は微妙な表情をしながら、かつて隔壁があった場所を通り抜けた。
この先は最奥部だ。記憶通りなら、
『次は……どういう魂胆でしょうか』
「正直俺はもう帰りたいよ……」
『きっとウォルターも許してくれます。無理そうなら、撤退しましょう』
ウォルターの名を出されると帰るに帰れなくなる。621としてはやはりウォルターの役に立ちたいのだ。ここで帰ったら、中央氷原に先回りすることはできない。
「……いや、大丈夫だ。まだ行ける」
『レイヴン、しかし──』
「行かせてくれ。本当に駄目そうになったら帰るから。それに、エアがサポートしてくれるんだ。なら、大丈夫だろ?」
『レイヴン……わかりました、行きましょう。私が、あなたをサポートします』
最奥部に続く巨大な扉を抜ける。そこは、格納庫を思わせる広い空間だった。その中央に鎮座するのは、三度対峙したアイツ。変わらぬその姿に、今は安心感さえ覚える。
「ビジター、あんたは向こう見ずだね。嫌いじゃないよ。でも、さよならだ」
RaDの無人重機、スマートクリーナー。動く溶鉱炉とでも言うべきそれは、四度目の生でも621に襲い掛かった。
◆◆◆◆◆◆
(良かった……! 流石にここは何も変わってない!)
四度目でもやることは変わらない。スマートクリーナーは対空手段を殆ど持たない。だから逆関節の跳躍力を活かし、滞空しながらのトップアタックをお見舞いする。
スマートクリーナーは非常に堅牢な作りになっているが、前方と上部に溶鉱炉が露出しており、そこを狙えばダメージを与えられる。
「やるねえ、聞いていた以上だ」
一発も被弾することなくスマートクリーナーにダメージを与えていく。621の目算では、だいたい半分ほど耐久力を削っているはずだ。
621の記憶では、この辺りでスマートクリーナーの行動パターンが変わり、攻撃が激しくなる。
しかし、相変わらず対空手段には乏しいままであったはずだ。
「だが、クリーナーが笑えるのはこれからさ」
だからいつものように跳躍して上部にグレネードをぶち込めば、ただの消化試合――
『これは!? レイヴン、避けてください!!』
「え? うおっ!?」
空を飛んでいたLEAPER4に、届くはずがないチェーンソーが振るわれる。当たるはずのないそれは、しかしてギリギリでLEAPER4を掠めた。
「クリーナーが対空手段に乏しいことくらいわかってんだよ。その対策をアタシらRaDが怠るとでも思ってたのかい?」
見れば、スマートクリーナーが
「もう何がどうなってんだよ……!」
なんかもう苛つき始めた621は、振るわれるチェーンソーを避ける。
横薙ぎのチェーンソーを跳躍して躱すと、スマートクリーナーも飛行。
LEAPER4に追い付き、チェーンソーを縦振り。
それをクイックブーストで回避すると、今度はちょうど人が剣を振るときに身体全体を使って振るように、ブーストで本体を大きく傾けながらその勢いを乗せて斬り上げを放ってくる。
(クソッ! 動き回るせいで弱点に弾が当たらない!)
このままでは埒が明かない。621は一度スマートクリーナーから距離を取り、仕切り直そうとした。
「わかってないねえ、ビジター。飛べるってことは、好きな方を向けるってことなんだよ?」
「一体何を──」
条件反射でクイックブースト。LEAPER4のすぐ横に融鉄が飛び散る。
見れば、空飛ぶスマートクリーナーは、こちらに上部の煙突を向けた状態で飛行していた。
あの煙突は元のスマートクリーナーでも強力な武器だった。融鉄を次から次へと発射し、不用意に近づいた一度目の621に大ダメージを与えた危険な兵器であった。
煙突故に射角の調整ができないという弱点を抱えていたので、二度目三度目の621にとっては脅威足り得なかった。
だが、今のスマートクリーナーならば射角を調整できる。
「ほら! ボサッとしてるんじゃないよ!」
煙突からマシンガンのように融鉄が発射される。しかし、その威力も弾の大きさもマシンガンとは比にならない。
『レイヴン! 今は回避に集中を!』
「いや、これはチャンスだ」
しかし621は冷静であった。融鉄を撃つために煙突をこちらに向けているということは、弱点をこちらに向けているも同然。
普通のACだったら一瞬で消し炭になる融鉄マシンガンも、621ならその機体裁きで銃口を右に左に、上に下に振り回させることで全て回避できる。片方だけがダメージを食らい続ける一方的な銃撃戦により、スマートクリーナーは耐久限界に近づいていく。
「本当によくやるもんだねえ。あいつの目利きもついにここまで来たか」
感嘆の声を上げるカーラ。しかし、まだ終わるつもりはない。せっかくの楽しいパーティーなのだ。もっともっと楽しませなければ。
