星の三つ子   作:大空

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 感想にて生後4ヶ月の赤ん坊はハイハイできないというものをいただきまして、赤ん坊の発達について調べたら確かにその通りでした。浅い知識で書いてるのが露呈しておりお恥ずかしい限りでございます。
 雑な修正にはなりますが前話までにおきまして三つ子の入院期間を7カ月に変更しました。入院期間伸ばしてごめんよルビーちゃん。
 これでも若干早い気がしますがそこは転生も加味していただければと。
 以上、修正のご報告とお詫びでした。


幼少期
監督


 アクア達三つ子が斉藤家に引き取られてから1年と数カ月ほど経ち、2歳となってからしばらくしたある日、三つ子はB小町のメンバーである高峯とともに母親のミヤコが運転するワンボックスカーに乗っていた。

 普段は父親の壱護かミヤコのどちらかが苺プロに残り三つ子の世話をしながら仕事をしていたのだが、最近は壱護の頑張りもあってB小町が徐々に売れてきており、この日はメンバーそれぞれが別々の仕事に赴くことになってしまった。そのため斉藤夫妻両名ともに外に出なければならず、やむを得ずミヤコが三つ子を連れて行くこととなった。

 車を運転しながらミヤコが高峯に話しかける。

 

「ごめんなさいね、高峯さん。せっかくの初ドラマ出演なのにこの子達も同行することになっちゃって」

「いえいえ大丈夫ですよ。三つ子ちゃん達いつもおとなしいですし」

 

 ミヤコと高峯が会話していると後部座席のマリンが口をはさむ。

 

「ねえねえお母さん、今日はどこに行くの?」

「あれ、ミヤコさんマリンちゃん達にどこ行くか言ってなかったんですか?」

「あなたのお仕事について行くことになった、とは説明したけど具体的には言ってなかったわね。今日は高峯さんが出演することになったドラマの撮影現場に行きます」

「ドラマ!」

「どんな役をやるんですか?」

 

 ドラマの撮影というワードに反応してルビーとアクアも会話に交ざった。

 アクアの質問に対して高峯が回答する。

 

「学園もののドラマでね、主人公の友達役。残念ながら主役級の役ではないのよねー」

「なに贅沢なことを言ってるの。初めてのドラマ出演で台詞があるだけ恵まれてるわよ。大半の人は台詞無しのモブ、なんてざらなんだから」

 

 高峯の言葉にミヤコが突っ込みを入れていると、三つ子は今聞いた話について盛り上がっていた。

 そんな三つ子の喧騒にやがて助手席の高峯も交ざり、それはさらに大きくなる。

 それをBGMにミヤコは車を目的地まで走らせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 「撮影現場にマネージャーの子供を、ねぇ…働き方改革ってヤツか」

 

 撮影現場に到着したミヤコ達は初めの挨拶と、急に連れてくることになってしまった三つ子を現場にいさせるための許可貰うために監督の五反田泰志のもとを訪れていた。

 ミヤコの話を聞くと五反田監督はミヤコの足元にいる三つ子に視線を向け言う。

 

「まあそのくらいなら別に構いやしない―――が、撮影中に騒がしくするようならつまみ出すからな」

 

 そう言うと五反田監督はミヤコ達に背を向け自分の仕事へと戻っていく。

 その背にミヤコが感謝の言葉とともに頭を下げると、その後屈んで三つ子に目線を合わせる。 

 

「ということだから三人とも、おとなしくしていること。いいわね?」

「「「はーい、母さん/お母さん/ママ」」」

「はい、良い子ね」

 

 三つ子の頭を撫でながら言い終わるとミヤコは自身も仕事を始めねばと立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 ミヤコに言い含められた三つ子は初めミヤコから見える範囲で現場の邪魔にならない場所に居たのだが。

 

「「カワイイ~」」

「でしょう?」

「んふー」

「えへへ~」

「……」

 

