かつて五反田監督は斉藤アクアを評してこう言った、「アクアは頭が良すぎる。もはや異常と言っていいほどに」と。
流石に異常などというふうに言われることはないものの、苺プロダクション内の職員一同やB小町の面々、最近では苺プロ外の業界内での一部でもアクアは一般的な子供とはかけ離れた存在であると認知されている。もちろんマリンとルビーも子供とは思えないと評されてはいるのだが前述の通りアクアは特に、である。
そのような事情もあり、今となってはアクア達三つ子が年齢からは考えられないような行動をとっていたとしても、苺プロの中ではさほど驚かれることはなくなってきている。例外としては新人が入社したときであろうか。苺プロに新人が採用されたときはまず案内されたオフィスの隅に設置されているキッズスペースに驚き、そこで生活をしているアクア達に紹介のついでに挨拶を交わしその時のアクア達の可愛らしさに
そのような理由で今となってはアクア達三つ子が何をしていたとしても苺プロでは日常の一部として扱われることがほとんどである。
ただし、"ほとんど"であり、例外はある。そしてその日のアクアの行動はその例外の一部であった。
後にそれを目撃した苺プロの面々はこう語る。
あれは幼児がしたとは思えないほど美しい姿勢の……土下座であったと。
…話は数分前に遡る。
朝の苺プロ。朝礼の時間に今日の予定とともにアクア達のスケジュールがミヤコから告げられる。
「今日のアクア達の予定だけど、マリンとルビーの二人にモデルの仕事が入ってて…アクアはお休みね」
マリンとルビーの二人と聞いた時点でルビーが少し寂しそうな表情を浮かべる。以前の騒動*1にて、ルビーはアクアと別々の仕事が入り1日別行動になることを壱護に了承したがそれはそれであり、一緒にいられるならそれに越したことはなかった。
しかし、直後にアクアが休みと聞いてパッと表情が明るくなる。休みならば一緒に現場に行けばいいだけだからだ。隣で一緒に聞いていたマリンはそんな妹がかわいいのかよしよしとルビーの頭を撫でている。
そんな娘たちの姿は当然目の前にいるミヤコからも見えているのだが、アクアが休みであることに喜んでいるルビーを見て何やら申し訳なさそうな微妙な表情を浮かべている。
「あー…えっとね、ルビー? 今日はちょっとアクアも連れていくのは―――いやでもアクアなら連れて行っても問題はないかしら…?」
「? お兄ちゃんが一緒だとダメなの?」
歯切れの悪いミヤコにルビーが質問をすると、ミヤコは逡巡しつつも返答する。
「んー……アクアが構わないっていうのなら一緒に行っても大丈夫―――だとは思うのだけど…」
「俺なら何も問題ないけど…」
ミヤコの言い分にアクアは問題ないと答える。アクアが休みならマリンとルビーの仕事についていき、マリンとルビーが休みならその逆でアクアの仕事に二人がついていくというのは今までもあったからである。
しかしそのアクアの言葉にミヤコは待ったをかけた。
「最後まで聞いてからにしなさい。さっきも言った通り今日のマリンとルビーの仕事は女児服のモデルね。それでまあそれはいいとして、そこのデザイナーさんがねぇ…」
「デザイナーさんが?」
「まあ人格に問題がある人ではないのよ? ただ自分がこれだって思う子を見つけると男の子でも女の子の格好をさせようとしてくるだけで」
「是非留守番でお願いします」
ミヤコの言葉を聞いたアクアの行動は素早かった。己の精神年齢よりもはるかに幼い演技などは今現在の肉体年齢を考えれば耐えられたが、流石に
土下座をしているアクアの横でマリンとルビーが呟く。
「「女の子の格好をしたアクア/お兄ちゃん……アリでは?」」
「ちょっとマリンさん? ルビーさん?」
その呟きに反応するアクア。
周囲の職員たちはそんなアクアの心情を慮ってか、言葉や態度に出しはしなかったものの皆頭の中では概ねマリンとルビーに同意していたのだが…アクアにとっては知らぬが仏である。