「ビジター。こいつは元々解体作業用に作られた機械だ。その意味がわかるか?」
「何を言って――」
「こいつの本領を見せてやろうって言ってんのさ!」
射撃戦に興じていたスマートクリーナーは、それをやめて飛び始めた。LEAPER4が地上にいるのにも関わらずぐんぐん高度を上げていき、やがて天井に辿り着く。
「さあ、やっちまいな!」
カーラの指示に従い、スマートクリーナーは天井にチェーンソーを突き立てた。頑丈なグリッドの構造物がまるでバターのように切り裂かれていく。
「あいつ……何して……?」
『いえ、レイヴン! 下がってください!』
敵の意図が読めないが、エアが間違えることはあるまい。そう判断して621は後ろに下がる。そしてその判断は正解だった。
スマートクリーナーが天井を滅茶苦茶に切り裂いたことで、天井が次々に崩れ落ちていく。エアの言葉に従って下がっていなければ、今頃落ちてきた建材の下敷きになっていただろう。
『自分の居城を武器にするなんて……』
「まずい、あんまりやられたらこの辺りも崩落するか?」
「よくわかってるじゃないか、ビジター」
見れば、スマートクリーナーは今度は壁を切り裂いている。自重に耐えられなくなった壁が、まとめてこちらに倒れてきた。
621はそれを完璧に躱す。初見ならともかく、一度手がわかった上ならば、621ほどの腕前なら被弾などするはずがない。再び倒れてきた壁も簡単に避け――
『レイヴン! 瓦礫の後ろ!』
その一言でエアの意図することがわかった621は、あえて瓦礫を食らってまで後ろに下がる。
その瞬間、瓦礫を突き破りチェーンソーが突き出された。瓦礫は囮。本命はチェーンソーによる一撃必殺。
「ほらほら、早く倒さないとどんどん逃げ場がなくなるよ!」
スマートクリーナーは縦横無尽に動き回りながら、壁も床も天井も見境なく切り裂いていく。そして大量の瓦礫がLEAPER4に押し寄せ、それすら目くらましにしてチェーンソーが振るわれる。
「まずいな……流石にこんなのは経験したことがない」
スマートクリーナーは絶妙なタイミングでチェーンソーを振るってくる。そのため、瓦礫を避ければチェーンソーに、チェーンソーを避ければ瓦礫に当たってしまう。必然、621は瓦礫を食らい続けることになるのだが、流石にAPが心許なくなってきた。
「かといって、ダメージレースでは負けているか」
スマートクリーナーはただでさえ弱点が小さく、ダメージを与えにくい。なのに、今やそいつは軽快に飛び回り、しかも瓦礫の雨を降らせているのだ。瓦礫に阻まれ、こちらの攻撃はなかなか命中しない。
『レイヴン、床が崩れます!』
「! ヤバいか?」
一度着地してエネルギーを回復させようとした621だったが、そこをついてスマートクリーナーが足場を切り裂き、それが伝播してLEAPER4の足場まで崩れ始める。
これではエネルギーを回復させることができない。
「勝負あったね!」
『レイヴン!!』
エネルギーの切れたLEAPER4にチェーンソーが振るわれる。エアの悲鳴がこだまするが、621はどこまでも冷静であった。
621は左肩のグレネードを起動、構えることなく発射。壁防衛のときにも使った武器の反動による加速で落下速度を早める。LEAPER4のすぐ上をチェーンソーが通り過ぎていった。
しかしまだ安心できない。LEAPER4は今落ちている途中。今落ちてしまえばグリッドに戻ることは叶わない。そうなれば、カーゴランチャーに辿り着けないのでミッション失敗だ。
「足場を増やしてくれて助かる」
だがそこは621。スマートクリーナーの攻撃によって降り注ぐ瓦礫を足場にして、蹴り上がって行く。真上には瓦礫を降らせ続けるスマートクリーナーが見える。
(あれ? ひょっとして
そこで621は気付いた。今自分はスマートクリーナーの真下にいるため、
621は即座に真下からスマートクリーナーをロックし、両手のライフルと10連ミサイルを撃ちまくる。621の予想通り、そこはスマートクリーナーの新たな弱点であった。なんの装甲もないブースターに鉛玉と誘導弾が次々に殺到し、粉々に破壊していく。そして――
『スマートクリーナー、推力を維持できません。落下し始めます』
上昇推力を確保できなくなったスマートクリーナーは、呆気なく落下していく。落下際に駄目元でチェーンソーが振るわれるが、今更そんなものに当たる621ではなかった。
下方向に加速していくクリーナーを尻目に、621は瓦礫を蹴上がってグリッドに戻る。まさに、勝負あった。