 撮影の合間の休憩時間に高峯と彼女に連れられた共演者によって連れ去られ三人揃って可愛がられていた。

 高峯以外は初めて出会う人達であったがマリンとルビーは現状にご満悦なようでうれしそうな表情を浮かべ声を漏らしていた。

 一方でアクアは恥ずかしいのか口は閉ざされ少し頬が赤みを帯びている。両親によって初めて苺プロへと連れて行かれてから1年と数ヶ月、両親やB小町の面々、苺プロの職員に抱きかかえられたり頭を撫でられたりと可愛がられることは初めは恥ずかしさもあったものの、もはや日常と化していた。しかし今アクアを抱えながら椅子に座っているのは苺プロの所属ではない他所の女優であり初対面の人物、妹達が楽しそうにしている手前アクアもされるがままであったのだがやはり恥ずかしさが募っていく。やがて耐え切れなくなったアクアは膝の上に座らせられている自分を抑えている腕を振りほどきながら前へと飛び出す。突然のアクアの行動にポカンと呆けている彼女のほうへとアクアは振り向き。

 

「す、すみません。お手洗いに行ってきます!」

 

 そう言うと足早に離れていった。

 

「えっとぉ~嫌われちゃった…?」

「うーん…というよりかは」

「お兄ちゃん恥ずかしかったんじゃないかな」

「あぁそっか男の子だもんね、悪いことしちゃったかなぁ」

 

 アクアを抱えていた彼女はアクアが離れて行ってしまったことに寂しさを覚えるのかため息とともに呟いた。

 それを見た高峯は自分の膝の上にいるルビーに声をかける。

 

「ルビーちゃんあっちのお姉ちゃんのところ行ってあげて」

「んぅ?…わかった!」

 

 ルビーは元気よく返事をすると高峯の膝から降りて先ほどアクアに逃げられてしまった彼女のもとへと歩み寄る。

 自分に寄ってきたルビーに驚いたとともに高峯の方へと顔を向け問いかける。

 

「…いいの?」

「その子達うちの社長と副社長の子供でね、両親に連れられてほぼ毎日事務所にいるから今日は譲ってあげる」

「ありがとう!ほーらルビーちゃんおいでー」

「はーい!」

 

 少女たちの姦しい声がしばらく響き続けていた。

 

 

 

 

 

 

 一方で羞恥に耐え切れず飛び出したアクアは一人撮影所内を彷徨っていた。元居た控室に戻ろうともしたのだがどうしても足が向かなかったのだ。

 アクアとしても先ほどまでの状況は男にとって夢のようだと思わないこともなかったし、正直に言ってしまえば欲のままに浸ってしまいたいという誘惑が頭の中を幾度となくよぎっていた。しかしながら本当に欲に忠実になってしまうと妹二人に軽蔑されてしまうのではないかという思いが欲を上回る。今あの場所に再び戻ってしまうと今度こそ欲に溺れてしまいそうだと気が気ではなかった。

 もっともマリンとルビーとしては"別に今は子供なんだからよくない?アクアも素直になればいいのに"程度にしか思っていなかったりするのだが―――アクアはそのことを知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

「あん?…あぁあのマネージャーのガキか」

 

 高峯達に連れていかれた休憩室に戻る気にどうしてもなれなかったアクアは撮影の邪魔にはならないようにと周囲に人のいない空きスペースで暇を潰していた。

 アクアが一人おとなしくしていると突然頭上から声をかけられる。誰だろうと思いアクアが顔を上げるとそこには五反田監督が自分の方を見ながら立っていた。

 

「こ、こんにちは監督。えっと…今日はありがとうございました」

「ありがとうだ?」

「はい。俺たちは撮影とは関係無い部外者なのに現場に居させてくれたので」

「……」

 

 目の前に目上の人が突然現れたから挨拶と感謝を告げる。自身の前世で培った常識に則りアクアはその通りに行動をとった。自分にとってあたりまえのことをしただけであるアクアの方を五反田監督は目を見開いて凝視しており、しばらくそのままであったが突然五反田監督はその場に屈んでアクアと視線を合わせる。

 

「えっと…監督?」

「お前歳は?」

「え?と、歳…は、ついこの間2歳になったばかりですけど…」

「2歳児にしては大人みてぇな喋りかたするなお前、言葉はどうやって覚えた?」

 

 監督にそう尋ねられてアクアは自分のやらかしに気付いた。突然目上の人物に声をかけられたことで年相応の振る舞いを忘れていたアクアは必死に言い訳を考える。

 

「その…父さんと母さんが事務所の社長と副社長でずっと事務所に連れられて育てられたんです。それで周りの人がこんな話し方だったので…」

「ほぉ…特殊な家庭の事情故、か―――――いいなお前、使ってみたい」

「使ってみたいって…俺を? 役者に?」

「そうだ。そういやさっき母親が副社長っつってたな、ここにマネージャーとして来てたってことは事務所ってのは芸能事務所か?」

「うん、苺プロダクションっていう事務所」

「所属はしてないのか?」

「今のところは…父さんと母さんもずっと忙しそうにしてるし」

「あぁ、副社長がわざわざマネージャー兼任してるくらいだからそりゃそうか…現状いっぱいいっぱい、と」

 

