星の三つ子   作:大空

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最新話読んで最後のページでうおーってなったりあかねwwwってなったりしたんですけど2次創作書いてる身としてはリョースケ君のフルネーム公開されたのが一番の衝撃でした。


アクアとマリン

 斉藤家のリビングには隅に小さな机が設置されている。その上には一人の少女の写真が立てられていた。

 写真の少女は星野アイ、永劫に変わることのない微笑みを浮かべた彼女の横には小さな箱のようなものが置かれている。

 

 

 

 

 日付が変わろうかという時刻の斉藤家のリビング、そこに一つの小さな影があった。影の正体は斉藤アクア、ほんの数時間前に両親の斉藤壱護と斉藤ミヤコに連れられて産まれてから7カ月ほど過ごした病院からこの家へとやってきたばかりの赤ん坊である。

 つい先ほど寝室にて布団に寝かされていたアクアはふと目を覚ますと、寝室の引き戸としばしの格闘を経てリビングへとやってきていた。

 

 床に座っている彼の表情は幼児がするには似つかわしくない後悔や絶望といった暗い感情が浮かんでおり、目からは涙がとめどなく溢れる。

 

 深夜のリビング、一人泣き続けるアクアの視線は部屋の隅の机へと、正確にはその上にあるアイの写真と隣の小さな箱―――()()()()()へと向けられていた。

 

「――――――アイ」

 

 アクアは現在産まれてから7ヶ月ほど、一般にまだはっきりとした言葉を発することはありえない。だというのにはっきりとアクアの口から写真の少女の名が呟かれていた。

 

 

 

 

 

 

 斉藤アクアには前世の記憶がある。前世の名前は雨宮吾郎、宮崎県高千穂のとある総合病院で産科医をしていた男である。

 吾郎は担当患者であるアイドル『星野アイ』のストーカーの手によって、彼女の出産当日に殺害された。薄れていく意識が完全にゼロになった瞬間、彼は赤ん坊へと生まれ変わっていた。

 

 吾郎が生まれ変わり己の魂を宿した赤ん坊が自身の最後の患者であった星野アイの子であると気付いたのは、生まれ変わって意識が覚醒してしばらくして少しずつ目が見えるようになってきたころだった。

 まず自身を覆う透明なケースが保育器であり、そのそばにベッドサイドモニターが置いてあることから自分がNICUに入院しているんだと察し、さらに担当の看護師達の顔に見覚えがあったことから今いるこの場所が自らの勤めていた総合病院だと把握できた。

 さらに決定的だったのは看護師がアクアのことを三つ子ちゃんと呼んだことだった。

 前世で勤めていた宮崎の病院で産まれた三つ子、ともなれば自分が生まれ変わった存在が担当患者であった推し(アイ)の子であると確信するには十分であった。

 自身が起きているときにアイに会えなかったのは残念だったが、ただでさえ新生児は一日の大半は寝て過ごしている上に、最後に診察をした時を思い出せば自分の体は体重が1500gを下回る*1ほど小さいはずだ、普通の赤ん坊以上に眠り続けなければ体がもたない。

 その後もアイに会えることは無かったがそれも仕方ないだろう。彼女はアイドルなのだ、この病院にいることそのものがリスクであると理解していた。おそらくはもう退院していて東京へと帰っているのだろう、しばらく会えないのは残念だがそれも少しの辛抱だ――――とこの時アクアは考えていた。

 

 

 

 待ちに待った退院の日、気が付けば病室のベッドの横に見知らぬ女性が立っていたのは驚いたが"斉藤"ミヤコと自己紹介されたことで合点がいった。

 アイが宮崎まで迎えに来るのはリスクが高い。だからアイの里親である斉藤夫妻が来たのだとアクアは自分を納得させた。

 

 

 宮崎から東京への移動は赤ん坊には厳しいものであったのか、時折起きてはいたがほとんどの時間は眠っていた。

 壱護の着いたぞの声とともに抱き上げられたことでアクアは目を覚ます。

 

 ああようやくだ、ようやく母親(アイ)に会える。その思いで気持ちを高ぶらせているアクアを抱えながら自宅前まで移動した壱護が鍵を開け扉を開く。

 壱護がアクアを抱えているためか少し手こずりながら鍵を開けているのを眺めながらアクアは疑問に()()()()()()()

 

 自分を抱えながら鍵を開けるなんて手間を掛けなくても中からアイに開けてもらえばいいではないか、と。

 アクアが吾郎としてアイと接した時間は決して長くはない。だがそれでも彼女の人となりはある程度把握している。三つ子の迎えには自分も行くといいだして社長から説教をされ文句を言いながらも待ってるから早く帰ってきてと言う。間違いなくそういう子であると確信していた。だからこのタイミングで彼女が出てこないことに疑問を抱く。

 

 壱護が玄関の扉を開き中に入っていく。家の中の明かりは消されており、たった今帰宅した自分達以外に人のいる気配は無かった。

 嫌な予感がするとともにアクアは頭の中で必死にアイが不在である理由を考える。

 

―――どこかに遊びに行っている?

