星の三つ子   作:大空

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本誌のアクルビが強すぎて視力が無限に上がりそう


反響と今後

 『それが始まり』の公開から数日。映画の評判は上々であり世間一般と業界問わず話題となり、後にとある映画賞にノミネートされることにもなる。

 

 『それが始まり』の話題の中でもかなとアクア達は比較的反響が大きく、アクア達は突如現れた新星として取り上げられた。芸能活動をしている三つ子というだけで話題性としては十分である上に、まるで天使などという比喩が誇張にならない容姿と、"十秒で泣ける天才子役"と評される有馬かなと同等の演技力までも兼ね備えているとなればなおさらであった。

 

 その余波はアクア達の所属している苺プロにも影響を与えており、その結果はというと。

 

「はい、苺プロダクションです。――――――はい、はい。斉藤アクア、マリン、ルビーの三名につきましては現在スケジュールの調整中でございまして―――はい。かしこまりました、ではそのようにお伝えさせていただきます」

 

 事務所内に電話のコール音が響き職員がそれを取ると電話口からはアクア達の名前、このような光景がこの数日、日に何度か見られるようになった。

 そんな光景を眺めながら壱護とミヤコが話している。

 

「話題沸騰…とまではいかねぇが滑り出しとしては上々も上々、だな」

「この状況を生かすも殺すも私達次第、なわけだけどもどうするの? 壱護」

「その辺はまかせろ、ばっちりプロデュースしてみせるさ」

「そこは心配してないわよ。わかってるでしょうけど―――」

「無理はさせるな、だろ? 前も言ったが分かってる」

「…ならいいのよ」

 

 以前アクア達を苺プロに所属させることが決まった時と同じように恥ずかし気にそっぽを向くミヤコに苦笑しながら壱護は続ける。

 

「とりあえずオファーは結構な数きてるからそっちは吟味するとして、だ。とりあえず俺のツテから一つ仕事を取ってきてる。お前にとっては一石二鳥でおいしい仕事だと思うぜ」

 

 そういいながら壱護の出した資料をミヤコは怪訝な表情で受け取る。

 

「私にとっておいしいってどういう――――――!」

 

 資料を確認したミヤコの表情が驚愕とともに明るくなる。

 

「いい仕事だろ?」

「―――ええ、そうね」

 

 口角を上げながらやる気に満ちているミヤコの様子を見て、壱護は満足げに頷いた。

 

 

 

 

 

 

「~♪」

 

 先日の仕事から恒例となりつつあるミヤコの運転にアクア達が揺られている。今日の仕事の資料を壱護から受け取ってからずっとご機嫌なミヤコの鼻歌を聞きながら、後部座席のアクア達は雑談をしていた。

 

「今日のお仕事楽しみだね~」

「ご機嫌だなルビー」

「だってモデルだよ!? 芸能人のお仕事といえばこれっていう代表! こないだの役者も良かったけどホラー映画だったしキラキラはしてなかったからね!」

 

 今日の仕事に対する期待に胸を膨らませるルビーの様子を見ると、アクアはかつて芸能にあこがれていたルビー(さりな)を思い返される。

 

「――――――そうだな。俺も楽しみだ」

「でしょ~! お姉ちゃんも楽しみだよね!?」

「そりゃ勿論。私もだけどルビーとアクアがかわいい服着てるの見れるし」

「かわいい……どうせならかっこいいの方が…いやしょうがないか」

 

 アクアとしては妹達や母が喜んでくれるならどんな格好をすることも厭わないのだが、やはり前世ではすでに成人していたこともありかわいい恰好をすることには多少抵抗があった。

 アクアがそうぼやくとそれを聞いたミヤコがアクア達の会話に加わってくる。

 

「意外にしょうがなくはないかもしれないわよ? アクア」

「? どういう意味、母さん?」

 

 アクアの問いかけにミヤコは笑みを崩さずに返した。

 

「着いてからのお楽しみにしとこうかとも思ったのだけれど教えてあげましょう。今日あなた達が着るのはね――――――着物よ」

 

 

 

 

 

 

 着物を着る、とだけ教えられたアクアであったが今日の目的地を見て合点がいった。

 大きさは普通の一軒家よりも少し大きいくらいだろうか入口には大きく『写真館』の文字があり、宣伝用であろうアクア達と同じくらいから少し上の小学校入学前後程度の様々な着物を着た子供達の写真が飾られていた。 