 顎に手を添えて何か考えている素振りの五反田監督とそれに向かい合う形でどうしたらいいのかわからずたじろいでいるアクア。

 アクアと五反田監督がそうしていると、二人しかいないはずの空間に二人とは別の声が響く。

 

「あ、アクアいた! ルビー! アクアいたよー!!」

「え、マリン?」

「うん?」

 

 声のした方へと顔を向けるとそこにはマリンがいた。後ろを振り返りながらルビーを呼んでいるため彼女もすぐ後ろにいるらしい。

 ルビーを呼んだ後マリンは再びアクアの方を向き笑顔で歩み寄ってくる。

 直後にマリンの背後からルビーが小走りでとてとてと追いかけてくる。アクアを見つけると彼女もまた笑顔になりアクアの方へと向かう。

 目的だったアクアにしか目に入っていなかったようでマリンとルビーは近寄ってきて初めて五反田監督に気が付いたようだ。

 マリンは五反田監督に対してじっと見つめるように視線を向け、ルビーは姉の後ろに隠れるようにして様子を伺っている。

 

「こんにちは!」

「……こんにちは」

「おう、こんにちは。―――んで早熟、こいつらお前の姉か妹だよな?」

「うん。妹のマリンとルビー……"早熟"?」

「お前を的確に表してるだろ? んで、どっちがどっちだ?」

「まあいいけど…手前がマリンで後ろに隠れてるのがルビーだよ」

「そんでさっき呼ばれてたアクアってのがお前の名前ね……時代だなぁ」

 

 そうつぶやくと五反田監督は再びアクア達をじっくりと観察しながら何か考え込んでいる。その様子にアクアは無表情でマリンは不思議そうに首をかしげて、そしてルビーはマリンの後ろに隠れ続けながら視線を向けていた。

 4人揃ってそうしていると不意にルビーが口を開く。

 

「あ、あの…」

「おう、どうした?」

「無精髭生やしたおじさんが私たちみたいなかわいい幼児をじっとり観察するのはやばいと思います」

「はぁ!?」

「「ぷっ」」

「早熟!妹その1!笑ってんじゃねぇ!」

 

 思いがけないルビーからの言葉に思わず額に手を当て天井を見上げる五反田監督。彼はしばしの間そうしていたが視線を下げ再びアクア達の方へと視線を向け呟く。

 

「年齢からは考えられないほど大人びてる早熟に初見の大人相手に物怖じしない妹その1、年相応かと思えば兄とは別ベクトルで年齢不相応な妹その2……やっぱいいな、お前ら」

 

 "いいな"の辺りで先ほどの発言以降マリンの背から出ていたルビーの顔が再び引っ込んでしまったのだが、それは努めて見ないようにして五反田監督は立ち上がりアクアに声をかける。

 

「よし早熟、お前らの母親んとこ行くぞ。ついてこい、妹二人もな」

 

 そう言うと五反田監督はどこかへと歩き出す。五反田監督からの言葉に三つ子は互いに顔を見合わせるが、そうしている間にも五反田監督が先に行ってしまっていることに気付き、慌ててその背を追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

「この子達を…ですか?」

 

 何故か自分の子供達を足元に引き連れて現れた五反田監督から突然話しかけられたと思えばその内容にミヤコは驚くことしかできなかった。

 

「あぁ、事務所には所属してないって言われたけどな、聞けば旦那が芸能事務所の社長でお前さんが副社長だって話じゃないか、だもんで直談判しにきた」

「監督であるあなたがわざわざ…ですか?」

「そんだけ本気、と取ってくれればいいさ」

 

 そういうと五反田監督は自身の名刺をミヤコに渡す。

 

「これ俺の名刺、この子らの所属なんかが決まったら連絡してくれ」

 

 "待ってるんでね"と残し五反田監督は撮影へと戻っていく。残されたミヤコはまじまじと今手渡された名刺を見つめ、次に愛する我が子達へと視線を向ける。

 

「とりあえず何があったのか説明してくれる?アクア」

「うん、えっと――――――」

 

