星の三つ子   作:大空

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疫病神ちゃんどうすっかなーと思ってたんですが最新話見る限りそこまで頭悩ませる必要ないように思えてきました。


名前と母親

 アイの葬儀は身内だけで行うことにし、壱護とミヤコ、苺プロの職員、そしてアイ以外のB小町のメンバーだけが参加した小さなものになった。ファン向けの通知もしなければならないだろうがそれはもう少し時間を置いてからになるだろう。

 そんな葬儀が終わりその日の夜。自宅にて壱護は頭を悩ませていた。目の前には3枚の紙が置かれており、そこには『出生届』と書かれていた。

 悩みというのはこの出生届に記入する三つ子の名前である。どうしたものかと壱護が思案していると、ミヤコが話しかけてきた。

 

「アイさんからは何も聞いてなかったの?」

「いや、一応2人分は聞いてはいるんだがなぁ…3人目は出生届出すまでに考えればいいって言っちまってな」

「それで3人目をどうするかで悩んでいる、と」

「まあ、それもある―――が、それだけなら並べて違和感ない名前を考えれば済む話だったんだが…」

「思わせぶりな言い方ねぇ。とりあえず聞いてる分の名前を教えて頂戴」

「ん?あぁ…そうだな、まず一つ目。ルビー」

 

 漢字で書くと当て字で瑠美衣なのだがこれは伝えないことにした。出生届は片仮名で出しても問題は無いのだから。

 

「ルビー…ねぇ。大分変わってはいるけど、アイさんの子なら名前負けすることもないかしら」

「看護師に聞いたんだが末っ子の女の子が綺麗な赤色の目をしてるらしい。付けるならその子だな」

「なるほど。それでもう一つは?」

「アクアマリン」

「はい?」

「アクアマリン」

 

 一度聞いて呆然としているミヤコに壱護が眉間を抑えながらもう一度告げる。

 

「―――アイさんってちょっと天才肌というか一般とは少しずれてる所もあったけどこれは…」

「アイツはアイドルとしては天才的なものを持っていたけどな…ネーミングセンスは無かったらしい」

 

 きっと宝石ってキラキラしててかわいいよね。とか思いながら考えたんだろうよ。と続けて壱護は言った。

 なおアイの私物を病室から持ち帰る際に壱護はアイの残したメモを見つけている。おそらく子の名前を考えていたのだろう、沢山の単語が並べられて、これじゃないと感じたのか大半が二重線で消されていた。

 最もその消されていた名前候補も大矢紋渡(ダイヤモンド)だの都波阿須(トパーズ)だの愛久愛海(アクアマリン)に負けず劣らずの有様であったので壱護はこれをミヤコに伝えるつもりはなかった。

 

「一応長男の目が青色らしいから合ってるっちゃ合ってるのがまたなぁ…」

「いやあってるかもしれないけどアクアマリンは無いわよ、芸名じゃないんだから。というかあなたは反対しなかったの?」

「したに決まってんだろ。それでもアイツはかわいいじゃんの一点張りで聞く耳もっちゃくれなかったしそもそもその時は俺の子供ってわけでもないから強く言えなかったしな」

「その光景が簡単に想像できるわね…」

 

 二人してうーん、と悩む。アイの残した子供たちには母親(アイ)の残した名前を付けてあげたい。けれども流石にこれはと思考が堂々巡りしていた。

 しばらくそうしていた二人だが、ミヤコが思いついたと一つの案を口にする。

 

「アクアマリンを2つに分けましょう」

「2つってーとアクアとマリンにか?」

「そう、これなら多少変わった名前で済むでしょうしアイさんの考えた名前も無碍にはしてないでしょ」

「あー…確かにこれ以上悩んでても仕方ないだろうしそれでいくか」

 

 こうして三つ子の名前は長男アクア、長女マリン、次女ルビーとなった。

 

 

 

 余談だが後年この話をアクアが聞いた際、それはもう両親に感謝したとか。

 

 

 

 

 

 

 三つ子の名前が決まってから7ヶ月ほどたったある日、ついに三つ子が退院し斉藤家へとやってくる日がやってきた。

 

 最初は壱護が一人で病院まで迎えに行くつもりであったが三つ子を一人で宮崎から東京まで連れ帰るのは無理がある上、その存在そのものがトップシークレット。壱護とミヤコ以外に知る者がいない以上二人で迎えに行くしかなかった。

