灯りの消えた暗い廊下を、無人の車椅子が走る。
「レイヴンは寝かせましたし、後は……」
エアは
彼はどこにいるのだろうか。もう老体なのだから自身を労わって欲しい。
「また書斎でしょうか」
車椅子は廊下を進んで行く。すると、まだ灯りが灯っている部屋があった。エアが覗いてみると、果たしてそこには机に突っ伏して眠るウォルターの姿があった。
「またこんなところで寝て……健康に響きますよ?」
エアは車椅子の機能にアクセス、搭乗者移動用のアームを起動。器用にウォルターを抱きかかえ、車椅子に乗せる。
「あなたに何かあったらレイヴンが悲しむんですから……もう、全く」
621の健康は全力で心配する癖に、どうして自分のことになるとこうも杜撰になるのか。エアとしては呆れるしかない。
「もっと自分を大切にしてください」
ウォルターを彼のベッドまで運び、そこに寝かせる。言葉など聞こえるはずはないのだが、それでもエアは苦言を呈さずを得られなかった。
「さて……」
これで全員ベッドに寝かせた。今日の仕事は終わり。後は自由時間だ。
Cパルス変異波形であるエアには、睡眠は必要ない。だから、皆が寝静まった夜の時間は、彼女にとって一人で過ごす暇な時間となる。
彼女はいつものようにウォルターのPCにアクセス。その中に纏められたキサラギ博士の論文を読み進める。
「何か方法は無いのでしょうか……」
彼が纏め上げた膨大な量の理論を、一つ一つ読み解いていく。休む暇など無い。だってエアは気付いていたから。このままでは手遅れになるという事実に。
ウォルターのPCに保存されたデータが示していた、自分たちの毒性と拡散性。それは、人類にとって紛れも無く脅威でしかない。自己増殖し続ける毒なんかと、どうして共生できようか。
人類の立場に立って考えてみれば、自分の願いがどれほど難しいものであるのかがわかる。
(でも、それを信じてくれる人がいた)
ああ、私はなんて幸運なのだろう。こんな荒唐無稽な願いに耳を傾けてくれる人がいるなんて。
だからこそ、その人に報いるためにも必ずや願いを成就させねばならない。どうして休んでなどいられよう。
そうして論文を漁っていく内に、偶然その論文を見つけた。
「これは……“コーラルリリース”? この論文は一体……?」
内容を解き進める。それは、人類の進化の一つの可能性。Cパルス変異波形によってコーラル流を制御し、その密度を極限まで高める。そうすることによってコーラルの増殖を飛躍的に速め、宇宙全体に拡散させる。同時に、コーラルとの感応性が高い
確かにこの方法なら、人類はコーラルの毒性をものともしない身体を手に入れ、汚染を克服できる。また、人類そのものがコーラルと同等の存在となった以上、コーラルが人類の手で搾取されることは二度となくなるだろう。ある意味で共生とも言える結末だ。だが――
「これは……あり得ませんね」
それが今のエアが抱いた偽らざる本音であった。
『食事は人間の生きる理由の一つだよ。これがなくちゃ、人間とは呼べないくらいにはね』
あの人はそう言っていた。であるならば、食事もできない身体に人類を閉じ込めることに、どれほどの意味がある? それに――
(表情も作れない機械の身体なんかに、あの人を閉じ込めたくはない)
エアは621の表情を見るのが好きだった。コロコロ変化する彼の顔は、見ていると暖かい何かが湧き出て来るようであった。エアはその感覚が好きであった。それを自ら奪うような選択など、取る気になるはずがなかった。
「これは駄目ですね。別のを探しましょう」
まだ時間はある。だから、模索を続けよう。
だけどその前に。もう日が昇り、彼らが起きる時間が来ようとしている。一旦作業を止め、朝の支度を始める。今日も私が
「レイヴン、ウォルター。おはようございます」
◆◆◆◆◆◆
『やあ、レイヴン。こうしてメッセージで話すのは初めてだな。私はV.Ⅳ ラスティだ。ペイターが多忙につき、私が連絡をさせてもらった次第だ。
