39:火をつける者
微睡みの奥深く。暗い暗い意識の底。
何も見えない、何も聞こえない全くの真暗闇。その中心で、少年は必死に藻掻き続ける。
『それでも……私は……人と……コーラル……の……』
『そうか……621……お前にも……友人ができた……』
「やめろ……やめろ……!」
暗闇の中に浮かんでは消えていく、絶望の記憶。どれだけ遡ろうとも、決して忘れられない罪の証。
それらから逃れたくて、手足を振り回す。だが、どれだけ少年が暴れようとも、消えることはない。
まるで、少年を嘲笑うかのように、記憶はギリギリ手の届かないところで再生される。
『レイヴン……コーラルリリースが始まります。美しいとは、思いませんか?』
「やめろッ!! それに触れるなッ!!」
少年の目の前で、巨大な人型が手を伸ばす。その先にあるのは、禍々しい赤い光。
それが救いであると信じていた。それこそが、人間世界の悲惨そのものであったのに。大人たちの言うことにもっと耳を傾けていれば、それは回避できたはずなのに。
だが、無知な人型は一心不乱にそれへ手を伸ばす。
「やめろぉ!! リリースは人とコーラルの共生なんかじゃない!!」
少年の必死の懇願は、届かない。過去は、変えられない。たとえそれがどんなに目を背けたくなるものであっても。
だから、人型は手を伸ばす。
「やめろ!! やめろお!! 頼むからやめてくれ!!」
そして、伸ばした指先が光に触れた。
「やめろぉぉぉおおお!!!」
少年の叫びなど意に介さず、暗闇に赤い光が広がってゆき――
『コーラル管理デバイス、起動』
――場違いなシステムボイスが、妙にハッキリと聞こえた気がした。
◆◆◆◆◆◆
「や、め……ろ……や……め……あれ?」
「いつまで寝ぼけている。さっさと起きろ、レイヴン」
「え? あれ? ここは、一体……?」
気付けば、さっきまでの悪夢はどこへやら。自分はベッドの上に寝かされており、その傍にはインカムに手を当てる
「こちら
「ドルマヤン? なんで――」
「詳しいことは後だ。今はとにかく時間がない。立てるか?」
「あ、ああ」
老人に手を差し出され、621はそれを掴む。皺くちゃなその細腕は、しかし老人のそれとは思えないほどに力強い。621はぐいと引っ張られ、ベッドから引き起こされる。そのままベッドから降りて――
「うおっ!? とっとっと!」
――立とうとした瞬間に、バランスを崩した。足に力が上手く入らない。赤子のようにヨタヨタと、歩きとすら呼べないたたら踏みを舞い、そして老人の方へ倒れ込んだ。
「気を付けろ。お前は
「そういうのは先に言ってくれよ」
「言っただろう? 時間がないと。無理矢理にでも一緒に来てもらうぞ」
老人は器用に621を支え、そのまま621を車椅子に寄りかからせる。この体勢ならば、今の621でもなんとか歩けそうだ。
「ドルマヤン、お前一体どうしてここに? というかここはどこだ? エアとウォルターはどこにいる?」
「順を追って説明する。まずは歩け」
車椅子に支えられ、621はドルマヤンと共に歩く。621は少しでも情報を得ようと辺りを見渡すが、視界に入るのは薄暗い廊下のみ。そこには最低限の装飾すら無く、得られる情報量は極めて少ない。いくら621でも、こうまで何もわからないと多少は不安に感じてしまう。
そんな内心を察してか、ドルマヤンは口を開く。
「さっきも言った通り、ここはベリウス地方にあるオールマインドの第117番工廠だ。お前を捕らえたオールマインドは、万が一にも奪い返されないようお前をウォッチポイント・アルファから遠く離れた工廠へと隠したのだ」