 

「あぁ、なるほど七五三」

「正解。良く知ってたわね」

「うぇ!? あ、えと…こないだテレビでやってて…」

 

 入口でアクアが少々迂闊な発言をしつつも一行は入口を通り写真館の中へと入っていく。

 どうやら今日この写真館にやってきているモデルはアクア達だけではないようで、他にも何人かの子供達とおそらくは保護者かマネージャーであろう大人が数人いた。

 子供が多くいる空間は今世では初めてだなとアクアが考えていると、同じような考えを持ったのかマリンとルビーも辺りをキョロキョロと見渡している。

 

「私達以外にも子供だらけだねぇ」

「まあ七五三だからね」

「だねぇ――――ん? あ!」

 

 雑談をしながら自分達以外の子供を観察していると、ルビーがその中に見知った顔が交ざっていることに気付く。

 

「かなちゃん!」

「―――? あ、ルビー!」

 

 見知った顔、かなを見つけたルビーがその名前を呼びながら駆け出した。

 その声が届き、その方向へとかなが顔を向けると彼女もまたルビーに反応して名前を呼んだ。

 

 突然駆け出したルビーを追いかけるようにアクアとマリン、ミヤコがその背に続いて寄ってくる。

 

「あ、ほんとにかなちゃんだ」

「マリンも!」

「こんにちは、有馬さん」

「アクア。こんにち――――――ムゥ」

 

 ルビーに追いついたマリンとアクアが順に挨拶をし、それに返すかなであったがアクアと挨拶をすると急に不機嫌な様子になってしまう。

 

「え、えっと…有馬さん? どうしたの?」

「―――名前」

「え? 名前?」

 

 かなの返答が予想外だったのか思わずオウム返しをしてしまうアクア。

 

「マリンとルビーは名前呼びなのにあなただけ苗字で呼んでる…しかもさん付だし」

「あ、あ~…それは、えっと」

 

 かなの言い分に思わず口籠ってしまうアクア。転生者ゆえに自分の年齢の認識が30歳を超えているアクアとしてはかなは自身よりもはるかに年下の女の子だ。故にかなに対しての呼び方は苗字にさん付けか、さりなのように下の名前にちゃん付けになる。出会って間もないかなに対しては前者が適切だろうとそう呼んでいた。

 

 そのような都合があったのだが内容が内容であり話すわけにはいかなく、どう返答したものかとアクアが慌てて思考を巡らせていると思わぬところから助け舟が出される。

 

「かなちゃんちょっといい?」

「なぁにマネージャー」

「まだちょっとかなちゃんにはピンとこないかもしれないけど、女の子と男の子だと呼び方に違いがあってね。詳しくは省略するけど男の子はあんまり下の名前で女の子のこと呼ばないのよ」

「…そうなの?」

 

 助け舟を出してくれたのはかなのマネージャーであった。その内容はアクアの思考とは異なったものではあったものの第三者が聞く分には理解のできるものであり、かなも信頼できる大人であるマネージャーの言うことだからと納得し、アクアも渡りに船とそれに同意する。

 

「う、うん。大体はそう…かな」

「ふぅ~ん…そういうことなら許してあげる。でもさんはいらないから! あと大人のまねっこみたいな喋り方も禁止! わかった!?」

「…わかった。それじゃあこれからよろしく、有馬」

「ふん、わかればいいのよ」

 

 アクアの返答に満足したかながふとアクアの隣に視線を向けるとマリンはニコニコとルビーは何やら驚いたような顔でかなのことを見ていた。

 

「……なによそんな顔して」

「ん~? かなちゃんはかわいいなぁって。ね、ルビー」

「なんというド直球なツンデレ…かなちゃん、恐ろしい子…」

「意味わかんないこと言ってんじゃないわよ!?」

 

 女三人寄れば姦しいと言わんばかりにじゃれ合っている様子を傍で見ているミヤコとかなのマネージャー。

 ルビーの発言を聞いたミヤコが額に手を当てて独り言ちる。

 

「ツンデレなんて言葉どこで覚えたのかしら…」

「最近はテレビなりなんなりでその手の言葉も一般化してますからねぇ…」

 