「壁」では君の世話になったね。おかげで自分の実力というものを思い知らされたよ。ああ、恨み言を言おうとしている訳ではないんだ。誤解を招く言い方をしてすまない。
挨拶はこのくらいにして、本題に入ろう。端的に言って、我々アーキバスは封鎖機構に対して戦力が足りていないのが実情だ。特に今は、虎の子V.I フロイトが強化手術中で離脱している。君も知っての通り、彼はアーキバスの切り札だ。それがいない以上、封鎖機構に対して後手に回らざるを得ない状況が続いている。
まあ、要するに。私たちは君の手を借りたいのだ。そちらに依頼を送っているので、確認してみてくれ。「壁守りの傭兵」の力、是非貸して欲しい』
メッセージを再生し終えた621は、歓喜と安堵が入り混じったような表情を浮かべた。
かつての戦友と交流できた喜びと、あれだけのことをしてまだ嫌われていないらしいという安心感。自然と621の口角は上がっていく。
(流石はラスティだなあ。あんなことされたら俺なら絶対一生口利かないのに、ラスティはこんなにフレンドリーに話しかけてくれる……大人だよなあ)
何周しても戦友は憧れの戦友のままだったという事実に、思わず破顔してしまう。
こんな姿はウォルターとエアには見せられない。彼らが昼食を作り終える前に表情を引き締めねば。
そういうことで、ラスティが言っていた依頼を確認してみる。件名は“燃料基地襲撃”。依頼内容は、封鎖機構占領下にある燃料基地の、最奥にあるエネルギープラントの破壊。防衛兵器や燃料タンクにも追加報酬が設定されている。
アーキバスとしては、封鎖機構を叩けば金になると621に宣伝してもらいたいのだろう。そうすることで独立傭兵が封鎖機構狙いの依頼を受けるようになり、戦力不足を補ってもらう。実にアーキバスらしい算段であった。
三度目までと何ら変わらぬ展開だ。ならば、“旧宇宙港襲撃”も同じ展開になってくれるのだろうか。
(駄目だ、ラスティのことばっかり考えちゃうな……でも、またあの人に戦友って呼んで欲しいな。やっぱりレイヴン呼びはしっくり来ない)
「621、昼食の時間だ。手を洗ってこい」
「はーい」
考え事をしていたら、だいぶ時間が経っていたようだ。今は腹ごしらえに集中しよう。
◆◆◆◆◆◆
「621、何かいいことがあったのか?」
「えっ」
◆◆◆◆◆◆
アセンブルをチェック。
R-ARM UNIT:
L-ARM UNIT:
R-BACK UNIT:
L-BACK UNIT:
HEAD:HC-2000/BC SHADE EYE
CORE:CC-2000 ORBITER
ARMS:VP-46D
LEGS:2C-2000 CRAWLER
BOOSTER:ALULA/21E
FCS:FC-008 TALBOT
GENERATOR:VP-20C
EXPANSION:ASSAULT ARMOR
OK。燃料基地を襲撃するだけなら必要のなさそうな装備もあるが、これはどうせ出てくるだろう
(まあ、あいつらの戦い方は殆ど覚えてるし、何とかなるだろう)
LEAPER4はヘリに運ばれ、作戦目標の燃料基地を目指す。
「作戦領域に到着した。621、準備はいいか?」
「オーケーだ。いつでも行ける」
「エア、オペレートの準備は?」
「大丈夫です」
「よし。では、ACを投下する。ミッション開始だ」
LEAPER4、投下。重力に引かれ、燃料基地の外れへと着地する。
『メインシステム、戦闘モード起動』
主な敵は封鎖機構のMT部隊。企業のそれと比べて高性能であるが、621の敵ではない。適当にリニアライフルとミサイルで蹴散らす。
燃料タンクは見つけ次第破壊。別に追加報酬は今更いらないが、621の目的を達成する上で封鎖機構は邪魔なので、できるだけ損害が多くなるように動くつもりだった。
ただ邪魔だからというだけで彼らを叩きのめすのは、621とて思うところはある。
