四度目の鴉   作:Astley

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20:戦友

 暗号通信開始。

 

『あなたは……あの駄犬の飼い主ですか。飼い犬に散々我々の邪魔をさせておいて、よくもいけしゃあしゃあと顔を出せたものですね?』

 

「……傭兵というのは金と状況で味方を決めるものなのでな。うちの猟犬がやたらとアーキバスに噛みつくのは、まあ、お前たちの金払いが悪いからだろう」

 

『何が言いたい?』

 

「惑星封鎖機構への反攻作戦。フロイトが抜けた今、手が足りていないのだろう? 条件次第では、俺たちが手を貸してやってもいい」

 

『……なるほど。浅ましくも涙ぐましい営業努力です。いいでしょう。あなたの駄犬も戦力として計算に――』

 

「ところで一ついいか? 第二隊長殿」

 

『……何でしょう?』

 

「うちの猟犬が駄犬と言うのなら、それに負けた第一隊長は何なのだろうな? それに負け続けて幾星霜の第二隊長殿は本当に何なのだろうな?」

 

『貴様あああ!!!』

 

「言ったはずだぞ、第二隊長殿。条件次第では手を貸して()()()()()()と。そうかそうか、天下のヴェスパー部隊に、うちの猟犬は必要なかったか」

 

『…………いいでしょう。駄犬呼ばわりは訂正させていただきます』

 

「訂正だけか? 不誠実な対応だ。やはり、ヴェスパーにうちの猟犬は預けられんな」

 

『……お宅の猟犬を駄犬呼ばわりしたことを、ここに謝罪させてもらいます。お力添えをいただけないでしょうか……?』

 

「それでいい。第二隊長殿は物分かりが良くて助かる」

 

 暗号通信終了。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

『やあ、レイヴン。アーキバスから君に依頼だ』

 

 今日も依頼を確認する傭兵の日常風景。しかし、その依頼を見つけた瞬間、621は歓喜の声を上げた。三度目までの人生では幾度となく肩を並べた621の戦友、ラスティからのメッセージだったからだ。

 まだレイヴン呼びなのが寂しいが、いずれ戦友と呼んでくれるだろう。621は無根拠にそう確信していた。

 

『作戦立案者である私の上官からお言葉がある。まあ、聞いてみてくれ』

 

 ラスティの音声から、別の誰かの音声に切り替わる。その瞬間、最高潮に達していた621のテンションは、一気にどん底へと落ちた。

 

『ヴェスパー第二隊長、スネイルです。これより作戦内容を伝達します。私の直属で作戦行動に臨めること、光栄に思いなさい』

 

 スネイル。621の不俱戴天の仇だ。一度目の生ではアイビス撃破後の隙を突かれて彼に捕縛された。二度目の生では奇襲こそ回避したものの、そのまま力戦となり、アイビス戦での消耗が激しかった621は撃破されて捕らわれることになった。

 それだけにとどまらず、()()()()はウォルターをも捕らえ、「ファクトリー」で「加工」すらしたという。殺しても殺し足りない仇敵だ。いつかは絶対に殺さなければならない。

 

(待て、落ち着け、俺……今は()()()()を殺せるタイミングじゃない。フロイト戦でもドルマヤン戦でも怒りに囚われてヘマをやらかしたのに、また同じことをする気かよ……!)

 

 621は一度深呼吸をして心を落ち着ける。ウォルター仕込みのアンガーマネジメントは、存外621の頭を冷やしてくれた。

 

(どうせ()()()()はいつか殺せるんだ。今は傭兵としての価値を示して、集積コーラルへ到達することを目指すんだ)

 

 集積コーラルを目指す以上、必ずあの()()()()()とは対立することになるのだ。殺すのはそのときでいい。

 怒りを鎮めた621は、改めてブリーフィングに耳を傾ける。その内容は三度目までと全く同じ。

 封鎖機構に打撃を与えるために、バートラム旧宇宙港を襲撃して欲しいということ。停泊中の強襲艦を全て撃墜して欲しいということ。増援を防ぐために、襲撃と同時にラスティが通信中継地点であるハーロフ通信基地に急襲を仕掛けるということ。

 スネイルの説明が終わり、音声は再びラスティのものに切り替わる。

 

『この作戦には穴がある。通信網の混乱は一時的なものになるはずだ』

 

 相変わらずスネイルは、621に危険な目に遭って欲しいらしい。こんな作戦を立てるあたり相変わらずである。

 

『こちらの仕事が片付いたら、救援に向かおう』

 

 ああ、やはり持つべきものは戦友だ。そう思いながら621はガレージに向かった。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

R-ARM UNIT:LR-036 CURTIS(軽リニアライフル)

L-ARM UNIT:MA-J-200 RANSETSU-RF(バーストライフル)

R-BACK UNIT:BML-G2/P03MLT-06(6連装ミサイル)

L-BACK UNIT:VP-60LCS(レーザーキャノン)

 

HEAD:HC-2000/BC SHADE EYE

CORE:CC-2000 ORBITER

ARMS:VP-46D

LEGS:VP-422

 

BOOSTER:ALULA/21E

FCS:FC-008 TALBOT

GENERATOR:VP-20C

 