 撮影所内でおとなしくしていたら監督と偶然出会ったこと、その場で少し会話を交わすと気に入られたことをアクアはミヤコに説明する。

 それを聞いたミヤコはしばらく口元に手を当てて何かを考えこんでいたのだが、ミヤコの服をアクアが引っ張っているのに気付き声をかける。

 

「―――あら? アクア、どうしたの?」

「えっと、…母さん、ごめんなさい」

「どうしたの突然。あなたは何も悪いことなんてしてないでしょうに」

「その…最近B小町のみんなも売れてきてて、父さんも母さんも忙しそうにしてるのに俺たちのことで仕事増やしちゃって…」

 

 アクアの言葉にミヤコは一瞬驚くがすぐに柔らかい笑みを浮かべながら屈み、アクアと視線を合わせアクアの頬に手を添える。

 

「馬鹿ねぇ、あなた達はそんなこと気にしなくていいの。大事なのはあなた達がどうしたいかなんだから。それで、アクアはどうしたい? マリンとルビーもだけど」

「俺は…興味は、ある。かな」

「私はやってみたい!」

「お兄ちゃんとお姉ちゃんも一緒なら私もやってみたい…かな」

 

 子供達の返事に頷くとミヤコは順に頭を撫でてから告げる。

 

「わかった。それじゃあ帰ったらお父さんと話してみましょう」

 

 

 

 

 

 

「アクア達を使いたいって…監督が直々にか?」

「ええそうよ、ほんと吃驚しちゃったわ」

 

 高峯の撮影が終わり、苺プロへと戻ったミヤコは手の空いているスタッフにアクア達の世話を任せ、同じく戻ってきていた壱護に業務の報告をした後に、アクア達三つ子が五反田監督からスカウトされた件についても報告した。その内容に壱護は驚くも冷静に聞き返す。

 

「あの子達はなんて言ってたんだ?」

「マリンは積極的でアクアはほどほどに前向き、ルビーはやや後ろ向きだけどアクアとマリンと一緒ならやりたいって感じね」

「――――――どう思う?」

「親バカって言われるのを承知で言うと…あの子達なら間違いなく売れる。三人とも2歳とは思えないほど賢いし、ビジュアルも文句なし。よほど売り方を間違えない限りは、ね」

「親バカなんて言わねぇよ。俺だって同意見だからな」

 

 互いの言葉に夫婦揃って笑い合い、斉藤夫妻は今後のことを話し合う。

 

「よし、アクア達も前向きってんなら明日にでも社内に通達。子役部門を起ち上げるぞ」

「書類は用意しとくわ。あぁそれと壱護」

「どうした?」

「大丈夫だとは思うけど一応、私たちの思うとおりにあの子達が売れっ子になったとして―――」

「無理に仕事はさせるなってんだろ? 俺だってあの子達の親だ、そのくらい分かってるよ」

「……分かってるならいいのよ」

 

 壱護から視線をそらして恥ずかし気に呟くミヤコの姿を見て、壱護は笑みを浮かべて立ち上がる。

 

「よっし、これから忙しくなるぞ」

 

 意気込むように言い放つ壱護にミヤコがそういえば、と言葉を放つ。 

 

「そういえばなんだけど壱護」

「うん? なんだ?」

「今回アクアから最初に話を聞いた時、あの子私に謝ってきたのよ。私たちが最近忙しそうにしてるのに仕事増やしてごめんなさいって。息子が2歳児が

 

 ミヤコに言われたことに思い当たる節しかない壱護は気まずそうに目線をそらし、小さく呟く。

 

「……とりあえず求人だすか…」

「そうして頂戴」

 

 こうしてアクア達三つ子が子役としてデビューすることとなった。

 

 

 

 

 

★☆★☆

 

 

 

 

 

 

 俺達三つ子が苺プロに子役として正式に所属することになり、近々五反田監督の作品に出演することも決まった日の夜中、同じ布団に入っているマリンとルビーは既に眠っていて、隣の布団からも母さんの寝息が聞こえている。

 

 2歳児の体でこの時間に起きているのは少々辛いのだが、必死に眠気を堪えて俺は起きていた。

 

 時折眠気に負けてしまいそうになりながら俺は父さんの帰りを待っている。

 

 しばらくすると部屋の外からガチャリと玄関の鍵の開く音が聞こえてくる。母さんと俺達が眠っていると思っているためかただいまの声が聞こえることは無く扉の開閉する音だけがした。