だが、だからといって平和的解決などできるはずがない。人とコーラルの共生のためには、恐らく集積コーラルに到達するのは必須であり、封鎖機構はその邪魔となるだろう。だから撃つ。理不尽に思えるが、それがこの世界なのだ。
かつては理不尽に押し潰される側だった621は、だからこそ容赦しない。一片の慈悲もなく、人も機体も、ついでに燃料タンクも焼き尽くしていく。
「コード5、所属不明AC!」
「狙いはプラントか。排除執行、これ以上――ぐわっ!!」
自分を前にお喋りとは呑気なものだ。その呑気の代償を、命で以て払わせる。まさに理不尽。個の都合で集団が蹂躙されるという不条理が、そこに存在していた。
「コード15!」
「前衛は何をしている……? 対処するぞ」
対応が遅い。どうして自分の仲間が死なないと信じられる。前線が壊滅していることにすら気付けないMT乗りを、蹴りで機体ごと殺害する。普段はどうなのか知らないが、この場に限っては完全にACこそが捕食者となっていた。
「目標のプラントを確認した。621、仕掛けるぞ」
最奥部のエネルギープラントが目に入る。MTや砲台が防衛しているが、そんなもの鎧袖一触でしかない。
「コード5! 敵AC――」
「システムに増援を――」
通信を入れようとした声が爆風にかき消される。二つのことを同時にできないのだろうか? 態々足を止めて通信を入れるなど、621からすれば的以外の何物でもない。通信が終わるのを待つまでもなく、リニアライフルで撃ち抜いていく。
「防衛部隊は全滅させたようだな」
「レイヴン、後はエネルギープラントを破壊するだけです」
ドーム屋根の建物の中に目標のプラントはある。それをレーザーランスで一閃。プラントは呆気なく破壊された。
「目標の破壊を確認。621、仕事は終わり――」
「待ってください! 遠方上空に機体反応、高速で接近しています!」
(やっぱり来るか)
上空から接近してくるのは流線形の異形の機体。尖った胸部と、胴体と一体化した頭部。その意匠は、嫌でも速そうな印象を植え付けてくる。
「コード23、現着」
「ウォッチポイントからの報告通りだな」
二機の異形は燃料基地に降り立つ。片方はブレードにもなるレーザーライフルから刃を発振し、もう片方はプラズマライフルを構える。戦意は十分なようだ。
「識別名『レイヴン』。リスト上位、優先排除対象だ」
特務機体、“エクドロモイ”。火力と機動力に特化した、封鎖機構の切り札だ。
「621、撒ける相手ではない。排除しろ」
「片方は格闘型、もう片方は射撃型のようです。二機のコンビネーションには注意を」
「ああ、わかっている」
頭を切り替える。さっきまでは単なる蹂躙、要は「狩り」をしていた。ハンターによる獲物の一方的な虐殺。しかし、ここからは「戦い」だ。ただ強いだけでは足元を掬われる。
だから考える。より効率的な戦い方を。より効率的な殺し方を。
「士長は背後に回れ。挟み撃ちにするぞ」
「了解」
格闘型が正面から621の気を引き、その間に射撃型が後ろに回り込む作戦のようだ。621は阻止しようと動くが、エクドロモイの機動力と、格闘型によるブレード攻撃がそれを許さない。
「挟まれたか。621、機動力に差がありすぎる。離脱は難しい。まずは片方を集中して落とせ」
前と後ろからレーザーとプラズマが飛んでくる。流石の621も後ろからの射撃を躱すことはできない。プラズマが背中に当たり、装甲が焼かれる。
だが今は耐えるときだ。機動力では負けているが、耐久力では勝っている。だから、射撃型の攻撃は装甲で受け止め、格闘型の攻撃を往なしながらチャンスを待つ。
「所詮AC、我々の敵ではない。落ちろ!」
しびれを切らした格闘型が、レーザーブレードを高出力モードで発振する。通常よりも長い刀身の切っ先をこちらに向け、ブースターにエネルギーを込める。
(つまりは、突き……!)