「なるほどね。こんだけ殺風景なのも、あいつの施設だと思えば納得だ」
「お前を見つけるのは相当に苦労したぞ? 何せオールマインドの奴は、お前を捕らえた途端にハッキング対策で全ての施設をネットワークから切り離しやがったのだからな。お蔭でこの年でフィールドワークさせられる羽目になった」
「それは……ありがとう、ドルマヤン」
「礼はいい。私たちの目指すところは同じはずだ。そうだろう?」
「それでもだよ。本当にありがとう。ドルマヤン」
「……フン」
車椅子に支えられながら歩くうちに、徐々に621の足はかつての感覚を取り戻していく。少しずつ、その足取りはしっかりし始めていた。
「お前が捕まって以降、我々は劣勢にある。集積コーラルはアーキバスに確保され、解放戦線とRaDの両軍で何度も奪還を試みているが、上手くいっていない」
「……ごめん、なさい」
「何を謝っている?」
「……俺が、捕まったせいで。もっと警戒していれば、こんなこと……」
621が俯く。自分のせいで、今このルビコン全体が危機に陥っている。
集積コーラルの確保は、621が健在であることを前提に立てた計画であった。こうなってしまえば当然破綻する。
実際621を抜きにした今のルビコニアン勢力は、アーキバスやその背後のオールマインドに正面から対抗するには不足であった。今やコーラルは彼らの手の中にある。
改めて自分は、なんというタイミングで捕らわれてしまったのか。自覚した瞬間、罪悪感が湧き上がってくる。
「嘆くのは後にしろ。お前はまだ間に合う。私と違って、な」
「ドルマヤン……」
ドルマヤンの言葉に、621は顔を上げる。そうだ。自分たちはオールマインドに捕らわれたが、今こうしてドルマヤンに救出されている。恐らく、まだ間に合う。だったら落ち込んでいる暇なんてないはずだ。
戦意を取り戻した621は、前を向く。その足取りは、心なしか先程までよりもずっと安定しているように見えた。
「それでいい。それでこそ、お前に運命を託した甲斐があるというものだ」
「……よく言うよ。最初は俺を殺そうとしてたクセに」
「あれは不幸なすれ違いだ。相互理解が足りなかった。人類にはよくあることだ」
「本当に言うようになったなこのジジイ」
ザイレムで対峙したときのセンチメンタリズムはどこへ行ってしまったというのか。図太くなってしまった老人に、621は笑うしかない。
「着いたぞ、レイヴン」
「! ここは――!」
煽り合っている内に、いつの間にか目的地に辿り着いていたようだ。そこに広がるのは、明らかな大立ち回りの跡。無数に転がる
そして、その中心には見覚えのあるACが五体満足で佇んでいる。その真っ赤な装甲に傷は一つとして見受けられず、この戦いがどれほど一方的だったのかが察せられる。
「うお……すっげえ奇麗な断面……」
「眺めてる場合か。すぐにでもオールマインドの増援が来る。お前もさっさとACに乗れ」
「え? ACに乗れって――」
「あそこに一機だけACが残っている」
ドルマヤンが指差す方を見やれば、そこには一機だけ無傷のマインドβが鎮座していた。
「
「え、ちょ」
ドルマヤンは有無を言わせず621にUSBのようなものを握らせる。そして、そのまま彼の背中を強く押したのだった。
「うわっとっとっと!?」
当然ながらそれは、数か月間寝たきりだった人間にいきなりやっていい所業ではない。強引に送り出されてしまった621は、何とか倒れるよりも前に足を出して悪足搔きすることしかできない。
「恨むぞドルマヤァァァン!!」
「何を言う。私のお蔭で、もう筋力が回復し始めているではないか」