―――流石に自分の子供を迎える日に遅くまで遊びにというような子とは思えないのでなし。

 

―――仕事からまだ帰ってきていないのだろうか?

―――ありえなくはないがアイの性格を考えると今日はオフか早く終わる仕事だけにするようにしそうだ。

 

 

 アクアは思考を続けているが今は壱護に抱えられた状態だ。壱護が進めばアクアも進んでしまう。

 リビングへと入った壱護が明かりをつける。明るくなった部屋をアクアはアイを探すように見渡す。

 

 そしてアクアはアイを見つけた。部屋の隅の小さな机の上に。

 

 机の上にあるものが何かを理解してしまった瞬間、アクアは真実を知ってしまった。

 その真実に耐えきれなかったアクアは気を失う。

 

 斉藤夫妻がそれをまた眠ってしまったと勘違いしていたのは不幸中の幸いだろうか。

 

 

 

 

 

 

 深夜の斉藤家のリビング。そこで一人アクアは泣き続けていた。

 自分が死ななければアイが死ぬことは無かったのではないか。そんな答えの出るはずのない問が罪悪感となって膨れ上がっていく。そして0歳児の体には収まりきらないそれが涙に、そして今やどこにも存在しない少女への贖罪の言葉となって溢れ出す。

 

「アイ…」

 

 アクアは返す相手もいないまま呟き続ける。

 

「ごめん、ごめんなぁ…」

 

 一人孤独に。

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、どうして謝るの?」

「―――え?」

 

 返す相手はいない―――はずだった。

 

 

 

 

 

 

 一人でいると思っていたところに突然背後から声を掛けられたアクアが最初に思ったことは"まずい"だった。

 アクアは現在産まれて7ヶ月ほどしか経っていない0歳児。本来話すことなどまだできない自分が言葉を放っていたのを聞かれてしまった。必死にどう言い訳をするか、いっそのこととぼけるかと思考を巡らせていたアクアはあきらかにミヤコとは異なる女の子の声で呼びかけられたことに気付かないまま振り返る。

 

「こんばんわ!」

「うぇ?え、えっと…こんばんわ」

 

 振り返るとそこには星を宿した藍色の瞳の少女が、アクアとほぼ変わらない赤ん坊がそこにいた。

 

「えっと…マリン、だよね?」

「そうだよ!私マリン!アクアの妹でルビーのお姉ちゃん!」

 

 状況の整理が出来ていないままかろうじてアクアが尋ねると赤ん坊――マリンが元気にそうだと返す。

 

「ちなみに何時から?」

「えっとねぇ…アクアが寝室の引き戸相手に頑張ってたところから。すぐに声かけようかなぁとも思ったんだけどね、ミヤコさん起こしちゃうとまずいかなっていうのと必死に頑張ってるうちの子がきゃわ~って見てた!」

「つまりは最初っからってことじゃ――――――うちの子?」

 

 自分が泣いているところを最初から見られていたことに若干の恥ずかしさを覚えながらも言い返そうとした時アクアははて、と疑問を持つ。今この子は変なことを言わなかったか、と。

 

 "うちの子きゃわ~"。確かにマリンはそう言った。必死にドアを開けようと格闘している赤ん坊(自分)をかわいいと思うのは、少し恥ずかしいがわかる。だがそれにしても"うちの子"はおかしいだろう―――と。

 マリンのうちの子発言について考えていると、アクアは自身が転生していること、そして目の前の彼女も自分と同じように話していることからそうなのだろうという点から彼女の前世が誰であるのかにもしやとあたりをつける。

 だがそれを受け入れるのはためらわれた。自分は患者の出産日に死んでしまうような酷い医者なのに、そんな自分にとって都合のいい奇跡があっていいものか。そう思いつつもアクアは縋るように問いかける。

 

 

 

「もしかして君は…アイ、なのか?」

 

 アクアからの問に今度はマリンが驚くことになった。何故分かったのだろう?という疑問が表情に出そうになったが前世で培った『嘘』でとっさに蓋をする。

 

「おぉ…よくわかったね。さっすが私!赤ん坊になっても溢れ出るオーラは隠せな―――?」

 

 とっさにアイドル風の自己紹介を始めたマリンだがそれを最後まで言うことはできなかった。

 マリンは自己紹介を言い終わる前にアクアに抱きしめられていたからだ。

 

「うん?ひょっとして前世はアイ()のファンだった?アイドルはおさわり厳禁だよ~。まあ今の私は元アイドルみたいなものだし兄妹だからいいけどね」

「そうだけどっ…!そうじゃなくって―――俺、君と約束したのに…」

「約束?」

「君に…っ、安全に元気な子供を産ませるって…!」

 