食らえばACとて無事では済まない、エクドロモイの切り札。しかし、それを目にした621は笑っていた。
(チャンスは来た!)
格闘型はブースターのエネルギーを解放し、爆発的な加速で突撃する。しかし、621はそれを見切っていた。横に一歩ステップを踏み、紙一重で突きを躱す。
否。躱すだけにとどまらない。格闘型が自身のすぐ横を通り抜けるその瞬間に、クイックターン。足を振り上げながらの急旋回は、さながら回転蹴りの要領であった。
ガァン!
「ぐぅっ!?」
すれ違いざまに背後に回し蹴りを食らわされて、格闘型のパイロットが苦悶の声を上げる。背中を蹴られた格闘型は、突きの勢いそのままに進行方向をずらされる。それが何をもたらすのか。
「え? ぐわあああ!? しょ、少尉……!」
「し、士長!?」
格闘型の突きが、深々と射撃型に突き刺さった。挟み撃ちという陣形故に起こる事故。同士討ちだ。
格闘型は急いでブレードを停止しようとするが、その隙を621が逃すわけがない。
「まとめて
LEAPER4はレーザーランスを発振。織り重なったエクドロモイたちを、一突きで同時に突き穿つ。通信に二人分の悲鳴が響き渡るが、容赦はしない。
621は二機を串刺しにしたままレーザーランスを持ち上げる。話は変わるが、レーザーを槍状に固定している力場は、周囲に物理的な反発力を生み出している。なので、レーザーによる刃は、まるでそこに物理的な刃があるのかと錯覚させるくらいには
「「うおおおぉぉぉ!?」」
レーザーランスの刃によって、二機のエクドロモイが持ち上げられる。そのまま621はランスを振り払い、エクドロモイたちを放り投げた。
「「うわあああぁぁぁ!?」」
乱暴に投げ捨てられて、当然ながら中のパイロットたちは全身をシェイクされる。
これは本来、格闘型エクドロモイやエンフォーサーと言った、封鎖機構の機体が得意とする戦術だった。レーザー刃で貫いた後に、刃ごと振り回して中の人間に甚大なダメージを与える。一度目では621も食らい、強化人間ですら無事では済まないことはその身を以て実証済みであった。
それを生身の人間であるエクドロモイのパイロットが食らっているのだ。どんな状態であるかは推して知るべしだ。
「「おえええぇぇぇ!!」」
耳に響く最悪な声を無視して、621はとどめを刺しに行く。まずは射撃型。格闘型によるフレンドリーファイアと、先のレーザーランスによって既に瀕死。グレネードを撃ち込むだけで射撃型は耐久限界に達した。
「エクドロモおぇに、付いてくるうぇ――」
言い切る前に機体が爆散。射撃型、沈黙。
「士長! よくも士長を! うぇっぷ」
射撃型がやられ、格闘型のパイロットが激高する。しかし、その動きは明らかに先程までよりも悪い。あれだけ激しく脳みそをシェイクされたのだ。動かせるだけでも偉いと言わざるを得ない。
だが、621は弱った獲物にも容赦はしない。格闘型に対し、リニアライフルとミサイルを発射。脳が働かないパイロットでは、全く避けることができない。そしてそのままスタッガー。
621は容赦なくスタッガーした格闘型に、再びレーザーランスを突きさした。エネルギー刃を直撃させられたエクドロモイは、耐久限界を迎え、青い火花を散らしながら爆発を繰り返す。
「やはり……ただの独立傭ぅおろろろろろ――」
最低な断末魔と共に、格闘型が爆散する。
「特務機体、二機とも撃破しました」
戦闘終了。621の勝利であった。
「……アーキバスめ。この展開も織り込み済みか」
「でもまあ、俺含めた独立傭兵が封鎖機構を攻めるようになれば、こちらとしても動きやすくなるし、いいんじゃない?」