 そのためここ数週間は地獄のような忙しさであった。夫婦揃って宮崎まで行く以上最低でも丸1日は休みにする必要があるが、この二人は会社の社長と副社長、それも人員の豊富な大手ではなくまだまだこれからな弱小事務所のである。万年人手不足であり、それはB小町のプロデュースを社長であるはずの壱護が自ら行っていたことからも窺い知れるだろう。

 そんな中での1日の休みを得るために斉藤夫妻は仕事を詰めに詰める羽目になってしまった。不幸中の幸いであったのは事情を知らない職員たちが協力してくれたことだろう。自分たち部下を差し置いて仕事に励む夫妻に疑問を持ち理由を尋ねてきたのだ。

 

「社長すみません、この最近やけに根を詰めて仕事してますけどどうなさったんですか?」

「うん?あぁちょっと個人的な要件でな、この日に俺とミヤコの両方が休む必要がある。理由はちょっと今は話せないが」

「社長と副社長が揃ってですか?旅行とか遊びにって感じじゃなさそうですけど」

「そんな理由ならまだよかったんだけどなぁ」

「それだけ大切な用事だ、と…そういうことなら協力しますよ」

「いいのか?」

「さすがに社長達の仕事は手伝えないですけどね。その日1日なんとか回せるように周知したり職員全員で調節したりくらいなら」

「まじで助かる。その方向で進めてくれるか?」

「分かりました。それでもし良かったらなんですけどぉ~…」

「うん?あぁそうだな、なら今度俺の驕りで全員で呑み……俺今喪中だったわ。しゃあないな今月の給料で手当出してやる」

「まじですか!?ありがとうございます!それじゃあ皆に伝えてきますね!」

 

 テンション高めに去っていく職員を見ながら、現金な奴、と苦笑する壱護だったが渡りに船であったのは言うまでもなかった。

 

 

 

 そんなこんなでなんとか休みを確保した斉藤夫妻は車飛行機レンタカーと乗り継いで東京からはるばる宮崎県高千穂の総合病院へ訪れていた。

 到着早々受付をすませ三つ子が入院している病室へと向かう。途中普段よりも足早に歩いているミヤコに対し、壱護がそんなに楽しみにしてたのか?等と揶揄う場面があったがそれ以外は特に何事もなく到着した。

 ミヤコは三つ子とは初対面である。それゆえに少し緊張していたのだろうか、いざ入室しようというタイミングで足が止まってしまった。

 

「さっきは楽し気に早足になってたと思ったら今度は緊張してるのか?」

「うるさいわね。しょうがないでしょ、産まれてすぐに顔見てるあなたと違って私は初対面なんだから」

「気持ちはわからんでもないけどな。今日中に東京まで帰らないといけねぇんだ、悪いがいつまでもそうしてられると困る」

 

 再び揶揄うように言う壱護に対して、ミヤコはわかってるわよと少し強めに言い返しながら意を決して入室する。

 入室すると担当の看護師に三つ子の元へと案内される。今日初めて会う子供たちはミヤコが想像していた以上のかわいらしさだった。

 流石はアイさんの子ねぇ、などとミヤコが考えていると壱護から自分は退院の手続きをしてくるから三つ子を見ていてくれと頼まれた。それを了承し去っていく壱護を見送るとミヤコは再び視線を三つ子へと戻す。いくらでも見てられそうねなどと壱護に知られたら早速親バカ発症してるじゃないかと揶揄われそうなことを考えながら揃って眠っている三つ子を眺める。

 数分ほどだろうかミヤコがそうしていると三つ子のうちの一人の目が開かれており、特徴的な赤い目で初めて見るミヤコのことをじっと見つめていることに気が付いた。

 その視線に誘われるようにゆっくりとその子が寝かされているベッドに近づき目線を合わせるように屈む。その際にネームプレートを確認すると『斉藤ルビー』の文字が。壱護から看護師が言っていたと又聞きしていただけであったが確かにルビーの名に恥じない綺麗な赤色であった。

 ルビーのそばに寄ったミヤコはルビーの頭を決して傷つけないようやさしく撫でながら言う。

 

「初めまして、ルビー。私はミヤコ、あなたの―――」

 

 お母さんよ。三つ子への最初の挨拶ではそう言おうと、今日この病院に来る前から決めていた。決めていたのだが、いざその時になると言葉が詰まる。自分はこの子達とは血の繋がりは無い、本当の母親はアイさんなのに―――そんな想いが邪魔をしていた。