倒れそうになっては持ち直す。そんなことを何度も繰り返しているうちに、強化人間特有の回復の早さも相俟って、621の足取りはどんどんしっかりしたものになっていく。一歩一歩、進むたびに足の感覚が帰ってくる。そしてマインドβの足元に到達する頃には、すっかり元通りとなっていた。
真っ直ぐ立てるようになって、やっと余裕が戻ってきた621。ふと、周囲を見渡してみると、だんだんここがどんな場所なのかわかってくる。残骸が多すぎるせいで最初は気付けなかったが、どうやらここはガレージらしい。よく見ると拠点ヘリで見たのと同じような設備が、無数に並んでいる。その殆どは叩き切られるかへし折られるかしているが。
無事なのは目の前のマインドβと、その周りの設備だけ。狙ってここだけ残したのだろう。
「オールマインドのACはロックがかかっているが、
「数か月ぶりに起きた人間に求める仕事量とは思えないね」
昇降機を操作し、マインドβのコックピットへ向かう621は悪態をつく。一刻も早く筋力を戻す必要があるのはわかるが、だからと言ってあれは荒療治が過ぎる。必然、621の声には険が含まれていた。
「不可抗力だ。今はとにかく急ぐ必要があった」
「さっきから急ぎ急ぎって、具体的にどう急ぎなのかくらい教えてくれよ。じゃなきゃ、急ごうにも急ぐ気が湧いてこない」
「詳しいことは
「……カーラがあんたのことを酷評するわけだよ」
ドルマヤンは621の悪態を軽くあしらい、さっさと赤いAC――アストヒクに乗り込んでしまった。仕方がないので、621もマインドβに乗り込む。
「これを使えって話だったけど……こうか?」
手に持ったUSBを、コックピットからACに接続。すると、特に操作してもいないのに、自動でACが起動し、モニターに表示されたステータスが高速で書き換わっていく。
『パラサイトモジュール接続完了。システムへの不正アクセス開始。……さて、久しぶりだねえ、ビジター』
「! カーラ!」
ハッキングされた通信システムから漏れ出したのは、聞き覚えしかない声だ。まさか一度目二度目だけに限らず、四度目でもこの人のお世話になるとは。
『元気そうで何よりだよ。今アタシが遠隔でソイツのセキュリティをバラしてやってる。もうちょっとだけ待ちな。すぐに動かせるようにしてやるよ』
「ありがとう、カーラ!! 本当にありがとう!!」
『フン、礼の必要はないよ。アタシはアタシの目的ためにやってんだからね』
「それでもだよ!! ありがとう!!」
『全く……変に律儀なのはウォルター譲りなのかねえ?』
「……私の時と反応が違い過ぎないか?」
モニター一面を赤く染める、不正アクセスを訴える警告メッセージ。それが次々と緑色になり、そして消えていく。オールマインドが厳重にかけた幾つものセキュリティも、カーラにかかればこんなもの。
だから、オールマインドは全ての施設をネットワークから切り離したというのに。物理的に足掛かりを作られてしまえば、どうしようもない。
『さて、ビジター。状況はそこのジジイから聞いてるね?』
「いや、ドルマヤンは急いでる急いでるって言って特に説明は何も……」
『ドルマヤン?』
「仕方なかろう。急ぎなのは事実だ」
『お前なあ……』
通信越しに響いた、長く長く、そして深く息を吐く音。こんなにもわかりやすく呆れ果てることがあるだろうか。心なしか警告メッセージの消える速度が遅くなった気もする。
『……ハッキングにはまだ時間がかかる。その間にアンタの口から説明しろ』
「チッ、増援が来るまでには間に合うんだろうな?」
『舌打ちしてる暇があんならさっさと口を動かせ!!』
