寝袋配達ダンジョンマスター   作:龍翠

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ダンジョン探索

 

 ダンジョンではあまりにも不思議なことが多い。あからさまな宝箱が置いてあったり、何度倒してもわいてくる魔物がいたり。

 これもまた、その不思議なことの一つ。一層目の最後の部屋にある転移の魔法陣。この魔法陣は一定階層ごとに設置されていて、念じた場所に転移してくれる。ただし、行ったことのある階層にしか行けないようになってる。

 

 仕組みなんて分からないけど、ダンジョンでは気にしても仕方ない。そもそもとして、ダンジョンそのものが未だによく分かっていない未知の場所だから。

 私たちが転移したのは、七十階層。ここから少しずつ潜っていく予定。夜までには深層にたどり着くだろうけど、入るかどうかはまだ迷ってる。

 

「姉。魔物。前方二。人型」

「了解」

 

 ミユの前に出て、武器を構える。私たちの戦闘スタイルは単純明快。私が前衛で敵を足止めしつつ、ミユが魔法で敵を倒す。ただそれだけ。

 

「単純な戦法でも、突き詰めれば深層でもやっていけるんだよ」

 

『うそだぞ』

『それができるのはこいつらだけだぞ』

『ぶっちゃけ二人だけで潜って、なおかつ下層に到達できてるのは神山姉妹だけだからな』

『ユウジたちのパーティも四人だったし』

 

 そうだったっけ。他のパーティのことはあまり気にしてないから、詳しく覚えてない。だって、ダンジョンは全てが自己責任だから。

 魔物を倒しながらダンジョンを進んで、進んで、進み続ける。進み続けると、時折宝箱を見つけることができる。こうした宝箱はすぐに開けたくなるけど、要注意だ。

 

 二十五階層までの上層ならすぐに開けても問題ない。中層以降は罠があって当たり前。下層以降になると、罠が理由で身動きが取れなくなり、死んでしまう可能性がある。麻痺毒とかね。

 今回の宝箱は七十五階層。当然下層であり、あと一層下がれば深層の区域だ。慎重に開けないと危ない。

 

「ミユ。周辺に魔物は?」

「いない。大丈夫」

「よし。それじゃ、開ける。もしもの時はよろしく」

「わかった」

 

 ミユが少し離れる。毒ガスなどが出ても巻き込まれない範囲まで下がったところで、私は宝箱に手を触れた。今のところ、変化はない。大丈夫。

 

『いつもこの瞬間が緊張する』

『わかる』

『即死トラップは今のところないけど、今のところは、なだけだからな』

 

 今後の調査で出てくるかもしれないってことだね。そしてそれが今になる可能性は十分にある。その時は私に運がなかった、ということで。鍵開けに詳しい人がいれば、もうちょっと調べられるんだけど、それは言っても仕方ない。

 ゆっくりと開ける。まず宝箱に化けた魔物、ミミックでないことは確定。あとは毒ガスとかを警戒しながら……。

 

 あっさりと、勢いよくぱかんと開いた。何も出ない。毒ガスとか毒針とか、そういうのもない。下層の宝箱にしては珍しい。

 不思議に思いながら宝箱の中身をのぞき込んで、私は思わず頬を引きつらせた。

 

「姉。何があった?」

「あー……。見れば分かる」

「ん……?」

 

 ミユが私の隣に立って、宝箱の中を見る。ここにあるのは、紙切れ一枚。大きな文字で、たった三文字。

 

『はずれwww』

『なんだこれwww』

『平和なトラップだなあw』

『こんなん上層でもないぞw』

 

 上層だとそもそもとしてトラップなんてないからね。いやそれにしても、こんな紙切れ一枚の宝箱は初めてだけど。

 それにしても、はずれって。なにこれ? 実はケンカ売られてる?

 

「…………。一応、この紙は持って帰る?」

「うん……。まあ、一応、ね。一応」

 

『そうだな。宝箱は宝箱だしな』

『もしかしたらとても貴重な紙かもしれない……!』

『どこからどう見てもただの紙なんですがそれは』

 

 正直、お宝としては期待できないけど……。でもまあ、たまにはこういうのも悪くないと思う。うん。そう。悪くない。

 とりあえず。

 

「続き行こう」

「ん」

 

 気を取り直して、妹と共にさらに進む。できれば深層まで行きたいところだけど……。でもさすがに危険すぎるかな。

 

『まだ戻らないのかよ』

『もう夕方だぞ? そろそろ戻らないと、深夜までに戻れないぞ』

『ダンジョン内で寝るつもりとか』

 

「今回はそのつもり」

 

『え』

『ちょ』

『マジかよ』

 

 マジだよ。言ってなかったけど、今回はもともとそのつもりでダンジョンに潜ってるからね。それに、何かしら不測の事態でダンジョンで野宿するなんてことも、たまにある。いざという時の練習と思えば悪くない。

 まあ、その練習が深層っていうのは、ちょっと私も不安なところだけど。

 

『まさか深層で野宿するつもりじゃないよな?』

『さすがにそれはまずいって』

『悪いことは言わないから引き返そうぜ』

 

「ごめんね。心配してくれるのは嬉しいけど、今回はちょっと別件の用事もあるからね」

 

 主にユウジさんからの依頼、という用事だけど。さすがにそれは言わないでおく。ユウジさんに苦情がいっちゃいそうだし。

 

「一応、深層といっても、魔物が入ってこない階段がある部屋の隣で野宿するから」

 

『それなら階段のある部屋で野宿しろよw』

『なあんでわざわざ危険な場所で野宿するんですかねえ』

 

「あはは……」

 

 もしかしたら、安全な部屋だとダンジョンマスターが来ないかもしれないから。分からないけど、ね。ともかく、野宿は確定事項だ。

 

「姉」

 

 ミユの声。どうやら魔物が近づいてきたらしい。私はスマホをポケットにしまって、剣を構えた。

 




壁|w・)ミオは次回からです。
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