EXPANSION:ASSAULT ARMOR

 

 今回は対多数戦用アセンブルだ。バートラム旧宇宙港は何かと敵が多い。そのため、敵中に飛び込んで強襲艦を撃破することが求められる。故に、火力と取り回しを両立した武装を選択。ついでにある程度の機動力もしっかり確保。そんなアセンブルだ。

 

(記憶通りなら、このミッションでラスティと共闘することになる)

 

 四度目では初めての共闘。漸く彼と肩を並べて戦える。そう思うと、逸る気持ちが抑えられない。

 

「レイヴン? 何だか楽し気に見えますが……どうかしたのですか?」

 

「あ、いや、何でもないよ! 大丈夫だから!」

 

「……そうですか。何かあったらすぐに言ってくださいね」

 

「も、勿論!」

 

 そんなに表情に出てしまっていたか。621は慌てて表情を取り繕う。いくら傭兵とは言え、戦いを楽しむような人間になってしまってはウォルターが悲しむ。だから努めて真面目な表情を作る。

 

(……駄目だ! ラスティと一緒に戦えるってだけで、勝手に口角が上がってしまう!)

 

 それでも、ラスティとの共闘を楽しみにする心が抑えきれない。結局作戦領域に辿り着くまでの間、必死に表情を取り繕おうとする621と、それを怪訝そうに見つめるエアという光景が見られたのだった。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

『メインシステム。戦闘モード起動』

 

 バートラム旧宇宙港に、黒い死神が降り立つ。それは、バルテウスやシースパイダーにすら勝利し、エクドロモイやカタフラクトを惨殺した怪物。解放戦線の総力をもってしても止められない化け物。その圧倒的な戦果故に、封鎖機構内では最早恐怖の象徴にすらなり始めている傭兵。空を翔け、命を貪る人食いの鴉。

 その姿を目にしてしまった封鎖機構の人員は、己の運命を幻視する。

 

「こ、コード15! 侵入者を捕捉!」

 

 それでも彼らは己の使命を全うする。自分たちこそが秩序を守っているのだ。そういう自負のもと、621相手に果敢に立ち向かおうとする。

 

「基地全体に共有! 脅威度の測定を――」

 

 しかし、鴉にとって、そんな雑魚どもの勇気など知ったこっちゃないのだ。あるのは無慈悲な殺戮のみ。逃げるのなら別にいい。しかし、邪魔をするのなら確実に殺す。理不尽を体現した黒い鳥は、相手が通信中だろうと容赦はしない。

 

「クソッ! もう一人やられた!」

 

「狼狽えるな! 陣形を――」

 

 言ってる間にまた一人死んだ。LEAPER4は両手のライフルを乱れ撃ち、次々とMTたちを屠っていく。一見出鱈目に撃ちまくっているように見えるそれは、全てが必中の狙撃にも等しい。

 回避先すら読み切って放たれた弾丸の雨によって、十数機ほどいたはずのMT達はいつの間にか全滅していた。

 

「ば、化け物……!」

 

 最早聞きなれた罵倒(賞賛)の言葉を背に、621は突き進む。

 

「レイヴン、こちらは通信基地近傍で待機している。回線は繋いでおいてくれ。そちらの状況を見て仕掛けよう」

 

「! ああ、ありがとう」

 

 どうやらまだ増援は出ないらしい。封鎖機構の人員としては、もう既に心情的には阿鼻叫喚の地獄絵図とも言えるのだが、封鎖機構()()()()()はそう判断していないらしい。だからまだ増援は呼ばない。封鎖機構の人員にとっては最悪なことに。

 

「621、目標の強襲艦だ。破壊しろ」

 

 ドックのようなスペースに停泊する強襲艦が一隻。その狭い空間の中に入り込むと、周囲の雑魚や砲台は無視して一気に艦橋に接近する。そのまま621はレーザーキャノンをチャージ、発射。

 強襲艦は大破――

 

「! これは! ジェネレータに誘爆しているのか!?」

 

採掘場での誘爆(15話)は偶然って話じゃなかったのか!!」

 

 “観測データ奪取”の時にも見せているが、621は三度の傭兵人生で強襲艦の構造を完璧に把握している。故に、本来なら“観測データ奪取”でしか起きないはずの強襲艦の誘爆も、狙って起こすことができるのだ。

 

「総員退避ぃ!! 強襲艦から離れろ!!」

 

 慌てふためく封鎖機構の人々を尻目に、621は悠々離脱。直後、青い光が強襲艦とその周りのMTたちを包み込み、消滅した。

 

「これなら残った防衛戦力に後ろから撃たれることもない……レイヴン、見事な戦い方です」

 

「ありがとう」

 

 封鎖機構にとって、621たちがこの程度の気持ちでこんな蹂躙隙を繰り広げているということを知らずに死ねたのは、果たして幸か不幸か。

 ドックの強襲艦と防衛部隊を全滅させた621が次に狙うのは、ドックを抜けた先にある広場。そこには強襲艦が三隻も纏まって停泊している。

 

「レイヴン、こちらで中継アンテナを破壊した。これで連中は暫く外部との通信ができない。その間に作戦を進めてくれ」

 