▽
マリンとルビーを見送った後、アクアはマリンとルビーが帰ってくるまでどう過ごしたものかと決めあぐねていた。
これまでも三つ子のうちアクアだけが事務所にいるというパターンは無いわけではなかったが、それはアクア一人とマリンとルビーの二人に別の仕事があって且つアクアが先に苺プロへ帰ってきたという場合の時だけであり、今日のように朝から長時間一人というのは初めてのことだったからだ。
一人でいるならば普段演技の勉強の一環としてしているように映画やドラマを見るなり本を読むなりすればいいと思うかもしれないが、ここで問題になるのがアクアの精神年齢であった。
知っての通りアクアは転生者であり前世込みだと生きた年月は30年を超えている。何が言いたいかというとようは気まずいのだ。周囲で苺プロの職員達が仕事をしているオフィスの中で一人娯楽に耽るというのが。
いっそ昼寝でもして過ごすかとも考え始めたアクアだがふととあること思いつく。そして勝手に実行するのはまずいかと考えオフィスで仕事中の壱護に許可をとりに行く。
「父さんちょっといい?」
「うん? どうしたアクア」
「事務所の中を見て回りたいんだけど」
「事務所を…?」
アクアの思い付きとは苺プロ内の散策であった。1歳になる前からほぼ実家の一部であるような感覚になるほどの時間を苺プロで過ごしているアクアであるが、よくよく考えてみるとキッズスペースが設置されているオフィスとたまに利用するレッスン室やお手洗いくらいで他の部屋にほとんど入ったことがないことに気付いたのだ。前述の三部屋以外入ったことがあるのは以前に『それが始まり』の台本を受け取った時の応接室くらいであった。
そう遠くないうちに事務所を引っ越すことをアクアは両親から軽く聞いてもいたので見納めも兼ねている。
アクアからお願いをされた壱護はその内容に一瞬疑問を抱くも、そういえば必要がなかったのもあり細かく案内などはしていなかったと思い直す。
「別に構いやしないが…前に言ったがもうじき引っ越すからあんまり意味ないと思うぞ?」
「引っ越すからこそ一度見ておきたいなって思ってさ」
「あぁなるほど…そういうことならいいだろう。ただし、荷物を動かしたり階段の近くに行くこと、あとエレベーターに乗るのは禁止だ。分かったか?」
「うん、分かった。ありがとう父さん」
壱護に礼を言うとアクアはオフィスから廊下へと出ていく。それを見送った壱護であったが数瞬の後に立ち上がると自身もまた廊下に出る。
アクアの後をこっそりつけるのだろうかと思える行動であったがそうではなく、壱護が向かったのはエレベーター近くの非常階段である。
非常階段まで行った壱護は普段開放されている扉を閉めると鍵をかけ、念のため開かないことを確認するとオフィスへと戻る。
オフィスに戻ると入り口から職員達が壱護の方を覗いており、ニヤニヤとからかうような笑みを浮かべていた。
「……なんだよ」
「いやぁ、社長もすっかりいいお父さんだなぁ、と」
「やかましい。ほらそんなところで突っ立てねぇで、仕事しろ仕事」
「はぁ~い」
壱護に言われ職員達は順々に仕事に戻る。それを呆れながら見つつ、壱護も席に戻り仕事を再開する。
呆れてはいたものの、"いいお父さん"と言われたからかその顔には薄く笑みが浮かんでいた。
▽
思い付きで苺プロの中を見て回っているアクアであったが、自身が想像していた以上に気分が高揚しているのを感じていた。
知っての通りアクアは前世の頃からのB小町古参ファンである。そんな彼が苺プロの社長の息子という立場でありその裏側ともいえる場所を好きに散策してもいいと許可が下りた。このような状況で興奮しない者はいないだろう。
既に入ったことのあるレッスン室や応接室も含めてアクアは順番に苺プロ内の部屋を見て回っていた。とはいえロッカールーム等は良心が咎めたのか除外してであったが。