『スマートクリーナー、レーダー範囲外に落下。この高さです。生きてはいないでしょう』
下方で爆発音が聞こえる。戦いは終わったようだ。
「……ビジター。私たちは不幸な出会いだった」
やたら神妙な声でカーラが語る。
「あんたとは仲良くした方が賢明みたいだね。上層に行くんだろう? 案内しようじゃないか。この、『灰かぶり』のカ――」
『待ってください! スマートクリーナーの爆発で、この区画にも限界が来たようです! レイヴン、退避を!』
カーラの放送半ばにして621はアサルトブーストを起動、その場を離脱する。
スマートクリーナーの攻撃でボロボロになっていたこの区画も崩れていく。今日、一日にしてグリッドの四区画が壊滅した。
◆◆◆◆◆◆
モニターの前で一人の女性が正座している。モニターには杖を突いた初老の男性が映っている。その表情には抑えきれないほどの怒りが見て取れた。
『カーラ。俺は621が死なない程度にしてくれと言ったはずだ』
「はい」
『今日、621から戦闘ログを貰った。四区画も使って、盛大に歓迎パーティーを開いてくれたそうだな。申し開きはあるか?』
「い、いや! あいつは生きてるじゃないか! 確かにちょーっとやり過ぎたかもしれないが、V.Iを退けたくらいだし、これぐらいでもしないと――」
『カーラ』
そのたった一言にどれほどの重圧が込められていたか。それは彼女の青ざめた顔を見ればわかるだろう。
『はっきり言おう。今回のことは、
それはカーラにとって、ある意味どんな罵倒の言葉よりもキツイ一言であった。
「……すまない、ウォルター」
『謝る相手が違う』
「あ、あいつに謝れってのかい? でも、あたしにも立場ってものがあるんだ。RaDの頭目たるもの、新人の傭兵に頭を下げることは――」
『頭を下げる以外にも謝罪の方法はあるだろう』
カーラは察した。これは何らかの形で621に補填しなければ、ウォルターに消されると。
「わ、わかった。あいつには、あたしら謹製のパーツをくれてやるよ。それだけじゃない。今後修理や弾薬も受け持って――」
『その程度、あいつの力なら自分で手にできる。あげたところで大して感謝もされんだろうな。もっとマシな謝罪を考えろ』
カーラの提案はにべもなく却下された。じゃあどうすればよいのか? カーラは必死に考えるが、しかしいい案が出てこない。
「ウォルター、あたしはどうしたらいい? 教えてくれ……」
ついに折れた。命の危機を前にしては、くだらないプライドなど守る価値もなかった。
『そうだな……この前あいつと料理について話していた時に、あいつは「寿司」に興味を持った』
「おいおい……」
カーラは何を言われるのか察した。
『621にできるだけ旨い寿司を食わせろ。それで今回の件は手打ちにしてやる』
「ま、待ってくれ!」
『どうした。お前ともあろうものならば、星外との流通ルートの一つくらい確保しているのだろう? それとも立場を心配しているのか? それならば大丈夫だ。気に入った相手なら例え直前まで敵対していたとしても奢るとなれば、部下からの支持も得られよう』
「いや、そういうことじゃなくて! 最近は企業のせいで封鎖機構の奴らがピリピリしてんだよ! そんな中で生魚とか米とか、そんな高級品を密輸しようものなら、軽く見積もって数百万COAMもの大金が――」
『やれ』
「はい」
本人のあずかり知らぬところで。621にご馳走が振る舞われることが決定した。
インビンシブル・ラミー
出オチしました。本当は四脚MTが二機くらい護衛についてたんだけど、そんなの描写する暇もなく一瞬で達磨にされました。グリッド086がこんなことになりましたが、一応生きてます。
621
後々のことを考えて殺しは最小限にしようとしたら、カーラのせいで大量虐殺の片棒を継がされた人。これはブチ切れても許される。最高にまで達していたカーラへの好感度が、今回のこれでだいぶ下がりました。でもまだカーラのことは大好き。
エア
今回の件でもともと低かったドーザーに対する好感度が地の底に落ちました。残当。
カーラ
ウッキウキで遊んでたらしっぺ返しを食らった人。この後グリッドの再建や寿司の調達でRaDの資金は死ぬ。
ウォルター
信じていた友がとんでもないことをしでかして無事ブチギレ。途中まで本気で殺すつもりだったかもしれない。
スマートクリーナー
飛びました。
ということでグリッド086。カーラに色々させすぎたかなって思ったけど、「でもあいつヘリアンサスとか作ってるし」って考えたらむしろこれでもぬるい気がしてきた。グリッドが崩壊しすぎて次回のミッションが大丈夫なのか不安になってきたけど、まあ何とかなるっしょ!