「ヒェッ」
二人の仲が悪いのはウォルターを通じて知っていたが、まさかここまでとは。あの最強の傭兵が、まるで小さな子供のように――いや、実年齢は小さな子供そのものなのだが――怯えることしかできないほどとは。621の最も苦手なものが更新された瞬間だった。
「仕方あるまい。聞け、レイヴン」
「え、あ、はい」
「さっき言った通り、オールマインドは全ての施設をネットワークから切り離し、そんな中で我々はお前やウォルター、そしてエアの捜索をせざるを得なかった」
要はカーラのハッキングなしで、無数の施設から621を見つけ出さなければならないということだ。それがどれほど難しいことなのかは、考えるまでもないだろう。
「この数か月で、候補はある程度絞れた。だが、もう時間がなかった。バスキュラープラントの修理は終わり、コーラルは一点に集められようとしている」
それが何を意味するか、わからないものはここにいない。
「それじゃあ、コーラルリリースが……」
「そうだ。もはや秒読みと言っていいだろう」
今のオールマインドは、スッラとエアを手中にしている。あとはコーラルの密度さえ高めてしまえば、すぐにでもリリースをすることができるのだ。もはや、一刻の猶予すらないと言えた。
「だから、我々は戦力を分散し、候補の施設への同時攻撃を敢行した。ここに私一人しかいないのも、そういうことだ」
『アタシもこう見えてアイツの工廠の一つを占領した直後さ。こっちは空振りだったけどね』
「俺のために、そこまで……」
「ああ、そうだ。お前という意志の表象に、皆が未来を託している。今、それを聞かせよう」
マインドβのチャンネルに、一つの回線が繋がれる。この回線には見覚えがあった。確か、“多重ダム襲撃”でフラットウェルが裏切りを打診するときに繋げてきた回線。つまりは、解放戦線のチャンネル。
621は、慣れた手つきで回線を開く。その瞬間、耳の中に飛び込んでくる声の奔流。そこには、
『帥父がレイヴンを救出した! あとはウォルターとエアだけだ! みんな、あともうちょっとだよ!』
『この機を逃すな! ベリウス地方のシュナイダーACは全機出撃。アーキバスとオールマインドに立て直す隙を与えるな!』
『ハッハァ! インビンシブルだ! 俺たちゃインビンシブルだぁ!』
『こちらダナム! 115番工廠を制圧! 空振りだ! このままラミーと共に117番へ合流する!』
『こちらチャティ・スティック。230番ガレージの警備が異常に厳しい。恐らくどちらかが囚われている。増援を頼む』
『此方も熾烈! 207番は金城鉄壁の如し! 加勢を求む!』
『俺が行こう。キャンドルリングの速力ならば!』
今ルビコン全域では、全てのルビコニアンが一斉蜂起していた。解放戦線とRaD、両軍の全勢力で以てオールマインドを襲撃し、621たちを探している。そこには、かつての周回で殺した人間すら含まれていた。
『ハッ! 人気者だねえ、ビジターは! 少し妬いちまうよ!』
「これも全てお前が為してきたことの結果だ、レイヴン。言っただろう? 皆が、お前に未来を託している」
「……ああ」
621は、口を開けたまま通信に溢れる声たちを聞いていた。確かに、四度目の自分は大切な人を守るために色々と手回ししてきたけど。それが巡り巡って、これほどまでの熱狂を生み出すことになるとは。
自分が為したことのはずなのに、いまいち実感が湧かない。そんな621を余所に、ドルマヤンは通信を繋げる。
「皆の者よ。聞こえているな? 作戦は順調に進んでいる。アーキバスの横槍は全て
「「「「「ハッ!」」」」」