そんなこんなでアクアが苺プロ見回りツアーを楽しんでいると、ふと廊下からドスンと何か重たい物を地面に置く音が聞こえてきた。聞こえてきた音に何だろうとアクアが耳を傾けると再びドスン。
廊下から聞こえてくるその音が気になったアクアは今見学していた部屋から廊下に出る。
音の出どころはどこだろうかとアクアは周囲を見渡と、それはすぐに見つかった。
見ると男性職員の林*2が廊下奥の部屋から段ボール箱を運び出している。その部屋はまだ見ていなかったのもあり、アクアはそこに近づいてみることにした。
近づいてみると開け放たれた扉には倉庫と書かれた札が貼られており、その周囲には数個の段ボール箱が並べて置かれていた。
アクアなそれを興味深げに眺めていると作業中の林がアクアに気付いた。
「あれ、アクア君? どうしたんだいこんなところで」
「こんにちは林さん。一人で暇だったんで苺プロの中を探検してたんです」
「あぁ…そういえば今日は珍しく君一人で留守番だったね」
アクアがいることに納得した様子の林にアクアが質問をする。
「これは何をされてるんですか?」
「うん? これかい? 君も社長から聞いてると思うけどこんど事務所を引っ越すでしょ? それでこの部屋は倉庫で今はその中で保管してる
「処分…捨てちゃうんですか?」
「まあ、そうだね。グッズそのものに不備があるとかじゃなくて大人の事情というか…引っ越すからって理由でもないと社長も処分し辛かったというか…」
歯切れの悪い物言いが気になったものの、苺プロのグッズという単語への興味がアクアの中で優先された。
「中を見てみてもいいですか?」
「気になるのかい? …まあアクア君なら大丈夫かな…うん、いいよ。ただし外に出していてまだ封をしてない箱だけでお願いね。あと倉庫の中に入るのもなし、それと散らかさないようにしてくれると助かるかな」
「分かりました。ありがとうございます」
許可が出ると早速アクアは目の前の段ボール箱の中身を確認する。処分すると言っていただけあり中身は確かに売れ残りの古いグッズや脱退したメンバーのグッズだろうかハムスターやカエル、ペンギン等*3が乱雑に詰め込まれていた。
自身にとっては宝の山にも見えるそれをアクアは上機嫌で一つ一つ丁寧に手に持ち観察しまた箱に戻すを繰り返していた。
「アクア君、ちょっといいかな?」
「なんですか、林さん?…あれ?」
アクアがグッズの山に熱中し始めて数分程度たった時、唐突に林がアクアに声をかける。
声をかけられたアクアはすぐさま頭を上げて林の方へと顔を向けるが、何かに違和感を覚えたのか周囲をキョロキョロと見まわす。
違和感の正体はすぐに分かった。倉庫で作業中のはずの林が倉庫とは逆側、オフィスがある方から声をかけてきたからだ。見てみればさっきまで開け放たれていたはずの倉庫の扉が閉まっている。
「あぁごめんね、ちょっと席を外してたんだけどもアクア君楽しそうに集中してたから声かけずに行ったんだ」
「そ、そうですか…」
年甲斐もなくはしゃいでしまっていたのを恥ずかしく感じ、アクアは頬を染める。
「それで席を外したついでに社長に聞いてきたんだけどね」
「父さんに?」
「うん。それで社長、アクア君が欲しいものがあったらいくつか持って行ってもいいってさ」
「本当ですか!?」
林の言葉に反応してアクアは思わず叫ぶ。普段アクアが周囲から受けている印象とは異なった満面の笑みを浮かべながら。
それは同性の林であっても思わず見とれてしまうほど輝いて見えて。
「――――――」
「? 林さん?」
「あ、あぁ、いや、なんでもないよ。それじゃあ僕は作業に戻るから」
「はい!」
林の態度に疑問を持ちつつもアクアは再び宝探しに戻る。いくつか持ち帰ることが許されたが故に先ほどまでよりも真剣に一つ一つを吟味していた。