 次に向かっている最中に、ラスティからの通信が入る。どうやら向こうも始めたようだ。ならばこちらも、遠くで一人戦っている戦友に負けないよう、全力で戦わねばなるまい。

 

「コード78! 支援を要請する! クソッ、なぜ繋がらない!?」

 

 ラスティのお蔭で、増援はまだ来ない。防衛戦力と増援に挟まれて袋叩き、なんてことはないということだ。ならば安心して戦える。

 今回も雑魚は無視。三隻並んだ強襲艦の、真ん中の一隻をロック。レーザーキャノンをチャージ、ファイア。

 放たれた青い奔流は、装甲の薄い艦橋を貫き、そのままジェネレータを破壊する。

 

「まただ! また誘爆するぞ!」

 

「間違いない! 狙ってやってやがる……!」

 

 MTたちは蜘蛛の子を散らしたように強襲艦から逃げていき、それに乗じて621も離脱。背後で大爆発が起き、強襲艦三隻は纏めて消し飛んだ。

 

「目標、残り一隻」

 

 あと一隻。それで当初の目標は終わり。最後の一隻に向けて、アサルトブーストで飛行。

 

「レイヴン、順調に進めているようだな。こちらも攪乱を続けているが、復旧対応が速い。この通信妨害は長くは持たないと思ってくれ」

 

「了解、じゃあ救援は期待していいか?」

 

「無論だ」

 

 ああ、楽しい。どうして彼と共に戦うと、こんなにも胸が満たされるのだろうか。無意識に上がる口角に気付かぬまま、道中の雑魚を蹂躙する。

 

「コード5! 目標を確認!」

 

「あれは……レイヴン、LCです。注意を」

 

 強襲艦までの最短経路を塞ぐように現れたのは、二機のLCであった。グレネード付きライフルとシールドで武装したオーソドックスなタイプ。今更負ける相手ではないが、早くしないと封鎖機構の増援が来るだろう。だから、速攻で片付ける。

 まずはリニアライフルで牽制。やろうと思えば全弾命中させられるが、相手を誘導するためにわざと外して射撃する。片方のLCは、自身のすぐ横を何度も通り抜けていく弾丸に追い立てられ、621の思う通りに動かされる。そして――

 

ガァン!

 

「うわっ!」

 

「何をやっている!」

 

――二機のLCが空中で衝突した。高機動故にその衝撃は馬鹿にできない。衝突の影響でLCたちの足が一瞬止まる。その刹那が命取りだ。

 621は一瞬でアサルトブーストによる急接近をし、そのままアサルトアーマー。ぶつかった直後のLCでは攻撃範囲から逃れられず、二機ともパルスの奔流を浴びてスタッガーに陥る。

 まずは片方のLCに全武装を発射。両手のライフルに6連ミサイル、そしてレーザーキャノン。耐弾姿勢を取れないLCは、その攻撃であっさりと爆散した。

 続いてもう一機。621が片方を処理している間にスタッガーから復帰したようで、LEAPER4から距離を取ろうとしている。

 621はアサルトブーストで急接近、LCのすぐ上あたりを取ると、そのままブーストで急降下してLCを足蹴にする。

 LCは機動力確保のため、かなり軽量に作られている。故に、自身よりも重いACに踏まれれば、逃れることはできない。

 そのままLCは地面に叩きつけられる。LEAPER4はLCの右腕をしっかりと踏みつけており、ライフルに火力が集中しているLCは武装の大半を失ったも同然。反抗する手段はない。

 621はLCを踏みつけたまま両手のライフルを乱射。この状態で避けられるはずもなく、LCは蜂の巣になって爆散した。

 

「LCを撃破したか。残っているのはMTだけだ。無視して構わん。最後の一隻を破壊しろ」

 

「了解」

 

 ウォルターの言葉を受けて、最後の一隻に向かう。周囲のMTがこちらにレーザーを撃っているが、当たるわけがない。

 そのまま遠距離からレーザーキャノンをチャージ。狙うは勿論艦橋と、その下のジェネレータ。

 果たして621は最後の一隻のジェネレータも正確に撃ち抜き、防衛部隊ごと爆散させたのだった。

 

「621、目標を全てやったようだな」

 

 作戦目標は全滅。だが、このミッションはここからが本番だ。

 

「……聞こえるか、レイヴン。封鎖機構の外部通信が復旧した。応援要請を受けた強襲艦がそちらに向かっている。私が着くまで持ちこたえてくれ」

 

 記憶通りの展開。やはり、こうなった。

 

「止むを得ん。621、補給をしておけ」

 

 こっちに飛んでくる補給シェルパを眺めながら、621は後半戦に備えて気合を入れなおすのだった。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 増援として送られてきた狙撃型LCは接近して処理。追加で現れた強襲艦二隻は、前を進んでいる方を誘爆させる。そうすれば後ろの方も爆発に巻き込まれて自動的に墜落。

 そんなこんなで、621は増援をあっという間に片付けたのだった。だが、これで終わりではないことを621は知っている。

 

『システムより承認。強制排除執行』

 