「所詮は人を知らぬ無人機の軍勢よ! 我らはこの星の過酷な大地に生きてきた『人間』! 負けることなどあり得ない! そうだろう!?」
「「「「「はい!! 帥父殿!!」」」」」
「そうだ! 勝機は我らにある! 灰被りて、我らあり!!! コーラルよ、ルビコンと共にあれ!!!」
「「「「「コーラルよ、ルビコンと共にあれ!!!」」」」」
「……すっげぇ」
鼓膜を震わせる凄まじい熱意。なんという圧倒的な士気だろうか。だが、ドルマヤンの手にかかればこれくらい朝飯前だ。一度腐り堕ちていたとはいえ、彼こそが解放戦線の最高指導者なのだから。アイビスの火の直後の、崩壊したルビコンの共同体を立て直したその手腕は伊達ではない。
そして、老人の勇姿は、燻っていた女傑の心にも火をつける。
「アンタたち! 解放戦線に負けんじゃないよ! オールマインドに勝つなんて、できて当たり前! さっさとオールマインドのアホを全滅させて、解放戦線を助けてやるくらいしてみせな!」
「「「「「おうッ!!」」」」」
「さあ、オールマインドに目にもの見せてやりな! アタシらの邪魔したことを、その手で後悔させてやれ!!」
「「「「「うおおおぉぉぉ!! ボスぅぅぅ!!」」」」」
「……こっちもこっちでスゲェな」
組織の上に立つものたちの妙技を見せられて、621はただただ脱帽するしかなかった。人を動かすということは、斯くも圧倒的なものなのか。
『大丈夫かい、ビジター? プレッシャーかけちまったかね?』
「いや……大丈夫さ。というより――」
さっきからやたらと静かな621に気付いたカーラは、すぐに彼を気に掛けてやる。だが、返ってきたのは心強い答えだった。否、この少年は心強い程度で収まる器ではない。
「――むしろ燃えてきた」
『ハッ! そりゃあ結構なことだ!』
「フフ、やはり君こそが真の『レイヴン』だな」
これだけの期待をかけられたのだ。応えてやらねば、“レイヴン”の名が泣くというもの。
だから、彼は何を言われるまでもなくコックピットのマイクのスイッチを入れた。
『ビジター? 何を――』
「レイヴン? 一体――」
「みんな!」
カーラとドルマヤンが何かを言うより前に、621は声を上げた。少年の声は、解放戦線のチャンネルを通じて、この星中を駆け巡る。銃弾や爆発の飛び交う戦場の中で、ルビコニアンたちは確かに聞いた。まだ若く、しかし確かに意志を感じさせるその声を。
彼の声を知らないはずの者たちでさえ、不思議とその声が誰のものなのか確信していく。ああ、間違いない。我々に語りかけているあなたこそが――
「俺が、レイヴンだ。みんな、この数か月間本当に世話をかけた」
「「「「「「「「「「……!」」」」」」」」」」
「みんなのお蔭で、俺は今ここに目覚めることができた。本当に、ありがとう」
自分に二人のような扇動する力なんてない。だから、ただ素直な気持ちを伝える。きっと、それこそが必要なことだから。
「だから、もう安心してくれ。俺が、みんなを勝利に導く」
「「「「「「「「「「っ!」」」」」」」」」」
「共に、勝利を!!!」
「「「「「「「「「「うおおおおお!!! レイヴン!!! レイヴン!!! レイヴン!!!」」」」」」」」」」
耳を劈く凄まじい怒号。それこそが、レイヴンという人間に向けられる感情の証左。だって、彼はこの星で最も有名な個人なのだから。
幾度となく受け継がれていく中で、陳腐化していった“レイヴン”の名。だが、ここに本来の意味は取り戻された。自由の象徴、反抗の旗印。621は、今この瞬間、押し付けられた秩序を破壊する“イレギュラー”に覚醒したのだ!