楽しそうに箱の中をまさぐっているアクアを横目に林は作業に戻りつつも一人呟く。
「…さっきのアクア君の顔、僕だけが見ちゃったってばれたらめんどくさそうだなぁ…」
特に
チラリとアクアの方を確認すると、先の一瞬ほどではないが笑顔を浮かべたまま宝探しに没頭している。
「……」
数瞬考えた末に林はスマホを構え、もしもの時のために
▽
宝探しを終え林に礼を言った後、もう探索する部屋もないとオフィスに戻ったアクアは宝探しの成果を丁寧に自分の荷物の中にしまった。
その後オフィスの外に居る用事もなくなってしまったため、アクアは諦めて映画を見ることにした。その最中に女性職員の小休止に可愛がられたり、おやつを食べさせられたりしながら過ごしていると、オフィスの扉が開きそれと同時に元気な声が響く。
「「ただいまー!」」
「戻ったわ」
仕事を終え苺プロへと戻ってきたマリンたちが挨拶をすると職員たちが口々におかえり、おかえりなさいと返事をする。
挨拶を済ませたルビーはマリンと繋いでいる手をそのまま引っ張るようにオフィスの奥へと駆け出す。
「お兄ちゃーん!!」
「ルビー、マリンおかえり―――むぐ」
「私もー」
三つ子が団子になっている姿に職員達が癒されていると、マリンとルビーに遅れてミヤコがやってきて壱護に声をかける。
「ただいま」
「おうおかえり…随分遅かったがなんかトラブルでもあったか?」
ミヤコに返事をすると同時に壱護がチラリと時計を確認すると現在の時刻は16時を少し過ぎたくらいであった。
アクア達はまだ幼児であり仕事の拘束時間もそこまで長くはならないはずであるし、今日も14時過ぎくらいには戻ってくると予想していた壱護はミヤコに尋ねた。
「トラブル…ってわけではないのだけれど、今日の仕事先のデザイナーさんがマリンとルビーのことを気に入ってくれたのよ、それで拘束時間が延びる分は追加で報酬出すから他の服もきてくれないかってなってね」
「あぁなるほど…それで自分も見たかったからOKしたと」
「……そんなわけないじゃない」
「目ぇ逸らしながら言っても説得力ねぇぞ」
実際にミヤコもノリノリだったため、気まずそうに視線をそらしている。とはいえマリンとルビーも色々な服を着るのを楽しんでいたのでデザイナー、ミヤコ、マリンとルビーで全員win-win-winであり誰も損はしなかったのだが。
気まずい空気を変えたくてミヤコが少し大きめの声でアクア達に声をかける。
「ア、アクア、マリン、ルビー。今日は遅くなっちゃってもうすぐ帰る時間だから準備しておいてね?」
「「「はーい」」」
「遅くなった原因半分くらいお前だけどな」
「壱護うるさい!」
もう、と頬を薄く染めながら呟きミヤコは自分の席に座ると、今日の報告書を作成し始める。
その周りで先のやり取りを聞いていた職員達がクスクスと笑っていたのだがミヤコはそれを睨むことで黙らせた。
▽
「―――それで最後にデザイナーさんが今度はお兄ちゃんも一緒においでって」
「うん…丁重にお断りしたい」
「あはは、まあ仕方ないねー」
ミヤコに連れられ帰宅したアクア達は自宅の子供部屋にて今日あったことを話し合っていた。
「私達はこんな感じかなぁ、お兄ちゃんはどうだった?」
「どうって言っても俺は今日一日留守番だったわけだし…あ、そうだ」
「? どうしたのアクア?」
「ちょっと待ってて」
マリンとルビーの話が終わり次はアクアの番だとなったとき、アクアは急に立ち上がり部屋の隅に歩いていく。
部屋の隅に置いていた自身のリュックサックを掴んで戻ってくるアクアに疑問を浮かべるもマリンとルビーはアクアは話すのを待つことにした。
「苺プロ職員の林さんって分かる?」
「え? 林さん…?」
「えっとぉ…」
「ほら30代手前くらいの男の人で眼鏡かけてる」
「あぁ、あの人か。分かる分かる」
「私も何となくこの人かなぁ…くらいには。それでその林さんがどうしたの?」
