四度目の鴉   作:Astley

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 今回はちょうどいい切り目がなかったので短め。あとフロイト君の強さをだいぶ盛ってますが、トップランカーの強さとオールマインドちゃんの胸はいくら盛ってもいいので、問題はないでしょう。


05:「壁」防衛

『独立傭兵レイヴン、貴方に引き受けてもらいたい作戦がある。内容は、我々の重要拠点、「壁」の防衛。

 先立って行われたベイラムによる襲撃は何とか撃退したが、その戦いで我々も少なくない数の同志を失った。今、壁の守りには穴が開いている。このままでは、アーキバスによる第二の襲撃には耐えられないだろう。そこで、貴方にはその穴埋めを依頼したい。

 諜報部からの情報によれば、アーキバスはヴェスパー部隊による挟撃を計画している。前方の街区をV.I フロイトで、裏手の方をV.IV ラスティで攻撃するつもりのようだ。

 貴方には、裏手の防衛を頼みたい。我々の部隊がV.Iを足止めしている間にV.IVを撃退、然る後に壁上で我々の部隊と合流、共にV.Iを討ってもらいたい。

 ……ヴェスパー部隊の番号付き二人が相手だ。厳しい戦いになるだろう。だからこそ、貴方の助力を得られることを願う』

 

(……まさか、こうなるとは)

 

 ブリーフィングを確認した621は、天井を見上げて息を吐く。ストライダーを守り切ったら、今度は「壁」の防衛と来た。考えようによっては、“壁越え”よりも厳しい戦いになるかもしれない。

 

(一応ウォルターは受けるかどうかは自由って言ってくれてるけど……)

 

 621がこの依頼を受けなかった場合、ウォルターがV.II スネイルに営業をかけて621を“壁越え”に組み込ませるらしい。つまり、三度目までと同じことが起きるということだ。

 

(だけど、今回は徹底的に解放戦線の味方をするって決めたんだ。だったら、受けるしかないだろ)

 

 今回は「壁」を守る。621はそう選択した。

 

(だけど、壁を守るということは……ラスティと戦うことになるんだよな)

 

 それが一番の懸念点であった。V.IV ラスティ。三度の生で、幾度も共に戦い、そして時には袂を分かつことになってしまった戦友。三度とも最終的には死んでしまった、621の大切な人の一人。

 

(最優先はエアとウォルターだけど……できることなら、ラスティにも生きていて欲しい)

 

 四度目の鴉は欲張りだ。それが無茶であることは重々承知しているのに、それでも願うことをやめられない。

 だから決意する。今回の戦いでは、ラスティは無力化するにとどめる。武装や両腕だけ破壊すれば、きっとラスティも撤退を選んでくれるだろう。

 

(ラスティに関してはこれでいい。もう一つの懸念点は――)

 

 V.I フロイト。彼とはまだ一度しか戦ったことがないが、その一度は621に強烈な印象を焼き付けた。

 

『安そうな方から片付けよう』

 

『……ボス、ビジ……ター……』

 

「っ!」

 

 一度目の生。空の上で繰り広げられた、企業との最終決戦。そこで殺された大切な“人”。なんだかんだで彼のことは好きだった。自分の“母”について楽しそうに話す彼の声色には、自分がウォルターに抱いているものと似たような何かが感じられたから。

 二度目、三度目では自らの手にかけることになってしまったが、できるならやり直したいと、ずっと思っていた。

 

(そのチャンスが、今ここにある……!)

 

 そのためにも、フロイトは確実に殺す。そう621は決心したのだった。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

「621、どの勢力に付くかはお前の自由だが――」

 

 コックピットで出撃準備を進める621に、ウォルターが通信で話しかける。

 

「俺たちの目的は、解放戦線のそれとは相容れないものだ……あまり、入れ込むな」

 

「……『わかってる』」

 

 ウォルターの目的は、表向きは集積コーラルへの到達。そして、本当の目的はコーラルの殲滅。どちらにしても解放戦線とは敵対することになる。

 だから、飼い主(ハンドラー)としてのウォルターは621に警告する。個人の感情で味方を選ぶなと。独立傭兵など、金をくれた方の味方になっていればよいのだと。

 

「だが、好き嫌いというのは誰でも持っている基本的な感情だ。それに従うことは、決して悪いことではない」

 

 それでも、人間としてのウォルターは、621が人間らしくなっていくことを喜ばずにはいられなかった。自分の意思で誰に味方するかを選ぶなど、この世界においては大人ですら難しいことなのだ。

 それを彼は為している。まともな親もいない環境で育ったのに、この年で。それはきっと、褒められるべきことだ。

 

「……『ウォルター、行ってきます』」

 

「ああ、行ってこい。お前の価値を見せてやれ」

 

 ヘリが開き、LEAPER4が投下される。

 

R-ARM UNIT:LR-036 CURTIS(軽リニアライフル)

L-ARM UNIT:HI-32: BU-TT/A(パルスブレード)