 かなのマネージャーの言葉にどうしたものかと悩むミヤコをよそにアクア達とかなはじゃれ合っている。

 

 それは写真館のスタッフの声掛けにより本日の仕事が開始するまで続くのであった。

 

 

 

 

 

 

 アクア達とかながモデルをこなしている頃の苺プロ、B小町の三人が事務所内を歩いている。近頃は彼女たち自身とマネジメントを担っている壱護の頑張りもあり、B小町のメンバー個人個人への仕事も増えていたため三人全員が揃って事務所にいるのも珍しくなってきていたのだが、今日はその珍しい日であった。

 

「三人揃って呼び出しってなんなんだろうね?」

「ライブ…はついこないだやったばかりだし…それ以外で何かB小町(わたしたち)宛てのオファーでもあったのかしらね?」

「皆一緒の仕事ならこないだのスイーツロケみたいなのがいいかなぁ~」

「あれ楽しかったねぇ…摂取カロリーに目をつぶればだけど…」

「ニノとめいめいはまだいいじゃない…私あの後別のグルメ系の仕事入っちゃったからしばらく減量生活だったわよ…」

「あぁこないだ私とニノがお菓子食べてるの恨めしそうに見てたのそれかぁ」

 

 三人が雑談をしながら歩いていると目的地である会議室に到着、ノックをして中から壱護の返事が聞こえると順に入室する。

 

「「「失礼します」」」

「おう、悪いな呼び出して」

「いえいえ大丈夫ですよ社長。それで、今日はどうしたんですか? B小町(わたしたち)宛てのオファーでもありました?」

「オファー自体は何件か来てるが今日は別件だ」

 

 高峯からの質問をやんわりと否定すると、壱護は人差し指を立てて話始める。

 

「まず一つ目なんだが、時期はもうちょい先になるだろうが事務所を引っ越す予定にしてる」

「え、事務所引っ越すんですか?」

「あぁ、お前らの頑張りもあって最近は経営も順調。ここいらで事務所の規模も拡大しようかと思ってな、もっと広めの物件を今探してるところだ」

「それは朗報ですけど…なんで私達が呼ばれたんです?」

「なんでって…お前らの意見も必要だろうが。オフィスはいいけどレッスン室とかは実際使うやつの話も聞かねぇとな、と言ってもすぐには無理だろうからマネージャー通してで構わないから後で伝えてくれりゃあいい」

「「「はーい/わかった/わかりました」」」

 

 引っ越しの話題は今日のメインではなかったようで軽く話すだけで終わると、壱護は一つの封筒を取り出し机の上に置く。

 B小町の三人がその封筒に注視すると封筒そのものには中身を表す単語等は書いておらず、『極秘』『社外持ち出し禁止』とだけ赤字で書かれていた。

 

「んで、二つ目なんだがこっちが今日の本題だ」

 

 B小町の三人の視線が封筒に向いているのを確認すると壱護はその中身をゆっくりと取り出す。

 中から出てきたのは一部の資料であった。封筒と同じく『極秘』『社外持ち出し禁止』と書かれ、表紙の中央にタイトルが書かれている点が異なっている。

 そのタイトルが目に入るとB小町の三人は思わず揃ってそれを声に出す。

 

「「「苺プロダクション新規アイドルプロジェクト(仮)…?」」」

「そうだ、お前らに後輩が出来る」

「後輩ですか!」

 

 後輩という単語に世話好きな高峯が真っ先に反応した。

 初々しい後輩とそれを世話する自身を想像しているのか上機嫌な様子の高峯をよそにめいめいが壱護に対し疑問を口にする。

 

「新規アイドル…たしかにうちにとっては重大な話ですけど、後輩ができるってだけでは私達を呼びだす理由としては弱いような…?」

「確かに単に後輩のアイドルグループを起ち上げるってだけならその通りなんだがな」

「つまりは単なる後輩ではないと」

 

 そこで壱護は少しの間目をつぶり、数舜の後に目を開くと話始める。

 

「―――まず最初に俺が考えないといけなかったのは『B小町』をどうするか、だった」

「『B小町(わたしたち)』を、ですか?」

「あぁそうだ。お前達は今波には乗れてる、アイドル全体としてみても上澄みと言っていいほどになってくれた―――だがそれでも長めに見積もって5年が限界だろう」

「5年…」

「まあ後5年もしたら私達全員アラサーだもんねぇ。アイドルやるには大分ギリギリ」

「事実だけど直視したくない話題だわ…」

「だねぇ…」

 