突然アクアが挙げた人物を、マリンはかなり怪しい物のうろ覚えながら思い出す二人。しかし何故今その名前が出てきたのか分からずアクアに続きを促す。
「今日留守番してたときに偶々事務所の倉庫で林さんが何か作業をしてるのを見かけてさ、それで何してるのか聞いてみたらもうすぐ引っ越すから古いグッズを処分するために整理してるって言われたんだ。それで開いてる箱もあったからお願いして中身見せてもらったんだよね」
「え!? 何それお兄ちゃんズルい!」
アクアの話にアクアと同じB小町オタクなルビーが反応する。抜け駆けされたような気になったのかぷくっと頬を膨らませている。とはいえアクアからすれば―――ついでに隣で見ているマリンからも可愛いなという感想しかでないのだが。
「まあまあ落ち着いてくれルビー。倉庫の中に入るのは禁止されたし、見ていいって言われたのもまだ封をしてない箱だけって言われてさ、今日中しか中身を見れなさそうだったんだよ」
そうじゃなければ後日誘ったんだけどね、とアクアは続ける。兄の言葉は納得のいくものであったため、渋々とだがルビーは怒りを収める。
「それで少しの間箱の中を見てたんだけど、そしたら林さんが父さんに聞いてきてくれてさ、欲しいものがあったらいくつか持って行っていいよって」
「え、それじゃあ…」
アクアが何故リュックをもって来たのかを理解したルビーは先ほどの不機嫌さはどこへやら、パァっと笑顔が浮かんでいる。
「うん、二人にプレゼント…とは言っても貰い物そのまま渡すだけで申し訳ないけど、あと
元B小町メンバーであるマリンにB小町グッズを送るのはどうなんだと申し訳なさそうに言うアクアであったが、マリンの反応は彼が思っているような悪いものではなかった。
「んー…そうでもないよ? 単純にアクアからのプレゼントならなんだって嬉しいし。あと私って自分達のグッズとか持ってはいなかったから結構新鮮かも?」
「そう…? なら良かったかな。それじゃあマリンには、はいこれ」
マリンの言葉に安心したアクアはリュックの中からグッズを取り出しマリンに手渡す。
受け取ったものはかつてアイが付けていた兎の髪飾り、そのサイン入りレプリカだった。手の中のそれをまじましと見つめると感嘆の声を上げた。
「あぁ~! 私の兎!」
「ベタなもので申し訳ないけど…」
「そんなことないよ! うれしい! いやぁ~懐かしいなぁ―――懐かしい?」
自ら言った言葉に疑問を持ったマリンは少し考えた後に呟く。
「あぁそっか、最後にコレ付けたの活動休止前のライブだから…もう4年くらい前か」
そりゃあ懐かしいわけだ、と続けて呟き手に持った髪飾りをしばらく見つめ、それを頭に付けてみる。
「どう? かわいい? いぇい☆」
「「世界一かわいい」」
想像通りかつ欲しかった返しを聞けたマリンが満足していると、アクアは再びリュックの中に手を入れており、それを見たルビーの表情が期待で輝く。
アクアが何をくれるのだろうかとルビーは思考を巡らせる。兄は自分と姉で大きく差があるものは絶対に用意しない、となると同じく髪飾りだろうか、しかし全く同じものも用意しないだろうから仮に髪飾りでも
ルビーが期待に思いを馳せているとアクアから声をかけられる。
「ルビー、手、出して」
「うん!」
アクアの声に待ってましたと言わんばかりに両手を差し出すルビー。
上機嫌どころかキラキラとしたエフェクトが見えてきそうなルビーの様子にアクアは苦笑しながらも贈り物をそっとその手に乗せた。
軽くて硬い感触に何だろうかとルビーは手の中にあるものを確認した。
「――――――え」
瞬間ルビーの心臓が大きく跳ね、表情が固まる。
「ルビー?」
嬉しさに声を上げアクアに抱き着くというような反応を想像していたマリンは予想外の反応を見せているルビーに困惑しつつも声をかける。