 思いもよらぬアクアの言葉にマリンは再び驚愕する。アクアの口にした約束が握手会などでファンとの間でした軽いものではなく自身の記憶にも印象深く残っていた言葉であったからだ。

 

「ひょっとして…センセ?」

「…ッ!うん…!うん…ッ!」

「そっか…それで謝ってたんだね」

「うん…ごめん、アイ……ごめんなぁ」

 

 出産当日に何故吾郎が来てくれなかったのか今更ながらマリン(アイ)は知った。そしてそのことをアクア(吾郎)が酷く後悔していることも。

 自分を抱きしめながら謝り続けるアクアにどうしたらいいのかわからなくなっていたマリンだが、意を決してアクアを抱きしめ返して告げる。

 

「センセが謝ることないよ」

「アイ…でもっ」

「だってセンセ最初に言ってくれたじゃん。私の年齢で三つ子を産むってなると最悪もありえるって、社長もそれ聞いて猛反対してたけどそれも押し切って産むって決めたのは私なんだから」

「……」

「それにセンセすごく親身に私のこと気にかけてくれてたでしょ?あれ結構うれしかったんだよ。だから謝らないで」

「―――いい、のかな?」

「いーのいーの。さっきも言ったけど産むって決めたのは私。その結果死んじゃったんだから、誰が悪いって話なら私だよ」

 

 マリンの言葉にアクアは"そっか″とつぶやくとしばし無言のままマリンと抱きしめあっていたが、ふと我に返りマリンから離れてそっぽを向いてしまった。

 

「あれ?どうしたの急に離れて」

「あ~いやその…ふと一回り以上年下の子に慰められてるという現実を直視してしまってですね…」

「えー!なにそれ!たしかに前世はセンセかもしれないけど今はアクアなんだから気にしないでいいじゃん!ほら、ママに甘えて!」

 

 ばっちこいと両手を広げてアクアを受け入れる体勢をとるマリン。そんな彼女の姿にアクアは思わず吹き出してしまう。

 

「むぅ、なんで笑うのさ」

「あぁごめんごめん。0歳児がママだよーって言ってるのが違和感ありすぎてつい」

「……言われてみれば確かに!」

 

 そんなやりとりをしながら二人は笑いあい、これまで話すに話せなかった鬱憤を晴らすように他愛のない会話を続けていた。

 

 そうして数分ほど経ったときマリンがアクアにふと思ったことを尋ねる。

 

「あ、そういえばなんだけどさアクア」

「どうした?」

「いやね、私とアクアが()()だったわけだけど。ルビーもそうなのかな?」

「あー、三つ子のうち二人がこうで一人だけ普通ってほうが不自然…な気はするけど」

「だよねだよね!ちょっとルビー起きてないか確認して聞いてみよ――――――うん?」

 

 話題になったのは現在この場にいない残り一人の妹が自分たちと同じ転生者なのかということだった。

 マリンの疑問にアクアが同じである可能性は高そうだと返したので確認をしようと言い出した時、アクアとマリンがいるリビングと寝室を繋ぐ廊下からべちんと何かが倒れたような音が聞こえた。

 それを聞いたアクアとマリンは互いに顔を向けあった後に音のした廊下の様子を見に行く。

 するとそこにいたのは―――

 

「「ルビー?」」

 

 悪戯が見つかってしまった時の子供のような雰囲気の末っ子であった。

 

 

 

 

 

 

 夜はもう少しだけ続く。

*1
新生児の平均体重は約3000gほど




斉藤アクア:メンタルズタボロになったと思ったら救済RTAされた人。遺影と骨壺を見るまでアイが死んでるとは思ってなかった。

斉藤マリン:兄のメンタル救済RTAした人。遺影と骨壺に関しては特に思うことはなかった。しいて言うなら斎藤夫妻にちょっと申し訳ないなぁくらい。

斉藤ルビー:こっそり覗いてたら最後に見つかっちゃった人。アイの写真には反応したけど横の箱はスルー。ずっと入院した享年12歳の子が骨壺とか知ってるわけないよね。

斉藤ミヤコ:1日で東京宮崎間の往復+三つ子の世話からの疲れで爆睡中。三つ子脱走してますよ。

斉藤壱護:疲れはあるけど三つ子を家に連れ帰ったあとはミヤコに任せて明日のために苺プロで仕事中。




 第3話アクアのメンタル救済RTA回でした。
 前世バレ関係はもうちょっと引っ張る案もあったのですが即バレの方向で、じゃないとアクアのメンタル壊れる。
 あと作者が暗い展開とか苦手な方ってのもあります。読むのはいいんだけど自分で描くとなるとダメだった。

 次回ルビー回再び。早くかなとかあかねとか出したいのになかなか時間が進まない
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