 壱護のあと5年という発言に直視したくない現実を突きつけられ何とも言えない表情になるB小町の面々。

 

「とまあそんなことを考えた時にだ。『B小町』は俺が自らスカウトして作ったグループで俺の夢そのものと言っていい。それがこのまま無くなるっていうのはやはり惜しくてな」

 

 ここで壱護は一旦言葉を区切り、机の上に置いたままになっていた資料の上に手を置き告げる。

 

「そこで、だ。俺は『B小町』を襲名制にすることにした」

「「「襲名制…」」」

 

 壱護の口にした方針にB小町の三人が呟くように反応した。

 

「あ! それで単なる後輩ではない、と」

「そうだ。この新規プロジェクトは単なる新しいアイドルグループを作るんじゃない。お前達の後継、『()()()B小町』候補を育てるためのものだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 壱護がB小町を呼び出した日から半年ほど経過したとある日、都内のとあるアパート。その中で一人の少女がリビングで寛いでいた。

 彼女は自身の推しのアイドルがデフォルメされたストラップの付いたスマホを鼻歌交じりに見ている。

 

「ふ、ふ、ふ~ん」

 

 スマホの画面にはとある動画が流れている。ストラップのアイドルがかつて所属していたグループのライブ映像だ。

 楽し気に動画を見ている様子から放っておけば何時間でもそのままであるだろうということが伺える。実際動画に集中しすぎて時間を忘れ、彼女が母親に注意を受けるのは日常茶飯事であった。

 

 しばらく経ち見ていたライブ映像が終了すると、少女はこれまた日課と化しているSNSをチェックしていた。フォローしているアカウントのつぶやきを一つ一つ確認していく。

 

「お、たかみーのオフショ…三人でスイーツ。いいなぁ、おいしそう」

 

 時折独り言をつぶやきながら指を動かし画面をスライドさせる。

 

「ふ~ふふ~ん……ん?」

 

 絶え間なく続いていた鼻歌と指の動きが止まる。少女の視線の先にはとあるアカウントのつぶやきが表示されていた。それを目にした少女は動きを止めていたが、やがてその内容を受け止めると突如立ち上がり、後で怒られるかもしれないと普段ならばしないであろうが現在は興奮が勝っているのかドタドタと足音を立てながら台所で夕飯の準備をしている母親の元へと駆けていく。

 

「お母さん! お母さんお母さんお母さんお母さんお母さん!!」

「こら、家の中で走っちゃダメでしょう? ご飯ならもうちょっと待ってね」

「ごめんなさい! あとご飯じゃなくて、これ見て!」

「これ―――?」

 

 叱られてしまうも興奮冷めやらぬ様子で少女は母親に自身の手に持つスマホを突き付ける。

 画面には先ほど少女が手を止めた時のつぶやきが表示されたままになっていた。

 母親が娘の突然の行動に疑問を抱くもその画面を確認する。アカウント名には『苺プロダクション公式』とありその文面は―――

 

 

 

 :苺プロダクション新規アイドル候補生オーディション開催のお知らせ。

 

 

 

 ―――あこがれは止められない。




 お待たせしてしまったわりに前回と比べると短め&ぶっちゃけ繋回で申し訳ないです。でも大事な話ではある。

 前半はメタ的にはアクアのかなへの呼び方を修正するためのお話。でも三つ子のうち一人だけ呼び方違うのはかなちゃん気にしそうかなと。明確に友達として認識してますし。

 後半はB小町の今後の話。B小町をどうするかは結構悩んだんですが今作ではこうなりました。モーニ〇グ娘とかあんな感じで。
 アイ生存系のSSなんかだとアイが凄すぎて後続が作れなかったみたいな展開はよく見ますけど今作ではアイがいないのでその辺のハードルは低めかなぁと。といっても今作B小町の三人はアイほどではないけど全員一流としてますのであくまでハードルは高すぎないけど十分高いです。

 最後の少女は一体誰なんでしょうね?(すっとぼけ)






 評価、感想、ここすき、いつもありがとうございます。亀更新な本作ですが引き続き応援よろしくお願いいたします。
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