 旧宇宙港に無機質な声が響き渡る。それは、封鎖機構を統括するシステムによる広域放送。

 どうやら621は、封鎖機構のシステムに無視できない脅威として認識されたようだ。故にこそ、封鎖機構は遂に本気で621を殺しにかかる。

 二つの敵性反応がレーダーに映る。それらは、旧宇宙港近くの崖上に降り立ち、LEAPER4を見下ろす。ACより一回り大きい程度のサイズの人型。彼らこそが、封鎖機構の切り札。危険因子(イレギュラー)を抹殺するための処刑人たちだ。

 

「コード15。排除目標を確認」

 

「消えてもらおう」

 

 封鎖機構のHC、及び新型LC。その二機がLEAPER4の前に立ちはだかった。

 621としては、正直単機で勝てる相手だ。だが、いきなり飛びかかるような真似はしない。だってそろそろ、()が来るのだから。

 621は誰よりも早くそれに気付いた。広域レーダーで戦域全体を監視しているウォルターよりも、モニターの1ドットを見分けられるエアよりも、だ。

 一機のACが、自分たちの回りを旋回しながら飛んでいる。それは噴射煙で奇麗な弧を描きながら、急速にこちらに近づいている。

 

「相手は……上級尉官の執行機か」

 

 そのままLEAPER4の隣に降り立ったのは、深い青色のAC。徹底的に速度を求めた異形の人型は、しかし621にとって、誰よりも頼りになる戦友の象徴であった。

 

「ラスティ!!」

 

「待たせたな、レイヴン」

 

 V.IV ラスティ。四度目では未だにできていなかった彼との共闘が、遂にここに実現したのだ。

 

「こうして肩を並べるのは初めてだな。よろしく頼む」

 

「ああ! 今回は共働だからな! 助け合いの精神でいくとしよう!」

 

 本来なら彼が言うはずのセリフを今度は自分が口にする。そうだ。まさに今、待ちに待った共働を行っているのだ、自分は。

 

「フフッ、ああ、そうだな。背中は預けるぞ! レイヴン!」

 

「任せてくれ! 安心して暴れてくれ! ラスティ!」

 

 気分が高揚する。負ける気がしない。そう感じているのは621だけか、それともラスティも一緒だったのか。

 同時にアサルトブーストを起動した二機のACは、弾かれるように飛び出した。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

「コード44、排除対象二機の情報を回してくれ」

 

 621とラスティの位置関係から、自然と621がHCの相手をすることになる。ブーストを吹かしてHCに接近しながら、621はHCの装備構成を分析する。

 HCの装備はレーザーブレードにパルスシールド、そして両肩に搭載したパルスキャノンだ。近距離大火力型と言っていいだろう。

 

(つまり、遠距離戦には対応できない)

 

 即座に相手の弱点を看破し、それに見合った戦術を立てようとする。だが――

 

(引き撃ちでもいいが……今回は隣にラスティがいるからなあ。みっともない戦いは見せられない)

 

 ならば、多少のリスクを背負ってでも早く撃破することを目指す。

 接近してくるLEAPER4に対し、HCはパルスシールドを展開、そのまま向こうも接近することを選ぶ。パルスシールドは強力な防御兵装だ。展開中はダメージを大幅にカットすることができる。また、展開されたパルスは物理的な干渉力を持ち、物体を押し退けることすら可能だ。故に、こんな攻撃も可能なのである。

 

「死ね!」

 

「!」

 

 HCがパルスシールドを前面に構えたまま、LEAPER4に突貫する。所謂シールドバッシュだ。HCの速度とパルスシールドの硬度で行われるそれは、AC相手ですら洒落にならない衝撃力を生む。

 

「よっ、と」

 

「っ!? 盾を……蹴っただと!?」

 

 だから、621はドロップキックの要領で両足でパルスシールドを受け止め、そのまま膝を曲げることで衝撃を吸収。さらにその衝撃を利用して跳躍し、HCの頭上を取る。

 LEAPER4はHCの頭上で宙返りをしながら、しかしその両手のライフルはピッタリとHCに狙いをつけたまま。そのまま滅多撃ち。HCの可動域では真上にシールドを向けることはできず、鉛玉の雨をもろに浴びることになる。

 

「くっ、まだだ!」

 

 HCは即座にLEAPER4のいる方に向き直り、両肩のパルスキャノンを連射。対するLEAPER4は近くにあった強襲艦の残骸を連続で蹴り登り、パルスの洪水を振り切ってみせる。

 一度HCとLEAPER4の距離が離れ、完全にLEAPER4の間合いになる。その好機を621が逃すわけがない。空中でリニアライフルとレーザーキャノンをチャージ。同時にバーストライフルの発射機構を切り替え。マニュアルエイムで三つの銃口をそれぞれ個別で操作し、狙いを定める。ロックオン。発射。

 リニアライフルとバーストライフルは右のパルスキャノンを、レーザーキャノンは左のパルスキャノンを、それぞれ貫く。戦場で使う道具である以上、こうした武装は頑丈に作られている。しかし、それでも構造上脆弱にならざるを得ない部分を正確に撃ち抜かれれば、壊れない道理はない。

 

「馬鹿な!? パルスキャノンが――!」

 