『全く……ウォルターの奴め、とんでもないもんを育ててくれやがったな……』
「ああ。オールマインドの阿呆が余計な事をしなければ、こうはならなかっただろうな。クックック!」
カーラは、覚醒した621に畏怖とも歓喜ともつかない感情を抱き。そして、ドルマヤンは心底愉快そうな笑い声を上げ。大人たちの見守る中で、子供は驚異的な成長を遂げてゆく。
『これじゃあアタシらがまるで道化だよ』
「不貞腐れている場合か。まだ奴には助けが必要だ。特にお前の、な」
『わぁーってるよ。これでも手だけは止めてないんだぞ、こっちは』
もうすぐマインドβの全システムを奪い取れる。その時こそ、真のレイヴンの復活だ。そして、その時は来た。
『よし! セキュリティ全解除完了! ビジター! ACを動かしてみてくれ!』
「了解! システム、起動!」
『メインシステム、戦闘モード起動』
AC NAME:MIND BETA
R-ARM UNIT:
L-ARM UNIT:
R-BACK UNIT:
L-BACK UNIT:
HEAD:20-081 MIND ALPHA
CORE:07-061 MIND ALPHA
ARMS:04-101 MIND ALPHA
LEGS:06-041 MIND ALPHA
BOOSTER:BST-G2/P06SPD
FCS:FCS-G2/P05
GENERATOR:VP-20C
EXPANSION:PULSE ARMOR
マインドβの目に光が宿り、そして唸りを上げて動き出す。一歩一歩、踏み出す度に地面が揺れる。
数か月ぶりでも、全く問題ない。やはり、自分はこうでなくては。いつにも増して、戦意が逸る。
「問題は無いようだな。よし。では、急ぎここを脱出するぞ。恐らくオールマインドは私がここを攻め落としたことに気付いている。そろそろ奴の増援が――」
「よくわかっているじゃないか。老兵風情が、本当に余計なことをしてくれたものだ」
「「っ!」」
レーダーにACの反応。そして、この声。こんな粘着質な声の持ち主は、一人しかいない。
「スッラ!」
「またお前か。さっき完膚なきまでに叩き斬られておいて、またのこのこと姿を現すとはな。斬られ足らなかったのか?」
「ああ、そうだ。私は諦めの悪い人間なのでね。やはり一回では満足できん。だが――」
「っ!? これは――!」
621が驚愕する。さっきまで一つしかなかったはずのACの反応が、いつの間にか数十、数百にまで増えていたから。
「ステルス!?」
「ゴーストと同じ技術か!」
「ご名答。これで何百回でも斬られてやれるということだ」
二人を囲むのは、数百機のマインドα。間違いなく、オールマインドの本気が表れていた。
「複数で襲おうとは、なんとも情けない。プライドは無いのか?」
「無い。生憎私は、ウォルターを苦しめることさえできればいいのでね。老兵にはいい加減ご退場願おうか」
じりじりと包囲の輪を狭めていく無数のマインドαと、そしてスッラ。普通のAC乗りにとっては、まさに絶望的な状況。だが、この二人にとっては――
「仕方あるまい。やるぞ、レイヴン」
「ああ。やってやろう、ドルマヤン」
戦意は十分。ACは十全。だったら、可能性はゼロではない。やりようはあるはずだ。
そして、最強の傭兵と歴戦の老兵は、背中を合わせた。
621
目覚めた鴉。星中にばら撒いた火種は、遂にその火をつける時が来ました。
ドルマヤン
株が乱高下する激強ジジイ。戦闘と扇動ではやはり最強レベル。なおパワハラ。
カーラ
何気にハッキング技術がヤバい人。だからオールマインドはネットワーク遮断という暴挙に出ざるを得ませんでした。完璧なAIとは一体。
スッラ
カッコよく登場してますが、既にドルマヤンに斬られた後です。
ルビコニアン
RaDと解放戦線が全員集合。ドルマヤンとカーラに続き、レイヴンによる発破も加わって士気は最高潮。蒔いた火種は天高く燃え上がりました。
オールマインド
まさかの一斉蜂起に対応が後手後手になってる自称管理者。スッラが来るのがだいぶ遅れたことからもわかる通り、この動きは全部想定外です。
アーキバス
「
ということでついに始まりましたChapter5。四度目の鴉はあらゆる人物の燃え残りに火をつけてきました。なので、星中が精神的に大炎上するのも止む無し。
次回は大乱闘スマッシュレイヴンズ。謎のマインドα軍団を倒せ!(本気度9.9)