 ミヤコが言葉を途切れさせていると、それとは逆にルビーの口が開かれる。もしや泣かせてしまったかとミヤコは慌てたがそれは杞憂だった。

 

 

 

「あう……まぁま?」

 

 

 

 その瞬間、ミヤコの体に雷が落ち胸を何かに撃ち抜かれ、先の懸念は粉々に砕け散った。そしてミヤコの胸中があたたかなもので満たされていく。

 

 

「―――えぇそうよ。私があなたのお母さん」

 

 

 そういいながら自然とほほ笑んでいた彼女の顔は誰もが目を奪われるであろう美しさだった。

 

 

 

「う、うぅ…ぐすっ……うえぇ…」

「えっ―――!?ちょ、ちょっとなんで!?えっと抱き方は……よしよし、ルビーはいい子でちゅねー」

 

 突然ルビーの目に涙があふれぐずりだす。それに慌てたミヤコは事前に調べた抱え方でルビーを抱きかかえ、必死にあやす。

 抱かれたのが良かったのかミヤコのあやし方が良かったのかは分からないがルビーは泣き止んだと思えばすぐにまた眠ってしまった。

 ミヤコは赤ん坊ってわからないわと思いつつも自分が抱き上げたおかげで泣き止んでくれたのを見て喜びの感情が沸き上がっていた。

 眠るルビーを起こさないようにやさしくベッドに寝かせると今度はアクアとマリンがこちらを見ていることに気づいた。先のルビーの泣き声で起きてしまったのだろうか、だとしたら悪いことをしてしまったかもしれないなと考えながら、先ほどと同じように二人にも挨拶をし、今度は詰まらずに母だと言えた。

 

 挨拶を済ませるとマリンがミヤコに向かって手を伸ばす。それを見てミヤコが「抱っこして欲しいの?」と尋ねると「あう」と肯定ととれる返事が返ってきた。それならばと先のルビーと同じようにに抱きかかえてやると、ご満悦なのか嬉しそうに笑いながらミヤコに抱き着いてきた。

 そんなマリンのあざといともとれそうな仕草に打ちのめされながらもミヤコはアクアにも注視する。するとアクアはミヤコの顔をじっと見つめていた。「アクアも抱っこ?」と尋ねてみるとアクアは無言で首を横に振った。まだ0歳だというのにこちらの言葉を完全に理解している様子のアクアに驚くもすぐに聡い子だと頭を撫でる。そうしてやると気持ちよさそうにアクアは目を閉じた。相応の赤ん坊らしい反応に愛おしさがこみ上げてくる。

 

 マリンを抱きかかえながらアクアの頭を撫で続け、すやすやと眠るルビーを眺める。

 

 血の繋がりこそないもののそこには確かな『母』と『子』の幸せが満ちていた。

 

 

 

 

 

 

☆ ★ ☆ ★

 

 

 

 

 

 

 死んだと思ったら赤ん坊になっていたと気が付いたのは意識が覚醒してからしばらくしてだった。

 

 気づいて最初にこみ上げてきたのは嬉しさだった。今度はきっと普通に過ごせる、今世の両親とともに幸せになれると。せんせに会いにも行けると。

 

 でもすぐにそれは思い違いだったのではないかと思うようになった。

 

 赤ん坊の体は寝てばかりなので正確にどのくらいの時間が経ったのかはわからない。でもそれなりに経っているだろうなというのはわかるくらいにはなっても両親が会いに来てくれない。

 

 ひょっとしたら寝てるときに来てくれてるのかと淡い期待を抱いたが看護師さんたちの「三つ子ちゃんのご両親会いに来てくれませんねー」という会話が聞こえてしまった。

 

 ああ、()()なのだろうか。だから今世の両親も私に会いにきてくれないのだろうかと悲しくなった。

 

 そういえば今世の私は三つ子らしい。でも実感はまるでない。ずっとケースのようなものに入れられているから横にいるはずの兄弟か姉妹を見ることが出来ないのだから。

 

 ある日看護師さんが私を末っ子ちゃんと呼んでいるのを聞いた。どうやら残り二人はお兄ちゃんかお姉ちゃんらしい。

 

 

 

 しばらくすると私はケースのようなものの中から出されて普通の病室へと移された。ずっとあの中にいないといけないのではと不安だったが違って少し安心した。

 

 でも安心できたのはわずかな間だけだった。両親はまだ会いに来てくれない。

 

 両親には会えないままだが代わりにご飯の時間に看護師さんに抱えられた時に残り二人の顔を見れたし名前も知れた。

 

 アクアとマリン、ついでに私がルビー。すごい名前だ。

 

 

 

 普通の病室に移されてから少し経ったある日、私の不安は一気に解消されることになった。

 

 看護師さんがもうすぐ私たちが退院すると話しているのが聞こえたのだ。

 

 退院するとなれば両親が迎えに来てくれる。お母さんとお父さんに会える―――!