「だとしてもだ……621を体のいい宣材に使ってくれるとはな」
「情報を出し渋ってレイヴンを危険な目に遭わせるなんて、依頼主としての誠意に欠けています。次回からアーキバスの依頼では、私が事前に向こうから情報を抜くようにしましょう」
「いい考えだ。頼むぞ、エア」
「いやいや……バレたら洒落にならないって……」
会話がなんかまずい方向に向かっているので、621が慌てて静止する。このままでは傭兵としての信用問題に大いに関わる事態に発展しかねない。ウォルターとしてもそれは駄目なはずだろう。
(俺としては、ラスティの役に立てたのなら何でもいいんだけどな)
621としてはそう思うのだが、しかし二人に心配されるのは、なんだか悪い気がしないのだった。
◆◆◆◆◆◆
「駄犬め、フロイトに勝ったのは偶然ではないとでも言うつもりか? 死んでくれれば清々したものを!」
上官のお小言を聞きながら、今回の依頼について記録したログを眺める。エクドロモイに多少被弾させられたが、それ以外は無傷で秒殺する化け物じみた戦果。
(ああ、やはり君は強いな)
完膚なきまでに負けたあの日から、ずっと彼を目指して鍛錬を続けた。暇な時間はシミュレータに籠り切り、今まで時間の無駄として断ってきたフロイトとの模擬戦も、全て受けるようにした。お蔭で最近はマニュアルエイムを習得し、フロイト相手ですらある程度は撃ち合えるようになったのだ。
だから、少しは彼に近づけているのだと、そう思っていた。だが違った。
(遠いな、君の背中は)
強くなればなるほど洞察力も磨かれ、そして自分と彼の差が浮き彫りになっていく。
「しかし凄いねえ、レイヴンとやらは。まさか、エクドロモイ二機を一人で倒しちゃうなんてねえ。こんな子がヴェスパーに入ってくれれば、ヴェスパーは安泰なのにねえ」
「ホーキンス、滅多な冗談を言うものではありません。あのような骨董品が我がヴェスパーに入っては、駄犬のカビが
さっきまでの狂乱ぶりはどこへやら、スネイルは人差し指で眼鏡を直し、冷静に罵倒する。
「でも実際戦闘能力はフロイト以外の全員に勝っているんじゃないかな? じゃなきゃ、燃料基地を壊滅させて、その上でエクドロモイ二機を倒すなんてできっこないからね。だろう? ペイター君」
「はっ? そ、そうでしょうか、第五隊長殿」
スネイルとホーキンスの板挟みになり、ペイターは胃を摩る。
「しかし第四世代が特務機体二機を撃破するとはな……奴との繋がりは無さそうだが……」
一人の男がフィーカを啜りながら呟く。それに同意したのは、この場の紅一点とも言える女性だった。
「ええ、全くです。第四世代であれほどとは……あれで更に高い世代の手術を受けたら、どれほど強くなることか……」
「ふ、不吉なことを言わないでくれ! メーテルリンク! 奴に戦場で真っ先に狙われるのは、この会計担当である私かもしれないのだぞ!」
その女性――メーテルリンクの言葉に反応したのは、眼鏡をかけた小男。その表情はあからさまに怯えている。
「ふん……戦場で出会ったなら、殺せばいいだけでしょう。所詮二度偶然を引き当てただけの中古品。三度目にはメッキも剥がれ落ちることでしょう」
「か、簡単に仰らないでください、閣下! わ、
「ほう? ヴェスパーにあるまじき弱気な発言ですね。再教育が必要なのはあなた自身なのでは?」
小男――スウィンバーンは、スネイルに睨みつけられて震えあがる。
「は、はひ……か、返り討ちにしてやります……」
「それでいいのです。それでこそ強化人間部隊、ヴェスパーに相応しい」
レイヴンの戦果に湧くヴェスパー部隊。そんな中、ラスティはどこまでも冷ややかな思考をしていた。