R-BACK UNIT:BML-G2/P05MLT-10(10連装ミサイル)

L-BACK UNIT:SONGBIRDS(連装グレネードキャノン)

 

HEAD:HC-2000/BC SHADE EYE

CORE:BD-012 MELANDER C3

ARMS:AR-011 MELANDER

LEGS:LG-012 MELANDER C3

 

BOOSTER:ALULA/21E

FCS:FC-008 TALBOT

GENERATOR:VP-20C

 

EXPANSION:ASSAULT ARMOR

 

 ラスティは撤退させ、フロイトは確殺する。そんな難問に対して621が出した答えがこれだった。リニアライフルは、命中精度が良く、威力の調節も効く。武装破壊や部位破壊には持ってこいだろう。

 そして、それ以下の武装については特に言うことはない。ただ殺すためだけに、一番使い慣れている装備を持ってきただけだ。

 

『メインシステム、戦闘モード起動』

 

 機体と感覚を同調。視界が頭部カメラのものに切り替わり、「壁」の裏手の様子がはっきりと見える。

 こちら側の防衛戦力は、MTが少々と621一人。それで全部だ。

 

「街区の主力部隊を迎撃するために、戦力の大半はそちらに回しているようだな。それだけV.Iを警戒しているということか」

 

 ウォルターの言葉には、621としては納得しかない。先にも述べた通り、621はV.Iとは一度しか戦ったことがない。しかし、その一度が凄まじいまでの死闘であった。

 当時の621が全力を出し尽くして、それで漸く僅かに上回れただけのバケモノ。そのくせあのバケモノは本気を出しているようには見えなかった。あまりにも底が見えない。

 そんなものを相手にする以上、戦力なんてものはいくらあっても足りない。このような戦力配置になるのも当然であった。

 

(だけど、勝機はある)

 

 フロイトは確かにバケモノだが、しかし彼は大体いつも手を抜いているという。曰く、()()()()()()()からだ。戦闘を楽しみたいという思いだけで戦場に足を運ぶ狂人。それがフロイトという人間だった。

 

(今回のこちらの戦力は、ジャガーノートを除けば数だけの防衛部隊と新人の傭兵一人。奴が本気を出すには、きっとまだ全然足りない)

 

 だから、彼は本気にはならない。本気でさえなければ、十分に対応できる。

 

(それに、あの時の俺は一度目だったが、今は四度目だ)

 

 あの戦いで、621は確かに彼を上回った。それから二度、三度と生を重ね、傭兵としての技量がさらに上がった今なら、勝てないことはない。

 

(そうだ、今ならきっと……殺せる)

 

 621は静かに殺意を迸らせる。

 

「621、敵の反応だ。アーキバスが来たようだな」

 

 ウォルターの通信で、621は考えるのを止めた。まずはラスティと戦うのだ。いつまでもフロイトのことを考えているわけにはいかない。

 

「V.IV ラスティを確認。情報通りだ」

 

 遠方に青いACが見える。細身のシルエットを持つ、シュナイダーフレーム。間違いない。ラスティのAC、スティールヘイズだ。後ろに何機かMTを連れているが、そんなものは621の視界には映っていない。

 

「なるほど……あれが噂のレイヴンか」

 

 通信に入ってきた聞き慣れた声に、621は一瞬喜びかける。だが、今は敵同士なのだ。浮ついている場合ではない。

 

「あのハンドラー・ウォルターの子飼いらしいな。その実力、見せてもらおうか」

 

 スティールヘイズがアサルトブーストを起動。621に急接近する。ならば、こちらもアサルトブースト。スティールヘイズとLEAPER4が急接近し、お互い同時に蹴りを放つ。

 

「「っ!」」

 

 同時に機体を揺られ、二人して苦悶の表情を浮かべる。周囲に金属同士がぶつかる重低音が響き渡る。

 それを合図として、アーキバスと解放戦線のMT部隊が交戦を開始。「壁」を巡る戦いは、ついに火蓋を落とされたのだった。




621
 ラスティにもチャティにも生き残ってほしい欲張りな鴉。殺してやる、殺してやるぞフロイト!

ウォルター
 ハンドラーたらんと振る舞ってるつもりだが、どう転んでもパパな人。コーラルに到達するために621には傭兵として振る舞ってもらいたいが、しかしそれ以上に621が人間らしくなるのを喜んでしまうというジレンマ。

V.I フロイト
 知らない間に621の最優先殺害対象にされてしまった可哀そうな人。でもお前チャティを馬鹿にしたし、やっぱり残当。

V.IV ラスティ
 俺たちの戦友。今回はまさかの初手敵対。でも解放戦線のスパイな彼にとって、今回の621の行動はむしろ好感度高いかもしれない。

 ということで今回は「壁」防衛戦の直前まで。621の基本方針は、ウォルターとエアが最優先、でもそれ以外の大切な人たちもできる限り生かすという感じ。ラスティも当然大切な人枠に入っています。
 次回はもちろんVSラスティから。621は彼を無力化できるのでしょうか。
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