 

 どんな人だろうかと考えるだけでわくわくする。あぁ楽しみで眠れない。

 

 でも好都合だ、絶対に起きたまま迎えに来た両親を出迎えるんだ―――ぐぅ…

 

 

 

 目を覚ますと知らない女の人が私たちを見ていた。すごく綺麗な人だ

 

 この人がお母さんなんだろうか?起きて出迎えたかったのにできなかった。すぐ眠くなってしまう赤ちゃんボディが憎い。

 

 じっと見つめていたら女の人が私に寄ってきて頭を撫でながら言ってきた。

 

「初めまして、ルビー。私はミヤコ、あなたの―――」

 

 あなたの、何?お母さんじゃないの?なかなか話してくれないミヤコさんにじれったくなってしまった私は思わず「まぁま?」と赤ん坊でも言える精いっぱいの方法で尋ねてしまった。

 

 そうしたらミヤコさんはすこしびっくりした顔をしたあとすごく綺麗に微笑んで「お母さんよ」と言ってくれた。

 

 本当に?お母さん?迎えに来てくれたの?あぁ、お母さん、お母さん―――!

 

 お母さんが迎えに来てくれた。ただそれだけのことがあまりにもうれしくて、うれしいはずなのに何故か涙が溢れてとまらなくて。

 

 突然泣き出した私にお母さんは大慌て。あぁ涙が止められない、お母さんを困らせる悪い子になってしまうのに止められない。いい子にしたいのに止められない。

 

 そんな悪い子な私をお母さんは抱っこしてあやしてくれた。ルビーはいいこって言いながら。私いい子じゃないよ悪い子だよ?

 

 お母さんは私の頭をなでながらあやしてくれる。とても暖かい、幸せだ。そう思っていたらあんなに溢れていた涙が止まっていた。

 

 涙が止まると今度は眠たくなってきた。待って、まだ寝たくない。この幸せに浸っていたい。

 

 

 ねむい…ねたくない。

 

 

 

 あぁ―――あたたかい。




斉藤アクア:三つ子の一番上で長男。アクアマリンのアクアの方。今作ではアクアが本名。父さん母さんありがとう。ミヤコを凝視してたのは壱護に嫁さんがいるのは知ってたけどこんな美人とは思ってなくて吃驚したから。

斉藤マリン:三つ子の真ん中で長女。アクアマリンのマリンの方。名前に関しては二人分しか伝えてなかったし仕方ない。むしろ自分の考えた名前だけで三人分つけてくれたのはちょっとうれしい。ミヤコに抱き着いたのは約束守ってくれたのがうれしかったから。

斉藤ルビー:三つ子の末っ子で次女。初手でミヤコのハートをぶち抜いた罪なベビー。入院したまま両親が会いに来ないという状況に前世を重ねてメンタルがヤバかった。でも全部ミヤえもんが癒してくれた。やっぱり聖母じゃないか!

斉藤ミヤコ:三つ子のかわいさにコテンパンにされた人。引き取るって決断してくれて壱護ありがとうと心の中で滅茶苦茶感謝してる。口には出さないけど。





 というわけで第2話、三つ子の名前、ミヤえもんママになる、の2本でお送りいたしました。

 おかしいなこの話で東京まで帰る予定だったのにまだ三つ子が宮崎にいる。あれ、親が来ないまま長期入院とかルビーやばくね?とか思ってしまったのがすべての元凶。
 三つ子の名前に関しては捻りがないですがこんな感じで。
 次回はたぶんアクア回です。




 前回初めて小説を投稿したわけなんですがたくさんの人に見てもらえた上に評価感想もいただけて大変うれしく思っています。感想への返信は嬉しさの余りネタバレぶっこんでしまいそうなので控えてますが全て目を通させていただいてます。むしろ何回も読み返してニヤニヤしてます。
 次回投稿日は未定ですができる限り頑張ります。書きたい内容は大体決まってますしまだまだあるので。
 それでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。
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