(みんな、本当に見る目がない)
レイヴンが封鎖機構を、エクドロモイを撃破した? そんなの
次世代の手術をすればもっと強くなる? 何にもわかってない。彼の強さの秘訣は強化手術なんてところにはないのに。
二度偶然を引き当てた? あまりにも見る目が無さ過ぎる。この結果は必然だ。全て彼の実力で勝ち取ったものだ。
表には決して出さないが、内心で周りの皆にそう反論する。彼と戦ったこともない癖に、知ったような口を利くな。
(彼を確実に解放戦線側に引き入れるためには……やはり、私が彼の
頭の中で今後の算段を立てる。最善策は自分が彼よりも強くなることだが、それは限りなく確率が低い。だから、次善の策を。
「おや? ラスティ、どこへ行かれるのですか?」
「ああ、ちょっと野暮用だ。部屋にいるから、用があったら呼んでくれ」
そう言ってその場を離脱、私室に籠る。盗聴器がないか確認。OK、大丈夫だ。
(彼の戦友となるためならば、あいつらの見る目の無さすら利用してみせよう)
メッセージを残すためのレコーダーを起動。今回の一件の
『依頼を達成してくれた縁だ。一つ伝えておこう。今回の作戦でアーキバスは……君を捨て駒にするつもりだった』
彼が信じてくれるかはわからない。だが、彼の味方になりたいと思っていることは事実だ。
『君がいずれ邪魔になるだろうと考えた上の連中は、基地の破壊だけさせてそのまま君をエクドロモイに始末させるつもりだったのさ』
だって、味方にさえなれば、彼に解放戦線の縄をかけることも容易だろうから――
『だが……君はエクドロモイを落とした』
――いや、味方になりたいのは本当にそんな理由からなのか?
『上の連中も、君との付き合い方を考え直すだろう。もちろん、この私もね』
わからない。とにかく今はこれが最善と信じ、メッセージを送る。
『メッセージを送信しました』
「……それでも」
やるべきことは終わった。このまま眠ってしまうか、あるいは――
「より高く飛ぶのは、私だ」
――そんな暇はない。私は、彼の戦友とならねばならないのだ。気付けばラスティの足はシミュレータの方へ向かっていた。
621
クイックターンキックを習得。そのうち竜巻旋風脚もできるようになるかもしれない。戦闘力ではラスティを超えるが、人間力では及ばず、彼に憧れる。
エア
621の健闘により、四度目ではコーラルリリース否定派になりました。なんかもう普通にウォルターと交流しちゃってる。
ウォルター
621の健康には敏感なのに、自分のには鈍感。普通にエアをオペレーターとして受け容れちゃってるし、何なら彼女の提案も聞いちゃう。
封鎖機構
雑魚は殆ど描写なく殺害され、エクドロモイは中の人がリバースしてしまう今回の不憫枠。一応正義の組織はこっちなのに……。
ラスティ
想像以上に621に脳を焼かれてしまった人。人間力では621を超えるが、戦闘力では及ばず、彼に憧れる。
フロイト
いないのに存在感を放つ男。何なんですかあなたは。
ヴェスパー部隊
まさかの(フロイト以外)全員集合。でもここでやっとかないと次回あたりで小男が死ぬのでここでやりたかった。
ということで燃料基地襲撃。おかしいな、壁越えが無くなって621とラスティの関係は原作よりも希薄になっているはずなのに、気付けばこんなに湿度が高くなっていた……なんで?
エクドロモイは意趣返しされました。封鎖機構がやってくる突き刺し→持ち上げ→放り投げの一連の動きかっこいいよねって考えてたらいつの間にか621にさせてしまいました。
次回は……そうですね。次回! スウィンバーン死す! デュエルスタンバイ!