寝袋配達ダンジョンマスター   作:龍翠

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懐かしい人との会話

 

 荷物をまとめて、ミオ姉の後をついて歩く。ミオ姉が言うには、これからミオ姉が住む場所に向かうらしい。色々聞きたいことはあるだろうけどそこまで待って、とのことだった。

 でも、やっぱり気になることはたくさんある。

 

「ミオ姉。ミオ姉は本当に、私たちが知ってるミオ姉なの?」

「ん? そうですよー。二人がちっちゃい時にたくさん遊んであげたお姉ちゃんです! ふんす!」

「うん。そのバカみたいなハイテンションはミオ姉だね」

「なにおう!?」

 

 ああ、とても懐かしい。確かにミオ姉はこういう人だ。いつも楽しさばかりを追求する、ちょっと困った人。けれど、一緒にいるととても楽しい、そんな人。

 でも。

 

「ミオ姉はどうして、姿が変わってないの? 私たちよりも十歳上だったじゃん」

「死んでました!」

「またそれ?」

 

 何かをごまかそうとしてる、わけじゃないと思う。だって、説明してくれてるミオ姉本人が何よりも困ってるみたいだったから。どう説明しようか、みたいな感じで。

 

「それにダンジョンマスターって……」

「ええい! おちつけぃ!」

「あいた」

 

 ミオ姉のチョップが私の頭に突き刺さった。地味に痛い。私、これでもわりと高レベルの冒険者なんだけど。

 

「慌てなくてもちゃんと説明してあげるよ。だからちょっと待ってね」

「うん……」

 

 確かに、ちょっと焦りすぎてたかもしれない。ミオ姉には逃げるつもりもないみたいだし、少し落ち着こう。ミユも落ち着いてるし。ミオ姉にくっついてるけど。

 

「ミユちゃんミユちゃん。そろそろ歩きにくいから離れてほしいなって」

「やだ」

「やだかー。そっかー。なら仕方ないね!」

 

 いいんだそれで。思わず言いたくなった言葉は、口を塞いで黙っておいた。

 深層を歩く。ミオ姉と一緒に。こうして歩いてるだけでも驚くことがいくつもあった。

 

「あ、ゴーレムさん。おつかれー。え? いやいや、お客様! そうそう。はーい、引き続きよろでーす!」

 

 見たこともない、白銀色に輝くゴーレムに気さくに挨拶していたり。

 

「あ、この宝箱、空になってる! 補充補充っと」

 

 誰かが開けたのだろう宝箱に、亜空間から取り出した剣を一振り入れていたり。

 

「あ、ごめん、ちょっと待ってね……。もうすぐ戻るところだからちょっと待ってねー」

 

 突然立ち止まったかと思うと、何故か虚空に向かって話し始めたり。不思議なことがたくさんあった。

 そうしてミオ姉と一緒に深層の一層目を一回りして、さて、とミオ姉が手を叩いた。

 

「お仕事しゅーりょー! それじゃ、二人を我が家にご招待だ!」

「我が家って……家はもうなくなって……」

「もちろん今住んでるところだよ。そこで二人に紹介したい子がいるんだ! とってもかわいい子だから、きっと仲良くなれるよ!」

 

 そう言って、ミオ姉は私たちの手をぎゅっと掴んだ。久しぶりに触れたミオ姉の手はとても柔らかい。ちょっと気持ちいいかも。

 

「それじゃ、いくよー。てんいー」

 

 そんな気の抜けた声と同時に、一瞬だけ視界が光に覆われる。そしてその光が消えると、私たちはとても広い部屋の中にいた。野球場ぐらいの広さで、四方や天井はごつごつとした岩だ。下層までのダンジョン内部と変わらない造りになってる。

 

「ミオ姉、今のは……?」

「うん? 転移魔法だよ。すごいでしょ!」

「転移……!」

 

 転移魔法は、私たち冒険者には使えない魔法だ。例外が、十階層ごとにある魔法陣。あの魔法陣を研究していた人もいたみたいだけど、どうやっても再現はできなかった。

 それを、ミオ姉が使った。上位の冒険者ですら使えないものを。

 

「ちなみに、ここは?」

「百階層。私たちは最深層って呼んでるね。つまりは、ダンジョンの一番底」

「え……」

 

 深層はどこも異空間みたいな場所だと思ってただけに、普通の洞窟みたいなものになっていて驚いてしまった。いや、それよりも、最深層。そしてこの広さなら、もしかしなくても、

 

「ボス部屋……!?」

「おお! いいねいいね! だいせいかーい!」

 

 それを聞いて、私はすぐに剣を抜いて周囲を警戒する。ミユも杖を構えて臨戦態勢だ。ミオ姉だけがぽかんとしていたけど、すぐにあっと手を叩いて苦笑いを浮かべた。

 

「ごめんごめん。そうだよね、ボス部屋って言ったら警戒するよね。心配しなくても、ここにボスはいないよ」

「いない……? ミオ姉が倒した、とか?」

「まさか。一人はお昼寝中で、一人は起きて待ってくれてるかなー」

 

 つまり、二人組、なのかな? 今までもボスが二体いたことは何度もあったから、不思議には思わない。ただ、お昼寝というところは引っかかった。まるで幼い子供みたいな言い方をしてるなと。

 

「こっちだよー」

 

 なんて言いながら、ミオ姉がボス部屋の奥に向かう。私たちも慌ててそれを追うと、大きな扉にたどり着いた。奥、じゃなくて入り口に戻ってきたのかも。

 

「出入り口? 階段の部屋に戻るとか?」

「うにゃ。こっちが奥。ボス部屋の向こう側にご招待!」

「え……」

 

 ダンジョンの奥底にあるもの。それは、気にはなるけど、でもそれは入っていいものか……。

 そんな私たちの葛藤なんて気にすることもなく、ミオ姉は大きな扉を開け放った。それと同時に、飛び出してくる小さな人影、私たちが反応するよりも先に、その人影はミオ姉に飛びついた。

 

「ミオー! おかえりー!」

 

 そんな、とても幼い声。固まる私たちの目の前で、ミオ姉が言う。

 

「イオ、ただいま。いい子にしてた?」

「してた! だから褒めて?」

「よーしよしよし! イオは偉いなー! かわいいなー!」

「きゃー!」

 

 小さな女の子をなで回すミオ姉と、悲鳴を上げつつもとても嬉しそうな、黒髪の女の子。

 とりあえず。

 

「なんだこれ」

「意味不明」

 

 ミユと目を合わせ、私たちはそろってため息をついた。意味が分からなすぎるよ。

 




壁|w・)本日更新2回目です。

面白い、続きが読みたい、と思っていただけたのなら、お気に入りとか評価とかいただけると嬉しいです。
書く意欲に繋がりますので、是非是非お願いします。
ではでは!
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