 だからこうなる。パルスキャノンを破壊された今、HCは射撃武装を失ったことになる。必然、近接戦に活路を見出すしかない。

 HCはブーストを全開にしてLEAPER4に接近。右手のレーザーブレードを発振し、振りかぶる。

 

「悪いけど、それの対処はもう知ってんだ」

 

「! う、腕を――!?」

 

 HCはブレードを振り下ろせない。バーストライフルの長い銃身で、右腕の根本を抑えられているからだ。ドルマヤンが見せたその戦術を、621は確かにその血肉としていたのだった。

 そのまま右腕に零距離バースト射撃。HCの右腕は弾かれ、その衝撃でACSが悲鳴を上げる。

 

「だが……その武装では、このHCの装甲を抜くことはできまい!」

 

 HCは、見た目通りLCよりも重装甲だ。今のLEAPER4の武装では、スタッガーは取れてもそこから耐久を削るのは難しい。だから、ここはただ耐えるだけでいい。そうHCのパイロットは判断し――

 

「! どこに――!」

 

――まるで自分への興味をすっかり失ったかのように、明後日の方向へアサルトブーストを吹かすLEAPER4に困惑した。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 ラスティはLCと対峙する。その表情には緊張の色がありありと見えていた。

 基本的にLCはACよりも強力な兵器であり、目の前のLCはそんなLCの中でも最新型の類だ。そんなものと対峙しているのだから、緊張するのは自然なこと。

 しかし、ラスティはそんなことで緊張している訳ではなかった。

 

(あれから、充てられる時間は全て強くなることに費やしてきた。果たして今の私に、レイヴンの目に叶う戦いができるだろうか?)

 

 ラスティは解放戦線の目的のため(一人の戦士として)、彼の戦友にならなければならない。であるならば、()()()()の相手に苦戦など論外。

 きっとHCを余裕で撃破するであろうレイヴンのためにも、こちらもLCを余裕で撃破できていなければならない。

 

「悪いが、速攻で片付けさせてもらうぞ」

 

 まずはレーザースライサーを構え、アサルトブーストで接近。わかりやすく近接戦の武装を構えられたので、当然LCはその機動力で空へと逃れる。何度も述べているが、LCはその軽量さゆえにACを優に超える速度を持つ。故に、スティールヘイズがLCに追いつける道理は存在しない。

 

「逃がしはしない」

 

「なんだと!?」

 

 だが、そんな道理はラスティの前では意味を為さない。スティールヘイズはアサルトブースト中に強襲艦の残骸を蹴って高度を稼ぎ、さらにそのまま崖を連続で蹴上がることでLCの上昇速度にすら追いついてみせた。

 そのままレーザースライサーを振り回し、斬り刻む。

 

「くっ! 舐めるな!」

 

 しかし、レーザースライサーによる連撃は盾で受け止められ、本体へのダメージは少ない。盾はバラバラにされたが、その代わりにスティールヘイズはレーザースライサーを振り終えて隙を晒している。

 この好機に、LCはライフルを構え――

 

「それは読めていた」

 

 スティールヘイズはクイックターンを使い、その場で急旋回。勢いのまま一回転し、後ろ回し蹴り。スティールヘイズの鋭い脚は正確にLCのライフルを捉え、その銃口をずらした。それは、“燃料基地襲撃”で621が見せた動きそのままであった。

 明後日の方向に弾を撃ってしまい、今度はLCが隙を晒す番だ。ラスティは、レーザースライサーが冷却中なので、左手をバーストライフルに持ち替える。LCを蹴って一度距離を取り、ハンドガンにバーストライフル、プラズマミサイルを全て発射。鉛玉がLCの装甲を削り、プラズマが焼いていく。だが、頑丈なLCの装甲をぶち抜くにはまだ至らない。

 

「近接戦は不利か!」

 

 この一合で、LCのパイロットである執行中尉は悟る。このACは()()()()()()。近接戦なら、最新型LCですら負ける可能性があると。だから、全力で引き撃ちに徹することにする。

 幸いスティールヘイズはプラズマミサイルに巻き込まれないように一度距離を取っているため、逃げるのは容易――

 

「逃がしはしないと、言っただろう?」

 

「!?」

 

 いつの間にか目の前にスティールヘイズがいた。LCは再び蹴飛ばされる。

 

「ぐっ! まだ――!?」

 

 蹴りでコックピットを揺らされ、一瞬モニターが視界から外れる。だが中尉は即座に体勢を立て直し、モニターに移る敵の姿を――

 

「いない!?」

 

 中尉は驚愕に目を見開いた。自分を蹴飛ばしたはずのスティールヘイズがいない。視界のどこにもない。

 

ガァン!

 

「ぐわっ!」

 

 後ろから響く金属音。一拍遅れて中尉は理解した。()()()()()()()()と。だからブーストを吹かして背後に向き直――

 

ガァン!