しかしルビーには聞こえてないのか反応がない。そう思ったのも束の間、固まっていたルビーの表情が動く。唇はギュッと閉じられ逆に目は大きく見開かれる。手に持ったそれを決して落とさないように手を握りしめ、そしてその開いた目からポロポロと涙が溢れ出てくる。
突然泣き始めたルビーにマリンが驚いていると、ルビーが弾かれるようにアクアの胸元へと飛び込む。
ルビーが飛び込んできた衝撃でアクアの体が多少揺れるが予想していたのか倒れたりすることは無くアクアはしっかりとルビーを受け止め、その背中をポンポンと優しくたたいている。
「…ぅ、ぐ…ひっぐ―――ぅぁ…」
アクアを抱きしめたまま咽び泣くルビー。その理由が分からないマリンはアクアに尋ねる。
「アクア、ルビーに何あげたの?」
「ん? うーん…しいて言うなら"思い出"、かな」
「"思い出"…あ、さりなちゃんの頃の?」
「後で詳しく教えてあげるよ」
「―――約束だよ?」
「うん、約束」
今はそれで納得しておくことにしたマリンはそれ以上の追求はせず、アクアがルビーの背中をたたいているのに合わせてルビーの頭を撫でる。
大粒の涙を流しながらアクアを抱きしめているルビー、その握りしめられた手の中にはアクアの言うところの"思い出"が燦燦と輝いている。
――――――"アイ無限恒久永遠推し!!!"
斉藤アクア:プレゼントで妹を泣かせた長男。女装の危機は回避したがこの後定期的に魔の手がおしよせてくる…かもしれない。推しの子二次で女装アクアのマリンちゃんネタは鉄板だけどうちには既にマリンちゃんがいるので実際に女装したら名前はどうなるのだろう。あーちゃんとか?
斉藤マリン:この後アクアと泣き止んだルビーに思い出話を聞く。聞いたら想像してた以上に重い話でびっくり。そりゃあ泣くよと納得した。
斉藤ルビー:予想外に感情を揺さぶられるプレゼントを貰って泣いちゃった妹。うちのルビー定期的にアクアに泣かされてんな。貰ったキーホルダーは大事に大事にしまい、今度"も"一生の宝物にすると誓う。
元々今回の話はもうちょっと後にやる予定の話でした(アクア達小学校高学年~中学くらいで)。ただ事務所を引っ越すなら売れ残りの古いグッズとかもう売れないアイ含む脱退メンバーのグッズとか処分するよなぁと思い前倒しになりました。
ルビーに無限恒久永遠推しキーホルダーをプレゼントするアクア。推しの子2次を書くなら絶対書きたいと思ってた話で無事かけて良かったです。とはいえまだまだ続きますので今後ともよろしくお願いします。
評価、感想、お気に入り、ここすき、いつもありがとうございます。前回日刊ランキングで、二次14位、総合20位に入ってました。思わず3度見くらいしました本当にありがとうございます。
以下ちょっとした補足とか。
【今作中でのB小町について】
今回ちょっと触れましたが今作においてのB小町の変遷についてざっくりとですが補足しときます。
デビュー時4人(創設メンバー:アイ、ニノ、高峯、渡辺)
↓
メンバーは増えたり減ったりしてアイ妊娠時点で7人(アイ、ニノ、高峯、めいめい、ありぴゃん、きゅんぱん、???)
※???はカエルの髪飾りでツインテロールの子、現状何も情報がない。ナニモン何だこの子…
―――ここまで公式―――
↓
アイの死後高峯、ニノ、めいめい以外の3人が脱退
こんな感じを想定してます。以上補足でした。
あと考察とか見ると渡辺=めいめいってよく見るんですけどこれどっかに根拠ありましたっけ?
『15年の嘘』登場の4人=創設メンバーなら消去法でそうなるのはわかるんですけど、映画なんで登場の許可が出たメンバーとも取れそうですし、132話のルビーの台詞の「初期メン組はあんまし…めいめいとかきゅんぱんならテンション爆上げ」ってとこからめいめいは初期メンではないように見えるんですよね。切実にキャラブックとか設定資料集出してほしいと思う今日この頃。