 

 俺はマリンとルビーを起こさないように気を付けながら寝室から外に出て父さんを出迎える。

 

「おかえり、父さん」

「うん? あぁアクアか。どうしたこんな時間に」

「ちょっと父さんに聞きたいことがあって」

「聞きたいこと?」

 

 俺が聞きたいことがあると言うと父さんは少し嬉しそうな表情で聞き返してきた。息子から頼られるというのは父親にとっては嬉しいもの、というような話はよく聞くが父さんも例に漏れずそうらしい。前世で子供がいたことは無かったので俺にはよく分からない話だが。

 

 そんなことを考えると父さんは俺を抱きかかえてリビングの方へと歩きはじめる。

 

 リビングに着くと俺を椅子に座らせて父さんはキッチンの方へ行ってしまう。

 

「父さん?」

「ちょっと待ってろ」

 

 父さんの言うとおりに待っていると目の前のテーブルにコトンと音を立ててマグカップが置かれる。湯気が立っているその中には真っ白なホットミルクが注がれていた。幼児の体でこの時間にこんなものを飲んだらすぐさま寝落ちしてしまいそうだ。つまりはそういうことなのだろう。

 

「あんまり夜更かしさせるとミヤコに怒られちまうからな。だから話を聞いてやれるのはそれを飲み終わるまでだ。それで、どうした?」

「えっと…芸能界で一番大切なことってなに?」

 

 俺からの質問が予想外だったのだろうか父さんは一瞬目を見開くと顎に手を当て何か考えている。

 

 ホットミルクを飲みながら待っているとやがて父さんが口を開いた。

 

「一番大切…一番なぁ――――――しいて言うならコネ…はアクアにはまだ早いか…あ~コミュニケーションだな」

「コミュニケーション…皆と仲良くしようってこと?」

「そうだ。詳しい話は省くけどな、極端な話になるが誰とも仲良くしようとしない奴と誰とでも仲良くできる奴だったら後者のほうが重宝されるのが芸能界だ。といってもどんな業界であってもそうっちゃそうなんだが芸能界では特に、だ」

 

 今父さんはコネって言いかけてからコミュニケーションと言い直した。まあコネなんて2歳児相手に使う言葉じゃないだろうし妥当だろう。つまりは共演者やスタッフとは仲良くしてコネを作って次の仕事に繋げるってことか―――言われてみると普通のことだが確かに大事だ。

 

 父さんの言葉を聞いた後黙ってホットミルクを飲んでいた俺に父さんが声をかけてくる。

 

「納得したか?」

「うん、ありがとう父さん。あとごちそうさま」

「おう、飲み終わったのなら布団に戻ってさっさと寝るように」

「わかってる。おやすみなさい」

「あぁ、おやすみ」

 

 そう言って俺は寝室へと戻った。

 

 

 

 

 

 

「コミュニケーション、か」

 

 再び布団に入った俺は先ほどの父さんが言っていたことを呟いていた。

 

 そうしながら思い返すのは前世の、雨宮吾郎の記憶だ。

 

 専門は産科医だったが勤めていたのは田舎の総合病院だ。人手不足だからと他科の診察に駆り出されることも多かった。そのため産科医では縁がなさそうな男性やお年寄りの診察の経験だって数えきれないほどある。

 

 診察っていうのはただ患者に言われるがままにカルテを書いてハイ終わり、ではない。素直な患者ならともかく自身の病状を今一つ自覚してなかったり、中には恥ずかしい等と思っているのか隠そうとする人までいる。そういう患者相手でも正確な病状を把握するためにはそれを引き出すために対話をしないといけなかった。性別であれば女も男も、下は幼児から上はお年寄りまで、俺はずっとそれを続けてきた。数えきれないほどに沢山。

 

 だからこう言い切れる。

 

「うん、()()なら得意だ」

 

 自分では分からないことだけれど、この時俺の右目の星は普段よりも強く輝いていた。




【補足】三つ子の両親への呼称について
アクア:父さん、母さん
マリン:お父さん(たまにしゃちょー)、お母さん
ルビー:パパ、ママ



 こどおじ監督登場回でした。本作ではアイに代わって高峯さんが出演。普通にそこそこ画面には映っていた模様。他二人は別の仕事に、壱護社長が頑張ってます。

 次回ようやく映画撮影…までいけるかなぁ?それでは
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