 

「ぐおっ!」

 

 また蹴られた。今度は右からだった。そちらを向いて反撃しようとする。その前に上から蹴られる。上を向いて反撃を試みる。今度は下から蹴られる。ブーストを吹かして下を向く。上から背中を足蹴にされる。再び上を向けば、前から蹴りをお見舞いされる。

 四方八方、視界から外れた方向があればそこから即座に蹴飛ばされる。逃げても逃げてもいつの間にか追いつかれ、蹴りの連打から逃れることができない。

 それだけじゃない。ラスティは蹴りと蹴りの合間にハンドガンとプラズマミサイルを撃ち込んでいる。ベコベコに凹まされたLCの装甲に、鉛玉とプラズマの追撃が突き刺さる。

 

「何なんだコイツは一体!」

 

 中尉が叫ぶのも無理は無い。蹴られている本人である中尉には不可能なことだが、もし離れたところからこの戦いを見た場合、その正気を疑う光景に更なる悲鳴を上げていただろう。

 何せ、スティールヘイズは()()()()()()()()()()()()()()()()()LCに張り付き続けていたのだから。壁を蹴り、崖を蹴り、さらにはLCすら蹴って速度と高度を落とさない。速度が落ちそうになったらライフルのバースト射撃の反動すら利用して加速し、獲物に群がる蜂の如くLCを捉えて逃がさない。

 

(見ているか、レイヴン! これが私の戦い方だ!)

 

 「壁」での敗北以来、ラスティは621の戦闘ログを見て、彼の動きを学び続けていた。自身を打ち倒した戦士の動きをものにできれば、さらなる高みへ至れると信じて。

 だが、それはある時限界を迎えた。どれだけ努力しても、どれだけ621の動きを分析しても、一向に彼の動きに近づけなくなったのだ。彼の真似をしているだけでは駄目なのだと、そう諭されている気分だった。

 彼そのものになることはできない。何か自分だけの戦い方を見つけないと、彼の高みには至れない。そうラスティは直感した。だから、探した。彼にすら不可能な、自分だけの戦い方を。

 そして今に至る。

 

「上尉! 救援を! 敵を捉えられない!」

 

 見つけたのは、高速軽量機で張り付き続ける戦い方。壁も反動もブースターも、使えるものは全て使い、とにかく張り付き続ける。一切敵の視界に移ることなく、一方的な攻撃で火力の低さを補う。

 621ですら不可能な、目にも留まらぬ超高速戦闘。それこそが今のラスティが至った“高み”であった。

 蹴られ撃たれ焼かれ、LCの耐久力はかなり削られている。しかし、それでも新型は強力だ。まだ装甲を抜ける気配はない。そんな時だった。

 

「ラスティ!」

 

 聞こえるのは少年の声。ふとそちらの方角を見れば、スタッガーに至ったHCと、それを放置してこちらに向かうLEAPER4。それを見て即座に理解する。

 今のLEAPER4は重装甲のHCに対して決定打を持たない。対するスティールヘイズには、レーザースライサーという上手く扱えれば一気に耐久限界まで持っていける兵装がある。

 

「了解だ!」

 

 壁蹴りとアサルトブーストを駆使して、一気にHCに肉薄。スタッガーで動けないHCに、今出せる最大火力をぶつける。

 レーザースライサーを発振し、回転させながら振り下ろす。直後、振り下ろした勢いを利用して蹴りを放つ。さらに今度はスライサーを逆回転させながら自分も一回転し、その勢いで斬りつけ、同時に蹴りを放つ。目にも留まらぬ斬撃の最中に蹴りも織り交ぜたラスティオリジナルの連撃は、HCの厚い装甲を斬り裂いて止まらない。

 621にレーザースライサーを完全回避されてから、ラスティはデフォルトのモーションプログラムを使うことをやめた。せっかく強化人間には機体と感覚の同調という便利な機能があるのだから、もっと自由で柔軟な斬撃が繰り出せるはずだ。その発想の下、自分の身体(機体)を自分で操り、自らレーザースライサーを振る訓練を積み続けた。

 その結果が今のこれである。連撃中に蹴りすら交える更なる高火力コンボは、蹴りでスタッガーを延長し、レーザースライサーはオーバーヒートする目一杯まで敵を斬り続ける。打撃と斬撃のハーモニーは、捉えた相手を離さない。

 

「システムに……報告を……コード78……脅威レベルE……」

 

 スタッガーで防御姿勢を取れないHCにそれを耐える術はない。装甲を微塵切りにされたHCは、全身から火花を吹き出しながら爆散した。

 

「ふぅ……」

 

 思わず緊張が解ける。いつの間にかラスティは身体中汗びっしょりとなっていた。新しい戦い方は、相応に負担も大きいようだ。

 

「! レイヴンは──!」

 

 一瞬これが共闘であることを忘れて一息ついてしまった。慌ててLEAPER4の方を見てみると、そこには胸部に大穴を開けて動かなくなったLCがいた。

 

「そっちも終わったようだな」

 

「ラスティ!」

 

 通信から聞こえてくるのは無邪気な呼び声。こんな子供が「壁」で自分を打ち負かしたというのか。全くもって信じられない。

 

「LCは倒したようだが、これは……?」

 

「ああ、ライフルとミサイルでスタッガーを取って、レーザーキャノンでコックピットを狙撃した」

 

 だが、その口から語られるのはまぎれもなく歴戦の傭兵の戦い方だった。まだ装甲に余裕があるLCに対して、スタッガーで動きを止めて弱点だけを正確に狙い撃つ。それで一気に戦いを終わらせる。

 目指す背中はまだまだ遠いようだ。

 

「ラスティ、ナイスコンビネーション! 最高だった!」

 

「いや、そんなことは……ありがとう」

 

 天上の存在だと思っていた彼からこうして無邪気に褒められると、何だかバツが悪く感じる。だが、悪い気はしない。

 

「次に戦場で会うときも、また味方でありたいものだな、()()

 

「せっ……!?」

 

 親愛の意を込めて、彼をそう呼んでみる。すると、返ってきたのは想像とは違う反応だった。

 ACはパイロットが機体と同調して動かす関係上、その動きに感情がよく表れる。レイヴンの動きにラスティが見た感情は、驚愕と狼狽。それを見たラスティは、焦り故の失策を悟った。どうやら距離を縮めるのが早すぎたらしい。そう判断したラスティは、ひとまず謝罪の言葉を述べる。

 

「戦友呼びはまだ早かったか。すまない。気分を害したのなら──」

 

「い、いや! 全然早くないから! 寧ろ遅すぎるというか、こっちはとっくに戦友だと思ってたというか──」

 

 歓喜と混乱が入り交じった声で、彼が捲し立てる。発せられる言葉は脈絡がなく、大半が理解できないものであったが、少なくともレイヴンが自分を好いているということだけは伝わってきた。

 

「そうか……本当に、私が君の“戦友”を名乗ってもいいのかね?」

 

 確認の意味も込めてもう一度尋ねる。621にとって、その答えは端から決まっていた。

 

「勿論! これからもずっと、よろしく頼むからな! ()()!」

 

 四度目が始まってから短くない時間を経て。今ここに、二人は再び“戦友”となったのだった。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

「ところで戦友」

 

「何かな、戦友?」

 

 621がラスティに問いかける。今回の共闘で、621は一つだけラスティに聞きたいことがあった。

 

「『壁』のときと比べてずっと強くなってるけど、一体何が戦友をそこまで──」

 

『――システムの判断を通達します。コード78Eを承認。惑星封鎖に対する脅威検出と見做し、IA-02の起動を許可します』

 

 しかし、そんな二人の会話は、封鎖機構の無粋なシステムによって遮られた。

 

「今のは……!」

 

「コード78E、緊急支援要請だ。連中は私たちを最優先で排除しなければならないと判断したようだ」

 

 621は知っている。この後ここを襲い来る脅威のことを。戦友との共闘が楽しくてすっかり忘れていたが、これから来る()は、人とコーラルの共生を目指す621にとって絶対に許すことのできない存在だ。

 

「この反応は……!? マーカー情報を送信。そちらの方角から何かが……」

 

 エアが迫り来る脅威を感知し、マーカーで知らせる。マーカーの示した方角では、地面が繰り返し隆起しては沈むことを繰り返していた。

 マーカーの反応は少しずつこちらに近付いてきていて、その速さは加速度的に増えている。同時に、地面の隆起もどんどんこちらに近づいてくる。

 

「地中から……来ます!」

 

 エアの言葉の直後。地表を食い破り、()が表れた。赤銅色の長大な胴体と、三本のドリルを備えた頭部を持つ、化け物ミミズ。名はアイスワーム。火力と防御力では比類するものがない、封鎖機構の最終兵器だ。

 

「何だ……この化け物は……!?」

 

「戦友、下がれ!」

 

 ラスティはそれと交戦しようとするが、621の呼び掛けに従って退避する。実際その判断は正解だった。

 アイスワームは地面も建物も関係なく、全てを一撃で粉砕しながら暴れまわる。あれだけ建築物やオブジェクトに溢れていた旧宇宙港は、一瞬で見るも無惨な荒野と化していた。

 

「戦友、崖上に!」

 

「ああ、そうするしかなさそうだ」

 

 LEAPER4とスティールヘイズは、共に崖の上に避難する。眼下でアイスワームは暴虐の限りを尽くしているが、その動きには理性が感じられない。ここまで追って来ることはなさそうだ。

 

「これも……封鎖機構の兵器なのか?」

 

「このコーラル反応……有人ではあり得ません。恐らくは自律型のC兵器……!」

 

 地面の舗装も巨大な管制塔も、全てを無に帰しながら荒れ狂う。その有様はまさに“化け物”という言葉が相応しかった。

 やがて散々暴れまわっていたアイスワームだったが、突然立ったまま頭部を何処かへと向けて、そのまま固まった。

 

「待て……何か様子がおかしい」

 

「行動パターンの変化を感じます。何か……より優先の指令……」

 

 固まっていたアイスワームが再び動き出す。しかし、さっきまで壊しつくしていた旧宇宙港には全く興味を示さず、首を向けていた()()()を目指して地面に潜る。

 

「集積コーラルの、防衛……?」

 

 エアが呟く。アイスワームは、()()()()()を受けて()()()()を目指す。時折地表に顔を出しながら、地面を掘り進んでいく。そのまま一切迷いのない動きで旧宇宙港を離れていった。後に残されたのは、跡形もなく破壊された宇宙港と、二機のACだけだった。

 

「また……あんなものを……!」

 

 封鎖機構が抱える技研の遺産。C兵器というあってはならない発明。それをまたしても見せつけられた621は、怒りを隠せない。

 

「621、怒る気持ちはわかる。だが、今は戻って休め」

 

 そうだ。今の段階ではアイスワームを撃破することは不可能。現状でできることは何もない。

 

「俺は……これからあいつを倒す算段を立てる」

 

「ああ……頼む、ウォルター」

 

「……任せておけ」

 

 今はウォルターを信じて帰るべきだろう。それは621とてわかっている。しかし、621はいつまでもアイスワームの去っていった方角を睨みつけていたのだった。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

『聞いたよウォルター。あんたのとこのビジターが、また技研の遺産にからまれたんだって?』

 

「ああ。だが、奴は封鎖機構でも制御できないらしい。ウォッチポイント・アルファに近づくものを無差別に破壊して回っている。そこには封鎖機構自身も含まれているようだ」

 

『となると、集積コーラルはそこに?』

 

「恐らくな。エア曰く、アイスワームの暴走は、群れを守ろうとするコーラルの防衛本能に機体が乗っ取られたことによって起きたらしい」

 

『へえ……じゃあ結局あいつを始末しなきゃ、集積コーラルには辿り着けないってことかい?』

 

「そういうことになる。流石に今回ばかりは企業もいがみ合っている場合ではないと判断したらしい。ベイラムとアーキバスで、同盟を組もうとする動きが見られる」

 

『……普段からそんぐらい理性的になってくれりゃあ、アタシらの生活も楽になるってもんなのにねえ……』

 

「企業にそれを期待するのは無駄だろうな」

 

『そうだろうねえ。全く、本当に強欲な奴らだよ、あいつらは……まあ、とにかく! あの化け物を排除しなきゃいけないのは企業もアタシらも一緒だ。ここはあいつらに手を貸してやろうじゃないか』

 

「そうだな。それに関しては621とエアも協力してくれるだろう。何かしてほしい仕事があったら言ってくれ」

 

『そうかい、じゃあ早速依頼を送らせてもらうよ』

 

「後で確認するよう言っておこう……ところで、()()()()()は見てくれたか?」

 

『ああ、あの()()()()()()()()()って奴かい? 勿論読ませてもらったよ。あんな論文を見つけてくるなんて、ビジターも本当に賢くなったもんだねえ』

 

「621は()()の理論を使って人とコーラルの共生を達成できるんじゃないかと踏んでいる。実際どうだと思う?」

 

『う~ん、そうだねえ……正直難しいと思ってる』

 

「……そうか」

 

『コーラルが少なければ()()で共存できると思うよ? でも今のコーラル総量は、多分()()でカバーできる範囲を大きく超えてる。この前だって、エンゲブレト坑道で大規模なコーラル逆流が起きたって言うじゃないか』

 

「ああ、大豊の作戦か」

 

『そう、それ。あの深度でそれだけの事故が起こるくらいコーラルは増殖してる。だから、全部に()()をやろうとすると、絶対的に()()()()()()()()のさ』

 

「……今から増やすことは?」

 

『両企業陣営が戦争なんかせずに今から全力で作り続ければ、ギリギリ間に合うかもね』

 

「……つまりは無理ということか……わかった。ありがとう、カーラ。参考になった」

 

『いや、こちらこそ。ビジターの見つけた論文もなかなか()()()ものだった。今後の参考にさせてもらうよ』

 




スネイル
 621がフロイトに勝ったがために、ウォルターとの立ち位置が原作から逆転してしまい、ウォルター(+駄犬)に頭を下げなきゃいけなくなった人。ざまあ。
 当然の如く621の最優先抹殺対象にされてます。

621
 四度目で遂にラスティとの共闘が叶い、超テンションアゲアゲ状態な駄犬。尚、直後にアイスワームのせいで怒りがアゲアゲになった模様。
 戦友って呼ばれた瞬間は絶対しっぽブンブン振ってた。

ラスティ
 621に脳を焼かれた結果、クッソ強くなった我らの戦友。621の戦友とならなければならない(になりたい)理由を解放戦線のためだと思い込んでいるが、明らかにそれ以外の感情が見え隠れしてる人。

ウォルター
 621を駄犬呼ばわりするスネイルにブチギれ、立場を利用してパワハラを仕掛けた人。いいぞ、もっとやれ。

エア
 今回は影薄め。仕方ないね、戦友がいるんだもの。

アイスワーム
 コーラルに乗っ取られてます。内部のコーラルが暴走状態なので、エアでも乗っ取りは不可能。

 ということで遅くなりましたが戦友回。四度目ではこれが初めての共闘なんですよ、たまげたなあ……
 ラスティまで壁蹴りを習得してしまい、ルビコンが本格的に修羅の星と化していますが、大丈夫なんですかねコレ?(他人事)
 次回は旧時代データ回収。ついでにブルートゥ。ブルートゥは三行くらいで終わると思います。メインはデータ回収という名のエアちゃんとのデート(保護者同伴)なので、ご友人の皆様方はステイでお願いします(カーラ並感)
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